【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
商工会からの伝言を伝えたあたりで、逆に向こうからこちらにやってきた。
さっきの衝撃を受けてのことだと思う。探索者も大勢。
加賀美さんは青ざめた顔のまま出て行こうとして、やっぱりフラフラとしている。
「バカ! 休んでろ!」
「…………あのスプラッタの説明を他に誰ができるんだ」
「ちょっと待ってろ! こっちに呼ぶから!」
ヒナタさんは、それでも動こうとする加賀美さんわ無理やり座らせて、商工会の人だけを家の中に連れてきた。
さっきのおじさんとは違う人で、もうちょっとだけ若い。あんな光景を見たせいでだと思うけど、顔色は加賀美さんと同じくらい悪い。
僕も気分は悪い、というのも血の匂いが全然離れないからだ。
「あれは、一体なんだ?」
「例の団体のリーダー2人ですよ」
「……君がやったのか?」
「ええ」
「…………疑うわけじゃないが、君が先に襲ったわけではないんだな?」
「はい」
「ふむ……襲われたと?」
「そういうことです」
話は後にして体を洗った方がって言いたいけど、そういう雰囲気じゃなかった。ヒナタさんは黙ってるし、僕も静かにしてた方がいいんだと思う。
「どういう手合いだったんだ」
「簡単に言えば……妙な異能を使う2人でしたね。以前からそうでしたけど、離れたところに雷や炎を発生させるなんてのは探索者の異能では見たことがない」
「2人のレベルは?」
「40半ばくらいですかね。戦い慣れている様子でしたけど、異能のゴリ押しが──いや、異能を使って人間と戦うのに慣れていたのか?」
「野党の類か?!」
「違う」
「?」
「野党は民衆を煽動できない。頭がないですから。でもアイツらは、人の心を操れる。言葉か、それも異能なのかは分かりませんけど……商工会なんかよりも、もっと画一的に組織化された集団です。一つの目標に向けて……何かをしようとしている」
「何か?」
「何でしょうね。世界征服でも目指してるのか、それとも単純に俺たちを滅ぼしたいのか」
「そんなバカな……」
「支部長、何にせよ油断しないことです。商工会なんていう小さな組織は、いつすげ替えられてもおかしくないんですから」
「…………覚えておくよ」
「そうしてくれると嬉しいです。……ふう……すみませんね、流石に疲れてて……」
「いや、いきなり押しかけてきたのは私達の方だ。今日は退散するよ」
「……ハシュアーは見ませんでしたか?」
「支部でお菓子を食べていたところだ。ツノダくんを守って疲れていたからな」
「はは、そうですか」
「では──」
支部長は帰ると見せかけて振り返った。
「なにか?」
「君は子供が好きらしいな」
「ええ、それがなにか?」
「……いや、いい事だ」
「?」
「ではな」
よく分からない事を言っておじさんは帰った。
シエルちゃんはずっと後ろに隠れていたけど、多分バレないと思う。みんなそんな事考えてもないし。
「わざわざ支部長がやってくるあたり、よっぽど街もひでぇんだな」
「お前はもう風呂入れ」
「……動けない」
冗談とかじゃなくて、加賀美さんは本当に顔色が悪い。そりゃあ動けないよねって……でも、この血みどろを放っておくわけにもいかない。
「三船くん、頼む」
「僕ですか?」
何故か僕が指名された。
ヒナタさんとかサナエさんはダメなんだろうか。
「落ち着きたいんだ……」
「アキヒロくん? それ、どういう意味かな」
「ごめんサナエちゃん……今、冗談に答える元気がなくて……」
「冗談は言ってないかな?」
僕もあんまり褒められてるような気はしなかったけど、指名されたなら頑張ってやる。
「レイト、襲われたら叫んでね」
「そうだぞレイト」
「レイトくん!」
大袈裟だけど、襲われたら叫ぶつもりだ。
「お前らほんま……言い返す気力もねえんだよ……」
「ほらほら、行きますよ」
「うあー」
前だったら絶対に持ち上げられなかった身体だけど、今なら軽々とはいかなくても持ち上げられる。
脱がせるというよりも残った布を剥ぎ取る感じで、お風呂に押し込んだ。
「ありがとう……マジで動くのきつかったわ。身体は自分で洗えるから」
「でも、背中は無理ですよね?」
「うん」
「じゃあほら、遠慮しないでください」
「感動した」
「あはは……」
身体が重そうなのを見ると、とんでもなく激戦だったというのがわかる。
加賀美さんは普通の探索者よりも体格が良い。
それに、1人で活動している所為で良く狙われるから対人戦にも慣れているらしい。
モンスターと一対一で対峙するなんてゾッとしないけど、加賀美さんにとってはそれが普通なんだ。そう言うと大抵は『俺にはコマちゃんがいるんだが?』とか『アリサもいるし』とか言って逃げるけど、別に貶してるわけじゃないのにね。
「んしょ、んしょ、痛くないですか?」
「──こんな懐かしさ覚えたくなかった……」
「え? 痛いですか?」
まさかそんなわけない。
だって二級探索者の背中だ。
傷だらけだから一応聞いてみたけど……もしかしたら僕には分からないだけでまだ塞がりきってない傷があるのかもしれない。
「どこら辺が痛いですか?」
「背中は痛くはないよ、うん……心がね」
「よかった。じゃあ流しますね?」
「……お願いします」
背中を流すと、今度こそ大丈夫だというのでお風呂から僕だけ出た。
「……」
「……」
「……」
なぜか3人が手に包丁やら鍋やらを持っている。
どういうこと?
「大丈夫だったんだね?」
「大丈夫……あ、はい」
「よかった〜……アキヒロくんも流石にそこまで節操なしじゃないか……」
半分くらい冗談かと思っていたのに、この感じは本気だったのかな。
ともあれ、お風呂から出る時もお爺さんみたいなヨボヨボな感じでまた手伝った。加賀美さんが言うには、
何言ってるんだろうね、変なの。
「ソファーまでがこんなに遠く感じるのは中々だな……」
「もう良いから寝ろ」
「そうするわ」
言うが早いか、あっという間に寝息を立て始めた。
単純な疲労じゃなくて肉体のダメージが深いからだと思う。
「本当はベッドが良いんだろうけど、テマリさんに使わせてっからな。そこは我慢してもらうぜ」
「2人の家じゃダメなんですか?」
「まあ、いいけど……」
何だか歯切れが……
「そしたら私の部屋ね。ヒナタちゃんは今日はテマリさんを見て──」
「は? ダメに決まってんだろ。逆だ」
「え〜? でもヒナタちゃん1人の方が好きとか良く言ってるじゃん」
「こいつを寝かせるのに関係ねえだろ。しゃしゃり出てくんな」
良くないスイッチを入れちゃったみたいだ。
「レイト」
「うん?」
「私たちも帰ろうよ」
「……そうだね」
商工会の人がああやって巡回しているなら、もう町中は安全なんだと思う。そうでなくても、一番危険な2人が倒されたんだから僕たちなら大丈夫のはず。
「すいません、一旦帰ります」
「ぐぬぬぬ……あ、はーい」
加賀美さんを運んだから、僕の体にも血が付いている。
当然ヒナタさん達にもついてるから、この後はお風呂に入るんだと思う。僕たちがいるだけ邪魔だ。
「…………」
血みどろを避けて家へ向かう。
やっぱりシエルちゃんは元気がなくて──なんとなくだけど、少しでも目を離したら霧の中に消えてしまう予感がした。
「きょ、今日は夕ご飯どうする?」
「……ぽたーじゅ」
「じゃあ一緒に作ろっか」
「…………」
「ハシュアーにも手伝ってもらおうかな。切るのだけは上手いから」
「ん」
どこか上の空。
聞いているのかいないのかわからない曖昧な返事。
家に着くまでにいろいろな人から話しかけられたけど、ずっと無言だった。
「ハシュアーいる? ……いないか」
まだ支部でおやつを食べているのかもしれない。そっちには寄らないで戻ってきたから、どうなのかは分からなかった。
「ソファーに座ってて良いよ?」
「んー……」
お湯を沸かして待つ間、やっぱりシエルちゃんは微妙な表情をしている。
仕方ないと思う。
話さなくて良い筈の事をたくさん話してくれたから、今は静かにしてたいんだよね。
「これ食べる?」
「ん〜ん……」
僕だって言われた事を整理しきれてない。
それでも飲み込んで、何とかシエルちゃんの役に立ちたい。
「お風呂沸いたから、先入っちゃってね」
「……」
口が上手いわけじゃない。
力だって強くない。
戦闘もあんまり。
頭は良くない。
そんな僕にできることは精々、そばに居続けることぐらいなんだと思う。
「……」
「なに?」
「…………一緒に、入る?」
「──」
真面目に考えていたら、それが全て吹っ飛んだ。
「な、なにっ、なにっをっ……!?」
「…………」
僕の心をあんまり掻き乱さないで欲しい、っていうのは僕の我儘じゃないと思う。誰だって……加賀美さんだってこんなこと言われたら慌てるよ!
