【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「さわさわ」
「さわさわ」
「さわさわ」
「さわさわ」
「さわさわ」
結局こうなるのか……というのも雪女の家を訪れる度、或いは出くわす度に魔力の使い方? とやらを教えてもらおうとした。そうしたら教える代わりにとか、挨拶としてとか、目が合ったからとか、もう最終的には理由とかなんでもいいやとばかりに俺の身体の話になるんだ。
生き延びたら技術として有用そうだったから我慢はするけど、真面目に教えてくれる気配がない。
複数対1だとどう考えてもグダグダになるから一対一でやった。
『うあああ我慢できない!』
道端で初っ端飛びついてきたり。
『ま、ままままずはお風呂に入らない!?』
立っているところに話しかけただけでキョドッて話がズレたり。
『魔力の使い方よりも子供の作り方の方が大事だと思うんだよ。だって私たちはお母様から生まれたけどさ、結局はお母様の似姿であって生物として不完全じゃん? それが人間と交わることで初めて生き物として価値あるモノ──子供を生み出すことができるわけでしょ? あ、もちろん私が男の人とエッチしたいからとかそういうわけじゃないよ? あくまでコレは種全体の保護に必要なこととして絶対的に正しいからであって、それが私とあなたじゃなくてもいいもん。でもソレは男の人が十分な数いる場合の話で、実際は男なんてアナタしかいないし、今男の目の前にいるのも私だけ。つまり、高効率かつ時短で子供を作ろうと思ったら私たちがイチャラブエッチをしまくる事が必要になってくる……でしょ? だからほら、アナタも服脱いで』
扉を開けたら高速詠唱を使いこなす痴女だったりした。村を巡るだけで3日もかかったぜ。
「みんな……頭いっぱい、だね……」
「そりゃそうだよ、私も気持ちはわかるもん」
ミレーヌとフィナって聖女なのかもしれないと、トチ狂った事を考え始める程度にはこの村は本当に狂っていた。やっぱり生物は男と女が揃って初めて成立するんだなってな感じに、種の進化にも納得がいったね。
「うーん……あとはテッサか〜」
残されたのはテッサという雪女1人。
アニスには初見以降、出会えなかった。
嫌な予感8割。
期待2割。
その少女がいるのは、温泉地だった。
近くの火山から源泉が流れてきているらしく、それに浸かっているのだそうだ。
「──あっ!」
「あ、やっぱり」
テッサ。
彼女こそが、俺の子種泥棒未遂犯だった。
なんて酷い罪名なんだ……
「もしかして……2人と混浴しにきたの!?」
「いや、少し聞きたい事が──」
「えーずるーい! ソレならなんで断られたのさ! もしかして、そんなに襲われるの嫌だったの!? じゃ、じゃあはい! プカーって浮かんでるから! 襲っていいよ! はい! あ、襲うとかそういうのが嫌な可能性も!? じゃあほら、私はバッチグーです!」
「魔力の操り方を教えてほしい」
「…………え?」
温泉でのんびりしていたところすみませんが、というわけで彼女には服を着てもらった。ホカホカのまま、近くにある小屋に入る。
「ふーん? ミレーヌがね〜」
「……別に、いいでしょ」
「そーだねー。でもアキヒロ、魔力の使い方なら私も教えられるよ。どーせミレーヌは心臓がーとか胸がーとか、即物的な解釈で意味を崩しちゃったんだろうけど私はもっと正確な表現できるもん」
月並みな表現をすると、テッサは頭が良いらしい。
「そうじゃなきゃ人の家にこっそり入り込めないし」
「あれって魔力を使ってなんかしてたのか」
「うん」
「俺がいきなり寝落ちしたのは?」
「ソレは知らないけど、アナがお
どうやら俺は、アナにもう一度感謝をしないといけないらしい。
「さーて、まずは……アキヒロがどこまで理解してるかって事かな〜」
「どこまでって?」
「うん、そもそも魔力を操ってるのは何かって話」
まさかこの世界ではソレがわかっているのだろうか。
それなら是非、ご教示願いたい。
「ううん、ちゃんとは分かってないよ。でもほら、性質を考えるとある程度推測はつくじゃん?」
「脳、心臓、精神、魂」
「うわっ、教え甲斐無さすぎ」
でも末端とか他の内臓に特別な意味があるとは思えないから、この結論に至るのは仕方ないと思う。
この四つからどう絞るんだろう。
「大事なのはどれって決めるんじゃなくて、どこから動かしてるかって事を身体に覚えさせること」
「……人によって変わるんだ?」
「変わってるのかな。受け取り方の違いでしかないと思うけど」
つまり厳密な推定じゃなくて、どこで動かしているかは自分の納得のいく形で覚えるしかないってことか。民間な感じのするやり方だな。先生もいない中でソレを編み出したのは画期的なんだろうけど、根源を追っていかないとあぶれる人も普通に現れそうだ。
「ほら、じゃあベッド寝て、身体ダラーンってして」
その言葉に従うと、胸の真ん中に手を当てられるのを感じた。
「この感覚をちゃんと覚えてね〜」
先ほどもやったクダリではある。手から流れ込んでくる、粒状の電気とでも呼ぶべき刺激が体内で弾けた。
ソレがどこで最も感じられるか──手の位置が近いんだからそりゃあ心臓だ。
ビリビリと流れる度に激しく鼓動を打ち、汗まで出てくる。
これ、不整脈かなんかで死なないよな?
気分が悪いとかは……今のところない。
「覚えた?」
どれのこと?
心臓に一番きてるっぽいけど、コレ合ってる?
心臓発作で死なない?
「ほら、練ってみて」
「練る」
「そう! 今の感覚を感じたところから何かが溢れてくるような感じで!」
血をイメージすればいいのか?
ソレとも電気をイメージすればいいのか?
よくわかんないけど、とりあえずどっちもやってみるか。
「…………」
どうやら俺には魔力を感じるセンスがないようだ。何も、本当に何も感じない。自分の心臓の音が聞こえるなーってくらいだ。
ゲームのセンスもないし、そういう右脳的なところがそもそも弱いのかもしれない。
いや元々の肉体と違うじゃん──というツッコミを自分にしたことはあるけど、記憶が脳みそ準拠じゃないので実は性能もそういう感じなのかも。
「あれ?」
「ダメでした」
「ええ? おかしいなあ……みんなコレで分かってくれたんだけど……」
「そのみんなって雪女?」
「そ、そりゃそうだよ! だって外の人間来ないんだもん!」
あんな化け物ドラゴンがいるダンジョン、ドラゴン自ら案内してくれなきゃ来られるわけねえだろ。ソフィアのお父さんみたいに一級探索者だったら話変わるんだろうけど、それでも、こんな目立つダンジョンで生き残ってる時点であのドラゴンの強さも分かろうというものだ。
ちょうど拮抗しているくらいなのかな。
「私だってもっと外の人間の身体のことがわかればちゃんと教えられる筈だもん!」
テッサとミレーヌ、この二人が雪女の中で一番偏差値が高そうで、その二人が無理だってんだから無理なんだろう。
「まあ、人間と雪女じゃちょっと違うんだから仕方ないな。今回は諦めるよ。二人ともありがとう」
「え! じゃあ、お礼にエッチしてよ!」
「しません」
それはそれ、これはこれ。
「そのうち来る人も増えるだろうし、そこまで頑張って。歳取らないんだろ?」
「今はそうだけど、そのうち年取るかもしれないじゃーん……可愛いうちに色々楽しんでおきたいの!」
「じゃあ外の世界に来れば?」
「アナが体調崩すよーって言ってたんだよね。だから、できるだけこっちきてほしいなって」
「そうか……まあ、あんま拘らない方がいいよ。俺がもし帰ることができて、テッサが俺の世界に来られたら案内してあげるからさ」
「分かった!」
本当に素直な種族だなあ。
しかし、これでやれることはなくなってしまった。もうアレしかない。
一年掛かりの大旅路。
防具、そして荷を入れる袋は深山商会から暫く借りパクということになってしまうけど、仕方ないね。
……すまんエリック! 帰るの遅くなるわ! 良いよな別に! 20年くらいかかったらマジごめん!
「──テッサ!」
「アニス!? なんでここに!」
「ここにアキヒロがいると聞いたわ!」
そんな話聞かなくて良いんだよ、別に友達でもないんだから。
「みんなに腹筋を触らせてるらしいじゃない! なんで私だけ仲間外れなのよ!」
「そういう言い方はやめてくれ。まるで俺が、好きでみんなに腹を触らせているみたいに聞こえちゃうから……」
「そうでしょ!」
「言い切るね」
「なんで私だけ断られたの? 納得いかないわ」
魔力操作の話をすると、勢いよく立ち上がって胸を指差す。
「私ならきっと教えられるわ!」
「まあ、そうなるよな」
「むう……無理だと思ってるわね!」
「そんなことないけどさ、今じゃなくても良いかなって」
数ヶ月頑張って家に帰って、数十年くらい経った後に『あーなんかそういうのあったなー』ってぐらいな感じでいい。
人の繋がりの素晴らしさを感じたばかりなので、特別な力がなくても良いのだ。
「やっぱり私だけ除け者じゃない! そういうのよくないわよ!」
「さっき辞めようってなったばかりだし」
「…………」
気が強そうなのに打たれ弱いらしか、シュンとしてしまった。
ちなみに一つだけ言うと、可哀想とか全く思わない。彼女のせいじゃないけど、もう腹筋いじられるのしんどいんだわ。
「じゃあ、出発の準備しようかなあ」
「──ちょ、ちょちょちょちょっと待って!」
この子達、こういう言い回し好きすぎない?
「本当に私だけ除け者!?」
「除け者じゃないぞ。一人だけ変なことしなかったんだからむしろ褒められるって」
「うれしくない……こ、こうなったら!」
「!」
身構えたけど、アニスはどこかへ消えていくだけだった。やってくるのが突然なら、帰るのも突然だな本当に。
「旅するんだ〜……へ〜……」
フィナはピョンコピョンコと跳ね回り、何が面白いのかニヤニヤとした笑みを浮かべている。テッサとミレーヌもコソコソ話して、なんだか嫌な感じだ。こういう時に男が混ざろうとすると大抵は『男の子はダメ〜』ってな具合に弾かれるんだ。
彼女達のコミュニケーションの文脈にその陰湿さがあるかはわからないけど、居心地が悪い。
「とりあえず、そのなんとかって村とか川とか超えていけばお母様に会えるんだろ? それなら、簡単な地図だけくれれば大丈夫だ。あとは……モンスターがいても多少なら問題ないからな、うん」
今は着けてないけど、アナの家に置いてあるモノを装着していれば寒さや熱、多少のモンスターにやられることはない。やっぱり備えあれば憂いなしだ。多分あの巨大なドラゴンに対しては紙くらいの意味しかなかったけど、こういうところなら十分に性能を発揮してくれる。
「…………えっ? …………えっ……?」
「なに?」
「ほ、本当に一人で行く気なの?」
「何を今更……旅ってそういうもんだしょ」
家族旅行じゃないからな。
ロイス達もいないし、無い物ねだりはしない主義だ。
「ミレーヌは?」
「え? ああ……まあ、大丈夫だよ」
そんな本気にするわけないじゃん。
この村から離れて旅とか……
「──わ、私! 行くつもりです!」
「え? 普通に長旅だけど?」
「そ、それでもです……」
「腹筋のことならもう良いけど」
「そうじゃ、ないです……付いていきたいだけです」
それこそあまり共感できなかったけど……一つだけ予想できることもあった。
「旅の中で仲良くなりたい的な、そういう話?」
「ぎくっ」
「残念だけど……そうはならない」
「……わ、わからないじゃないですか」
俺が彼女達とそういう関係になることはないだろう。もちろん彼女たちに限った話じゃないけど──仮の話として、誰かと子供を作ってしまえば縛られる。そうなったら本来出来ることも出来なくなってしまう。
「……分かりました」
「ほっ……」
「ソレは期待しないので、純粋な気持ちで付いていきます」
「ええ……」
何がそこまで彼女を突き動かすのかがまるで理解できなかったので理由を尋ねると、この村には娯楽が少なく刺激がないので退屈だからということらしい。村一番の引っ込み思案みたいな面しといて、中々骨のあるやつだな。
普通に気に入った。
「分かった、一緒に行こう」
「……やった」
『!?』
何故かフィナとテッサが驚いていた。
ミレーヌは置いていかれると思っていたとかなんとか……まあ、ね。大事なのは中身ですから。
「じゃ、じゃあ私も行くよ!」
「私も! この中で一番お母様の言葉をうまく解釈できる私がいないのは損だよ!」
「私はお料理上手な自信あります!」
そう考えるとミレーヌは何が出来るのだろうか。
「えっと……薬草とか、分かります」
バランス
ちなみにモンスターと戦った経験は?
「あるよー」
「ないです」
「あるっ!」
ミレーヌ以外あった。
俺もないからツーツーでバランス良いね。
「へへ……お揃い、ですね……」
あんまり嬉しくはないかな……しかもミレーヌだってやろうと思えば魔力操作とか異能とか使える。俺がぶっちぎりで下じゃん、男なのに。
…………!
「なあ!お母様なら俺に魔力操作も教えてくれるかな!」
「当然じゃん! お母様は優しいもん!」
「それは……マジで会わなきゃなあ」
「なんでいきなり? 魔力操作諦めたんじゃないの?」
「いや、魔力操作ができれば俺の夢が近付くなって……」
早くお母様に会おう。
時間がかかるだけかと思ったけど、とんでもなく大事なことに気付いてしまった。
魔力操作、絶対に身に付けないと。
そういうわけで次の日を出発として、一度だけ温泉に入ることにした。もっと早く教えてくれりゃ良いのに。
「うぃ〜……」
これこれ、声が出るね。
温泉もまたジャパニーズ魂を刺激する要素の一つだ。
酒を浮かばせて飲みてえ〜。
「う〜」
「うー? …………うー……」
テッサだ。
寝込みを襲う行動力の持ち主だ。
危険人物だ。
「そ、そんな目で見ないでって……私も学んだから! 寝込みは襲わない!」
分かるぞ……ルールブックに書かれていなければなんでもできると思っているタイプだ。天才肌だけど社会への適合性は低くて、スペックでなんとかしようとする奴はこの傾向がある。まあ、この村に生まれてよかったな。
「あへへ」
「……元気だなあ」
「えいっ」
「ダメです」
「ちぇー」
いきなり握ろうとすんな。コレがロイスだったら泣いてるぞ?
「ねえねえ、これだけくっついたらドキドキしないの?」
「うーん……心は温まるかな」
可愛い女の子が仲良くしてくれてるのはとても嬉しい。
悪意を持って、あるいは嫌悪感と共に弾かれることの百万倍良い。ただ、手を出す気にならないだけ。
「変なの〜」
「……よいしょ」
「う、うわっ……」
横に密着しているのを前に持ってきた。
途端に肩がギュッと強張る。
「な、なんだろこれ……身体動かないや……」
「なんだよ。自分からは行けるのにこっちから行くと引いちゃうんだな」
「あう」
「ふぅ…………」
テッサを揶揄って遊んでいると、そのうちフィナとミレーヌまでやってきた。
「寒さ耐性がすごいね君たちは……」
裸で小屋からここまでなんでもなく歩いて来られるんだから、本当に違う生命だと分かる。痩せ我慢じゃなく、手を触っても暖かさがあった。
「テッサ……どいてね」
「え──うわっ」
「はい私の場所ー!」
俺の胡座の上はおまえのばしょですか。
いいえ、誰の場所でもありません。
「フィ、フィナ! ミレーヌ!」
「テッサってそういうところあるんだね! 初めて知った!」
「……ぶくぶくぶくぶく」
温泉の中に沈んでしまったテッサはともかく、このタイミングでやってきた二人の真意は視線に現れていた。
「なるほどな……」
女が胸を見られる視線に気付くということがよく理解できた。隠す気もないようだ。
「わー!」
しゃしゃしゃしゃと全身を撫で回す感触は、100%の不純さに満ちていた。
まあ、少しの間なんだからこういうのも旅の思い出とすればいっか。
「すごい角ばってるよね! アキヒロの身体!」
「俺っていうか、男の身体は角ばってるもんだよ」
「筋肉は〜?」
「まあ俺だな」
「ひゅーひゅー!」
「はは……なんだそりゃ」
「あー楽しみ!」
そうは言うけど、聞きたいことがあった。
「フィナは、この村を離れて寂しいとかないのか?」
「え? ……別に?」
雪女全員が家族なのかもしれないけど、ソレは離れることを厭う理由にはならないらしい。
「同じところにずっと留まってるのはさ、やることがないからなんだよね。ねっ、ミレーヌ」
「……うん、そうだね。旅をする……どんな感じなのかわからないけど、すごく楽しみ、です……」
どうやら旅に対してポジティブに捉えているらしい。
それはとても喜ばしいことだった。
「なんか嬉しそうだね」
「楽しい旅が出来そうだなって」
ソレは本当。
「おー! ──ね、ミレーヌ、絶対アキヒロって私たちのこと好きになるよね!」
「……うん」
小生意気な娘達をかわしつつ、のぼせない程度に温泉を楽しんでいたら逆に3人がのぼせてしまった。
「きゅう……」
「なんっで……雪女が……のぼせてんだよ……!」
小屋に運ぶのだって、温泉に入った後となれば面倒臭く感じるってものだ。汗かきたくないもん。
ミレーヌ、テッサとせっせと……せっせと! せっせと運んであとはフィアを、というタイミングでアニスがやってきた。
遠目の時点で憤っているのがシルエットから分かる。あと、なんかごちゃごちゃに背負ってる。
「また仲間外れ!」
「今度はどうしたよ」
「旅に出るんでしょ!」
「ああ、聞いたんだ」
「私も行く!」
この子、最初のイメージと違って勢いで突っ走るタイプなのかもしれない。だからガチャガチャ背負ってたのか。
「ほら! これだけ準備してくれば私も付いて行っても構わないでしょう!」
4対1ィ〜?
バランス悪くね?
「な、なんで私の時だけいつも反応悪いの!?」
「3人までなら分かるけど……そんなに集まるならテッサとアニスで組めばいいんじゃないか?」
「アイツと!? なんで!?」
アイツ呼びとは、何か確執があるのかしら。
「…………」
「まあ事情は聞かないけどさ、そんな大人数で行くような旅じゃないよね……」
「……!?」
「ふぅ」
「な、なんで温泉に……今、入ったばかりなんじゃないの?」
「それがさあ、3人とものぼせちゃったから運ばないといけなくて……汗かいちゃったよ。だからもう一回入っとこうかなって」
あまり浸かるつもりはなかった。
ふやけちゃうからそこそこにな。
「──し、失礼するわね」
「良い湯だな」
「でしょ?それに、源流の火山では希少な鉱石も取れるのよ」
「へぇ、何に使うんだ?」
「包丁とか作るじゃない」
「あー! あれ、自分たちで作ってるんだ」
「ううん、アレをドワーフに渡して作ってもらうの」
「ドワーフ! ドワーフもいるのか! そりゃあすげえな」
「彼らがどこから来るのか分からないけれど……定期的にね」
「ドワーフとは子供作りたいとか思わないのか?」
「チビじゃない」
「選り好みするなあ」
「あなただってするじゃない」
「まあな」
ドワーフか……いつか会ってみたいな。
チビって言ってるし、短足でずんぐりで力が強いんだろうなあ。
それに、あの謎の子供も気になる。
「あなた……普通の人の生き方をする気がないのね」
「え?」
「そういう人のこと、生き急ぎって言うんでしょ」
「うん」
「普通に認めるんだ……」
「人生、少し急ぐくらいじゃないと間に合わないぞ」
「そういえば何歳なの?」
「86歳」
「──へぇっ!?」
「ははは! 本当は16歳!」
「何その嘘……でも、一つ上くらいなんだ」
「そう。うーん……話すとアレだな、アニスも来てくれた方がいいかもな」
「!」
なんか、メリハリがつきそうな感じがする。
「う、嘘じゃないわよね!?」
「うん」
旅は道連れ世は情けだ。
「……のぼせそうだから先に出る」
「え……ちょっと早くない? も、もうちょっと話しても……」
「ここで倒れたらいつのまにか童貞失ってそうだからな」
「そ、そんなことするのテッサくらいだから!」
「はは。おやすみ」
「……おやすみ」
アナの家に戻ると夕飯が用意されていた。
母ちゃんじゃん。
「おかえり〜」
「ただいま。至れり尽くせりだな」
「果物少しもらったよ」
「ああ、はい」
食べるもの食べて、出すもの出して、明日出ることを伝えて、さっさと床に就いた。
……なかなか良い旅になりそうだ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない