【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「西の部族ですか」
「が、最近攻めてきてるらしいのよ」
聞くところによると、西の方にある村やセクターが攻撃されて、連絡の取れないところもあるとか。
「大変じゃないですか」
「そうなの……レイト君も他人事じゃないよ? もしここまで来たら、レイト君たちにも戦ってもらわなきゃいけないし」
「頑張ります」
西の部族について詳しいわけじゃない。
獣みたいな見た目。
言葉が通じたり通じなかったりする。
人を食べる。
境目のセクターではいつも戦いが起きてる。
そんな感じの話を聞いたことがあるくらいだ。
「私も本物見たことがあるわけじゃないからな〜……シエルちゃんは知ってる?」
「うん」
「あ、そうなんだ。西の方から来たんだっけ?」
「うん」
あれ、確かシエルちゃんは天命山脈を超えてきたって話じゃ──と妙に思って、誤魔化すための嘘だと気付いた。よかった、すぐに口に出さなくて。
これからはシエルちゃんの事についてはあまり口出ししないようにしよう。
「どんな感じだったの?」
「臭いし汚い」
「ふーん。ちなみにモンスターじゃないんだよね?」
「……一応違う」
「一応なんだ……襲われなかった?」
「そういうのはない」
ナナオさんのがおーってジェスチャーをシエルちゃんはすぐに否定した。
良かった。
だけど、西の方に住んでる人たちは大変だ。
今、こうしている間にも戦っているってことだよね?
「マトモな探索者がいるところなら問題ないんだろうけど、セクターにすらならない小さな村とかもあるからね……そういうところは狙われたら西の部族でもモンスターでも無理だよ」
セクターの外に人が住んでいる──っていうのが僕にはイマイチ理解できないけど、そういうこともあるらしい。
「ここら辺だとないんじゃないかしら。前はあったかもしれないけど、危ないから基本的にはセクターに移住みたいな?」
「モンスターが危ないってことですか?」
「あと野盗もね」
「…………」
僕はまだ野盗に出会ったことがない。
酷い人たちだって話は聞くけど……
「本当に危ないから近づいちゃダメだよ? 元探索者とか、もっと危ない人たちが関わってるんだから」
「はい」
「加賀美くんは結構な回数狙われてるらしいけどね? やっぱ1人だからなんだろうなー」
それも前に聞いた。
油断してると首にナイフを突き立てられたって。
後ろから頭を殴られて、倒れ様に首を掻き切ったって。
あの人だけ僕達とちょっと違う苦労をしてる気がする。
「仲間募らないのが悪いんだけどね」
「わ、悪いことはないんじゃないですかね……」
「報告される私の身にもなってよ」
それは確かに嫌だ。
野盗に襲われて返り討ちにするたびに報告にくる加賀美さん……怖いかもしれない。
だけど、襲われている加賀美さんが一番嫌なんじゃなかろうか。
「そうね……でも、そこも含めて自己責任ではあるから」
「…………ところで、なんでここに?」
僕とシエルちゃんは2人で食事をしていた。
偶には酒場で食べようってことで、ベンチ席で注文はし終えたんだけど。何故かナナオさんがやってきて離れない。
「いいじゃない。ここ、ちょうど受付のところから見えないし」
「待ってる人いますけど……」
確か、加賀美さんと仲がいいおじさんだ。
名前は──
「源田龍一ね」
「あ、そうそう」
「別にほっときゃいいのよ、他にもカウンターあるのに私のところだけでやる意味ないし──んーおいしい!」
「それ僕のオニオニオン……」
辛すぎて、食べたらドラゴンですら火を噴くけど揚げたら大丈夫なオニオニオン。この前、屋台で食べたら美味しかったから頼んだのに、先に食べられてしまった。
「ナナオ」
「ムグムグ…………なあに?」
「はい」
「え? くれるの? あーん!」
「…………」
「あいがほー! …………かっら!?」
ハズレの実があるパペットレーズンを頼んでいたシエルちゃんは、辛いやつを見極められるようだ。
「水! 水ちょうだい! レイト君!」
「は、はい」
「んっ、んっ、んっ!」
ナナオさんは、レーズンを潰して出てきた辛味を水で無理やり喉奥に流し込んだ。吐き出せばよかった気もするけど、それは乙女の沽券が許さないらしい。
ナナオさんって幾つだっけ。
「はあ、辛かった…………シエルちゃん、いくら何でも酷すぎない?」
「私たちのご飯に手を出したのが悪い。さっさと仕事に戻って」
「がーん! 何でそんな酷いこと言うの!?」
大袈裟なくらいのリアクションでシエルちゃんの険の入った視線を受け流す。加賀美さんとは違う流し方だ。この2人の相性、意外と悪くないのかも。
「うえーん! レイト君、シエルちゃんがいじめる〜!」
「あはは……」
「早く帰って」
ナナオさんとシエルちゃんのジャレつきに巻き込まれてどうすればいいかわからなくなっていたら、一人分の足音が近づいて来た。
「あはは! シエルちゃん、レイト君はもらったから──うげっ」
酒臭さが広がる。
「ナナオちゃんいるじゃねえか。おサボりか〜?」
「……さあ」
「何だよ、席一つ空いてるんなら混ぜてもらおうかな」
空いてる席はシエルちゃんの隣だった。
「そこはダメです」
「へ?」
「そこはダメです」
「お、おう……なんだ、アキヒロ来るのか?」
「来ないけどダメです」
酔っ払ったおじさんがシエルちゃんの隣になんて、リーダーとして許しません。
「こっちの2人、俺に厳しいなあ!? なあ嬢ちゃん!」
「は? 知らないけど」
「厳しいとか超えてこえーな!」
「そもそも誰? ……レイト、こっちきて」
シエルちゃんの隣に移動すると、酒臭さが嫌だったのか僕のお腹に顔を埋めた。
対話拒否、という感じだ。
「っかしいなあ……俺、アキヒロのダチを自認してるんだけどなあ……ねえナナオちゃん」
「知りません」
「いかんな、俺の味方がいない。アイツ今どこ行ってんだ──おっとっとっとっと……やべえ、酒が切れた」
足元がふらつくのは、むしろお酒が多すぎるせいだと思う。
「う〜…………あっ! 思いぃ出した! ディーンとなんかやるってなあ! この前の呑みの時なんか言ってた!」
「今日はディーンさんのお手伝いです」
「あー……あー、なんかそんな話だったか。下? やっと行くんだってなあ!」
「源田さんは──」
「源さんで良いって! あいつもそう呼んでるしな! 本当は竜さんとか竜様とか呼んで欲しいところ、ダチの弟子ってことで大特価!」
掲げたジョッキは、どれだけ長く酒を入れていたのか外まで染み出し始めている。
「…………ん? ああ、これ? これ、俺の手作りなんだよ。滲み出ちゃうん、だよなあ……酒がうまく飲めるから、それで良いんだけどな」
ハシュアーなら、もっといいのが作れそう。
「酒場のジョッキ……脆過ぎて壊れちゃうんだよ」
「酔って力の制御が効かないだけでしょ」
「あれは一回だけだって!」
シエルちゃんの隣に座らせたくはない。ナナオさんに嫌われている理由を聞いたことがある。よくお尻を触るんだって。
「触るだろ、ケツは。そこにあるんだから」
「そ、そんなことしないです!」
「あ、そう」
真顔でそんな事を言える人にシエルちゃんを近付けるわけにはいかない。
「そんな警戒せんでもガキには興味ねえって……プハッ」
「私にも興味を持たないで欲しいんですけど」
「美人に興味持たないのはアイツぐらいだろ」
「…………」
「彼女できたってなあ、アイツはよくわからん。だからこそ見てて飽きねえんだけどな。話も面白えし」
加賀美さんの友達だっていう人を見たのは初めてだった。
大学には友だちもいるんだっけ。
「大学とか行く意味あんのかアイツ」
「あ、ありますよ!」
「お前も行ってんのか?」
「僕は行ってないですけど……」
「普通のやつが行きたいってのはわかるけど、アイツの場合はそれこそ暇つぶしみたいなもんだろ。ていうかナナオちゃん、マジで受付やんなくていいの? カンカンに怒ってるけど」
慌てて戻ったナナオさんはシュンとして裏に連れて行かれた。怒られるんだろうなあ。
「よいしょ、ナナオちゃんの温もりが残ってるねえ」
「き、きもちわ──んんっ」
「いいねえイケメンは女に困らなくて。俺なんか年中女旱だ」
「…………」
「……なんか、いじめてるみたいになってるなコレ。すまんすまん、アイツと同じ感じで喋ってたわ」
そういえば、加賀美さんは今頃第二階層にいるのかな。
「ディーンも楽しみにしてたからな、アイツと一緒に探索するの」
「そうなんですか?」
「そりゃそうだろ」
そう言われても、ピンと来ない。
僕は確かに加賀美さんと一緒に色々するの楽しいけど、ディーンさんはいつもちょっと冷たいからそんな感じがしなかった。
「ありゃカッコつけてるだけだ」
「そうかな……」
「つーか、アレだぞ。ディーンもお前と一緒でアキヒロに助けられてるんだからな」
「そうなんですか!?」
それは初耳だった。
「ディーンは…………」
凄くいいところで話が切れた。
話しかけた姿勢のままずっと固まってる。
何なのこれは。
「酒が切れた」
「……すいません、お酒ください」
『はーい! ──レイト君に注文もらった〜!』
「はは、ただの注文なのに子宮がキュンキュンしてらあ。握手とかしたら孕むんじゃねえか?」
「…………」
「おっと」
お酒がないと話してくれない人がいるってディーンさんも言ってた。というか、多分源さんのことだ。
「アイツは助けられた事なんて人に話したくないから言わねえだろうけど、年寄り連中はみんな知ってるんじゃねえかな」
年寄り連中と言ったところで源さんは周囲を見回し、数人が中指を立てていた。
「答え合わせだ、馬鹿どもめ。見た目だけ変わらなくても中身が腐ってんだよ」
つまり、あの人たちは源さんと同い年ってこと?
「探索者の見た目が一番信用ならねえだろ、なあ。実はお前さんも歳いってたり──ねえな、うん。2人ともガキすぎ」
「ガキじゃないです!」
「じゃあ酒呑めるか? ん?」
「う……」
差し出された液体からはツーンとした香りが漂っていて、とても美味しくなさそうだった。
だけど、ガキだなんて言われて退くわけにはいかない。
「…………」
「まあ飲んでみろよ、水みたいなもんだから」
「……っ!」
意を決して口に入れると広がるのは嫌な感じのエグみ。少しだけ甘くて、それがエグみをさらに強調してくる。
やや遅れて、お酒の香りが喉と鼻の奥まで侵入してくると苦味が一気に増した。
「うええ……」
「はっはっは! やっぱガキじゃねえか!」
「ガキじゃないぃ……」
美味しくないけど、飲んでいるとだんだん周りの人の声が面白く聞こえ始めた。
なんだか楽しい気がする。
「酔うのはえ〜」
「…………」
シエルちゃんもいつもより可愛い。
「あはは」
とにかく、何だか楽しいな。
早くお家に帰ってシエルちゃんと一緒に寝よう。
ハシュアーはアオイちゃんに謝ったら帰ってくるだろうし……うん、帰ろう。
「帰ります」
「いきなりだな!? つーかお代は!?」
「うーん……加賀美さんが払ってくれます! あはは!」
「やべえ、やべえ、やべえぞ……ツケ払いじゃ嫌なのか?」
「嫌です!」
「嫌ですっつったって……」
「ナナオさーん」
受付に来たら、ナナオさんはどこか驚いたような表情をしていた。何かあったのかもしれない。
でも、楽しいから難しいことは気にしなーい。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない