【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ない!」
結論、どこからも進入はできない。血みどろ沼だったのは最初に来た方角だけでも、魔素濃度が高過ぎて結局中心まで辿り着けない。
半ば分かっていたのでショックはない。
それでも、痕跡一つ回収できないというのはどうにも情けなくて仕方ない。
「──え? いや、僕たちも何かを回収してるわけじゃ……あくまで目的は監視ですから」
「ああ、じゃあ別か」
リヴァイアサンの一撃が落ちた!
監視だけしなきゃ!
んなわけない。
永井先生の資料奪って研究してるんだから、それくらいはやるだろう。
だけど、彼は嘘をつけるような人間に見えない。人柄もそうだけど、聞かれたことにさっきからスラスラ答えている。これで騙されたなら仕方ないと割り切るぜ。
別部隊がすでに訪れてサンプルを採取してるはずだ。
それか探索者に任せたか。
あの光の源がまだ残っていることを考えると、そこまでは辿り着けなかったんだ。周辺に散らばっている肉片を集めたとか?
「あの……」
「ん?」
「あれ、なんなのか知ってるんですか?」
「リヴァイアサンの攻撃の一部」
「知ってるのになんで近づこうとしてるんですか? そんな……血だらけになってまで」
「気になるから」
「気になるったって限界が……」
「気になったことは突き詰める。そうじゃなきゃ、なんだって途中で行き詰まるだけだろ? それに、探索者にとって血だらけ状態は普通だ」
偉そうなこと言ってるけど、何もうまくいってない。
グラウンドゼロ、海岸の聖剣、ソレ以外を探すべきということか。
街角先生のお願いという事を除いても、リヴァイアサンの事は調べておいて損ないはずだ。
街に対して初めて直接的な攻撃を行ったって聞いたし、歴史的な転換点の一つになってもおかしくない。
「そういった物に関する情報は取引に回されてませんね〜」
本部の受付に来ても手に入らない情報となれば、あとは個人から何か手掛かりがないかを探すしかないけど……低級じゃ話にならないな。そもそも数が多すぎる。
こっちで正式に仕事を受けた事はないので、探索者としての知り合いもほぼいない。
コウキさんの力を借りるしかないのか。
「──あ、少し待っててくださいね」
「?」
受付嬢はなぜか裏に回ってしまった。
俺の顔をチラチラ見ていたので、以前話したことがあるのかもしれない。
それにしては妙な反応だった。
「えっと……挨拶したいって方が」
誰だろうか。
全く覚えがない。
それに、フブキをいつまでも待たせるわけにはいかない。
「申し訳ないけど、少し急いでまして」
「えっと……」
「挨拶なら不要と伝えといてください」
「あ、ちょっ」
雪白商会に戻ると、チェンが壁にもたれて寝ていた。
だけど、俺が店に入ると即座に目を覚ます。
「──」
薄ぼんやりとしたままコチラを向いている瞳をスルーして奥に向かえば、フブキが倉庫を整理している。
「うーん……これはいらないか……あ、こっちはもう少し……」
尻をむけているので全く気づかない。
チェンが寝たままだったら尻を襲われてもおかしくないぞこれ。
「よう」
「ひゃんっ!」
「あぶな」
ナイスキャッチ。
コップが一つ割れずに済んだな。
彼女が直接持っていたからか温かい。
これに飲み物を入れれば常にホットで飲めそうだ。
「あの、それ私の手の熱じゃないですから」
「え?」
「そういうコップを仕入れたんです」
「そうなんだ……」
「なんでちょっと残念そうなんですか!」
フブキの手と常に同じ温度のコップとか言っておけば激売れしそうなのに……まあ、そういう安いエロ売りみたいなのは良くないか。
一応言うだけ言っておこう。
「そ、そんな発想が!?」
「冗談だよ」
「いえ、そういう発想も飲み込まないとなかなか人気店にはなれませんから……特に一般人向けの商品の扱いが難しくて……」
探索者向けは回復薬とか置いておけば買ってくれるけど、一般人は慣れた店にしかいかない。店がたくさんある第一セクターならではだな。
でも、さっきのを実践してつくのはおっさん客ばかりなんだけど良いんだろうか。
「多分襲われるからやめといた方がいいと思うぞ」
「ええっ!?」
ネットが普及していればそこでだけやれば良いけど、こうして顔が見える店でそういうことやると後を引きかねない。
「せめてやるにしても護衛を雇うとか……女の探索者な?」
「……」
「俺? 俺は無理だよ、こっちに住んでないんだから」
「引っ越せばいいじゃないですか」
「無茶言うな」
ヒナタ達のそばを離れられるわけないって分かってるだろうに。
そもそも、商店だろうが商工会だろうが紹介だろうが俺が雇われになる事は金輪際あり得ない。
依頼を受けて協業する事はあるにしてもだ。
「私ですよ〜?」
「可愛い後輩かどうかと、下につきたいかどうかは別の話だよ」
「ケチ! そんなんじゃ愛想尽かされちゃいますからね!」
人がちょっと気にしてるところ突いてきやがって。
生意気な後輩はお仕置きだ。
「うわっ! ちょっ!? なんですか! あんなこと言っといて自分が襲うんですか! …………や、やめっ! 脇は、よ、弱いからっ!」
「…………」
「なんでっ、無言っ! きゅふっ、きゅふふふ! …………〜〜〜!」
──────
「タノシソウダタネフタリトモ」
「わ、私のせいじゃないよ!」
「ヒマナラテツダテホシイネ」
「分かったからそんな怒らないでよ…………っ!」
睨まれても俺は知らん。
俺は客人なので、遊ぶのが仕事だ。
「そんな仕事ない!」
働きっぷりを改めて見ると、チェンはどうやって拾ってきたんだと問いたくなる。
片言で聞き取りづらいところがあるけど、まともな客に対しての応対は極めてまともだ。品物の説明自体も丁寧に行って、雰囲気は悪くない。
フブキはレジと呼び込みと品出し。
聞かれれば説明もするけど、基本的にはチェンが前に出ている。
「暇そうだな」
「誰かさんもこんな感じでしたよ〜」
「俺はだって、ちゃんと人員揃えて仕事投げてたじゃん。2人しかいないんだったら自分でもやるよそりゃ」
あんまり負荷をかけすぎると逃げられるんじゃなかろうか。
「ちゃんとお給金払ってるもーん」
どうやら、世の平均給与をだいぶ上回っているらしい。
ほな大丈夫か……
「ワタシだって、チェンが普通より仕事できるって事は分かりますよ」
「良いんじゃないすかね」
「いきなり適当なのやめてください」
「だって俺の会社じゃないし……」
「これから顧問になってもらうんですから、その自覚を持ってください!」
「お給料は?」
「え? …………後で考えます!」
お金に困ってるわけでもないし、急かしたりはしない。
でも、一つ釘は刺しておこう。
「お金の切れ目は縁の切れ目だぞ」
「な、なんですかいきなり」
「お金は信用そのものってこと」
「分かってます! ワタシだって深山家で色々勉強してたんですから!」
フブキとコユキちゃんが実際に何を勉強してたかは見たことないけど、帝王学とか学んでたのかな。
ロイスはそんなことしてる素振りなかったけど。
「ロイス君は結構頭悪いですよね、学校でもアレでしたし」
ソフィアもあんまり成績は良くなかった。
でもまあ、そういうところで生徒会に呼んだわけじゃないからな。
「ただ好きな子呼んだだけってさっき言ってましたもんね」
「うん」
「ワタシもそんな感じでお店作ろうかなって」
「こわ」
大好きな奴しかいない会社って、それ家族経営と何が違うんだよ。
「は、はああ!? 自分はそうしといて、いざ人が真似するってなったらその言い草とか頭腐ってるんですか!?」
「多様性がないと会社、終わるでしょ」
「全部自分に返ってますからね!?」
「俺の場合、金が絡んでなかったから」
会社やるってなったらまた別でしょ。
「真似するなら生徒会じゃなくて深山商会だと思うんだけど……」
「覚えてるんですからね私、深山商会のこと多様性がないとか言ってたこと」
「そうだっけ」
全然覚えてないや。
高校一年生の時の話だと思うけど。
「そういえば呼び方決めた?」
「もう……ア、アキヒロさんとか?」
「じゃあそれで」
「……いいんですか?」
「高校卒業したら先輩も後輩もないから、好きな呼び方で良いんだよ」
ロイス達は会長先輩で呼んでくるけど、パーティーで名前呼びが戻ったのでそのうち切り替わると思われ。
「じゃあ……そうします」
「おう」
三船君もいつまでも加賀美さんじゃなくてアキヒロ君とか呼んでくれないかなあ。
シエルは──シエル……
「あの……?」
「ああ、なに?」
「お客さんじゃないですか?」
「え?」
お店のお客さんは俺のお客さんでは……と言う前に見えた顔。
「…………」
男──高峰レオの顔は、以前に比べて疲れているようだった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない