【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「うふふ! うふふふふ!」
楽しいな。
楽しいな。
「レイト君が狂っちゃった」
「ふふ……むふふふ……」
「大丈夫? レイト君」
「んふふふ、くすぐったい」
「なにこれ持ち帰っていい? いいよね? いい!」
何で視界がちょっと曲がっているのか分からないけど、とにかく楽しい!
「シエルちゃん、今日はレイト君もらってくね?」
「ダメ」
シエルちゃんはさっきから僕の周りをぐるぐる回っている。加賀美さんと遊んでる時のコマちゃんみたいだ。そういえばコマちゃん今日はどこにいるんだろう。まあいいや!
「うふふ」
「レイト、帰るんじゃないの?」
「ん〜? ……んふふ」
「…………こっちおいで」
「わーい」
シエルちゃんが優しい。
でも、よく考えたらシエルちゃんはいつも優しいんだ。お酒を呑んだらもっと優しくなるかもしれない。シエルちゃんもお酒を飲めばいいんだ。
そうすれば楽しくなれる。
明日は朝ごはん何にしようかな。
「うに……むふふ、シエルちゃん動けないよ」
シエルちゃんに頭を抱きしめられて、甘い匂い。
スイーツみたい。
「……歩ける?」
「んー……」
なんだかねむくなってきた。
「おんぶする?」
「ん……」
「ほら」
「うん」
シエルちゃんの背中に乗った。
髪が柔らかい。
すごいドキドキする。
良い匂い。
抱きしめたい。
「すんすん」
「レ、レイト、くすぐったい」
「んー」
おひさま、ぽかぽか。
うしがいっぱい?
「はぁ……ナナオ、ご飯代はあの人にツケといて」
「どういうこと……」
「レイトがこんなんだし、いいでしょ」
「まあ良いけど……源さんじゃなくていいの?」
「べつにどっちでも良いけど」
「適当すぎるわよ、あまりにも」
「元はナナオが私たちのテーブルに来たのが原因でしょ」
「……ぐう!」
「じゃ」
シエルちゃんが何かを言ってる。
こんなに近くでシエルちゃんの声を聞くことはあんまりない。もうちょっと聞いてたかったけど、歩き出したら喋るのをやめちゃった。何でだろう。
もうちょっと喋ってくれても良いのに。
加賀美さんみたいにいーっぱい、変なこと喋り続けてくれれば良いのに。
「レイト、寝て」
「…………」
「もうお酒飲ませないからね」
「やら」
「お酒なんて舌が腐った奴が飲む毒だよ」
「そうらね、まずかった」
「じゃあもう飲まなくて良いね」
「やら…………ありがほ」
「……」
お家に着いたらお風呂に入れられた。
ハシュアーがいて、身体洗ってくれて、髪拭いてくれて、なんかよくわからないうちにベッドだった。
「うわやめろ! ……ったく、しょうがねえな。今度俺が酒の飲み方教えてやるか」
瞼が重い。
もう開かないや。
でも、シエルちゃん待たなきゃ…………
一緒に寝るんだから……
「レイト」
「…………」
「おやすみ」
「ん……」
背中の辺りが暖かくなった。
──────
「レイト、お腹空いた」
「もう外歩けない……」
「ご飯作って」
僕はもう、一生この部屋の中で生きていく。
外には絶対に出ない。というか、何で昨日の僕はあんな事を……!
「うわああああああ!」
「叫んでないで、起きて」
「し、し、シエルちゃんも何で止めてくれなかったのさ!」
「面倒くさかった」
「ああ〜!」
ベッドを転がっても、勢いで昨日の記憶が薄れてくれたりはしなかった。ただ埃が舞うだけで、しかもグルグル目が回ってちょっと気持ち悪い。
「もう、今日は外出ない……」
「気持ち悪いの?」
「…………ちょっとだけ……」
「……」
「撫でないでよお……」
すっごく惨めな気分だった。
シエルちゃんをこれから支えていこうって思ってたのに、最近は失敗してばかりだ。
ダンジョンでも、最初から撤退していれば──あれ?
「……っ!」
アンダーの様子がおかしいって話、加賀美さんは知らないんじゃ!? いくらレベル50って言っても……50なら大丈夫かあ……
僕が心配するようなことじゃないや。
「ハシュアーは?」
「とっくにいなかった」
今日は、いつもよりも遅い時間に起きたから当たり前なのかもしれない。日課の素振りを昨日はできなかったから、せめて今日はやらなきゃ……でも頭が……
「たまには休みなよ」
「……起きるっ!」
一気にやる気が湧いてきた。
頭を撫でられたからじゃない。
……ちょっとだけあるけど、それは大きなところじゃない。
約束したんだから。
僕は男なんだから。
自分が幸せになるだけじゃなくて、仲間も……ハシュアーとシエルちゃんも一緒に幸せにしなきゃいけないんだ。
その為には、こうやってダラダラしてる暇なんかない。
ハシュアーなんか、昨日お腹えぐられたばっかりなのにもう修行だ。アオイちゃんとも仲直りできたんだと思う。
「……じゃあ、簡単な依頼にする?」
「うん!」
ハシュアーがいないから、2人で。
実際のところ主戦力の彼がいないので、アンダーの危ないところへはいけない。最近は、ようやく僕たちも土地勘ってやつができ始めた。どこに行ったらモンスターが多いとか、地形的にまだ攻略できないところとか。
だからこそ、2人で潜ることはしない。
2人の時は近くの草原地帯だけ。
昼間は滅多に危ないモンスターが現れない──少なくも、僕たちが対処できないようなやつは──ダンジョンで、その代わり珍しいものも少ない。
第100セクターみたいな管理された場所じゃないけど、一応安全と言って良い場所だ。
夜はどこも危険だよね。
水辺には妖精種としてまとめられてるモンスターが現れるし、空から火の石を降らせるモンスターもいる。
すごい上を飛んでいる大きなナマズも、夜は活発に活動して探索者やドラゴンと戦ってるいるんだ。
それでたまに雲が消し飛んでいるので、意外と夜も飽きはしない。
「このアングリーバードっての良いんじゃない?」
「推奨レベル12……」
ちょっと高いかな。
「でも、2人でもレベルが下のモンスターは倒せるようになったほうがいいよね」
僕らも最近頑張ってるから、メキメキレベルが上がってる。2人ともレベル14だ。ハシュアーはレベル11。
ちょっと差が開いてるけど──何で差があるのにハシュアーの方が強いんだ……
「……よし、行くぞ!」
ドワーフの無法さに心が一旦挫けそうになったけど、今日の僕は一味違う。リーダーとして他の探索者に見劣りしない──
『あ、レイト君だ。二日酔いにならなかったのかな』
僕はやっぱり地下で生活するのがお似合いなんだ……みんな覚えてるよね……
「あ、レイトさん! どこ行くんですか?」
「アオイちゃん……僕はもうダメみたい」
「ええ!?」
今日は普通に出勤していたアオイちゃんは、ハシュアーの様子を見ずに仕事をしていた。
「そんなサボってるみたいに言われるほど見てるわけじゃないんですけど……私も一応受付嬢なんですからね! 結構忙しいんですから!」
腰に手を当ててそんな風に言っちゃうアオイちゃんの髪には、ハシュアーにプレゼントしてもらった髪留めがされていた。
「こ、これはいいじゃないですか! ハシュアーくん手が器用なんだから!」
何が『いい』のかはよくわからなかったけど、本人がいいって言うならいいのかもしれない。女の子に深く突っ込むと良い話にはつながらないんだ。
「ふんだ、見せてあげませんからね!」
「あ、うん」
「……何ですかその反応」
「え」
「これは──」
『アオイちゃーん、そろそろお客さん足が痛いってよー』
「!」
続きは気になったけど、お客さん優先だからね。
「アオイちゃんとハシュアー、すごい仲良いんだね」
「ん」
「わからない?」
「……一緒にしないで。そんなの少し見ればすぐわかる」
「そうなんだ……」
でも、シエルちゃんって僕らと出会う前はトラブルメイカーだったってナナオさんが言ってたような。シエルちゃんにそういう細かい機微がわかるのかな……いてっ。
「け、蹴らないでよ」
以前の調子が戻った気がしてほんの少しだけホッとしつつ、以前はこうやって足が出たり手が出たりってことはなかったので良くない影響を受けてるのかもしれないなんて不安になったり。
……誰の影響かって言ったらあの人だけど。
「加賀美さん、自業自得とはいえヒナタさんたちに無抵抗だよね」
「いきなり何」
「あ、いや……蹴ると言えば……みたいな……?」
「…………」
すごい不服そうな顔だ。
でも、シエルちゃんの足癖が悪くなったのは間違いなくヒナタさんのせいだから。
そこは嘘つかないから。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない