【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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14_シェン先生は偉大で尊敬できる人物です

 

「あ! 加賀美さんだ! おーい! ……あれ、なんか顔が……歪んでる……」

 

「意外と戻ってくるの早いんだ、ドラゴンの時は時間かかってたのにな。なんで顔歪んでんの?」

 

 3人は装備を新調させていた。

 三船くんとシエルは金属製の鎧からモンスター製のものへ。倒したアリの外殻を削り出して作ったものだろう。

 防御力がやっと1になったって感じだな。

 ハシュアーのは金属製だ。やや歪に見えるのは俺の目が良すぎるからか、それとも本当に歪んでいるのか。

 

「うげっ、分かっちゃうか……自分もボコボコだからか」

 

「ハシュアーは自分で作ったんです! ……顔、どうしたんですか?」

 

 すごく驚いた。

 炉を作りつけるのに大層な金が必要だったはずだ。

 まさか俺が第一セクターに行っている間に炉を作るだけの金を稼いだのか? そうだとしたらもう教えることはないので寂しくなる。

 

「違うよ! 叩いて作ったの! ……アキヒロさんも顔叩かれた?」

 

 ソレは分かってる。

 温めて叩いて作るんだろ? 

 

「ちーがーう! 叩いて! 作ったの! 加賀美さんの顔と一緒!」

 

 ハシュアーの話をよく聞くと、どうやら冷間鍛造というものを行ったらしい。厳密にはイルファーレの炎を微妙に使っているらしいけど、そこら辺はよくて、炉を使わずに鍛造しているということだ。

 頑強な金属、それも厚みのあるものを加工するのは金属分子同士の結合を緩めることが適切だ。それをこのドワーフの少年は、常温下において己の腕力のみで行ったという。

 すごい。

 

「レイトさん、この人話聞いてる?」

 

「何もなかったことにしたいのかも?」

 

「なんで? というか何を?」

 

「さあ……」

 

 本題に入ろう。

 

「3人とも、エリュシオンには何かされてないな?」

 

「僕は今のところ大丈夫です」

 

「シエルは?」

 

「…………」

 

「ハシュアーは?」

 

「俺も今は」

 

 何もないなら、それでよかった。

 パッと見では身体に庇うような動きはない。

 きっと大丈夫だ。

 きっと。

 

「第1セクターはどんな感じでした?」

 

 買い物をしながら話す。

 エリュシオンが活動を禁じられたおかげで、あのうざったいデモ集団とフードの奴らは見られない。それでも、行き交う人間の中にはきっとシンパが混ざっているのだろう。

 人はたとえ悪いことをしても、表面上は飄々と生きていくことができるから。あるいは、悪いと思っていなければ堂々と。

 

「本部が崩れて……大変なんですね」

 

 あんまりイメージできてなさそうな反応だった。

 

「すみません……」

 

 確かに、物が壊れるっていうのは莫大な経験からふんわりとイメージするものだから難しいかもしれない。

 

「あんな大きな建物が崩れるっていうのが……はい」

 

 早苗ちゃんと同じく劇の話をすると、それには強い興味を示した。逆にハシュアーの理解が及ばないようで、何が面白いんだと首を捻っている。

 見なくていいよ。

 

「劇かあ……僕は一回も見たことないですけど、詩みたいなのなんですよね?」

 

「そうだな。もっと臨場感あるけど」

 

「うわあ! 観てみたいなあ!」

 

 そう言うなら、俺の代わりに三船くんこそ行くべきだったのかもしれない。

 

「いつか、自分のお金で行きます!」

 

 俺だって一銭も払ってないけど、そんなこと教えたら理由を話さないといけない。余計な口はチャックだ。

 

「ダンジョンではいい感じにできたか?」

 

「はい! ディーンさんに結構教えてもらって……あ、ディーンさん怒ってました!」

 

「ああ……」

 

 なんとなく理由はわかる。

 そこは後で話を──

 

「おおいコラ!」

 

 割と聞き慣れた声が道の反対側から飛んできた。

 もっと言えば、肩を怒らせた男が指をこちらに向けながらすっ飛んできた。

 

「なに逃げてんだよ!」

 

「ディーンじゃん」

 

「ディーンじゃん、じゃねえよ! 話聞いてんのか!」

 

「チンピラディーン」

 

「ぶっ飛ばすぞ! つーか話覚えてんのか?!」

 

「分かってる分かってる、アンダーの話だよな? 下行きたいっての覚えてるよ」

 

 俺がそんな大事な話を忘れるわけがない。

 ツンツンしてはいるけどマトモな、貴重な人格者を失うわけにはいかないんだ。女に囲まれてるからいいカッコしてるだけ? それはそう。

 

「鍛えたぞ! 教えたぞ! 特に雛見が頑張ったぞ!」

 

「ありがとう」

 

「出すもん出すんだろうなあ……!?」

 

「え? 今出せるのはこんくらいだけど……」

 

 ポケットの中にちょうどチビ魔石が入ってた。

 これで許してくれるなら。

 

「いらん!」

 

「ああっ」

 

 この米粒でも1食分くらいにはなるのに……

 

「ダンジョン行くぞ! ダンジョン!」

 

「今から? 逆にお前が準備できてるのか?」

 

「できてねえ! 明日行くぞ!」

 

「分かった」

 

 ソロ活動のメリットが出たな。

 ……いや、大学行かなきゃじゃん。

 

「ごめん、明日大学だからやっぱ無理だわ。夜からなら……」

 

「じゃあ明後日!」

 

「それはいける」

 

 ついでに明日、実家にも顔を見せよう。

 父さんが帰ってきてるかもしれないから、あのお守りの話をしたい。どこで手に入れたのか。

 

「……ったく」

 

「ありがとな」

 

「気持ち悪いな……本当に大変だったんだぞ」

 

「肩でも揉もうか?」

 

「その分ダンジョンで協力しろって言ってんだよ!」

 

「そりゃ勿論」

 

「ったく……」

 

「大丈夫だ、三船君たちを手伝うてもらった時間が損だったとは思わせない」

 

「そんな事気にしてねえよ」

 

 気にしてたら条件にあげるわけないか。

 

「ともかく、次は逃げるなよ! うちのメンバー結構怒ってんだから!」

 

「こわ」

 

 女の恨みは海よりも深い。

 全部ディーンに押し付ける方法はないかな……勝手に発散してるか、若いんだし。

 

「……なんだよその目、こちとら協力してやったんだからな! バカにしてんなよ!」

 

「バカにしてないって」

 

 来るのが突然なら、去るのも突然だ。

 

「ばーかばーか! はげ!」

 

 小学生並みの罵倒を繰り出してどっかに行った。

 よほどストレスが溜まってるんだな、可哀想に。

 黒一点ってのも大変だ。たまには黒成分マシマシでお届けしてやらないと壊れるかもしれない。

 萎びたナスみたいになってる時とか。

 

「…………」

 

「どしたい」

 

「ディーンさん、いつもは今みたいな感じじゃないんですけど……」

 

「そりゃ年下と年上じゃ態度も違うだろ」

 

「……そうですね」

 

 次の日、大学に行くと永井先生の代わりに入ったシェン先生がこめかみをトントンしていた。目付きからしても、温厚な雰囲気ではない。

 

「以前も言った通りだが──私は、教授として行き過ぎた権限を行使するような愚は犯さない。例えば、一生徒に対して、別の教授が受け持つ講義を休んでもいいだなどと勝手な判断をするとか」

 

「ええ、聞きました」

 

「では私が言いたいことはわかるな?」

 

「残念ながら、人の心を読む術は心得ておりませんので」

 

「ふむ……これは余談だが、根回しにどれだけの力がいると思う?」

 

「さあ」

 

 曖昧な言い方しなきゃいいのになあ……おおかた、自分のイメージが崩れるのが嫌なんだろう。気持ちはわかるけど、俺にそういうのは通用しない。だって就職しないから。

 

「物分かりが悪いな。だからあの老人と組んでいたのか……」

 

 そもそも俺、この人がなんの権威かよく分かってないところがある。お金の権威? 

 

「私の講義を受けてすらいない阿呆が私の部屋に今、立っていられる理由は、永井文俊の過去の実績のおかげだ。それも今となっては昔のこと……正確に記された内容とて、更新しなければただの時代遅れだ」

 

「──だからこそ、永井先生はいまだにフィールドワークを怠りませんでした」

 

「ふん、健気なことだな。それも姿をくらました今となっては無意味でしかない。何がしたかったのだか……」

 

 半殺しにしても良かったけど、髪の薄さに免じて許してやることにした。

 結論から言えば俺は今、集られている。授業出席を見逃すかわりに金を寄越せと言っているのだ。

 

 もちろん渡す気はない。今、この薄らハゲに金を積めば今後も集られることは予定調和だ。

 穏便にやる方法はいくつかあるので、そのうちやるとして──今を切り抜けるのが面倒くさい。

 俺は武力と財力の両方を持っているので、そのどちらかが最後に切れる札になる。逆に言えば、それを切ったら実質失敗していることになる。

 

「脳の足りない奴め……それでよく大学に入ることができたな。私が担当官であれば落としているところだ」

 

「幸運でした」

 

「……仕方あるまい、単刀直入に言おう。貴様の出席日数を誤魔化してやるには色々と入り用なのだ。私が手を回すかわり、それに必要な分は貴様が出せ」

 

「え? でも永井先生はそんなこと一度も言いませんでしたけど……」

 

 今日はアホのフリでなんとかならないか試してみることにした。

 

「私は永井文俊ではない、分かったか?」

 

「あ、はい……え? シェンさんは永井先生じゃないですよね?」

 

「……そこは繰り返し聞くところではない。そもそもさん付けで呼ぶな。シェン教授かシェン先生と呼べ」

 

「え? 教授でしたっけ……准教授じゃありませんでした?」

 

「いずれ──というか私であれば直ぐに教授になれる! いちいち口答えをするな!」

 

「あ、はい」

 

「なんだこいつは……そこそこ優秀だという話はなんだったのだ永井め。くだらん贔屓などしおってけしからん」

 

 噂では、あまり金のない女子生徒に対して援助をする代わりに──とかで普通にドン引きもいいところだ。噂は噂だけど、火のないところに煙は立たないからな。

 ちなみにその話はコウキさんにしてある。ミツキとアリサに何か起きそうになった時点で飛んでくる筈だから心配はしてない。俺でも良いんだけど、あの人みたいな超感覚を持ってるわけじゃないから仕方ないんだ。

 

「えっと……取り敢えず帰って良いってことですか?」

 

「そんなわけあるか! ……いいか? 私が言うことをゆっくりと復唱しろ」

 

「は、はい」

 

「シェン先生のところに」

 

「シェン先生のところに」

 

「授業欠席のために必要な金を持ってくる」

 

「授業欠席のために必要な金を持ってくる」

 

「分かったか?」

 

「……へ? 何がですか?」

 

「んがっ……!」

 

「あ、ごめんなさい。な、な、なんの話でしたっけ……」

 

「なんっだこいつ……! 金を持ってくるという話だ! この脳足りんめ!」

 

「えっ……ん? ……それって復唱するってだけの話だったような……? ごめんなさい、どういうことですか?」

 

「屁理屈を言うな! ……ええい! 今日は出て行け!」

 

 はい、俺の勝ち。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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