【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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96_プライバシーは死んだ

「──ん?」

 

「あ」

 

 微睡の中から意識を持ち上げてみれば、誰かと目が合った。アナかと思ったけど顔立ちが少し違う。誰だとか今何時とか聞くよりも前に気付いたのは、少女の気まずそうな顔。

 そして──スースーする。

 下半身がスースーする。

 ついでに目の前にいる少女は──

 

「すっぽんぽん」

 

「…………」

 

「すぅぅぅ……」

 

「……あ、あはっ?」

 

「だれかもごっ──」

 

「うわー! ちょっと待って! 待って待って! 誤解だから! 誤解!」

 

「もごもごもごもご」

 

 話を聞いてみれば、寝込みを襲って子種をもらおうとしただけらしい。

 誤解とは? 

 

「だってほら、男の子あんまり来ないから良いかなって……」

 

「どういう倫理観だよ……」

 

「でもほら、キミも乗り気じゃん!」

 

 ガチの生理的現象を、あたかも俺がやりたいからみたいに捉えるのはやめてくれまいか。あと、気まずいから服を着ないか。

 なぜ俺たちは裸で話し合っているんだい? 

 

「あっ! 大丈夫! 私、処女だよ!」

 

「気にしてないです」

 

「えっ……でも男の人って処女じゃないと嫌なんでしょ?」

 

「いや?」

 

「お母様言ってたよ、お父様がそうだったって」

 

「まあ言いたいことはわかるけど……俺は別に……」

 

「えー? ……じゃあ、する?」

 

「しない」

 

「ぶー、ノリ悪ーい」

 

「そもそも……なんでそんなにしたいの?」

 

「男の人いないんだもん」

 

「どゆこと?」

 

「私達」

 

「うん」

 

「私達って雪女じゃん? なんで知ってるか知らないけど」

 

「はい」

 

「男がいるわけないじゃん」

 

「…………確かに」

 

「でしょ? じゃあ、どーん! …………あれ」

 

 押し倒そうとしたのだろうが、そうはいかない。

 吾輩は筋トレ論者である。

 名前はまだない。

 だが、不条理には人一倍敏感だ。

 有耶無耶に全てを流そうとする輩には鉄槌を! 

 

「アナは幸せそうにしてたけど……もしかしてあんまり楽しくないの?」

 

「いやエッチは楽しいけど、そうじゃなくてね」

 

「なら大丈夫! 私、いっぱい尽くすから! お嫁さんの練習してあるもん!」

 

「俺既婚者だから」

 

「それでも大丈夫! とにかく子供を増やさなきゃ始まらないでしょ? だからさ!」

 

 俺が泊まっているのは人様のお家です。

 そこで朝……朝? …………多分朝から騒がしくしていると、苦情が入ります。誰からって、言わなくてもわかるよね? 

 

「ねえ、朝からうるさいんだけ──なにしてんの!?」

 

「やべっ、みつかった!」

 

 まさかの全裸で窓から飛び出して行った。

 残されたのは俺とアナ(人妻)、男と女が一人ずつ、何も起きぬわけもなく……

 

「人の家で朝から……」

 

 お説教が始まった。

 

「誤解です。起きたら襲われかけていただけで俺は何もしてないです」

 

「あんな裸で冷静に話しといて何もしてないわけないでしょ!」

 

 ピロートークと勘違いされていた。

 というか、朝までやってたと思ってんのか。

 

「……本当に違うの?」

 

「断固として無罪を主張します」

 

「…………紛らわしいことしないでね」

 

「俺が悪いの?」

 

「だって、誘うような格好してたんでしょ?」

 

「寝てただけですが」

 

「肌晒してたんでしょ」

 

「寝てただけですが」

 

「はあ〜……分かってないよね」

 

 何だろうねこの、私は違いますよ感。

 一人だけ旦那さん見つけてるからって調子乗ってる気がする。みなさん聞いてちょうだい!? 

 

「みんな、本当は私のことが羨ましいんだから。周りが男持ちいないからそこで安心してるだけで、隙あらば抜け駆けしようとしてるんだよ?」

 

 なにそのアラサーの焦り具合みたいな。

 

「でもみんな若くない?」

 

「まあ、みんな15とかだし」

 

「じゅうご!?」

 

 ソフィアと同い年じゃねーか! 

 ……え、みんな? 

 みんなってこいつも? 

 キミ、ソフィアと同い年なの? 

 タイムパラドックスなの? 

 

「歳一緒なの? ソフィアと」

 

「うん」

 

「うんじゃないが」

 

 どういうこと? 

 本当にどういうこと? 

 頭がおかしくなりそうです。

 もうおかしくなってるのかも……? 

 

「こっちの方が時間遅いみたいなんだよね〜。そっち行って戻ってきてもまだ全然時間経ってないし」

 

「ソフィアはいつ産んだの?」

 

「8歳のとき」

 

「……」

 

 すごく異世界だ……いや、それで片付けて良い問題じゃないよな? 

 そもそも()()の? ()()()たの? 

 怖いんだけど。

 

「あ、でも私たちあれだよ? ソフィアみたいに赤ちゃんの姿で生まれたわけじゃないからね」

 

「え?」

 

「私たちはお母様に生み出された時からこの姿なの。そこから15年間変わってないってだけだよ」

 

「あ、そういう……やっぱ人間じゃないんだ」

 

「うん。でも見た目すっごく似てるよねー」

 

「それは多分、君たちのお母様が人間を真似して産んだからだろうね」

 

「そうなのかな」

 

 流石にそこは間違いないはず。

 だって俺たちは神様が世界に現れるよりも遥か前、数百万年前から長い時間をかけて進化してきたわけだし。

 

「そもそも、そうじゃないと子供作れないじゃん?」

 

「あー! 確かにね!」

 

 そうなるとあれか。

 パートナー欲しかったらコキュートスにやってくれば作り放題じゃん。

 

「俺じゃなくてもいいよね?」

 

「うん。でも、私たちも一応人は選ぶよ?」

 

「あ、そうなの」

 

「だってブサイクな子供とか作りたくないし……この人いいなーってならないとね!」

 

 無邪気。

 素直。

 とにかく彼女たちはそういう性質らしい。

 人間と同じに見えて、少しだけ違うのだ。

 この環境か、お母様の影響だろう。

 

「昨日は血とか出てたからみんな遠慮してくれたけど、今日はそうもいかないんじゃないかなあ」

 

「そっかあ……」

 

「みんなで裸も見ちゃったし」

 

「何をしてんの?」

 

「結構エロい身体してるよね」

 

「……そ、それは共通認識ですか? それとも個人的な所感ですか?」

 

「みんなだよ」

 

「あー……」

 

 逆に聞かなきゃよかったか……人妻と話してるとは思えんな本当に。

 

「…………一旦、それは置いといて……助けてくれてありがとうございました」

 

「うん!」

 

 

 ──────

 

 

 外に出ると、昨日と変わらぬ銀景色。

 しかし、吹雪いてないので村? 町? 全体の様子を見ることができた。

 イヌイットみたいな? 

 見ての通りに雪洞メインでの暮らしで、陽が出てボチボチと顔を出す雪女がいるって感じだ。

 

「あ、昨日の人だ」

 

「えっと……アキヒロです」

 

「フィナでーす」

 

「アナを除いて初村人だから聞きたいんだけど……」

 

「なになに? 何でも聞いて?」

 

「みんな俺の裸見たって本当?」

 

「うん!」

 

 なんたること。

 やはり、プライバシーを主張する権利の中で最も意味ある部分をすでに侵害されていたようだ。

 

「でも、その質問してくるってことは──」

 

「違うぞ」

 

「……本当は〜?」

 

「違います」

 

「そうなの? …………実はあんまり楽しくないの?」

 

「いや、そんな事ないけど……それは置いといてさ、村を案内してくれよ」

 

「案内? 何にもないよ?」

 

「そうなの?」

 

「だってほら……」

 

 周囲を指差した意味がわからないわけじゃない。

 でも、なんかあるんじゃないか? 

 

「こんな場所に何かあるわけないじゃん」

 

「じゃあ娯楽とか」

 

「娯楽? ……オルンペ、かなあ」

 

 随分と可愛らしい名前の娯楽があるようだ。

 

「寝起きだからアレだけど……少し経てばあっちでやる子がいるんじゃない?」

 

「へえ〜」

 

「……それまで暇が嫌なら、朝ごはん食べてく?」

 

「いいの!?」

 

「うん」

 

 だけど、よく考えたら俺ってばリュックの中に食料を入れて来た筈だった。

 アレの存在を隠しておくのは少々卑怯な気がするので素直に話した。

 

「へー! あ、じゃあ交換して食べようよ!」

 

 それは望むところだ。

 ただ与えられるだけというのは気まずいからな。

 

「あ、帰って来た。もう飽きた? ──って、何でフィナが?」

 

「これこれこういうわけで──」

 

「干物? あー、アレね! ウィルもよく食べてた!」

 

「リュックの中に大量に入れてあるから、取り敢えずね」

 

「いっぱい持ってきたの?」

 

「そんな目で見なくてもあげるから」

 

「やった」

 

 アナは味に覚えがありそうだったので果物系をあげたら大層喜んでいた。

 

「あまーい!」

 

「あたしもあたしも!」

 

 いつまでもアナの家にいても仕方ない。

 フィナの家に来ると、若干間取りが違った。

 可愛らしい小物も置いてある。

 この子達、名前は洋名なのに雪女だし和装なんだよな……家の中もほんのりそんな感じだ。

 

「この服? これはよく分かんないけど、生まれた時から作り方知ってたよ!」

 

「へー、いいじゃん。俺たちの世界に来たらそれで金策できるよ」

 

「アキヒロの世界か〜……」

 

 ホワイトビアードベアーなるモンスターの肉を焼いたものと俺っちの燻製肉を交換した。

 植物食のクマらしく、食べた麦が体内で発酵して常に酔っ払っているんだそうだ。

 頭蓋骨を見ると確かに歯が平たい。

 

「こんな獣をどうやって倒してんだ?」

 

「そりゃ凍らせて」

 

「?」

 

「私たちが何か思い出して?」

 

「……だからソフィアはあんな力を持ってたのか」

 

「ううん、ソフィアちゃんは特別だから違うよ」

 

 違うんだ。

 

「私たちの子供があの子しかいないからかもしれないけどね」

 

「なるほど……」

 

「だからさ! やっぱり子供を増やさなきゃ!」

 

 そこに行き着くか。

 

「それに私も子供欲しいし!」

 

「そっか」

 

「アナね、ソフィアちゃんを抱いてる時はすっごく幸せそうだったもん! ウィルと一緒にいる時もだけど!」

 

 尚更、二人に会ってあげてほしい。

 

「どうせ子供作るなら良い人がいいの!」

 

「なるほどなあ」

 

 一理あるなあ。

 

「私たち、どうかな? 顔とか……悪くはないと思うんだけど……」

 

「可愛いよ」

 

「っ! …………おお〜! 結構グッとくる! 男の子に言われるとグッとくるんだね!」

 

「そりゃよかった」

 

「可愛いなら、いいよね!?」

 

「よくない」

 

「えー……」

 

 確かに可愛いけど、普通に不倫で萎える。

 俺、不倫とか興奮しないんだよね。

 二股三股みたいなやつって何考えてるのかよくわからん。

 

「気持ちいいって聞いたのにな〜……」

 

 チラチラ、じゃなくて。

 そもそも誰から聞いたんだよ。

 

「ねー」

 

 ユサユサ、じゃなくて。

 

「私、あの話聞いた時からケッコーその気だよ?」

 

「あの話ね……」

 

「嘘じゃないんでしょ?」

 

「そりゃ嘘はつかないよ」

 

「そんな感じする!」

 

「ありがとう」

 

「うん! だからカッコいいなーって!」

 

 そう言われてもである。

 いくら誘われてもそういう気にはならない。

 相当キていればあるかもしれないけど、基本的に運動すれば発散されるのであまり心配してない。

 

「人助けだと思ってさー」

 

「人助けだからって何でもしてあげるような人間じゃないの」

 

 そういうアホなお人好しは、もう少し無知で無垢な人間がやるもんだ。俺はそこまで純粋じゃない。

 

「でも、人助けでソフィアちゃんを入り口まで運んできたんでしょ? それは何でもに入るんじゃないの?」

 

「俺がやりたかっただけだよ」

 

 結果的に俺の思惑通りになったし、帰れない場合を除けばかなり利己的な結果になった。

 

「カッコつけてる? ふふ、可愛い」

 

「うーん、この」

 

 子供が頑張ってる感があって、むしろ微笑ましかったです。実際子供なわけだし。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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