「血で、汚れてるから……時間短縮」
「ええっ、いやっ、でも、それはっ、また別問題……っていうか……僕も、男だし……」
「……じゃあ1人で入る」
「っ……!」
──不貞腐れながらそんな風に言われたら、まるで僕が悪いみたいじゃないか。
「ど、どうしてこんなことに……」
「スケベ」
「す、スケベじゃないよ! 見てないもん!」
「さっき、チラチラ見てた」
「み、見てない!」
嘘だ。
本当は今だって、視線がシエルちゃんの方を向かないように必死に耐えてる。
シエルちゃんが悪いんだ。
あんな……僕がまだいるのに脱ぎ始めて。
──もしかして僕、揶揄われてる?
「…………」
何となくムカッときた。
一応、僕の方が年上なんだぞってところを見せた方が良いのかもしれない。
とりあえず、何をすれば良いんだろう。
『男は度胸、女は愛嬌、俺は最強だ』
『つまりオカマって事か……』
『んだこらあ!』
そうだ、コウキさんも言ってた。
男は度胸だ。
意を決してシエルちゃんの方を向こうと──
「あっ、だっ、だめっ!」
「っ!」
シエルちゃんの手が肩に触れた。
振り向けないように抑えられ、でもそんな事より素肌に触れる手の感触が熱くて仕方なかった。
声もいつもより高くて、まるで恥ずかしがってるみたいだ。それが耳から離れない。
「……い、今こっち見ちゃだめっ」
「どうして?」
声が震えてる。
僕も、シエルちゃんも、どっちもが張り詰めた細い糸の上で必死に声を出しているみたいだ。
「…………ダメ、だから……」
「……シ、シエルちゃんが言ったんだよ、僕がスケベだって」
「──っ!」
「うわあっ!?」
背中にまとわりつく感触。
お湯一枚を挟んだ先に、温かくて柔らかいものがある。
間違いなく、お湯でも布でもない何かが。
「シエルちゃん!?」
ますますどうしたら良いのか分からなくて動けない。
だって、動いたら色々なものが。
「わ、わかったから! わかった!」
「……!」
「ひぃぃっ」
何で、もっと密着するんだ!
そう抗議しようとした代わりに出たのは情けない悲鳴。
動けないままでいるうちにどんどん身体が熱くなって──
──────
少しヒヤリとした感覚が額にあって、それが心地よかった。
だけど、その心地よさに身を委ねて気付いた。
僕がいるのはお風呂だった筈だ。
それに暗い。
頭の後ろにある柔らかいものはなんだろう。
ここは──
「う……?」
「…………起きた?」
「──!」
「ダメ、寝てて」
起きようとするのを指一本で止められた。
僕が今いるのは──
「…………」
「あ──」
緑色の瞳に、僕の意識ごと吸い込まれるような感覚だった。
だけど、僕が目を離してないってことは
「……」
優しくて、それでいて辛そうな表情をしているのが気になって……
『やっと終わった! やっと帰れた! やっとお家だポン!』
「!」
玄関の向こうから聞こえてきた声。
そうだった。
ここは僕たち2人だけの家じゃない。
もう1人の住民がいる。
「〜〜〜!」
勢いよく離れたシエルちゃんは頬を押さえている。
どんな顔をしているかは見られないけど、僕も見られたくないから都合が良かった。
……自分が今、何をしようとしていたか説明ができそうにない。
『ハシュアーくんのお家コレなんだ〜……結構しっかりしてるね!』
良く聞く声だった。
依頼を受ける時なんか特に良く聞く。
元気でお姉さんぶっているところが可愛らしい、新米受付嬢の
僕たちの知り合いでもある彼女に今の場面を見られたら、とんでもなく気まずいことになるところだった。
「ただいまー!」
「あ、お、おかえり」
「2人ともいつの間にか帰ってたんだな」
「偶にはアオイちゃんもウチに来たいって言うから連れてきたんだ!」
「ふ、ふーん」
「? ……もう、ほんっとうに大変だったんだよ! いきなり──」
いかに雄々しく、カッコよく、エレガントにアオイちゃんを守り切ったかを語り出した。そんな
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない