【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
成長の章 AC102年 11月〜
ーー妖精のとまり木
アキヒロが連れ帰ったハシュアー。
探索者になりたいという彼を如何にしてその道に立たせるか。
パーティーを組むのが常套だが、多くのパーティーに断られた。かくしてレイトとシエルのパーティーに組み込まれ、『妖精のとまり木』は2人から3人へ。
しかし、各々の技量やレベルがいきなり上がるわけではない。各人に不足している部分を強化する為にも、あるいは強みをさらに活かす為にも探索者としてのスキルアップが求められた。
ハシュアーはレイジという教官を得て、レイトとシエルもリーダー、斥候という各々の主役割をこなすべく進む。
だが、それと同時にエリュシオンが街への言論浸透、存在浸透を進めていた。
いったい彼らは何者なのか。
――御守り浄化
エリックからもらった御守りがすごく汚い。
どれだけ洗濯しても真っ黒なままで、これでは御守りとして縁起が悪い。
いつからかと思い出せば、山田家を訪問してからだ。
アキヒロには思い当たらぬ何かがあったことは山田姉妹、シエル、レイトの様子から明白だが、言葉で聞いても身体に聞いても何もわからぬ。
それはそれとして、お守りは綺麗にしなければならない。
アキヒロはそこで思い出した。
例の地下ドワーフ王国で、神の炎とやらに燃やし尽くされかけたことを。
ミツキやドワーフ達だけが燃やされなかったことに納得はいかないが、何かを選別して、浄化するという儀式であることは理解できた。
この御守りが何かによって穢されたのだとすれば、神の力でなんとかできる筈だ。そんな思いで、相棒のコマちゃん(スコティッシュテリア)の実家である秋川家に協力を仰いだ。
妖精のとまり木メンバー、そしてヒナタを伴って訪れると、ちょうど当主が不在だという。幸いなことに儀式自体は問題なく執り行ってくれるということで数日の滞在を決める。
客人であるヒナタを穢れに満ちた危険な山の中に連れ込むという珍事もあったが、御守りは綺麗にすることができた。
残された謎は、強力な御守りであるこれをエリックはどうやって、どこから見つけたのかということだ。
――腐敗
大学の友人である広瀬風香。
ミツキの親友ということで知り合った彼女の勧誘によって、アキヒロはお餅サークルに所属している。
彼女が曽祖母から教えられた『鏡餅』。
失われた概念の一つ。
どうでもいいことではあっても、それを知らぬ物ばかりの世界だ。単語のみを知るフウカと、その内実を知るアキヒロ。
サークルまで立ち上げた彼女の熱意に応えて、アキヒロはその手伝いを時たま行っていた。
そして遂にアキヒロは、彼女の曽祖母がいたという街が変性してできたダンジョン――『腐り果てた村』にいくための最低限のレベルには到達した。
推奨レベル60に対して彼のレベルは52。
それをどう解釈するかは人によるが、アキヒロ自身は十分だと判断した。
アリサの反対を無視して挑み、ダンジョン内部にて腐り
果てた村人達である腐人と遭遇。戦闘するも倒し切るに至らず、逃走、隠密しながら進むと、目的の地に辿り着いた。
それは、広瀬風香の曽祖母が住んでいた家屋。
腐敗に侵食されながらもまだ崩れ落ちずに保たれていた家に入ると、一体の腐人がロッキングチェアに腰掛けていた。
腐人となっても尚、正気を取り戻したフウカの曽祖母。
彼女の口からダンジョンの真実を伝えられ、フウカへの手紙を預かる。
約束を交わしてダンジョンを出ると、そこにいたのは商工会の新人及び、探索部 調査室の副室長である高峰レオだった。
人材育成という名目で高難度ダンジョンに新人を連れてくる彼に不自然な気持ちを抱き、いくばくかの時間を滞在。しかし不審な点はそれ以外に見当たらず、帰還となった。
――リヴァイアサン
ハシュアーに対して武力行使を行ったエリュシオン。
もはや、彼らを単なる思想団体であると軽視することはできない。アキヒロはさらなる警戒を強いられる。
商工会もそれと同時に弾圧を開始。
思想が浸透している民衆とそれ以外との軋轢が生まれることは確定となった。
しかし、人間達の争いなど知らぬとばかりにリヴァイアサンは顕現する。
第一セクター近海に出現し、自らを守護者と名乗る超巨大生物に対して出動した一級探索者達は、その全力でもって迎撃を行った。
だが、リヴァイアサンの一撃を防ぐことはできなかった。かくして第一セクターの上空を掠めた絶光は余波のみで全てを薙ぎ倒した。
商工会の職員も含めて多くの死傷者が出る中、元一級探索者である四門光輝は、商工会が新たに始める新人育成事業への協力を承認。
新会長である
――街角先生
直近でもリヴァイアサンの被害を見る為に訪れたばかり。短期間で二度目の訪問だが、大恩ある彼の言葉とあれば仕方ない。
かつて、ソフィア・エメリッヒを救うにあたって協力を要請した科学者――街角先生からの連絡によって、アキヒロは第一セクターに行くこととなった。
ミツキとアリサを連れて訪れたそこは、文字通り未曾有の大災害によって街が丸ごと半壊していた。
隕石が突っ切った後のように家屋は薙ぎ倒され、商工会の本部庁舎にも大穴が空いている。
特化した異能を持つ職人達であっても街の再建には多くの時間を要することが確定していた。
街を歩けば苦しむ人々の姿が嫌でも目に入る。
特に子供は、守ってくれるべき親がいなければ悲惨な目に遭うのも当然だ。それを見て、冷たく見捨てるアキヒロとは対照的にアリサは何かできないかと模索したが、アキヒロは無理だと諭すばかり。
ミツキは親の力を使い、商工会への働きかけによって炊き出しを実現させた。
女子2人の間における親密度が多少上がったが、主目的は別にある。
街角先生の作り出した恐るべく機械。
物質と魔素を結合させる装置。
鍛治師や一部の企業だけが隠し持つ秘術を科学によって再現したソレが、どれだけの変革を世界にもたらすか。
破壊を提案するアキヒロと、否定する街角先生。
だが、あくまでその主導権は街角先生にあった。
街角先生の要望。
それは、リヴァイアサンの攻撃の痕跡を街から採取してきて欲しいということだ。彼の言葉通りに海岸で岩に突き刺さった剣を発見し、人だかりの中で引き抜こうとしたが失敗。
爆裂した靴を抱えて戻ろうとしたアキヒロは、1人の詩人と出会った。
彼は、アキヒロ達を自分の劇へ招待するという。
乗り気なミツキ達に比べると若干引き気味なアキヒロだが、劇の内容とは――?
1_共感性羞恥
「あー……恥ず……」
アキヒロは、自らの手で顔を覆っていた。
用意されたのはボックス席。
3人だけの空間で、途中からこんな調子だ。
隣で目を輝かせる2人の少女は幕が閉まるその時まで興奮冷めやらぬ様子で肩を躍らせていたが、それがどうした。
あんな恥ずかしいものを見せられて目を覆わない人間がいるか。いや、いない。
「嫌な予感したんだよ……」
「……! ……!」
声にならぬ声。
パクパクと口を開けて閉じてを繰り返す2人は、幕が閉じるとアキヒロの腕にしがみついて何度も揺さぶる。
「アキ! アキ!」
「ヒロさん! ヒロさん!」
「…………お家に帰ろう」
「ダメだよ! お話聞こうね!」
「そうです! お呼ばれしてるんですから! こんないい席に!」
帰りたい。
切なる気持ちは偽りならざるものだった。
こんな良い席まで用意してもらったからなんだというのだ。
再三思うのは同じ気持ち。
早くこの場から逃げ出しい。
「凄かったね!」
とても興奮している。
他の観客も興奮していたし、ミツキとアリサも同じく興奮している。それなのにアキヒロだけはテンションが低いどころか忌避感を滲ませている。
何故か。
──脚色してたし名前とか変えてたけど、完全にそうじゃん! 聖剣の話とか仕上げてないじゃん!
アキヒロは、詩人と契約することの恐ろしさを身を以て味わった。
「ヒロさん! 行きましょう!」
「──いいや、それには及ばない」
きてもーた……アキヒロはカーテンに身を隠そうとしたが剥ぎ取られた。
「久しぶりだなアキヒロ少年」
「その呼び方をするのもアナタだけですよ……ウルフさん」
「ふははは! 昨日はビックリしただろう!」
「ビックリっつーか…………隠す気なさすぎでしょ。そういうことがしたいなら、せめて顔変えてくださいよ」
「陳腐すぎる発想だな! 敢えて見せることで緊張感が生まれるのだ!」
猛烈に懐かしさを覚える語り口。
海岸での話し方が如何に抑えていたかが分かる。
しかし、置いてけぼりの2人はそれでも興奮を抑えなかった。特にアリサは手を差し出す!
「あの! あのあの! 握手してください!」
「……むふふ……ふはははは! やはり! この私の才能は尽きるところを知らないな! なあ?!」
差し出された手を嬉しそうに握ると、筆を取り出す。
「サインでもしようか?」
「はい!」
どこまでも白け顔のアキヒロとは違う、2人は完全にこの男の劇の虜だった。
「──ほら」
「ありがとうございます!」
うひょー! と小躍りでアウターを振り回す。
次は自分の番だとミツキはバッグを差し出した。
「こ、これ! お願いします!」
それにもサインを終えると、ウルフは部屋の出入り口に向かう。もう終わりかとガッカリした2人のご期待に沿うように、振り向きざまにニヤリと笑んだ。
「ついてくるがいい」
「……行きますか」
舞台裏。
劇団員達が忙しなく動くそこを進む4人。
部外者、そして終幕後のクソがつくほど忙しい時間であるにも関わらず歓迎の雰囲気──というよりも、アキヒロに対する超好意的な視線がほぼ全てだった。手を止めてヒソヒソと話をする彼ら彼女らの振る舞いはまるで、スターを目にするようなものだ。
「やりづれえ…………ウルフさんアンタね──隠してないだろ!」
「何を言う! 私が何をせずとも、お前はレベル50に到達するという偉業で示しているではないか! 自らの武を! 勇を! ……あの時、我々に見せつけた意思は変わらぬようだな!」
「…………はあ……会えて嬉しいですよ」
「ああ!」
軽い抱擁に、さらなるざわめきが走る。
すぐに離れた男2人。
軽妙なステップでウルフは体を広げ、
「彼らは、私がこの為に鍛えた団員だ!」
「でしょうね」
「あの時の全てを……得たモノを、時間を形にするのには時間がかかった。だが──どうだった?」
「…………恥ずかしいので、もうやめて欲しいですかね」
「ははは! 却下だ! 何せ、あの時の約束があるからな!」
「そうですよね……ええ……でも個人情報を漏洩すんじゃねえ!」
「ぬっ! …………ぐっ!? こ、こいつ、レベルが上がって力が……!」
全員の目の前で取っ組み合いを始めた。
「名前とか隠すって話だろーが!」
「うぐぐぐ……べ、別に教えとらん! いつの間にかバレていただけだ!」
「どう考えてもアンタだろ! どうせ匂わせをしたんだろう!」
「匂わせとはなんだ!」
「それっぽい事を何度も言ったんだろ! なあ団員の皆さん!」
『クスクス』
「ほれミソ!」
「うぐぐ……お、俺の感知する話ではない! 直接言及したことなどない!」
団員達曰く、最速でレベル50になった探索者の話が出た時点で確認を取りに行っていたらしい。
それとなく団員が聞いてみると、いつもの堂々たる態度はどこへ行ったのか下手くそな誤魔化しを見せられたとか。
「し、仕方ないではないか! それともなんだ! 知己が活躍して喜ぶことも許されないのか!」
「自分の部屋だけでやればいいのでは」
「…………ええい! いいだろう! 後世に残る作品を仕上げたのだから、それくらい許されるだろう!」
逆ギレし始めた。
「それともなんだ! しょうもない作品に仕上げろとでも言うのか!? 我々の旅路を! あの素晴らしい時間をどうでもいいものとして扱えと!? それがお望みか!?」
「俺はそれで良かったんですけど……」
「──皆、聞いたか! だから言っただろう! コイツの話など聞かない方がいいと!」
『あー……』
どうやら、計画の途中においてはアキヒロの意見も取り入れた方がいいんじゃないかという話が持ち上がっていたようだ。仮にそうであれば、絶対に有名にならないように脚本を書き換えさせていたところなのでウルフの判断は間違っていなかった。
そして、付いてきた2人はと言えば──
「うわー! ソフィアちゃんの役の人ですよね! 握手してください!」
「私も!」
「2人とも初めまして。お会いできて光栄です」
律儀な女性だ。
それに、容貌がとても整っている。
確かにソフィア役に相応しいのは彼女しかいないだろう。
「こんな劇がやってるなんて知りませんでした!」
「私は劇? って初めて知りましたけど……凄かったです!」
「──あ、うん。世間一般だと、まだ劇そのものの知名度が薄いから仕方ないよね…………でも……あなたはあの四門家の娘さんなんでしょう?」
「うわあ! 知ってくれてるんですか!?」
「ふふ、劇の完成度を高める為にみんな色々な知識を身に付けたの! ……」
ソフィア役の女優はまだ若いようだ。
それこそ、ミツキと同じ20だ。
「若いのにあんなに堂々と! カッコよかったです!」
「ありがとう! …………そ、それで……」
ミツキ達と話している最中から彼女がチラチラと視線を向けていたのは、団長と取っ組み合いを続ける招待客。
1日かけて行われた劇──その主人公のモデルである男の子だ。
他の団員同様に彼女も、そういう事だった。
「──そもそも俺はあんな剽軽な性格してないだろ! 共感性羞恥えぐいわ!」
「あ、アレは劇上の話だ! 貴様、自分自身と同一化する方が余程自意識過剰で恥ずかしいコトだぞ!」
「俺だろうが! ほぼ! 喋り方を除けば! ……あのナンパな感じは俺じゃなくてアンタだ!」
「お、俺はあんな感じではない! アレはあくまで、性格描写から特定されるのを避けるための工夫だ! 素人が口を出すな!」
「だから──ぶっ!?」
割と白熱していたが、アキヒロの後頭部を衝撃が襲った。慌てて振り向けばミツキが拳を振り抜いている。
「な、なんだよ」
「いつまでもくだらないコトでギャーギャー言ってるのやめて。みっともないから」
「みっ……!?」
自認元企業戦士の男が喰らうにはあまりにも重い一言におとなしくなる。しかし、ミツキはそれだけのために後頭部を殴ったわけではない。
「この子がお話したいって」
「──あ…………は、初めまして!」
先ほどミツキとアリサが彼女やウルフに対して向けたような態度を、今度は彼女がアキヒロに向けていた。
「……キミは、ソフィア役の子だね」
「は、はい!」
「…………」
「……っ!」
「俺は演技のことは素人だけど……本物のソフィアかと思ったよ。少なくとも、あの苦しみ方はソフィアそのものだった」
「──!」
「それに、あの氷の演出……アレはどうやったんだ? 俺の視力でもわからなかったぞ」
「あ、アレはこっちの! ……これを使ったんです!」
「……機械? こんなものどこで手に入れたんだ」
「街角先生に色々協力してもらったんです!」
「おお……そういうことか」
黙ってやがったな……と顔を顰めそうになるが、嬉しそうな彼女の前でそんな顔を浮かべるわけにはいかない。
取り繕った。
「俺のことはだいぶ誇張が入ってたけど……良い劇だったのは間違いないな、うん。観にきてよかったよ」
「ありがとうございます!」
「はは、そんな畏まらなくても──おっ!?」
何気なく視線をズラせば、いつの間にか全員が聞き耳を立てていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない