【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「え!? 僕たちを追ってきたんですか!?」
「おう──え? アイツいないの?」
「いません……というか、会ってません」
「はあ!? ちょ、後ろ見せろ!」
嘘だとは思ってないんだろうけど、家から裸足で飛び出して通りを何度も確認していた。というか、家の中にいたって事は今の状況分かってないんだよね?
「また暴れてんのかよ……」
「それだけじゃなくて、探索者を攻撃してて……」
「はああ!? んだよそりゃ、イカれてんな」
流石にシエルちゃんの事は軽々しく話せなかった。
言うにしたって、もう少し先というか……それこそタイミングってものがあると思う。
「…………」
シエルちゃんも不安なのか、裾を掴んでくる。
僕の背中側でモゾモゾしているからヒナタさんも気になって顔を覗き込ませた。
「シエルは何してんださっきから……レイトの服に皺できるぞ」
「いいんです」
「ああ? まあ、良いなら良いけど……そんなとこいつまでも突っ立ってないで一旦入れ」
「え? でも、加賀美さんを探した方が……」
「こんな状況で探しに行ってもすれ違うに決まってんだろ」
「商工会の人から伝言もあって……」
商工会に寄って欲しいっていう話が。
「無視だ無視」
「ええ……」
「そんなことより──」
ヒナタさんは、視線をシエルちゃんに向けた。
「さっき、何で飛び出したかちゃんと説明しろ」
「…………」
まずい。
「レイトもアキヒロもソレに付き合わされてんだからな。理由はちゃんと──」
「あのっ!」
「あん?」
「それよりお腹が空いたんですけど……へへ、ご飯ってありま痛てててて!」
千切れちゃう!
なんで!
ほっぺたが!
ヒナタさん力強い!
「それよりってどういう了見だ! 真面目な話してんだよ! あと、ご飯は抜きだ!」
「ええっ!? ──じゃなくて!」
「ああん!?」
「ひっ…………その……シ、シエルちゃんの事は僕に任せて欲しいんです」
「ああん?」
「理由を言うのは今はまだ早いというか……」
「早いってなんだよ」
「それは……」
やっぱり僕の頭じゃ上手いこと言えそうにもなかった。
普段はこういうところ担当なシエルちゃんも、今回は本人が原因だから頼れないし──というところで、思わぬ助けが。
「レイトくん、言えないのにも理由があるんだよね?」
「は、はい!」
「神様の、みたいな」
「そうです!」
ちょっと情けないけど、早苗さんの言葉に丸ごと乗っかることにした。
「ヒナタちゃん、そういう事だから」
「はあ? だからさあ……」
「ヒナタちゃん」
「……ちっ」
「えらいえらい〜」
「やめろ」
ヒナタさんは、お姉ちゃんからのナデナデでも険しい顔のままだった。
「シエル」
「……」
「そのうち話してくれるんだな?」
「……うん」
「なら、いいか」
表情を崩して、今度はヒナタさんがシエルちゃんの頭を撫でる。
「んん……」
シエルちゃんはちょっとだけ居心地が悪そうだけど、ヒナタさんは寧ろ楽しそうだった。
「レイトくんも、ほら」
「?」
「頭下げて?」
「……はい」
よく分からないけど、なぜか僕も頭を撫でられた。
小さくて柔らかい手。
恥ずかしいけど心地良かった。
早苗さんは加賀美さんの前だともっと子供っぽいのに、そうじゃないときはお姉ちゃんだ。
「そりゃあ、なあ?」
「まあね〜」
これ、アレだ。
ソガイカンってやつだ。
最近ディーンさんに教えてもらったから知ってる。
……こんな呑気に時間を潰してるけど、外は大丈夫なのかな。
加賀美さんも。
「アイツなら大丈夫だろ」
そのセリフも山田家に行くまでは信じられたかもしれないけど、無茶苦茶ぶりを知ってからだと……ヒナタさんが盲目的に信じているのはちょっとよく分からない。
「なんだかんだで大丈夫なやつだから」
「うんうん。私はテマリさんの様子見てくるね」
そうだ。
僕たちはテマリさんの部屋から飛び出してきたんだ。
正しくは加賀美さんの寝室なんだけど……
「……」
「シエルちゃん……今は、ね?」
「……うん」
テマリさんの事を悪く言いたいとかはないけど、そもそも第一セクターの事でシエルちゃんは何も悪くない。
スパイが何か知らないけど、シエルちゃんは僕と一緒に探索者として活動していた。リヴァイアサンを目覚めさせるって何をすればいいのかな。とんでもない事をした人がいるんだとは思うけど、少なくともシエルちゃんは関係ない。
「休む?」
「うん」
本当は家に帰って休みたいけど、今また外に出ると暴徒に出くわすかもしれない。かなり減ったと言っても、アリみたいに増援が来ないとも限らない。
前回の探索は本当にひどかった。結局ハシュアーが暴走して何とかしたけど……僕もそれなりに頑張った。
「ふー……」
ソファーに腰を落とすと、何だか疲れが押し寄せてくる。シエルちゃんもグイーって、コマちゃんみたいに手足を伸ばすと力を抜く。だらんとしたまま、顔だけが僕の方を向いた。
「……ありがとう」
「うん、頑張ろうね」
──大きな衝撃音。
家が揺れ、ソファーも一瞬浮くほどの衝撃が窓ガラスを蹴散らして家の中に散らばった。
「──!」
「今の……」
シエルちゃんと目配せをした。
武器を持って、足音を抑えて進む。
ヒナタさん達も気付いている筈だけど、ここは僕たちの出番だ。
──また、一つの音が。
今度は水面を叩くような音だ。
剣を構えて、シエルちゃんは後ろに。
弓を引き絞った状態だけど、援護射撃の腕前も上がってきている今の彼女なら僕の頭を射抜くこともない。
『──』
「っ!」
グチャグチャと歪な音を鳴らしながら、扉の外にナニカがいる。
「シエルちゃん、一気に行くよ」
「ん」
扉に駆け寄り、蹴り開けた。
「うりゃっ! ────!?」
血溜まり。
肉片。
人間の右腕。
砕けた蔦と棘。
引きちぎられた銀色のネックレスと白い腕。
銀髪の女の人の頭が転がっている。
大柄な男の人は胴体を引き裂かれて、光の失われた瞳が僕たちを見ていた。少し離れた場所に残された下半身がを
どちらもフード付きの服を着ている。
「はは……ははははは!!」
高らかに笑い声をあげている彼は……?
「うっ!?」
「っ……」
むわりと広がった鉄臭さに気分が悪くなる。
何とか吐くのを堪えて、シエルちゃんを咄嗟に抱きしめる。
目の前の光景を深く見せたくなかった。
「うええっ」
足元に吐瀉物が落ちこぼれる。
背中をさすると、その場にさらに撒き散らした。
シエルちゃんに声をかけたかったけど、僕も実のところ余裕はない。
「──あ゛あ゛」
目の前にいる血みどろの怪物が恐ろしくて仕方なかった。
あの2人の素顔を見たのは初めてだけど分かった。シエルちゃんが言っていた上級審問官だ。ハシュアーを襲った犯人でもある2人が、世にも無惨な死に方をしていた。
「ごぼおっ! ……べっ! …………ははは……」
そして、そんな殺し方をしたのは目の前にいる探索者だ。殺したばかりの審問官達の血に塗れ、素顔をハッキリと見る事はできない。
大きな怪我を負っているのは見てわかるけど、明らかに異常な精神だ。血の塊を吐き出し、それでも笑ってるんだから。
「…………っ」
転がっている右腕を拾い上げて、今まさに落ちた耳を持って、それで限界が来たのか倒れ込んだ。
審問官を倒したってことは、僕たちの味方なんだと思う。
だけど、あまりにもその風貌が恐ろしい。
腕の断面はグジュグジュと動いて再生を始めている。
顔面の半分は焼け爛れて、しかもその上から血が覆っている。
胸の陥没は、きっとあの男の人から喰らわされた一撃だ。
靴はどこかに行ったのか素足で、左足は甲の真ん中から折り畳まれたようになっている。
全身にいた穴からドクドクと血が溢れていく。
見ただけで痛々しくて、何で生きているのか分からない。
だけど、一つだけ違和感があった。
探索者にしては体格がいい、
離れたところからこういう風に見えるのは加賀美さんしか──ん?
顔の血を拭うと、よく見覚えがあった。
「加賀美さん!?」
急いで回復薬を持ってきた。
飲ませて、腕の繋ぎ目にかけると、お肉を焼くときみたいな音が鳴る。
暫く悶え苦しんでいたけど、腕も耳も足も顔も元通りだ。
…………探索者ってすごい。初めてこんな再生を見た。二級以上の探索者ってみんなこうなのかな。
「う……」
「……大丈夫か?」
「…………」
一旦家の中に運び込んで、だけど血だらけだからヒナタさんの膝枕で寝かせていた。目覚めた加賀美さんは少しだけボーッとしていたけど、今自分が何をしているのか把握したのかゆっくりと床に座り直した。
「痛くないか?」
「大丈夫、ありがとう」
ヒナタさんも早苗さんも凄く心配して、加賀美さんが寝ている間はそばから離れなかった。シエルちゃんと僕は他に何か来ないかっていうのを一応警戒していたけど、正直、何がきても対応できないだろうなあって思う。
「何があったんだ?」
「ああ……まあ、あれだ。殺し合いになったって感じだ」
「回復薬は使わなかったのか?」
「2人を追いかけるだけで持ってくわけないだろ」
「……」
「いや……ごめんな。心配させた」
「ん」
アレだけ血を撒き散らしていたから、目を覚ましても加賀美さんの顔は青い。
正直、山田家でのことを思い出して全然安心できないや。
ヒナタさんも同じだと思うけど、早苗さんに至っては血だらけの加賀美さんにしがみついて離れなかった。
そして加賀美さんも、早苗さんを抱きしめて離さない。
「2人は何もなかったんだな?」
「はい」
「ならいい」
「あの……加賀美さんが襲われた場所って……」
「あの池から少し離れた場所だよ」
「!」
それはつまり、シエルちゃんの正体を……
「ああ、心配すんなって。話は聞こえなかったから」
「え……なんでですか?」
「ちょっと別のことに集中してたから、話してるのは分かってたんだけど内容までは聞こえなくてな。そしたらアイツらがやってきたってわけだ」
「そ、そうなんですね」
正直、聞かれてたら色々と終わってたんじゃないかと思う。加賀美さんには悪いけど、別のことに集中しててくれてよかった。
「普通に死ぬかと思った」
「武器は……まさか素手で戦ったんですか?」
「──あ、やべっ、あっちに落としてるかも」
あっちというのは血溜まりのことだった。
肉片、というか自分が殺した相手のことは気にならないのか。赤を容赦なく踏みつけて、落ちていたナイフを拾い上げる。失血の影響か、かなり身体が重そうだ。
「はあ……人間の血なんかで錆びさせたらヴォルフガングに呪われるんだよ……本当に」
「…………」
シエルちゃんは凄く複雑な表情で加賀美さんを睨んでいた。どういう関係性をあの2人と築いていたのか分からないけど、やっぱり仲間だったんだ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない