【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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書きたいところを書くのが凄い楽しくて〜


6_約束

 

「ディーンくん達は?」

 

「まだ加賀美さんと話すみたいです」

 

 早苗さんと日向さんは2人でゆっくりしていた。

 向かい合ったソファーで互い違いに座っているから、どうしようかと思っていたら早苗さんが隣を叩いてくれた。

 

「そういえば、どうして来たの? ご飯食べる?」

 

「……その…………」

 

 僕は、ハシュアーと喧嘩をした事を話した。

 2人は静かに聞いてくれたけど、話終わると同時に口を開いた。

 

「「それは……」」

 

 被った気まずさから止まり、結局日向さんが教えてくれた。

 

「それはお前が悪いよ」

 

「え……」

 

「可哀想とか大変そうってのはな、言われて嬉しい言葉じゃねえんだ。思うのは良いけど心の中にだけしまっとけ」

 

「で、でも、学校に行かないと大変じゃないですか!」

 

「言いたいことは分からんでもないけど……具体的にどこまでいけば大変じゃなくなるんだ?」

 

「ソレはやっぱり──」 

 

 大学と言おうとして気付いた。

 この場で大学に行った人が誰もいない。

 日向さん達が大変な目にあっているかと言えば──遭っていた。

 

「大学です」

 

「あのな……考えたことは分かるけど、私たちを基準に考えるんじゃねえ」

 

「大学まで行ければ良い人生なんじゃないですか?」

 

「そりゃあそうだろうけどな、行けなかったら全部ダメな人生なのか?」

 

「それは……」

 

「ゼロヒャクで物事を考えるなってこと。そもそも、ハシュアーの話なんだから学校とかじゃなくて今を見ろよ」

 

「…………」

 

 話がよく分からない。

 学校に行った方がいいのは絶対に合ってる筈なのに、なんで否定するんだ。

 納得がいかなくて、だけど、反論できるだけの言葉もなかった。

 

「レイトくん……」

 

「はあ……手の掛かるやつだな……」

 

 顔を見られるのが嫌で俯いたら、日向さんが左側にやってきて早苗さんが右側から詰めてきた。

 僕は、両側から山田姉妹に挟まれた。

 

「中学校、いきたかったのか?」

 

「…………うん」

 

 中学校に行きたかった。

 友達と一緒に楽しく話すとか、そういうのに憧れていた。小学生の時は女男って言われて仲間外れだったから。

 行ったほうが良いに決まってるんだ。

 

「まあ、アレだよ。ハシュアーは学校がないところで生まれて、ソレが当たり前に生きてきたんだろ? そしたら、大人になるまで学校行ったことない人ばっかりなんだから何も問題ないじゃん」

 

「?」

 

「……アキヒロに聞いた方がいい気がしてきた」

 

「か、加賀美さんは! ……なんか、嫌です」

 

「お、おお……」

 

 加賀美さんに言われると自分がすんなり納得しちゃいそうで、ソレも何だか嫌だった。

 

「じゃあレイト君、こうしない?」

 

「……」

 

「ハシュアーの気持ちになって考えてみようよ」

 

「ハシュアーの気持ち?」

 

 他の誰かの気持ちになって何かを考えるって、あんまりしたことがなかった。何をすればいいのかよくわからない。

 

「ハシュアーは1人でこんなところにやってきたじゃん? だから、すごく心細いと思うんだ」

 

「……そうかも」

 

「お母さんもお父さんもいなくて、周りにいるのは……えっと……あ、ヒューマンばかり。ハシュアーと同じドワーフ? はほとんどいないから、話の合う人も少ないでしょ? 鍛治師なんてソレこそドワーフだけだって話だから、好きなことの話をできる人は本当にいないかも」

 

「うん」

 

「そうしたら──」

 

 僕が何かを考えるんじゃなくて、早苗さんが必要な事を話してくれた。ハシュアーはどういう状況にいて、僕たちとはどう違うのか。

 難しくて、話をしていたらだんだん眠くなってきたけど、それでも何とか最後まで聞くことができた。

 

「お前ちゃんと聞いてた? なんか白目剥いてなかったか?」

 

「だ、大丈夫です……分かりました」

 

「まあ、姉ちゃんは長々と言ってたけど……姉ちゃんだって中学校から先には行ってねえけど、それでも今は割と普通に暮らしてるんだ。いちいち学校だけで決めるんじゃねえぞ」

 

「…………はい」

 

 まだ飲み込めてない部分はある。

 飲み込めた部分もある。

 

「とにかく、一旦頭の中整理しろ。ハシュアーと話すのは後! 今日は泊まってけ!」

 

「……ふふ」

 

 ビシって指を刺す日向さんの姿が、何だかおかしかった。

 

「ね、今のちょっとお母さんみたいだったよね」

 

「はい」

 

 早苗さんも同じ事を思ったみたい。

 

「んだそりゃ! バカにしてんのか!」

 

「褒めてるよ〜」

 

 ああ、いいな。

 こうやってくだらない事で笑える関係って…………あ、そっか。

 

「僕、やっぱり帰ります」

 

「え?」

 

「ハシュアーに謝ってきます」

 

「あ、そう……また喧嘩すんなよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「……っていうかさあ、いつまでも堅苦しいんじゃね?」

 

「はい?」

 

「「それ!」」

 

「!?」

 

 また、2人の言葉が被った。

 びっくりしたけど挟まれてるから逃げられないし、怖い。

 

「敬語やめろ!」

 

「そうだよ! もう一年くらいの付き合いなんだから! そろそろやめてよ!」

 

「え……え……」

 

 そんなこと言われても2人は剣の師匠で、加賀美さんのお嫁さんで──あ、早苗さんは違うんだっけ。とにかく、軽い口調でなんて失礼だと思う。思ってた。

 

「敬語やめるまで返さないからな」

 

「にゅふふ、返さないよ〜」

 

「うっ……」

 

 必死の抵抗も虚しく、僕は敬語をやめる事を強制されてしまった。だって、そうしないと返してくれないって言うし……

 

「そもそもシエルちゃんとハシュアーくんは敬語じゃないのに、レイトくんだけずっと敬語だったのがおかしかったんだよ」

 

「でも……」

 

「でももだってもないよ! 私はレイト君の、お姉ちゃんだからね!」

 

「…………ありがとう」

 

「うっ!」

 

「さ、早苗さん!?」

 

「さ、さい……こう…………ガクッ」

 

 ガクッて自分で言った。

 しかも、別に気絶もしてない。

 普通にニヤニヤしてる。

 

「えっと……?」

 

「アホだな」

 

「……今日はありがとうございました」

 

「あー……気にすんなよ。こんだけ一緒にいるんだから、もう家族ぐるみみたいなもんだ」

 

「家族……」

 

「あああ! いちいちしんみりすんな! そこは素直に頷いときゃいいんだよ!」

 

「分かった」

 

 うるさくし過ぎたからか、話が終わったからか、ディーンさんが部屋から出てきた。

 

「よっす、そっちも話終わった感じ?」

 

「はい」

 

「早苗ちゃんは何してんの?」

 

「突然倒れちゃって……」

 

「何で放置してんだ!?」

 

「大丈夫だって日向さんが言うので……」

 

「……本当に?」

 

 ディーンさんと一緒に出たけど、僕が進むのは反対方向だ。

 

「じゃあな」

 

「はい」

 

 家に着くまで、考えた。

 最初の一言目は何にしよう。

 謝るって言っても、どう謝ればいいんだろう。

 ハシュアーが怒っているところに謝らないと意味ないぞってヒナタさんは教えてくれた。加賀美さんはとりあえず謝っとけの精神で頭だけ下げる時があるからムカつくって。

 

「……帰ってきたんだ」

 

「う、うん」

 

 扉を開けてくれたハシュアーは、ぶっきらぼうな口調だったんだ。当然だ、喧嘩したばかりなんだから。

 僕は人に話を聞いてもらってスッキリしたけど、ここにいるのはシエルちゃんとハシュアー、それに寝ているアオイちゃん。

 シエルちゃんは人にアドバイスをできるような性格じゃないので、多分ハシュアーはさっきまでの僕と同じで1人考え込んでいたんだと思う。

 だから、ここは僕から切り出さないといけなかった。

 

「あ、あの!」

 

「俺さ!」

 

「「え?」」

 

 そういう日なのかもしれない。

 しかも、その後には先手を取られた。

 

「……ごめん。俺、レイトさんのカンキョーとか、そういうのよくわかんなくて……無神経な事言った」

 

「ち、ちがうよ! 僕こそ……ハシュアーはヒューマンの世界にやってきたばかりなのに、変なこと言ってごめん!」

 

「…………じゃ、じゃあ……これで、終わりってことで……」

 

「そうだね……僕、顔洗ってくる」

 

 シエルちゃんはソファーで腕組みをしていた。

 もう寝てるかな、なんて思ったけど……しっかりと目が開いている。

 アオイちゃんはもう寝室に運んでしまったらしい。

 

「ば──か」

 

「……ごめん」

 

「でも、謝れたところは偉い」

 

「……撫でないでよ」

 

 そんなことで嬉しくなるほど子供じゃない。

 

「くだらない事で喧嘩した罰」

 

「…………」

 

「スッキリした?」

 

「──うん!」

 

 カツカツと、硬い音が鳴る。

 ハシュアーが食卓を指先で叩いていた。

 

「なーんか……レイトさんだけ褒められてるの納得いかねー」

 

「アオイに褒めてもらえば?」

 

「…………レイトさん。こんなこと言ってるけど、シエルはさっき──」

 

「っ……!」

 

「もががががががが!」

 

 ハシュアーが窒息しそうになっていた。

 突然の口塞ぎを実行したのはシエルちゃん。

 2人だけの秘密の何かがあったらしい。

 ……少しだけ、心がむかっとした。

 

「別に変なことじゃないから」

 

 ハシュアーを昏倒させたシエルちゃんは、またソファーに戻ってきてそんな事を言った。

 

「……あいつの事、別に好きとかじゃないし」

 

「そ、そうなんだね……」

 

「ん」

 

 ソレに対して良かったなんて思うのはパーティーリーダーとしてよくないので、ハシュアーはアオイちゃんの隣に運んでおいた。

 2人は仲がいいし、大丈夫だと思う。

 

「私がアオイと同じ部屋って案もあったけど」

 

「ダメ」

 

「そ、そう……」

 

「うん」

 

「じゃ、寝よっか」

 

 今日はなんだかんだで疲れた。

 というか、思い出したら足にいきなりきた。

 

「すごい震えてるよ」

 

「よく考えたら、僕、昼間すごい走ってた」

 

 その上、さっきは加賀美さんの家まで行ってたし……体力がついてきたってことではあるんだけど、やったことの多さを考えるとすごい疲労感だ。

 ──そうだ、改めて言っておかないといけないことがあったんだ。

 

「……なに」

 

 ベッドに座って、シエルちゃんももう一方のベッドに腰掛けて、顔を見た。

 少し強張っている。

 

「僕は……シエルちゃん、君を必ずお母さん達と会わせる」

 

「!」

 

 それだけは、ちゃんと、もう一度言っておかなきゃいけなかった。

 なあなあで決めたことじゃなくて、ちゃんと、落ち着いたタイミングでシエルちゃんに言いたかった。

 

「だけど、行き方とかどれくらい遠いとか……そういうのよくわかんないから、そこへんは助けてね! これはリーダー命令!」

 

「……うんっ」

 

「や、約束だよ!? 途中でどこか行っちゃダメだからね!?」

 

「分かってる。ちゃんと……約束ね」

 

 嬉しくて、ぐっすり眠れた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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