【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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9_おめーNTR趣味か?

 

「…………」

 

 高峰レオ

 商工会 探索部 調査室 副室長

 いつも面倒臭い話を俺に持ち込む疫病神だ。

 わざわざ居場所を特定してまでやってきた割には切り出さない。

 

「あの?」

 

「あ……はい」

 

 どうにも、俺が知る青峰レオという男の姿と合致しなかった。

 前回出会ったのは腐り果てた村。

 その前は日向のことに関する謝罪だったかな。

 

 まさか……クビになった? 

 

「お願いがあってきました」

 

「……え? …………俺に?」

 

 聞き間違いかと思った。

 

「はい」

 

 聞き間違いじゃなかった。

 厄介な話じゃん絶対……

 

「何事も聞いてからですので、まずはなんのお願いかを……」

 

「室長──九条手鞠という女のことなのです」

 

「!?」

 

「彼女は今、精神的に不安定でして。私がいなくなった後のことを──」

 

「待ってください。どういう話なのか掴めないです」

 

「……すみません、焦っていたようです」

 

 話を詳しく聞いてみた。

 リヴァイアサンの一撃の余波で、以前の謝罪飯に同行していた後輩が亡くなってしまったらしい。レオ()九条手鞠(彼の上司)の共通の友人でもあり、そのせいで上司が心を病んでいるとか。

 今は彼が色々と面倒を見ているが、これから離れなければならなくなるから俺に押し付けたいんだと。

 

「商工会ってのは、そういうのを人に押し付けるのが定石なのか?」

 

 ナナオさん然り、コイツ然り。

 

「無茶を言っているのはわかります。それでも……俺がこれまで見てきた中で最も人間的に信頼できる加賀美明宏ならば……お願いします!」

 

 親元に返せば良い。

 ソレが一番だ。

 お互いに理解の浅い男に預けるなど正気の沙汰じゃない。

 

「……あなたはそうかもしれませんが、俺はそうじゃない。何度も、何度も、調べさせてもらいました」

 

「親は?」

 

「彼女の故郷は滅びています」

 

「……」

 

「だから……お願いします!」

 

 ここは雪白商会の裏。

 人様のお店でそんな声が聞こえてきては営業妨害だ。

 場所をカフェに移し、改めて話を聞くことにした。

 人に聞かれぬよう、個室制のお高い店へ。

 貧乏な服装や探索者としての装備だと入れないので、適当に見繕った服に変えて。

 

「彼女にだって友人はいるでしょう」

 

「……仮にいるとしても俺は知り得ません」

 

 本人に聞けば良いものを、相当に拗らせているようだ。

 

「なんにせよ、あなたの判断はマトモじゃない。それに室長とやらは大人でしょう? 自分の力でなんとかするべきです」

 

「っ……」

 

「あるいは、貴方が連れて行くべきじゃないですか?」

 

「そ、それは…………できない」

 

 レオは、どうにも落ち込んでいた。

 そういえば、以前出会した時は新人の育成とか言っていた。アレはどうなったんだろう。

 

「…………」

 

「まさか放り出すのか?」

 

「…………」

 

「おいおい……」

 

 商工会には心の底から同情するぜ。

 夜逃げじゃねえか。

 

「無責任極まってるな」

 

 そんで、言い訳の一つでもしろってくらい口を開かなくなってしまった。言わせるだけ言わせて押し付けようって? 

 

「そうは問屋が卸さねえよ」

 

 そもそも、その何とかって上司の顔だって見たことがない。

 人選も謎。

 シンプルに爆弾を押し付けて逃げようとしてないか? 

 

「そんな事はない、彼女は……」

 

「それなら、なおのこと自分で面倒を見るのが男だろ?」

 

 そういえば、さっきは妙なことを言っていた。

 俺のことを何度も調べたとか。

 個人的な話じゃないよな? 

 

「もちろん仕事での話だ。商工会はアナタに強い関心を抱いている。私はその中で調べる役目を負っていた、それだけのことだ」

 

「それで俺が信用できる人間だと思ったって?」

 

 あまりにも外面だけを見た物言いだ。

 俺が仮に、誰か1人の男を調べてコイツは人間的にできるなと思ったとして……ミツキを預けたいと思うわけがない。

 この男がその上司に対してどれだけの気持ちで接しているのかは知らないけど、そもそもマトモな男なら、大事な女を別の男に押し付けようなんて思わない。

 たとえ俺が高峰レオの親友だったとしてもだ。

 

「自分の女を別の男にやるのが趣味か?」

 

「──そんなわけがないだろうが!」

 

 激昂するほどには苦渋の決断らしい。

 くだらない。

 ダンジョンや戦場に連れて行くのでもなければそんな事悩む必要ないというのに。まずは本人に話を──あ? 

 

「……戦場?」

 

「!」

 

「その上司とは男女の関係ですか?」

 

「…………そう、です」

 

「ふむ……」

 

 まあ、そこはそうだろうと確信していた。

 

 だけど、何か引っかかることがあった。

 目の前の男。

 最近のこと。

 以前のこと。

 

 何かが腑に落ちない。

 でも、今は整理できそうになかった。

 

「この件は今度じゃいけませんか」

 

「……今すぐに、請け負っていただきたい話です」

 

 今すぐとは、何と大胆な話だろう。

 話を持ってきたその日に承諾するかどうかをせっつく。

 なんとも失礼だ。

 これが保険屋だったら追い返している。

 保険屋はいないけど、そのかわり、この世界には知人の生き死にを他人に預ける文化が横行しているのか。

 彼女にも是非、聞いてみたい。

 

『お待たせいたしました』

 

「先ほども言った通り……アナタの経歴を調べました」

 

 レオは、運ばれてきた食事に手をつける様子すら見せずに口を開いた。

 そんで、俺の経歴が何だって? 

 

「そんな大層なものは残っていないでしょうけどね」

 

「…………アナタは逸話を残しすぎた」

 

「逸話?」

 

 逸話といえば、人の目に残らぬ話のことだな。

 ソレを残しすぎるなんて、既に矛盾した話じゃないか? 

 そもそも逸話を残すなんて大袈裟な事は──ウルフさんのはノーカンだから。

 

「誰かを助けるということは、誰かの心にアナタの存在が刻まれるということです」

 

「はあ」

 

「アナタは人を助けすぎた」

 

「そんなこと言われても……」

 

「アナタはかつて、輝ける谷に行きましたね」

 

「はい」

 

「ソフィア・エメリッヒを苦しみから解放し、第一セクターを破滅から救った──間違いはないでしょう」

 

 大袈裟な表現に目を瞑れば間違いではない。

 

「第235セクター……山田一族が管理する霊領で起きかけた霊領の暴走を阻止し、その以前には秋川一族の土地から溢れそうになった呪いを消滅させた」

 

「あー……」

 

「それだけではない。(ほし)竜巻(たつまき)月輪梯子(つきわばしご)雲鯨竜(うんげいりゅう)アストラ──あげればキリはありませんが、覚えはありますね?」

 

「…………」

 

 そりのメインは俺じゃなくてコウキさんだったけど、関わったことに嘘はない。それよりも……何処で調べてきやがったんだコイツ。

 関係者しか知らないはずだ。

 

「みなさん喜んで教えてくださいました。アナタの話ならと」

 

「……それで?」

 

「これだけ調べればバカでもわかります」

 

 俺がバカ以下の知能だと言いたいのだろうか。

 

「アナタは困っている人がいたら見捨てられない、そういう性分の人間だということです。そうでもなければ……たかが他人の為に一級ダンジョンや一級モンスターと対峙しようなどと思うはずがない」

 

「…………」

 

「お願いです! どうかアイツを……あの子を、俺の代わりに守ってください!」

 

「……ふぅ」

 

 自分の視線が冷えていくのを感じた。

 高峰レオのことがさらに嫌いになったとかそういうことはない。

 ただ、寒いなと感じただけだ。

 

 自分の行動がそう捉えられている事が、とてつもなく寒かった。

 

 

 ──────

 

 

「はぁ……」

 

 ひとまず1日は空けさせろと置いてきた──のは良いものの、どうしようか。

 あまりにも荷が重い。

 宿前まで戻ってきたけど、中に入ると閉塞感も相まってさらに気分が沈みそうだ。

 

「はぁ……」

 

「アキ?」

 

「!?」

 

「やほ」

 

「……起きてたんだな」

 

「うん、ちょっとだけ気分が良くなったから……ここで何してたの?」

 

「あー……」

 

 説明出来るはずもない。

 数回顔を合わせただけの知り合い(あまり仲も良くない)から、女を預けたいと言われたなんて。

 また変な勘ぐりをされるに決まっている。

 

「絶対、変なことに巻きこれてる顔だ」

 

「うっ……」

 

「首輪つける?」

 

 夕飯何にする? みたいなノリで聞くことじゃないよね。

 

「あーあ、お父さんに良いアイテムないか聞こっかなー……」

 

「やめろよ、こえーよ」

 

「え? 本気だよ?」

 

 目がマジだ……

 

「吐いて」

 

「え?」

 

「何やってきたのか吐いて! 部屋で!」

 

 従わないと何されるか分からんくて怖すぎる。

 うちの幼馴染がこんな気性なのは今に始まったことじゃないけど、最近輪をかけてるな。

 

 部屋に戻るとアリサも起きて見繕いを──毛繕いをしているところだった。

 2人に勝てるわけはないし、また話が拗れることを考えると言わない選択肢は尚更なかったよ。

 

「──アリサちゃん、どう思う?」

 

「…………」

 

「呆れて何も言えないって」

 

 アリサの顔が本当に呆れ顔すぎて傷付く。

 俺、変なことしてないのに。

 

「ヒロさん」

 

「はい」

 

「ヒロさん」

 

「……はい」

 

「良い子良い子」

 

「い、今……?」

 

 頭を撫でられるのはいつぶりだろう。

 暖かいものが心に広がるけど、困惑も同じくらいで珍しい心地だ。

 

「それとミツキさん」

 

「あ、うん、なに?」

 

「良い子」

 

「ふぇっ」

 

 アリサがミツキを抱きしめた。

 アリサが、ミツキを、抱きしめた。

 炊き出しの件で仲が縮まったと言っても、ここまで一気に詰まる? 俺置いてけぼりじゃない? 

 

「え、ええっ、私っ、じゃなくてアリサちゃん!? ど、どうしたのいきなり!」

 

「ずっと……こんな気持ちで耐えてたんですね」

 

「あ──」

 

「辛かったですよね……やっと、分かりました」

 

「…………」

 

「酷い人ですね」

 

「……うん」

 

 ミツキも抱きしめ返して、仲がよろしいことで。

 ……いや、なにが? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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