【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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2_街の様子は

 

「こ、こない……」

 

「……なんで?」

 

 確かに激しく不快な音は鳴っている。

 何かが泣き叫ぶような、爆発するような、衝突するような音は、僕にもちゃんと聞こえている。

 

 それが、僕たちの首を刈り取る鎌のはずだった。

 

 僕だけ逃げるなんて絶対にしない。あの時の気持ちをまた味わうなんて絶対に嫌だから。

 なんとかして、最後まで戦って……ダメでも、シエルちゃんの側を離れないつもりだったんだ。

 

 ──大きく咲いた赤の花。

 

 ──ひっきりなしの雷鳴(つい最近まで聞いていた音)

 

 ──砕かれた岩のカケラが飛んでくる。

 

 ──金属同士が打ち合わされる音。

 

 そんな音が、僕たちと全く関係ないところで鳴らされている。

 

「な、何が起こってるの……?」

 

「……レイト、今のうちに逃げて」

 

「──バカ!」

 

「痛っ……」

 

「絶対に僕は逃げない! シエルちゃんを置いて逃げたりするもんか! …………あ、ご、ごめん!」

 

 気が付いたら手が出ていた。

 それで、今するべきじゃない喧嘩が始まってしまった。

 

「……ばか」

 

「う…………バカはシエルちゃんだ!」

 

「逃げろって言ってるのに、逃げないのがバカじゃなくて何なの!」

 

「言ってるじゃないか! 僕だけ逃げるなんて嫌だって!」

 

「そんなわがまま言ってる場合じゃないって分かってよ!」

 

「わがままはシエルちゃんだ! 自分のやりたい事しか言わないで! ……昨日だってそうだ! 僕が起こすまでずっと寝てて、家事だって全部僕がやったじゃないか!」

 

「それは今関係ない!」

 

「関係ある! いつもいつも、僕はシエルちゃんの言うことを聞いてた! だから、今だけはシエルちゃんに僕の言うことを聞いてもらうよ!」

 

 音は続いている。

 だけど、どうしてもここで。

 この分からずやを分からせる時が来たんだ。

 

「僕はリーダーだ! 妖精のとまり木の! 弱くてもなんでも、僕がリーダーだ! シエルちゃんはただのメンバーなんだから、僕の言うことを聞かなきゃダメ!」

 

「…………そういう屁理屈じゃ……誤魔化せないんだよ」

 

「そんなことない!」

 

 項垂れたシエルちゃんの肩を掴んで、無理やりに前を向かせた。

 

「何で最初から諦めるんだよ!」

 

「…………帝国には勝てないよ。今、ここから逃げられたとしても……もっと多くの兵隊がやってくるから」

 

「それも倒せるかもしれないじゃないか!」

 

「……私が裏切ったってなったら、お母さん達もきっと、裏切り者だって扱われる。もう遅いけど……でも、私が死ねば少しはマシになるはず」

 

「──」

 

 膝から力が抜けていく。

 そんな情報を後出しされて、何かを言えるわけがなかった。

 

「なんで……なんで今なんだよ……」

 

「…………」

 

「3人になって……やっと、色々揃ってきたじゃないか……」

 

 僕だけが生き残った。

 そこから、ここまで本当にいろいろなことがあった。

 そのほとんどをシエルちゃんと一緒に乗り越えてきた。

 だから、信じられない気持ちの方がいまだに強いのに……シエルちゃんの真剣な表情は僕の心を否定する。

 

 だけど、もう1人のメンバーの顔が思い浮かんだ。

 

 ハシュアーは、こんな時でもきっと諦めない。このセクターにいるほとんど全てのパーティーに加入できないか聞いて回ったって聞いた。

 

 そうだ。

 僕は彼のリーダーでもある。

 あの、勇気に満ち溢れたドワーフの。

 

「……!」

 

 膝を叩く。

 抜けていた力を、無理やり入れ直す。

 いつまでも諦めているままの顔をまっすぐに見た。

 

「それでも僕は逃げない」

 

「レイト、いい加減に……!」

 

「加賀美さんやミツキさんのお父さんだっている。できることは、きっとある筈だ!」

 

「だから……」

 

「それで、シエルちゃんのお父さんやお母さんも一緒に暮らせるようにするんだ!」

 

「…………」

 

 そうだ。

 それが良い。

 そうすれば良いんだ。

 簡単なことじゃないか。

 

「だから、ほら、まずは……家に行こう!」

 

「レイト……」

 

「走って! …………ほら、いくよ!」

 

 武器を取って戦うんだ。

 だってほら、僕たちは探索者だから。

 

 今も続く音が何なのかは分からないけど、そのエリ……エリン何とかに見つかるまでは僕たちの時間だ。

 渋るシエルちゃんの手を取って走り出した。

 

 

 ──────

 

 

『見つけたぞ! 追いかけろ!』

 

『待てええ!』

 

『こっちだ!』

 

「なんでっ……!」

 

 僕たちは街の中で逃げ回っていた。

 外から中に戻ってきたらいきなりだを

 そこかしこでロープに身を包んだ人間が走り回っていて、街の人を襲っている。

 探索者達が応戦しているけど、数が足りない。

 それに、ローブの人たちは一般人のはずなのに怯まず攻撃していた。押され気味な探索者もいて、そんな時は後ろから──

 

「うりゃっ!」

 

『げぇっ!』

 

 僕だって探索者の端くれだ。

 人間を蹴り飛ばすくらいの力はある。

 

「助かった! レイトきゅん!」

 

「うん!」

 

「こっちは俺たちがやる! 早く武器持ってきてくれ!」

 

「分かってる!」

 

 家に戻るまでには、遠回りをしたせいで随分と時間がかかってしまった。

 

「…………」

 

「ほら、シエルちゃん! みんな戦ってるから!」

 

「……あれは普通の人だよ。みんな、審問官の演説を聞いて従ってるだけで……」

 

「だから、僕達が止めるんだ! まずはそこから!」

 

「上級審問官の2人は……」

 

「そういうことは後で!」

 

 胸の内側から楽しい気持ちが溢れ出てくる。

 さっきまでの暗くてモヤモヤとした、どこまでも寒い気持ちが嘘みたいだ。

 

「一緒にみんなを守ろう?」

 

「……」

 

「それとも……仲間を傷付けるってことになっちゃう?」

 

 そこは無視していたところだった。

 シエルちゃんが言ったことが本当なら──もう、それを疑ってもいないけど──今、攻撃を仕掛けている人たちの大元にはシエルちゃんの仲間がいる。

 その人たちと戦うのはできないんじゃないかって。

 

「一緒には戦えないかな?」

 

 だとしても僕はシエルちゃんと一緒に戦いたい。

 それが、今の僕の嘘偽りない思いだった。

 

「…………はぁ」

 

「!」

 

「さっきの」

 

「うん!?」

 

「お母さん達のこと」

 

「あ、うん!」

 

「ちゃんと約束守ってね」

 

「分かってる!」

 

 取り敢えず、今のシエルちゃんの言うことには全て頷くことにした。さっきは暗い話ばかりだったけど、今の様子ならもう大丈夫。

 

「本当に分かってる?」

 

「分かってる! お母さんを助けるんだよね!」

 

「…………はぁ……行くよ」

 

「うん!」

 

 扉を開けて中心部に向かうと、ワーワーって声がやっぱり聞こえてくる。その中に飛び込んだ。

 

「……ひどい」

 

 以前はお店で顔を合わせていた人たちが、一心不乱に探索者を襲っていた。血走っていて──僕やシエルちゃん達が男の人に襲われた時もあんな感じだった──正気とは思えない目つきだ。

 手に持っているのは包丁や木の棒なんかで、探索者の防御能力を突破できる筈はない。

 それでも、手傷を負っている人がいる。

 

「こいつら! 異能を使いやがる!」

 

「炎だの雷だの……俺たちが欲しいっつうの!」

 

「……仕方ねえ! ぶん殴って止めるぞ!」

 

 平穏なセクターが、ダンジョンよりもよほど危険で殺伐とした場所に変わってしまった。

 昨日はみんな笑顔で通りを歩いていたのに。

 

『うああ!』

 

「──やっ!」

 

『ごげっ』

 

 ナイフをお腹に構えて突っ込んできた子供の顔面へ拳を突き出した。自分の勢いをそのままダメージとして倒れ、ひとまずは3人を制圧。

 シエルちゃんには、先ず体術で何とかしようって言ってある。ナイフや包丁くらいじゃ僕たちも傷つかない、はず。

 

「ハシュアーも見つけなきゃ……」

 

「……いいの? 今の、子供だったけど」

 

「うん。こういうときは子供の鼻を殴るのが正しいって言ってたから」

 

「それ、あの人だよね」

 

 加賀美さんが鼻を殴ったのはやむを得ないタイミングだったって言ってた。今のもやむを得ないとタイミングに入ると思う。

 

「そういえば加賀美さんは……」

 

「どうせヒナタ達の家でしょ」

 

「…………」

 

「……な、なに?」

 

 すごいよく喋る。

 いつもよりもシエルちゃんの声を聞く時間が明らかに長い。

 

「ううん、なんでもない。行こう!」

 

 セクターを走り回って時間が経つと、やっぱり探索者が優位になっていく。だんだん暴れてる人間が減って、商工会の建物の前に集められていた。

 商工会の偉い人? が話している内容をさりげなく聞くとこんな感じだ。

 

「全く……こんなことは史上初だ」

 

「はい、それに魔素の急激な増大が認められました。コントロールの為に避難を誘導しましょう」

 

「騒動は完全に収束してるのか? …………!」

 

 僕、見られた? 

 

「ちょっと! こっちに!」

 

「あ、えと……」

 

 支部の中に入るって事だったから、シエルちゃんも一緒に。

 

「君は三船黎人くんだね」

 

「は、はい」

 

「どうだ? 街の中はどんな様子だった?」

 

「えっと……みんな戦ってました」

 

「今は落ち着いているか?」

 

「最初よりは……かな」

 

「ふむ……では、街の外で聞こえるという音の正体は分かるか?」

 

「あっ!」

 

 そうだ。

 僕たちが外にいた時から聞こえていたあの音。

 あれは何なんだろう。

 

「それなんですけど、僕たちも分からないです。流石に近付けなくて……」

 

「そうか……いや、不埒者どもはとっ捕まえたが──君たちもやってくれたわけだしな? ──あの音の正体だけは異様なものを感じて近づけなくてなぁ。何か知っていればと思ったんだが」

 

「うーん……」

 

 本当にわからないから、何も言えることがなかった。

 強いて言うなら、シエルちゃんが来るって言ったタイミングとピッタリ同じに鳴り始めたことくらいかな。

 

「いや……しかしそうか。2人ともすまんな、足を止めさせて」

 

「いえ」

 

 そういえばナナオさんはいるのかなと思い立って確認すると、普通に中で仕事をしていた。忙しそうにしているので話しかけるのはまた今度に。アオイちゃんは今日は非番らしい。ちょっと心配かも。

 でも、住んでるところ知らないんだよね。

 

「あー!」

 

「え?」

 

「これ聞き忘れてた! すまんすまん!」

 

「あ、はい」

 

「加賀美明宏がどこにいるか知らないか?」

 

「…………僕も見てないです。最後に見たのは加賀美さんの家で……そのままなのかなあって」

 

「そうか……ああ、ありがとう。それでだな、ついでで悪いんだが伝言を頼みたい」

 

「伝言?」

 

「一度商工会に来て欲しいんだ。このセクターの最高戦力だからな」

 

「分かりました! 一応言ってみます!」

 

「い、一応か……とにかく頼んだぞ!」

 

 この状況で加賀美さんがヒナタさんと早苗さんの側を離れるのか、ちょっと怪しいところがあった。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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