【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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98_魔力放出(技能)

 ミレーヌの家にやってきた。

 とても暖かい。

 どうやら暖炉が用意されているようだ。

 すでに薪がくべられて、さらに勢いよく水分がはじけていく。そこに手をかざすとさらに温まって心地よい。不在時も火を着けているとは不用心だが、冷気を操る彼女達にとっては危険でもなんでもないのかもしれない。

 

「あー寒かった……」

 

「ええ〜? 今日はそんなだよ?」

 

「だから言ってるだろ、人間は寒さに弱いんだって」

 

 春からいきなり真冬みたいな感じだから、風邪ひいてないのが奇跡だ。鍛えてようがなんだろうが、疲れてたら人間は簡単に体調崩すからな。

 

「あの……お腹……」

 

「お腹そんなに見たいの?」

 

「で、できれば……あっ!」

 

 何? 何に気付いたの? 

 

「アキヒロだけ脱がせるのは不公平ですよね……わ、私も脱ぎます」

 

「脱がなくていいから」

 

「え? でもそれじゃあお腹が……」

 

「どんだけ見たいんだよ」

 

「……ど、どうすれば見させてもらえますか? なんとか……やっぱり私も脱げば……」

 

「扉をもう一度出現させるのを手伝ってくれれば、かなあ」

 

「やります」

 

「え」

 

「やります」

 

「お、おお……頼もしいけど、そんな簡単にできるものなの?」

 

「お母様に会いに行きます」

 

 できるの? 

 神様疑惑のあるお方に会いに行けるの? 

 

「ここからサンテ川の方に一週間、ルイニエ村を越えてメノール湖をなぞるように二週間、そこからチルクッピ山を──」

 

「待て、待ってください」

 

 嘘だろ? 

 まず地名が一つも覚えられなかったし、そんなに時間かかったら死亡認定されてるだろ。

 ……あ、でもソフィアのお父さん(ウィル)がここの事知ってるんだから、生きてる事は伝えてもらってるかな…………尚更心配させてそう。

 

「あの……?」

 

「ちなみに扉は他の方法で再作成できないのか? なんか魔法とか異能とかで」

 

「さあ……出来るとしたらお母様だけしかいないかと……」

 

 マジか……やるのか? ここから数ヶ月の大冒険が始まるのか? 実質一年掛かりくらいの旅が……キツイぞ。

 旅そのものは良いけど、それって留年確定みたいなところある。あれ? 留年あったっけ? 

 流石にまだ学校のそういう制度は調べきってないぞ。

 帰ったら速攻で調べよう。

 帰れたらの話だけど。

 

「すりすり〜」

 

「うおっ」

 

「うわー、めっちゃ気持ちいいー! ずっとすりすりしてたい!」

 

「やめーや」

 

「えー? だって黙ったまんまだからさぁ……外の男の子ってみんなこんな感じなの? うわー羨ましいなあ外の女の子……」

 

「それは違くて、俺くらい真面目に筋トレしてるやつなんて他に見たことないぞ」

 

「ふーん……それ言われたら益々狙いたくなっちゃうんだけど……いいの?」

 

「はっ!? は、ハメられた……」

 

「いや、自分から言い出したじゃん。でも……へへへ〜、そっかそっか〜、このお腹を楽しめるのも今だけの可能性があるってわけね〜」

 

 64分音符ぐらいの速さで腹を撫で回す手は、もはやくすぐったいっていうか摩擦で熱くなってくるくらいだった。凸凹を触られてる感覚がありますよー。

 

「フィナ……!?」

 

「ミレーヌはさぁ、もうちょっとグイグイ行ったほうがいいよ? 私の予感だけど、男の人が来てもそんなんじゃみんな取られちゃうよ?」

 

 ねえ? みたいな顔で見られてるけど、別に同意とかはない。

 

「ず、ずるい……! 私だって……触りたい……!」

 

 本当に最低なセリフだと思う。

 俺の意思とかガン無視だもん。

 

「ほーら、お腹だよ〜」

 

 勝手に服を捲られて、勝手に腹を見せつけられた。

 鍛えてて良かったけど良くない。

 いや本当に。

 なんの時間だよこれ。

 

「あのあの……触ってもいいですか?」

 

「協力してくれた後ってさっき話したじゃん」

 

「そ、それはでも、それを言ったらフィナだって……」

 

「別に許可とか出してないし」

 

 貸しがあるから取り敢えず受け入れているだけだ。ここで黙っておけば、後で、借りを返して──って流れになった時に使えるからな。

 

「むぅ……あっ! えっ!? 扉があんなところに!」

 

「マジか!?」

 

「す、すきあり……!」

 

「おわっ」

 

 視線誘導にまんまと引っかかってしまった。

 まさかこんな古典的な手に引っかかるとは、自分が自分で恥ずかしい。でもさ……この状況で扉があるとか言われたら中々無視できなくない? 

 

「う……へへ……私のと全然違う」

 

 後ろがベッドだったから良かったものの、椅子とかに後頭部ぶつけてたら昏倒してたぞ。

 

「ご、ごめんなさい……お詫びに私のお腹とピターってします」

 

「!?」

 

 腹に感触が! 

 感触が! 

 これお腹じゃない! 

 まずいですよ! 

 

「脱ぐな脱ぐな!」

 

 和装なのに脱ぐのが速すぎる。

 目にも止まらぬ、くらいには速かった。

 まだ服が宙に浮いとるがな。

 

「へへ……その気に……なっ、なりました?」

 

 おっとりしていて騙された! 

 コイツもやっぱり雪女の1人だ! 

 …………いや、雪女ってそういうイメージじゃなくない? 

 それってサキュバスじゃない? 

 

 ……なんて考えてる場合じゃない。

 

「う、わわわ……お、押し倒されちゃった……」

 

「んなっ!? ミレーヌだけに抜け駆けは──」

 

 とりゃあっ。

 

「うわわわわわ」

 

「…………おお〜」

 

 パチパチパチと、全く嬉しくない拍手が鳴った。

 ベッドの上には今し方脱いだばかりの和服でぐるぐる巻きになったミレーヌがいる。いる、というか俺がグルグルにしてやったんだ。

 

「…………満足です……むふ〜」

 

 グルグル巻きでも凄く満足そうなのが腹立つ。

 腹が少し湿っているのが嫌だな……

 

「さわさわさわさわ」

 

「いい加減やめなさいと」

 

「ちぇー」

 

 なるほど確かに、油断ならない相手だ。

 今の俺は、ピラニアの群れの中に放り込まれた新鮮な肉だと考えたほうがいいのかもしれない。

 

「えー、もしかして好きな人いるのー?」

 

「だから結婚してるんだって」

 

「結婚って別に好きな人とじゃなくても出来るでしょ?」

 

「俺は好きな人とするよ」

 

「ふーん……めんどくさいんだね人間って。もっとシンプルに考えればいいじゃん」

 

「シンプルに考えてばかりだと淘汰されるぞ。複雑な社会を作って外敵から守る仕組みにしてるんだよ」

 

「それがめんどくさい!」

 

 人間の弱さというやつを知らないようだ。

 ……他に知っているのもソフィアのお父さんだけだし、本当に知らないのかも。

 

「人間は弱いからそうやって繁栄してきたの。はい、この話おしまい」

 

「はーい」

 

 ミレーヌの家の地下にはキノコを育てる部屋があった。雪下でよくもまあこんなところを作ろうと思ったな。

 

 マダラ模様。

 真っ白。

 燃えてる。

 臭い。

 

 逞しく地下で育つ様々なキノコは、彼女が丹精込めて育てているらしい。キノコってそういうのだっけ。菌糸だけ培養のアレソレに突っ込んで湿度管理して、みたいな感じだった記憶があるんだけど。

 

「う、うん、キノコはね。こうやって──」

 

「!?」

 

 手をかざすと、ミレーヌの手のひらから水色の粉? みたいなのが出てきてキノコにまぶされる。ソレを受けて喜びの意思を表明しているのかキノコが身を動かすと、少し大きくなった気がした。

 なんで? 

 

「今の粉は?」

 

「こ、こな……粉じゃ、ないです。今のは魔力、です」

 

「ま、ままままま魔力!? ──あ、魔素か」

 

「え?」

 

 そうか、場所によって魔素の呼び方も変わるのか。

 そもそも魔素ってなんなの論が蒼連郷でもあるわけだし、それを魔法として捉えたり超能力として捉えたりと解釈が分かれるのも当然だ。

 

「あ、私知ってる! そっちでは魔力のこと魔素って言うんでしょ?!」

 

「その筈だけど、俺たちは魔素を自由に放出とかできないかな」

 

「えー! 初めて知ったー!」

 

 コロコロと笑う姿を見ると、10歳くらいな気もしてくる。しかしアナ曰く15だというし、やっぱり環境のせいだな。もう少し色々と学べる環境ならこの子はもっと強かに育つはずだ。それがいいかは置いといて。

 こういう無邪気さを保ったまま育って欲しいという、キモい親心の亜種が俺の中にもあるんだ。

 

「お、教えてあげましょうか……?」

 

「え? 俺もできるの?」

 

「魔素と魔力が同じものなら、同じように扱えるはずです」

 

「ふ、ふーん……」

 

 興味ないけど。

 別に興味ないけど、教えてくれるって言うなら教えてもらおっかな〜。

 うそ、めっちゃ興味ある。

 

「その……代わりに……」

 

「はいはい腹筋ね」

 

 取り敢えず筋肉に触りたいミレーヌと、謎の技術に興味がある俺。やっとこさ需給が釣り合ったな。

 

「へへへ……へへへへへ……」

 

 取り敢えず気が済むまでお腹をさすさすさせろということで、小一時間ベッドの上に寝かされた。なんだかなあ……この時間があれば村の人に話ができたんじゃないかなって思うけど、全員この調子なら最初にやっちゃうのが一番早い。

 

「…………」

 

 最後の方には涎を垂らして腹筋から離れなくなってしまった。時折ジュルルって音がする。

 正直不快だ。

 だけど、俺たちが犬吸いをするのと同じようにそういう生態の生き物だと思えば多少は気分もマシになる。

 

「もういい?」

 

「……はっ!? い、意識を失ってました…………あの、できれば一度だけ肌を重ねたいんですけど……」

 

「飛躍するねえ!?」

 

 シナプスどうなってんねんと驚かされてばかりだ。

 さっきも言ったけど──というわけでそれは断らせていただいた。

 早速の話で、魔力の操り方とやらを教わることに。ミレーヌ先生の前に座り、雪の黒板に描かれる絵から学ぶ。ホワイトボードやないか! 

 

「えっとですね……ここに心臓がありますよね」 

 

「はい」

 

「心臓に集中してください」

 

「……はい」

 

「もっと」

 

「…………」

 

「集中すると感じませんか? 胸の辺りにモワモワってしたものを」

 

「感じません」

 

「初めてですからね……ちょっと失礼します」

 

 ミレーヌの細い腕が正面から背中に向けて回った。体格の差からか密着しないといけないようだ。

 

「んっ、かたい……」

 

「……」

 

「あぁぁすご……んんっ、今から魔力を流すのでびっくりしないでください」

 

 魔力を流す、とは。

 魔力もとい魔素を他者から与えられてなにかなるのだろうか。そもそも魔素ってそういうことできるの? 

 

「……うぐっ」

 

 プロの話は聞くべきという常識に則り、ミレーヌの胸から俺の胸へ目掛けてピリピリするものが放たれていた。超強炭酸を肌で味わっている感じだ。

 確かにこれは痛いといえば痛い。だけど怖いのは痛みそのものじゃなくて、魔素を急に体内に入れすぎると肉体が変異すると言われていることだ。事故例としてちゃんと学ぶからな……

 

「感じますか?」

 

「うん」

 

「その感覚を覚えててください」

 

「分かった」

 

 ミレーヌはゆっくりと離れていく。

 

「……」

 

 また近づいて来た。

 

「……」

 

 上目遣いだ。

 どこかウルウルとしている瞳は、一体どういう意味を持っているのか。

 まるで分かりません。

 

「魔力は?」

 

「あ……はい……」

 

 再び心臓に意識しろと言われた。

 しかし、二度目でもよくわからない。

 さっきのピリピリとした感触を思い出せということなんだろうけど、どう再現するのかが全くピンと来なかった。

 

「あの……?」

 

「いや、どうやってあのビリビリをすればいいのかまるでわからないんだけど」

 

「……それが分からないと流石に伝えられないかもです」

 

 そこは前提の技能というか感覚というか、他者が教えるのはかなり難しいようだ。コーチングのプロなら上手く教えてくれるのかしら。

 ちょくちょく話に出てくるお母様とか。

 

「人間には無理なんじゃないかな」

 

「そうかも……?」

 

 フィナはこの(かん)、ニコニコと笑みを浮かべるばかりで一言も発しなかった。何か彼女からの助言とかもらえればありがたい。

 

「んーん、私そういう難しいのよくわかんない」

 

 確かに、彼女はこういう細かいことは気にしなさそうだ。感覚で全てを済ませるタイプというべきか。こうなると、挨拶がてら村を回ってみるしかないかもしれない。それこそ脳筋疑惑のあるアニスは詳しいかも。

 

「じゃあまわってみよっか!」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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