【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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6_横流しは良い文化

「…………」

 

 大気に身を晒したとき、既に夜は深まっていた。あっという間に時間は過ぎ去ったが、どこか楽しみきれない自分がいた。

 何故なのかは分かっている。

 ウルフ、そしてアオキ。

 彼らとの会話だ。

 

 雷が曝け出す雲の黒々とした様子。その分厚さと同じように重く折り重なった怨嗟。

 ウルフが始めようとしていること。

 

「やだねえ……物騒だ」

 

 それらにはすべて始まりがある。

 ウルフがあの答えに至ることが仕方ないと、俺すらも納得してしまった因果がある。

 

「あむあむあむあむ」

 

 呑気に酔い潰れていた彼らには想像すらできないであろう怒りが、彼を突き動かしている。

 

「あむあむあむあむ」

 

「食べるな食べるな」

 

「へへへ」

 

 俺の服を食べようとしているロイスのように、そんな感情を抱かずに生きるものが大勢だ。俺も、彼のようなベクトルで激しい感情を抱いたことはない。

 

「もう寝ろ」

 

「えー? でもアキヒロくん起きてるじゃーん」

 

「ったく……ほら、ソフィアが待ってるぞ」

 

「ソフィア! ソフィアどこ!」

 

 ソフィアは2人で壁にもたれかかっていた。

 どちらがどちらか遠目にはわからず、近付くと微妙な違いが見えてくる。

 

「ソフィア〜」

 

 そっちは偽物だ。

 

「ソフィア〜、くっついて〜」

 

 明日が怖いが、後輩の醜態を見逃すだけの温情は俺にもある。以前、ヒナタと縁側でノンビリ(意味深)していたのをソフィアに見逃してもらったお返しだ。

 

「もち……」

 

「つかずはねれず……」

 

 ミツキとアリサは腹を出して寝ていたので隅っこでカーテンに包んだ。

 今日はここに泊めておくしかない。

 寝ゲロで窒息されない為にも見張っておこう。

 

「浮かない顔だな」

 

「──2人こそ」

 

「すまんな、楽しかなるはずだったのに邪魔してしまった」

 

「いえ……ここに来る前から気になってはいましたから」

 

「そうか」

 

 輝ける谷の中で俺たちの行くべき道を指し示してくれたあの子は今、どうしているだろうか。

 ウルフの故郷を襲った野蛮な者たちは今、どこに潜んでいるのだろうか。

 分からない。俺たちは結局、起きた出来事からしか物を見ることができないから。

 

「お前はどうする?」

 

「え?」

 

「共に戦うと言ってくれたのは──ああ、嬉しかった。だが……お前には守るべき者達がいるはずだ」

 

「…………」

 

「帰りを待つ者がいるのなら、俺はお前を連れて行くことはない。あの時の俺と同じ気持ちを誰かに味わわせるなど……あってはならないのだから」

 

「……分かりました。でも、結局俺も同じことをすると思います」

 

「何故だ?」

 

 新たな宗教・価値観が既存の文化圏に侵入した時、争いが起こると古来より決まっている。その争いを勝ち抜いた者達が歴史を作ってきた。

 負けたら、ただの奴隷だ。

 

「既に商工会は彼らを──エリュシオンを敵であると認めました。それに現会長は急進派で、基盤を荒らす輩には容赦しない。さらに弾圧が強くなる可能性もあるでしょう。そうなればエリュシオンの考え方に同調した人々は街を出るか、あるいは商工会への強い反発を行うか……」

 

「いずれにせよ穏便に済むことはあり得ない……というわけか」

 

「──つまり、今みたいな『それらしい』話を信じる人はたくさんいるってことです」

 

「んなっ!?」

 

 知能の問題じゃない。

 人の悪性と、宗教、歴史というものを知っているかどうかでしかない。

 この世界における宗教は、神に保護されていることが前提だ。ロイスやヒナタがそうであるように、魔素から人々を守れる力のある存在がいてこそ安心して祈りを捧げることができる。

 誰か1人の人間が掲げた思想を、金の力を担保に広げて──なんてのは通用しない。

 だから、悪意が散りばめられた思想を広げようとするなんてことは想定外だ。制度で縛るなんて発想すらない今の段階において、ピュアな人民にはあまりに相性が良すぎる。

 

 

 ──────

 

 

「アイツら、どうだったよ」

 

「来ればよかったのに……」

 

 二日酔いでダウンした2人は置いて研究所へ行くと、街角先生は踏ん反り返っていた。

 劇とパーティーが開かれるということは知っていたようだ。その上で行かないというのはいかがなものか。

 

「やることが多いんだよ俺は。優秀だから──な?」

 

「知らないですけど」

 

 フブキがいた。

 ので、部屋を移って問い詰める。

 

「なんでいるんだ?」

 

「いちゃ悪いんですか?」

 

「ただの質問だ」

 

「……商品開発に協力してもらってるからです」

 

「そうなんだーーんん?」 

 

 あの人が作るものって……この部屋にあるのって……

 

「なあフブキ、まさか先生が作る機械を売ろうとしてる?」

 

「え? ……別に……なんでも良くないですか?」

 

「危ないからやめろ」

 

「そう言われるから言わなかったんです!」

 

 そもそも、俺が教えたアイデアを先生が形にして、フブキが売るって……それって俺頼りすぎない? 

 俺の知識が枯渇したら終わりのビジネスとか、ビジネスとして成立してないじゃん。してないことはないか。

 破滅へ一直線すぎてやめてほしいというだけの話か。

 

「会長のヤツだけ売ってるわけじゃないです! ちゃんと他のものも売ってます!」

 

「あ、そうなんだ……尚更いらないだろ」

 

「いいじゃん! 別に! 大体、お父さんには段ボールのこと教えたじゃないですか! なんで私はダメなんですか!」

 

「教えてもいいレベルの知識だからだよ」

 

「じゃあ、先生にはなんで教えるんですか!」

 

「だってあの人、お金に興味ないもん」

 

「いつか興味が出たら!?」

 

「マネタイズ下手くそだから無理でしょ」

 

「私は!?」

 

「才能があるからダメ。ちゃんと世の中に広めちゃう可能性がある」

 

「……ふ、ふん……別に褒めてもやめませんし」

 

「…………真面目な話すると、ここら辺のやつをちゃんと製品として売っていこうと思ったら大規模な工場と倉庫が必要になるからダンジョン化するぞ」

 

「そこら辺はちゃんと考えてます」

 

「はぁ……」

 

 確かにフブキがちゃんと考えるなら、ダンジョン化を抑えた程度の生産ができる可能性も──ねえよ。コレが商売として成功する未来は今のところない。

 

「応援してくれないんですか……?」

 

「まず、先生の作った物──それも機械を売るのはやめろ。命を狙われるから」

 

「……」

 

「その代わり、俺がお前でも扱えそうなヤツ教えるから」

 

「ええっ!?」

 

 ガタガタガタと、奥の部屋で音が鳴った。

 先生が椅子から落ちたっぽい。

 

「本当ですか?」

 

「約束守るならな」

 

「……守ります」

 

 出会った当時は俺の言うことに丸ごと反発していた彼女だけど──それこそシエルくらいに嫌われていた気がする──高校に入ってからは素直だった。

 それに優秀だ。

 人となりも知っている。

 加えて可愛い。

 贔屓しても許されるはずだ。

 うん、しょうもない知識ならいくらでもくれてやろう。

 

「じゃ、じゃあまずは私のお店に……」

 

「おい待てよ。俺を忘れるな」

 

「あ」

 

「リヴァイアサンの痕跡集め、ちゃんとやってくれよ?」

 

 それはもちろん忘れていない。

 しかし、目ぼしいモノはないはずだ。

 あるとしたら、街の上空を通過したというブレスの着弾地点か海辺の剣。

 剣の方は人が多いので細工もできないし、そもそも俺が殴っても傷つかない強度だ。今は無理だろう。

 

「ブレスの着弾地点に行くつもりです」

 

「街の外……まあ、探索者だからいいか」

 

 しかしフブキを放っておくわけにもいかないので、世間話に花を咲かせながら店に向かった。痕跡はその後だ。

 

「──会長って呼ぶのやめていいですか?」

 

「え?」

 

「アキヒロさん、とか……ほら、私たちもう高校生じゃないし」

 

「別になんでもいいけど」

 

「うーん……名前長いんだよね……もうちょっと呼びやすく……」

 

 人の話を聞いているのかいないのか、俺の名前にケチをつけた挙句、あだ名を模索し始めた。

 

「アキもヒロもあの2人が使ってる……」

 

「ヒナタは俺のことアキヒロ呼びだぞ」

 

 大抵その三つになると思うけど、どれになるのかね。

 

「……三股とかサイテー」

 

 凄い嫌悪感を感じる! 

 理不尽だ! 

 今、そんな話してなかったのに! 

 

「高校生の時、散々女の子振っといてコレなんだから……」

 

 子供は守る対象だ。

 だから、いくら子供が好きって言っても嫁へのそれとは別の好きなわけ。

 

 ただ、ミツキ達への好きはそこら辺混じってる自覚がある。自分のことながら拗らせてて嫌になるね。

 女々しいこと。

 

「これは興味本位なんですけど……」

 

「うん」

 

「なんであの3人なんですか?」

 

「え?」

 

「2人は同じ高校で、もう1人は……あの子じゃないですか。同級生2人って……偏りすぎじゃないですか?」

 

「だって俺、自分の身の回りに好きな子しか置きたくないし……」

 

 だから、一緒にいた時間が比較的長いミツキとヒナタで高校が被るのは仕方ない。ミツキは高校抜きにしたって幼馴染というのもある。

 

「ヒナタ先輩はどうなんですか?」

 

「どうってなんだよ」

 

「高校の時は……そんな感じ微塵もしませんでしたけど」

 

「いやいや、高校生の時からちゃんと好きだったぞ」

 

「そうなの!?」

 

「人間的にな」

 

「あ、そ、そういう……紛らわしい!」

 

「そう言われても……」

 

「逆に、なんで私じゃないんですか?」

 

「随分な質問だな」

 

「さっき自分で言ってたじゃないですか。身の回りには好きな子しか置きたくないって」

 

「条件は同じはずだってか?」

 

「はい」

 

「私だって、顔には自信ありますよ?」

 

 その通りだ。

 フブキもソフィアもロイスもアリサもヒナタも、みんな同じだ。

 同じだった。

 みんな同じように可愛い子供だった。

 優劣はなかった。

 個性による差があるだけ。

 期待できるだけの素質を有した人間として見ていた。

 

 身も蓋もなく言えば、そこからイベントがあったから距離が近くなっただけだ。ミツキとアリサに襲われたかけたのがきっかけなので、アレがなければ永遠にあのまんまだった。

 

 まあ、それだけの話だ。

 

「関係を見直すきっかけがあったんだよ」

 

「……そうですか」

 

「うん」

 

「ふーん……」

 

「…………」

 

 女の子に好かれるのは悪い気分じゃない。

 ただ、今は気まずい気分だった。

 気まずいので歩こう。

 歩いて全部、忘れましょう♪ 

 

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