【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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97_オルンペ(可愛くない)

「オルンペ見に行く?」

 

「あ、そうしようかな」

 

「じゃあ、はい!」

 

「え」

 

「ご飯あげたんだから!」

 

「交換だったんですがそれは……」

 

 差し出された手を握れと。

 しかし、楽しそうに笑顔を浮かべるのを見るとそれでも良いかなという気にもなってくる。小さな手を掴むと、何かを強く振ったことなどないのだろうなという滑らかな肌と子供特有の温かさがあった。

 ……変態みたいな感想になってしまった。

 でも、ソフィアと同じ血が流れてると考えるとあまりにも温度差を感じる。

 

「えへへ〜、楽し〜」

 

「オルンペはどんな娯楽なんだ?」

 

「えー? ……内緒!」

 

 ネタバレなしで見る方が確かにいいかもと納得したけど、既に後悔し始めていることも。

 

「手、つないでる!」

 

「は、はやい……!」

 

「フィナ……抜け駆けしたんだね」

 

「一人だけずるい!」

 

「──待って! みんな、こっち来て!」

 

 不穏すぎる。

 全部が全部聞こえるわけじゃないけど、聞こえてくるワードの全てが俺を不安にさせるんだ。せめてもっと聞こえないところでやってほしい。

 ……いや、そもそもやらないでほしい! 

 

「ほら、こうなるんだって」

 

 男に飢えているのとは違う。

 単純な好奇心と、本能的な繁殖欲というやつが合わさった結果なんじゃないかという気がした。

 

「人間にとって、子供を作るってのは軽々しく出来ることじゃないんだよ。育てるにはお金がかかるからな」

 

「さっき服でお金稼げるって言ってたじゃん」

 

「長期的な話な。今すぐには……まあ、できるかもしれないけど、君たちの場合はもう少しややこしい問題があるから」

 

「ふーん。でも、ここから出られないんだったらお金の問題とかないよ? お金、ないもん」

 

「へ」

 

 もしかして:物々交換

 

「そうだよ」

 

「じゃあ誰からお金の概念教わったの? ……アナか」

 

「うん」

 

 道中はそんな感じで、顔を出した雪女達の発言で心を削られているような気分だった。オルンペなる謎の娯楽の集会場付近にやってくると、なにやらやかましい。

 

「何この音」

 

 娯楽にしてはあまりにも戦闘音というか……金属がぶつかるような音が連続して響いてる。

 

「ほら、あれだよ」

 

 それは一見して芸術的でありながら、実際のところとても暴力的だった。少なくとも近付くことは考えつかないほどに激しく変化している。

 

『はあっ!』

 

『てやっ!』

 

『んんっ!』

 

 2人の雪女が向かい合い、手をかざしている。

 現れた氷像は、その手に握った剣を振り上げ、ぶつけ合う。脆い氷製だ。それで砕け散り、即座に形を変えて今度は巨大な鳥の姿をとる。

 

『いけっ!』

 

 飛び回り、また真正面からぶつかると砕ける。

 今度は幾つもの球となってお互いの頭上から放たれた。

 

「これは?」

 

「これがオルンペだよ」

 

 名前からは想像もつかないほど激しい、というか危ないのではなかろうか。

 

「うん。でもこれやらないと制御できないから」

 

「制御?」

 

「私たちは生まれた時から氷を操れるんだ。でも、本当に何もしないでいるとそのうち力が自分の意思とは違うところで発動して全部を凍り付かせちゃうかもしれない。だから、こうして技をぶつけ合って訓練してるの」

 

「へー……ちなみに氷の力を使う時は寒かったりしないのか?」

 

「ちょっと寒いけど、そんなだね。ソフィアちゃんは寒い寒いって言ってたなあ」

 

 つまり、氷を操る力は雪女由来の力ということでいいのかね。でもソフィアは特別みたいな……どっちなんだろう。

 

「ソフィアちゃんは特別だから、あんまり私たちのこと参考にしない方がいいよ」

 

「やっぱりそうなんだ──うおっと!」

 

 氷塊、それも人間大のやつが弾き飛ばされてきてぶつかりそうになった。

 それを防いだのもまた氷で、いきなり目の前にオレンジがかった透明な壁ができなければ、正味な話潰れて死んでいたと思う。

 

「へっへー」

 

「本当に助かった」

 

「貸しひとつね」

 

 貸しがこれほど恐ろしく感じたこともない。

 というか、マッチポンプでは? 

 

「わざとじゃないよな」

 

「なにが?」

 

「……違うか」

 

 流石に、そこまで悪意を持ってことを運ぼうとする輩には見えない。寝込みを襲おうとした彼女ならあり得るかもしれないけど。

 

「あー、寝込みを襲われたの? あり得そうなのは……テッサとネイア、あとはアニスかな〜」

 

 やりかねないのが3人もいるという事実に戦慄していたら、オルンペをしていた2人が寄ってきた。

 

「アナタ昨日の人ね」

 

「…………きたんだ」

 

 やはりみんな顔立ちが似ている。

 そこは流石にお母様の娘──姉妹ということだろう。遺伝子があるのか知らないけど。

 ……子供作れるんだからあるか。

 

「こっちのがアニスで、こっちがミレーヌ」

 

 いかんな。

 もう嫌な予感がする。

 

「アナタは強いの?」

 

「え?」

 

「オルンペ」

 

「いや、俺は氷とか使えないから」

 

「あらそうなの。じゃあ武器は?」

 

「そもそも探索者じゃないから武器なんか使えないよ」

 

 アニスはどうやらアオキと同じタイプのようだ。

 気が強くて、戦闘に興味が向いている。

 それに、昨日の集まりにはきていなかったらしい。

 いいことだ。

 

「探索者のことはよく知らないけど……それならどうやってあの洞窟を抜けたの?」

 

「かがやける谷に入ったことがあるんだ?」

 

「輝ける谷? 人間はそう呼ぶのね」

 

「君たちはなんて呼ぶんだい? 単に洞窟?」

 

「ええ」

 

「俺があの洞窟を抜けられたのは、強い人たちに護衛してもらったおかげなんだよ」

 

「ふーん……じゃあアナタは強くないのね、残念」

 

 どうやらお手合わせを願いたいということだったらしい。ホンマごめん、無理です。

 あんな氷塊を操る人間と戦えません。

 

「それこそ、強い人と戦いたいなら俺たちの世界に来てみればいいじゃん」

 

「あの洞窟を抜けられないでしょ」

 

「まあそうだけど」

 

 俺も同じだ。

 仮に扉が復元されたとしても、もうかなりの時間が経っているはずだから撤退しているだろう。

 というか、この時点で分かってることだけど俺の子種を奪おうとしたのはアニスじゃないな。

 

「私より強かったら子供を作りたかったわ」

 

「そうでっか」

 

 ミレーヌは少しだけシャイなようで、おずおずとしているところを引っ張り出された。そのままでよかったのに。

 

「あの……お腹触ってもいいですか?」

 

 お前は何を言っているんだ。

 

「う、腕でも……あ! 胸でもいいです!」

 

 お前は、何を、言っているんだ。

 

「ふ、太ももでも!」

 

 お ま え は な に を い っ て い る ん だ。

 

「ミレーヌ、狂ったか」

 

「…………アニス、あなたはかまととぶってたけど……みんな見たんだよ」

 

「なにを?」

 

「この人の身体」

 

「──はあ!? なにそれ!」

 

 いきなり大声出し始めたぞ……! 

 あと、広めようとしなくていいんだよ。

 知らないやつには知らないままでいさせといてくれ。

 

「ずるい!」

 

 ずるくないぞー。

 

「私も見る!」

 

 ズカズカと近寄ってきて服を捲り上げようとするので、フィナの後ろに隠れた。

 

「ちょ、ちょっと、私を挟まないで……」

 

「フィナ! どいて!」

 

「いや、私は何もしてないんだけど……本人が嫌がってるんだからやめてあげたら?」

 

 人の裸を勝手に見たお前らが言えたことじゃないけど……そうだそうだ! 

 

「ずるいじゃない! 私だって見たい!」

 

「さっきは興味ないって顔してただろ!」

 

「不公平よ!」

 

「公平不公平の話するなら、そもそも俺の裸を勝手に見るのがおかしいんだよ!」

 

「は、はだかあ!?」

 

 あ、やべ。

 

「アナタ達、裸まで見たの?! ……絶対に見る!」

 

 最悪は氷漬けにされてまで見られそうで非常に怖かった。もういいんだよそういうの(氷漬け)は、ソフィアで満腹なんだよ。

 どうするか一瞬だけ悩んで、ある諺を思い出した。

 灯台下暗し。

 そうだ、最接近してしまえばいいんだ。

 いや、意味は全然関係ないんですけどね。

 身近にあると案外気付かないとかそういう意味なわけで……フィナの後ろから駆け出したらビビって止まってくれたので、その隙に羽交締めにした。

 

「ふぅ……これで安心だ」

 

「おほっ」

 

「おほっ?」

 

「──も、もう少し強くしないと逃げ出しちゃうわよ!」

 

「む……」

 

 もぞもぞと動き出すので、やむを得ない。

 本人が抜け出せるというんだから実際そうなのだろう。

 

「これならどうだ!」

 

「ふひっ」

 

「ふひっ?」

 

「…………ふんっ! いつまでもそうしてないと簡単に逃げ出しちゃうわよ!」

 

「ええ……」

 

 あんまり強くしすぎても痛いだろうし、弱すぎたら逃げ出して俺の身体を狙い始める。嫌すぎるな、この状況。

 

「フィナ、なんとかならないか?」

 

「え? うーん……貸しひとつでいいよ!」

 

「しゃあんめえ」

 

 かくしてアニスは退場となった。

 助かりマンタ! 

 

「あ、あの……」

 

「あ」

 

 そっちを忘れてた。

 

「腕なら……いいですか?」

 

「まあ腕くらいなら……」

 

 筋トレしていて、良くなかったかもと思う日が来るとは思わなかった。

 ミレーヌは恍惚とした表情で俺の腕を触っている。

 ついでにフィナも。

 

「あの……ちょっと力込めてもらってもいいですか?」

 

「ああ、うん」

 

「! ……う、うわあ、硬い……カチカチだぁ……」

 

 右手で俺の腕をブレないように支えて、左手で表面を何度も摩っている。時折、自分の腕を擦り付けたり頬撫でずりしたりしてくるのが非常にこそばゆい。

 

「あのあの、お腹、ダメですか?」

 

「……一つ言いたいのは」

 

「ひゃっ、ご、ごめんなさいワガママ言いました!」

 

「俺は人間だから、この気温で身体をこれ以上に晒すと命の危険があります」

 

「ええっ!? 早く私の家に行きましょう! ほら、早く! 温まらなきゃ!」

 

「え、何いきなり……」

 

 腹を晒したくないアピールなんですが。

 家の中でならいいよという意図は含めてないんですが。

 

「ねえ、2人一緒だよ〜」

 

「おい」

 

 いきなり裏切らないでいただきたいんですが。

 

「諦めたなんて一言も言ってないよーん」

 

 アナの言う通りだった。

 コイツら、諦めが悪いんだ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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