【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「それで俺がズバッと!」
「へえ〜」
ハシュアーの話が長い。
前はそんなこともなかったんだけど、最近は少しずつ長くなってきた気がする。
思い当たるのは師匠のレイジさん。
戦い方を教えるだけじゃなくて、エッチなお店のことや武勇伝を聞かされているらしい。
その影響を受けているのかもしれない。
「シエルさん、本当にレイトさんと一緒に住んでるんですね……」
「うん」
「……兄妹とかじゃないんですよね?」
「…………わたしたち、似てないよね?」
「雰囲気は似てるかも……」
「……」
女子は女子で話を始めたけど、これはこれで良かったのかもしれない。凄く気まずい雰囲気になるよりはね。
「ねえ聞いてる!? 俺の話!」
「聞いてるよ〜」
なんと、話はおやつの時間になるまで続いた。
「お腹空いたよお……」
「そんなの後でいいでしょ! 今はとにかく俺の話! 男の人がアオイちゃんに飛びかかってきて──」
「せめて作りながらにしようよ……あ、そうだ。どうせならアオイちゃんも一緒にご飯作るの手伝ってくれればいいじゃない」
「それいいじゃん! アオイちゃん! いつまでもシエルと話してないでご飯つくろうぜ!」
これまでの時間はなんだったのか、ハシュアーはあっという間にアオイちゃんを誘ってキッチンに立った。最初っからこうしていればよかったんだ。
「ふう……」
「……」
「あ……し、シエルちゃん」
やっぱり微妙に気まずい。
さっき変な空気になったのは帳消しになったわけじゃなかった。
だけど、今はお腹が空いている。シエルちゃんも同感のようで、4人で一緒にご飯を作った。
「──よーし! 完成!」
出来上がったのはハンマー型にされた野菜と剣の形にされた骨で突き刺された肉の丸焼き。まさかわざわざ外に出てまで料理をするとは思わなかった。
「ハシュアーくん、やっぱり手先が器用なんだね!」
「おう! なんか作って欲しいもんがあれば言ってくれ! なんでも作るからな!」
センスがわからない。
「もういいから食べよう」
「そうだね……」
ハシュアーには切るところだけを任せたから今回は酷いことにならなかった。アオイちゃんは料理が本当に下手で、切るのすらおぼつかない具合だ。
見かねたハシュアーに包丁の使い方を教えてもらっていた。
僕もそうだったけど、親がいないと包丁の使い方なんて最初はわからないんだよね。
その点、シエルちゃんはお母さんが生きているらしいけど料理は普通なので──
「いてっ……なんで蹴るのさ」
「知らない」
「何だよもう……」
ご飯を終えると、アオイちゃんはソファーでウトウトし始めた。男の人たちに追いかけられたって酷い話だ。
「ハシュアー、偉かったね」
「うん……」
「今日は泊まってくんだよね」
「そっ」
こっちのに来て初めての友達のお泊まりだからかもしれない。すごいワクワクしているようだった。肝心のアオイちゃんは寝ているけど、ハシュアーはそんなアオイちゃんに毛布をかけた。
「アオイちゃんはいつも頑張ってるからな。今日くらいは何もせずに休んで欲しいんだ」
それを言うならハシュアーだっていつも頑張ってると思うけど、体力が有り余ってるからそこまで負担じゃないのかな。
「バカ言え! 俺だって疲れてるやい! でも、なんて〜のかな……俺はホラ、自分でやりたくて今こうしてるじゃん? でも、アオイちゃんはやりたくてやってるわけじゃないっていうか……本当はガッコーに行ってるんだろ? アオイちゃんくらいの女の子って」
男の子も女の子も関係ない。今、この家にいる年齢の子供はみんな、親がいれば学校に行っているっていうのは本当だ。
僕は小学校までしか行けなかったから、その先でどんな事をやるのか知らないけど……楽しいらしい。
「ドワーフには学校って無いの?」
「ないなー」
「大変なんだね」
「なにが?」
「学校がないって」
「なんだそりゃ、バカにしてんの?」
「え……」
「何が大変なんだよ」
「えっと……」
「ガッコーなんかなくたって俺たちは大丈夫だよ。だってドワーフだもん。さっきのはアオイちゃんがって話だから……ヒューマンの感覚で言わないでくれよな」
ハシュアーは少しだけ不機嫌になってしまった。
学校に行けないから僕たちは大変な目にあってるわけだし、間違ってないと思うんだけど……
「そりゃヒューマンの話だろって!」
「……でも、ハシュアーだって苦労してるじゃないか」
「苦労がなんだ!」
「わざわざ、大変な事をするなんて……」
「……もういいよ」
加賀美さんの言った通りだ。
ドワーフっていうのは偏屈なところがある。
ナイフを研ぎ忘れただけでガミガミ言ってくるところからもそう思っていたけど、ハシュアーは分からずやの一面を持っていた。
「レイトさんの分からずや」
──────
少しだけ頭に来て、家を飛び出した。
どこに行くかと言ったら加賀美さんのところだ。
休んでるかもしれないけど、ヒナタさんたちに愚痴を言いたかった。
凄くムカムカとした気分が、モヤモヤとした気分が、良くない感情が、渦巻いていた。
そう思ってやってきたら──
「アイツ怪我してんの!?」
ディーンさんがいた。
良くハシュアーが話しを聞いてる
3人揃って早苗さんに話している。
それを、ちょっとだけ離れたところから聞いてみることにした。
「うん、だからごめんね。今日明日でダンジョンに行くのはちょっと……」
「ええ〜……探索者なんだから怪我の治りも早いし、なんとかならない?」
「さっきまでここら辺もすごい血溜まりでね。もう商工会の人が燃やし尽くしてくれたけど……」
「あー、だから鉄くさいのか。どんだけ出血してんだよ……」
「そうじゃなくて──」
あの話だ。
「そんなひでぇ殺し方したのか……アイツ……」
「で、でもアキヒロくんもすごい怪我だったんだよ! そうじゃなきゃアキヒロくんが殺されてたかもしれないの!」
「まあ、そうなんだろうけど」
「あ、あれ、意外とフツーの反応……」
「ソロ活動だから狙われて大変で〜、みたいな事よく聞かされてるから分かってるよ。……探索者のアイツのこと、一番知ってるのは俺か源田のオッサンなんじゃないかな」
「良かった……」
「早苗ちゃんって、アイツとどういう関係なんだっけ。親戚?」
「…………お姉ちゃんだよっ!」
「ははっ」
「あー!? 笑った〜!」
シエルちゃんの故郷の人たちの話が、どんどん広がっていく。悪い事をする人だって話が、皆んなの中で確かなものになっていく。
加賀美さんやディーンさん、探索者に傷ついて欲しいわけじゃない。
だけど……
「じゃあアレだよ。お見舞いがてら、顔でも見ていい?」
「うーん……」
「それもダメ?」
「いいけど、ちょっと様子見てくるね?」
「待ってるよ」
早苗さんが中に入ると、ディーンさんは僕が隠れている茂みにやってきた。
「なーにやってんだ」
「……」
「なんだ? そのツラ……誰かと喧嘩でもしたか?」
「!」
「分かるかって? 分かるよ、4人のお転婆娘を纏めてひひゃいひひゃい」
この場には2人、セイバートゥースのメンバーがいる。
それを忘れた物言いの罰だった。
頬を引っ張られて、ヒナミさんに説教をされ始めた。
ケイちゃんはそれに加わらず、そばに残っている。
「レイトさん、誰と喧嘩したの?」
「……」
「言ってみなって」
年下の女の子にハシュアーとの喧嘩を言うなんて出来るわけなかった。だけど、それを恥ずかしがるのもまた恥ずかしい事で……とんでもなく情けない気分だ。
「ねーえ、ほら、歳が近い方が話しやすいとかあるじゃん?」
だからこそ言い辛いんだけど……
「シエルさんと喧嘩して追い出された?」
「ち、ちがうよ!」
「じゃあハシュアー?」
「…………」
「レイトさんも喧嘩するんだね」
僕がどんなイメージを持たれているのかは知らないけど、喧嘩は誰だってするじゃないか。
「いつも良い顔して──あ、変な意味じゃないよ? 良い意味でね? 誰とでも仲良く出来る人なんだなって思ってたからさ!」
「……そんな事、ないよ」
「うん、だから安心した!」
「安心?」
「私と同じ普通の人なんだなって」
「…………」
それは凄く大袈裟でよく分からない話だった。
そんな事、今まで一度も言われた事なかったから。
僕は普通だ。
何がおかしいんだろう。
「シエルちゃんとかハシュアーとか、後はあの人とか……とにかく変な人が周りにいるじゃん? だから、レイトさんも不思議な人なのかなって思ってた」
「……」
僕が不思議だなんて、そんなわけない。
ただ引っ張り回されているだけだ。
「そんな考えないでよ。ただ、私がそう思ったってだけだからさ」
「あ、うん……ありがとう」
「あはは、ありがとうって言われる事なのかな? でも、どういたしまして!」
「……少しだけ羨ましいな」
こんな素敵な仲間に囲まれているディーンさんが、素直に羨ましかった。僕の近くにいるのは皆んな癖が強くて……それが嫌ってわけじゃないけど、ただ、羨ましいと思った。
「……うちのリーダー、結構やるでしょ?」
本当に、嬉しそうにディーンさんのことを自慢する声で……僕は、こんな風に言ってもらえる日がくるのかな。
「うん、本当に」
「まあ顔だけならレイトさんの方が良いけど、総合点で勝負だから!」
「あはは、総合点か…………僕なんか最低だろうね」
「なんでそんな自信ないの!?」
いつのまにかディーンさんの説教は終わって、早苗さんも外に出てきた。
入って良いって話だったので僕も。
「うぃ〜」
加賀美さんは、意外な事にもう起きていた。
頭の後ろで腕を組んで、とてもリラックスした状態でベッドにいる。
「何だお前ら、どういう集まりだ」
「出たわねコマちゃん虐待男……」
「ナカイさんさあ、まだそれ言ってるのかい? 良い加減コマちゃんの方がキミの数百倍強いって気づいたらどうだい?」
ケイちゃんは、加賀美さんのことをやたら敵視している節があった。
「強いとか弱いとか関係ない! あんな可愛いワンちゃんを戦わせるのがダメでしょって!」
「それを言ったら子供が戦っている今の方が俺は認められないが。犬は戦え、死ぬ気で飼い主を守れ。それでいて永遠に生きてくれ」
「……ディーン!」
話は引き継がれた。
「相変わらずオモロい子だな、あの子」
「アンタの変な思想を聞く度にケイが少しずつ壊れてる気がするんだが……」
「……まさか白昼堂々コウズケノスケされそうになるとは思わなかった」
「何言ってっかわかんねえよ」
呆れた顔をしていた。だけど加賀美さんの疲れ切った顔や青白くなった肌を目にして、眉間に皺が寄る。
「ディーン、気をつけろ」
「……ソイツらは何者なんだ」
「力じゃどうにもできない奴らだ」
「前も言ってたな。もう少し詳しく──」
「力で対抗できるうちはまだ良い。だけど、母数がひっくり返れば今度は俺たちが国体の敵になる。そうなる前に根絶やしにしないといけない」
「難しい話はやめろ! シンプルに言え!」
「敵は人間だ。血の通った体を持って真剣に生きてる、俺たちと同じような人間だ」
「……盗賊狩りってことか?」
加賀美さんは首を振った。
「ディーン」
「なんだよ」
「もっと強くなれ」
「分かってるよ」
「…………そのうち、セクターに住んでる場合じゃなくなるかもしれないな」
「商工会が何とかしねえのかよ」
「知らんよ、そんなん」
「…………まあいいや。今日は無理そうだな」
「そうだな、今の体調じゃ第一階層で遭難しそーでつ」
加賀美さんは少しおどけて、そして、ディーンさんに頭を下げた。
「すまん、3日ぐらい待ってくれ」
「分かってるって」
体調が戻るまでは、第二階層に潜るのは延期という話だった。
もう少し話をするというので、僕はリビングにいる早苗さんのところに戻った。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない