【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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12_遠き日のおもひで

「アキヒロさん、その…… 2人はどうしたんですか?」

 

 雪白商会に最後の挨拶にきたは良いものの、ミツキとアリサが沈んで仕方ない。取り繕うということを知らない2人だ──と言うには、状況が状況か。俺がじじいすぎるだけで。

 

「ちょっとな」

 

「……」

 

「うっ……」

 

「教えてください」

 

 まっすぐな瞳で見つめられると、どうにも弱い。

 2人は奥の部屋で黙々とアイテムを見始めたので、こちらもこちらで話をしておくことにした。

 

「──それはアキヒロさんが悪いよね」

 

「まあ、な」

 

 一連の話を聞いたフブキの感想は想像通りだった。

 

「昔からそうだったよね。人の話なんて聞かないし、全部1人で決めてそれに付いてくるかは自分で決めろって。それでいて結果を出すからタチが悪い」

 

「いや、生徒会の時はちゃんと多数決採用してただろ」

 

 そんな横暴な感じに見えてたとでもいうんですかね俺が。ちゃんの要望書集めて必要そうなやつ実現してたのに。

 

「生徒会もそうだけど……もっと前から」

 

「もっと前? ──ああ、なに、俺たちが会った時の話?」

 

「そう」

 

 ある意味タイムリーだ。

 あの劇を見たばかりなので、ところどころの欠けはあっても鮮明に思い出が蘇る。

 

「……俺、割と選択肢はソフィアとウルフさんに委ねてたぞ?」

 

 俺が何を言おうが、あの2人が決めて動かないと何も始まらない──ので、そんな感じだったと思う。俺だけがイケイケのトップダウン方式でやってたなんてことはない。少なくとも俺の認識では。

 

「側から見てると、ずーっとアキヒロさんが前で動いてたけど」

 

「前かもしれないけど、ちゃんと後ろは振り返ってたぞ」

 

「えー?」

 

 そもそもフブキはほぼ参加してないと思うんだけど。今のシエルみたいなもんで、突っかかられてただけな気がする。

 

「うん、だって怒ってたから」

 

 ソフィアには友達いないの? みたいなこと言っちゃったから、シエルよりも明確に嫌われる理由はあった。でも、あった時から割とトゲトゲはしてたよな。

 

「それは……ほら……私もまだ子供だったし。でも! これ何度も言ったけど、友達いないなんて言われたら誰だって怒るからね!?」

 

「ごめんなさい」

 

 しかし……尚更、あの件の後に態度が和らいだ理由が分からない。その通りはその通りであり、彼女の機嫌を取ろうとはしていなかったはずだ。

 

 そうだ。

 これまでにその話をしたことはなかった。

 かつて、同じ高校に来ると彼女は言った。

 どんな過程があったかは分からなくとも、フブキやロイスは俺の高校に集まった。

 ならばそれで良かった。

 掘り返すものでもないと思っていた。

 

 だから、今、聞こう。

 

「フブキ……どうしてあの時、俺のことを許してくれたんだ?」

 

「そ、それは……」

 

 途端に狼狽え出した。

 何か理由があるのは間違いないだろう。

 狼狽えるということは、態度を改めろと怒られたとか? 

 

「──」

 

「え?」

 

「最初は、信じられなかったから……」

 

「?」

 

 信じる。

 何を? 

 まず、意味がわからなかった。

 怒ってた話は? 

 

「信じられないって、なにが?」

 

「……ん」

 

 指差したのは俺。

 俺の心臓か、存在か、胸筋か。

 ともかく俺を指差した。

 俺のことを信じられなかったと。

 俺の何を? 

 

「存在が……」

 

「存在って……ええ?」

 

 あれだろうか。

 貧乏人が家の中にいるのを初めて見たとかだろうか。

 

「そういうことじゃないよ!」

 

「おお」

 

「…………誰だって信じられないよ」

 

「だから、なにを?」

 

 信じられないと繰り返されても、こちとら異世界人なので共感はしかねる。君たちの常識は俺の非常識で、俺の常識は君たちの非常識なんだから。

 

「アキヒロさんみたいな人がいること」

 

 おっとお? 

 なんだか個人の人格攻撃みたいになってきたぞ。やっぱフブキとシエルって似てるな? 

 

「悪い意味じゃないよ」

 

「そうなの?」

 

「うん。その……うわー、言うの恥ず……」

 

「なんだよ、言ってみろよ」

 

 恥ずかしそうなフブキを見てると、何だか元気が出てきたかもしれねえぞ! 

 ……九条手鞠(例の彼女)のことを思い出して笑えなくなっちゃった。

 

「その……私、本好きだったじゃん?」

 

「うん」

 

「今だから言えるけど、深山家ってすごく閉鎖狭い世界で……でも、あの頃はそれが全てだったから……外の世界が羨ましかったんだ」

 

 よくある話で、現実で聞くには珍しい話だ。

 深窓の令嬢というやつだな。

 

「だけど本を読めば世界が広がってて、主人公になった気分で楽しかったの」

 

「──そうか」

 

「や、やめてよその顔!」

 

 今更だ。

 今、どんな感情を抱こうが関係はない。

 ただ、微笑ましかった。

 

「んんっ! ……だから、ビックリしたんだ」

 

「うん?」

 

「凍り付いた少女を助けるために男の子が走り回ってるって聞いて……それで、本当にやってきたから」

 

「……」

 

 俺が一番最初に出会ったのはコユキちゃんだ。

 少ししてフブキを見つけ、ネルさんの家に放り込み、色々あって深山商会に辿り着いた。

 そこで親父さんから因縁をつけられて、深山邸に入ることを許可された。

 そこらへんで聞いたということか? 

 

「お父さんから、こういうヤツがいるから入れてやれって連絡が来たの」

 

「へー」

 

「本当はね? 嬉しくて、もっと話したかったんだよ」

 

「えっ!?」

 

 その割にメチャクソ貶されたような記憶が。

 話したいなら言ってくれれば普通に話すのに。

 

「だって恥ずかしかったし……これ言うのも恥ずかしい! うー!」

 

 あの……あんまり騒ぐとチェンが──既に睨んでるな。

 

『シバッチャオウカナ』

 

 何されるんですか? 

 縛って東京湾に沈められるんですか? 

 沈めなくても海を漂ってるだけで藻屑になりますよ? 

 

「ねえ聞いてる?」

 

「はいはい」

 

「毎日ワクワクしながら過ごしてたんだよ、私。ソフィアちゃんには悪いけど……次はどんな話を持ち込むのかなってあんまり眠れなかったし」

 

 本当に酷い話だ。

 

「あ、ちょっと! 今はそんなこと思わないから! でもあの時はソフィアちゃんの顔だってほとんど見たことなかったんだから仕方ないじゃん!」

 

 まあ、そうか……そうか……? 

 

「で、さ……ワクワクはしてるけど……私より歳が一つ上なだけの男の子がそんな事してるってなったら、私もプライドが傷つけられちゃうわけじゃん?」

 

「じゃんって言われても」

 

 そういう時期は40年前くらいに過ぎてる。

 

「だって、わたし深山家の長女だよ? 将来は深山家を継ぐにふさわしくある為に教育を受けてたんだよ? それが貧乏な一般人の子供に憧れるなんて……言える訳ないでしょ?」

 

「そう聞くと親不孝極まってるな……俺なら泣くぞ」

 

「今はいいじゃんその話は! ……親不孝の話するならアキヒロさんこそあの2人にめっちゃ心配かけてるでしょ! 私の比じゃないくらい!」

 

「母さんはな。父さんは別に」

 

 エリックは俺と似てるんだ。

 俺が似てるんじゃない。

 エリックが似てるんだ。

 

「すぐ話逸らして……それで、実はこっそりアキヒロさんの事見てたんだ。あと、何してたのとかメイドに聞いたりして……普通の男の子じゃないんだって、本当に特別な人間は生まれとか関係ないんだなって打ちのめされた」

 

「…………あれっ」

 

 なんか思ってたのと違う。

 そこは『意外と普通の男の子で、自分と同じ人間なんだって安心した。だからなのかな、目が離せなくて──』とか言うところじゃないのか。俺の読んでた小説だとそんな感じのはあったぞ。

 

「え? いや、だから普通じゃないんだなって──」

 

「うん、そこは聞いてたんだ。納得がいかなかっただけなんだ」

 

「あはは」

 

「あはは、じゃないが」

 

「──ふふ」

 

 慈愛の笑みってこういう時に使うものじゃないよな。

 

「あのね…………ソフィアちゃんを助ける為だけに私のお父さんを説き伏せて、人材をかき集めて、アイテムを揃えて一級ダンジョンになんて乗り込んで──その時点で、気付いてはいたんだよね」

 

「何に?」

 

 しかし、ニコリと一度微笑んで質問は黙殺された。

 最後まで黙って聞けということか。

 

「ソフィアちゃんも、ロイスくんも、ネルさんも、みーんな無事に帰して……それなのに自分だけ帰ってこない。そんなの──」

 

 そこで、しばらく言葉に迷った。

 ゆっくりと首を振って、あらためて口を開く。

 

「たった一つ、何かが欠けるだけで人は笑えなくなっちゃうんだって…………私は……初めて知った」

 

「──そうだな」

 

「みんな、ドヨドヨってしてたんだよ? アキヒロさんだけ残してきちゃったって……それなのに、最後にはそういう空気を蹴飛ばすみたいにウチに戻ってきてさ」

 

 2回も追い払われたけどな。

 

「そうなったらもう認めるしかないじゃん」

 

「何を?」

 

「…………教えてあげないっ」

 

「うぬぬ」

 

「何でも知ったような顔してるんだから、自分で考えられるでしょ?」

 

 そんな顔はしたことがないけど、確かに考えれば分かるか。

 

「全然分からん」

 

「考えてないじゃん」

 

 目の前に答えがあるのに考える必要がどこに……

 

「そういう、小賢しいやり方を使わなければもっと…………かっこいいんだけどね」

 

「そうか」

 

「うわ、そういうスカした態度取ってると愛想尽かされるよ!」

 

 愛想尽かされるよ、ってのは女の決め台詞なのか? 

 何でもいいけど結局わからん。何を認めたんだ。

 俺がかっこいいってこと? 

 

「もういいよ……」

 

 ガッカリされる筋合いはないと思う。

 

「はい! この話終わり!」

 

「あ、はい」

 

「…………それもそれでイラッとくる」

 

 どうしろと。

 

「愛想尽かされちゃえばいいんだ」

 

 愛想2回目。

 よほど俺は愛想が尽かされるように見えるらしい。

 思い当たる節しかないので反論はやめておいた。

 優しさに感謝するがいい。

 

「それで、その手鞠って人の世話は誰がやるんですか?」

 

「俺だろ」

 

「ダメに決まってるでしょ!」

 

「ええっ」

 

 直に任されたのは俺だ。その俺がやらずして誰がやるというのだろう。

 まさか、ミツキ達に押しつけろと? それこそふざけた話だ。

 

「あのさ……アキヒロさんが女の人の世話なんてしたら、話が拗れるに決まってるじゃん」

 

「拗れないぞ?」

 

「いやいや、もう分かりきってるから……高校で散々見たからそういうの」

 

「なにそれ。俺が知らないんだけど」

 

 違う人間と勘違いしてるのかもしれない。

 ロイスとか。

 ロイスとかロイスとかロイスとかロイスとか。

 

「だる」

 

「だっ──」

 

 だるい!!?!?!? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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