【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
アングリーバードについて僕たちは何も知らなかったので、まずは……情報を集めなければならない。レベルは分かりやすいけど、細かいことはちゃんとね。
「アングリーバードが知りたいの?」
「はい」
「あー……お金を払って知りたいってことよね?」
「はい。無料ならそっちの方がいいですけど」
「無料のは無いかな〜」
そう言いながら、後ろにある棚をガサガサと調べてくれた。この一杯の棚が全部モンスターやダンジョンに関わる資料だっていうんだからすごいや。
「アングリーバード……アングリーバード……あ、これね」
持ってきてくれた冊子を開くと、まず絵が描いてある。
大きく膨らんだ鳥だ。
足は短い。
「レベル14だよね?」
パーティーレベルはそうだ。
初級探索者の域。
「もう少し上のモンスターの方がいいんじゃないの?」
「でも、僕たちじゃ対応力が薄くて……」
「そんなこと言ったらアキヒロくんなんかオモチャで戦ってたんだよ?」
ナイフと空気銃でやっていたという話は僕たちも聞いた。でも、本当なのかなあ。今でこそすごく強い武器になってるけど、最初は別の武器と併用していてもおかしくない。それくらい、間合いと威力っていうのは探索に大きく影響することを僕たちは学んだ。
じゃあアレはなんなんですかって話なわけで……僕たちは遊んでるだけ? そんなわけないと言いたいのに、中々勝てる気がしない。
「いや〜……覚悟じゃない?」
「覚悟?」
「腕を切り落とされても戦い続ける覚悟」
「…………」
「…………あ、いや、ちが……レイト君のことがどうって言いたいわけじゃ……」
「分かってます。ただ──」
なくなったはずの左腕が傷んだだけ。
「レイト、薬飲む?」
「ううん大丈夫」
薬を飲んでも良くはならない。
去年はよく傷んでいたけど、回復薬でもどうにもならなかったから。
「……ナナオ」
「ごめんなさい」
そんな、謝られるようなことじゃない。
この腕をなくしたのだって、僕が弱かったのがいけないんだから。
「シエルちゃん、やめて」
「……」
「でもありがとう」
「仲間だから」
僕たちは草原に出た。
意外なことに、ちょっと見たことないぐらい頻繁に探索者を見た。もちろん僕らみたいな初級探索者がほとんどだ。
だけど、中には三級探索者もいて、どうやら僕たちの想像するいつもの草原じゃないらしいということがわかった。
「いそごっか」
「ん」
探索者がいっぱいいるってことは、アングリーバードを別の探索者に狩られ尽くしてしまう可能性がある。アンダーみたいな閉塞したダンジョンと違って、地上のダンジョンには見通しが効くところもある。
早く行かないと。
『──クエーッ!』
幸いなことに、アングリーバードは群れだった。
そうじゃなきゃ依頼も出されないのかもしれないけど、ちょっと怖い。色とりどりの鳥が鳴きながら死体を突いている。
アレ全部を相手するのは厳しい。
「確かあの黒いのが……」
「爆発するやつだね」
『ギエーッ!』
ボカーン! って音を鳴らしながら、中サイズのモンスターの近くで爆発した。爆発したアングリーバードは当然ながら血液を撒き散らしながら死んでいて……どういう生態なんだろう。
「あの赤いの」
「!」
シエルちゃんが指差した先にいる個体。
赤くて大きめ──僕らと同じくらいの大きさの鳥は一番後ろでのんびりしている。涎を垂らしているから、もしかしたらお腹が空いているのかも知れない。
モンスターもお腹がすけば涎を垂らすのかな?
「このまま見てれば、勝手に数は減りそうだね」
「うん」
他の探索者は寄ってこない。
1パーティーだけいたけど、ちゃんと僕たちが依頼を受けていることを示したら嫌そうな顔をしながらも退いてくれた。こういう時、商工会ってすごいんだなって思ったりする。
「でも……」
「うん、先にあのモンスターが死にそう」
アングリーバードの移動方法は独特だ。
空中で止まったかと思えばすごい勢いで羽ばたいて銃弾みたいに勢いよく突っ込む。モンスター側はソレに対応できなくて、一方的にやられていた。
特に黄色いやつが速くて、どんなふうに動いているのかが僕もまだ見切れていない。
「あの黄色いのだけでも減ってくれれば……」
「今のうちにこっちから攻撃する手もある」
「…………」
「そうすれば狙いが少ない時に数を減らせる」
最近のシエルちゃんは、前よりもずっと話をしてくれる。
ちゃんと認めてくれた気がして嬉しいけど、加賀美さんとはちゃんと話してないから認める認めないは関係なのかも、とか。
あと、嬉しいというのはおいてもちゃんとやり取りができるから会話がスムーズに進む。今のシエルちゃんなら別のパーティーに行ってもうまくやれるはずだ。
「──いたたた」
何故かほっぺを引っ張られた。
「余計なこと考えないで、目の前に集中して」
「わかった」
「…………私じゃないよ」
「ご、ごめん」
『コケーッ!』
白い身体の長細いアングリーバードが卵を産み落として、それがモンスターの身体に接触するとその部分が破裂した。かなりのダメージだ。本当に、うかうかしているとやられてしまう。
シエルちゃんの案は正直ありだと思った。
採用だ。
「行こう!」
「うん」
『!』
一番後ろのやつは指揮役、パーティーでいうところのリーダーを担っているようで、僕たちの出現に真っ先に気づいた。
眼光の鋭さに少しだけドキッとしたけど、僕たちは十分に接近してから姿を現した。
赤いやつと緑のやつが2匹ずつ。
そいつらをまとめて屠るつもりで剣を振るった。
「はあっ!」
『ゴゲーッ!』
『ギョエーッ!』
2体は倒した。
だけど──
『ケーッ!』
「なんだ今の動き……!」
緑の2匹は逃した。凄い勢いで僕らの後ろに飛んで、その姿を見た瞬間に嫌な予感が──
『ゴゲッ……』
だけど、その2匹も仕留められた。
シエルちゃんだ。
僕が飛び出したのには合わさないで、後ろに隠れていたんだ。
1本ずつ矢を消費して緑の頭部を撃ち抜いた。
だけど、まだまだアングリーバードは残っている。
──────
「はぁぁあっ!」
『ンゴゲーッ!』
「──はぁっ、はぁっ、はぁっ……くっ……!」
やっとだ。
やっと僕たちはアングリーバードを倒した。
最初考えていたよりもずっと辛い戦いだった。
剣が刃こぼれしている。
ハシュアーに怒られるのは決まったけど、シエルちゃんだ。
「シエルちゃん!」
「痛っ……」
シエルちゃんは突っ込んできたアングリーバードの攻撃をモロにお腹に喰らっていた。
幸いなことに水色のチビだったから大した怪我はしていなかったけど、お腹を見ると青あざになっている。あれが黄色のやつだったら──そう思うとゾッとする。
「良かった……」
「大袈裟」
「大袈裟じゃないよ! 本当に危なかったんだから!」
「……うん」
「さ、回復薬飲もう?」
「うん」
また、少しだけ無口に戻ったシエルちゃんには休んでてもらって、僕は剥ぎ取りを行うことにした。
アングリーバードには第一世代のモンスターはいないから、死んでも元の生き物に戻ることはない。最後に倒した大きな個体のお腹を捌くと赤い魔石が入っていた。
「やった!」
「…………?」
「ほら、君のだ」
「なんで?」
「あの大きいのを倒したのはシエルちゃんなんだから」
「……わかった」
「うん」
素直に受け取ってくれたので、他のアングリーバードからも剥ぎ取っていく。僕も意外とこういう作業に慣れてきた気がする。素材としてハシュアーに見せると鼻で笑われるけど、前よりは絶対にマシになってるはずだ。
「結構いたんだね……」
「最初から分かってたじゃん」
「まあそうなんだけど」
全部集めると、結構な数の魔石だった。
これはだいぶ割のいい依頼だったかもしれない。
シエルちゃんの慧眼ってやつかな。
「うん」
「あはは」
ちょっとだけ落ち着いて、それから支部に戻った。
「あら、結構な数! やるわね!」
「はい! シエルちゃんのおかげです!」
「……いーい? パーティーメンバーの活躍はリーダーが上手くまとめている証拠でもあるんだからね? 素直に褒め言葉は受け止めなさい!」
「は、はい」
「じゃあ……んんっ……頑張ったわね!」
「はい! 頑張りました!」
「うん! よし、じゃあこれは全部換金?」
「──で、いいよね?」
一応シエルちゃんにも話を聞くと、それでいいということだった。
「今日はちょっとおやつを多めに買おうかな」
「…………」
シエルちゃんは、アレだけ動き回って怪我までしたのにオヤツを買うってなったらトコトコ〜って屋台を回り出した。そっち行ってこっち行って……意外と我慢していたんだな、なんて。
だから、今日はなんでも買ってあげるつもりだった。
だけど──
「これがいい」
「……これだけ?」
「うん」
「もっと買えるよ?」
「いい」
「でも……」
「いい」
なんでだろう。
アレだけ目を輝かせて──少しの変化ではあったけど、僕には分かった──いたのに、こんな少しだけ。
もちろん買う。
「ん……美味しい」
ちまちまと食べるシエルちゃん。
僕も買おうかな、なんて思っていたらポツリと。
「ハシュアーの炉……買わなきゃでしょ」
「──!」
僕はバカだった。
ハシュアーに僕たちは大きく世話になっている。
年下だけど、武器の手入れなんか彼がいなかったら適当になってしまう。彼がないかったら武器をすぐにダメにして戦闘中にやられてしまっていたかもしれない。
そんな彼が……いつも寝る前にイルファーレ様に祈りを捧げるほど鍛治に心を捧げている彼が、炉を買いたいと思っているのは僕だって知っていた。
それなのに、同じ発想に至らなかった。
すごく恥ずかしかった。
「あいつに言うと調子乗るから、黙っててね」
「うん」
ハシュアーとシエルちゃんは憎まれ口をよく叩きはするけど、なんだかんだで仲が良い。
遠慮がないって言うのかな。
お互いの悪いところをずけずけと言い合っているのを見ると少しだけ羨ましいときもある。
だからこそ、こういうことを考えていたって知られるのが恥ずかしいって気持ちもわかる気がした。
「…………」
「なに?」
「自分だってあんまりデリカシーないくせに……」
「!? ──もごっ」
慌てて口を抑えようとして、先んじてオヤツを突っ込まれた。
甘辛い揚げ物。
まだ熱い程で、噛んだらサクサクとした食感。
その後にはトロリとした中身が舌に広がっていく。
探索者じゃなかったら火傷していたかも。
「……」
シエルちゃんはまっすぐに僕を見つめていた。
食べちゃダメなのかと思って止まったら、頬が少しだけ綻んだ。
「美味しい?」
「…………うん」
心臓が一度大きく動いたのを、揚げ物を食べ進めることで誤魔化した。
最近なかなか定期時間に投稿できなくて申し訳ないです、
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない