【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「飯はいい……全ての不安を洗い流してくれる」
「なーに仙人みたいなこと言ってんだよ」
「食欲を満たすことは大事だ。腹が空いてたらやる気が出ないし、なにより良くないことをしようとするかもしれない」
「アイツみたいな?」
「そう」
「……」
「お前は空腹で死にそうになったことはあるか? 俺はある」
「どこで?」
「
「……そっちの話かよ」
肩を寄せ合う2人は、よくわからない話題を選んでいた。目の前に食事があるのに、空腹で死にそうになった時の話をしている。なんでそんな事になったかと言えば、感慨深そうに話題を振った加賀美さんが原因だ。
「アリサは悪人だから強盗をしようとしたわけじゃない。本能に抗える人間がいないからやらざるを得なかったんだ」
「だからなんだよ」
「エリュシアに騙された連中をどう思う?」
「嫌い」
「でも、あの人たちの中には昨日まで買い物で顔を合わせたら楽しく会話した人だっているだろ? その人が本当に嫌いか?」
「…………んぐっ! ぷはあ……私たちの邪魔するなら嫌いだ」
ヒナタさんは、そういう人たちのことをはっきりと嫌いだと言った。お酒が入って、少し素直になっているのもあるとは思う。だけど、だからこそ本音だった。
「他人の事情なんか関係ねーだろ?」
「そうだな、個人個人の世界だとそうだ」
「お前は……広く見過ぎなんだよ〜」
「おおほほほw」
ツンツンと、少しつまらなさそうに加賀美さんの脇腹を突く。広く見過ぎってことは、もう少し狭く見ればいいってこと。つまり──
「あの連中のことにまで気を汲む必要がどこにあんだよ」
「母さんやアカネがあの考えに同調した時、俺はどうすればいいかなって」
「そんなもん殴って止めろよ」
「もちろん、縁を切られてでも止めるつもりだよ。だけど……それでも止まらなかったら?」
「……頭痛くなってきた。お肉ちょーだい」
「…………ふふ」
肩に頭を乗せたヒナタさんに餌付けをして、楽しそうだ。僕も……
「なに。あげないから」
僕は無理そうだ。
というより、シエルちゃんもちょっと酔ってる?
「──私たちと牛と、どっちが大事なんだ?」
「………………………………」
「おーい」
それは核心をつく質問で、ミツキさん達がいつも気にしながら結局は言葉にできなかったことなんだと思う。
長考。
その上、追及からなんとかして逃れようと食事に戻ろうとしたけど、手を掴まれて逃げ場は無くなっていた。
「答えろよ」
殊更に真剣で──ヒナタさんの据わった目は、加賀美さんの心の内側をはっきりさせたいと主張している。
「…………お前らの方が大事だよ」
「あ、赤くなってんじゃねえよ……私まで恥ずいだろ……ったく……」
なんだろうこれ!
なんだろうこれ!
なんだろうこれ!
なんでこんな気持ちになるんだろう!
声を大きくあげたいけど、そんな事をしてこの感覚を壊したくない気持ちが同時に湧いてくる!
なんだろうこれ!
「でも、俺の夢は俺の魂そのものでもあるから……そういう意味では比較できない」
「言わなくていいんだよ!」
本当にそうだ!
なんでそんな余計な事を言っちゃうんだ!
『そうだそうだとイーヴァちゃんも言っております』
『言ってませんが』
そうだよねえ!
……うん?
………………気のせいか。
「こんな美味い肉食えるんだから、牛なんかわざわざ増やしてどうすんだ? それとも……牛って、そんなに美味いのか?」
『!』
いつのまにか、みんなの耳がそこに集中していた。
そりゃそうだ。
僕も……口の中にある至宝を上回るお肉が存在するなんて知ったら、少しだけ正気じゃいられない。
「いや?」
あっさりと、加賀美さんはその疑惑を否定した。
ガッカリが広がっていく。
だけど、それならどうして牛はそんなに高いの?
美味しくないなら、そこまで高く設定する必要がないのに。
「値段は何も美味しさだけで決まるわけじゃないだろ?」
「……でも、普通は美味しい方が高いだろ」
そうだそうだ!
『もしかしてアイツ、俺たちを騙そうとしてやがるのか? 本当はめちゃくちゃ美味しいのに……』
『増やして独占しようとしている……!?』
離れた席から聞こえる話は、あながち嘘じゃないような気もした。食事にこだわる加賀美さんならそれくらいやってもおかしくない。
「普通って……値段設定は俺じゃなくて商人に言ってくれよ」
「うるひゃい」
「酔ってる?」
「酔ってない」
「酔ってるなあ……」
「酔ってらい!」
「はいはい」
ヒナタさんは、話すうちに何度もジョッキを口元に運んでいた。相当にお酒を飲んじゃったみたいだ。早苗さんの膝に倒れ込んで、むにゃむにゃと何かを言ってる。
早苗さんはそんな日向さんの頭を撫でると、一度小さくあくびをした。
「……早苗ちゃんもそろそろ眠い?」
「子供扱いしないで!?」
「体は紛れもなく子供じゃん……」
「……実はちょっとだけ大きくなってたり」
「え? まじで?」
「マジ」
「お、おお……続きは家でな?」
「う、うん」
「…………すげえビックリした」
すごくビックリした。
呪いが解けて大きくなるって話はあったけど、ようやく身体に変化が!
すごくおめでたい。
僕もおめでとうって言いたいけど、この場で言うと良くないのはなんとなくわかった。
それにしても、ドラゴンのステーキ……本当に美味しかったな。
──────
「ふひい……お腹いっぱいだね」
「うん……」
今日は酔わなかった。
だけど、僕の代わりにシエルちゃんが酔っている。
美味しいお肉があるせいかも。
「酔っちゃった」
にへら、と表情を崩すシエルちゃんのことを見ている人はいっぱいいる。それを見せるのが、僕たちの家を見られているようで嫌だった。
だから膝の上に寝かせると、もっとニヤけるんだ。
「歩いて帰れる?」
「……だっこ」
「わかった」
寝起きみたいだ。
尚更、他の人に見せるわけにはいかない。
ハシュアーは顔が赤いのに冷静な様子で周りを見ている。
あんな小さいのにお酒に慣れているみたい。
「──三船君」
「あ、はい」
「そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
「…………そうします」
「コマちゃんは付けとくから」
「……本当に……ありがとうございます」
「いいって、気を付けてな」
「はい!」
霧が深い。
それに夜だ。
コマちゃん──神様が大きくなっても誰も気付かない。
その背中にハシュアーを載せても。
『ふはははは! 光栄に思うがいい! 神たる僕の背中に乗れるなんて、常識はずれを許されていることを!』
「ん〜……15点」
『何点中だい、それは』
「50点」
『低いっ! お客様? そのように低い点数をつけられた理由を伺っても? なお、当サポートセンターにおいてはカスタマーハラスメント防止のためこの会話を録音させていただきます。ハラスメント防止法に違反するやり取りが発生した場合、法的措置を取る可能性もございますのでご承知の上でお進みください』
「うるさくて揺れる。毛並みと匂いしかいいところがない」
『…………!』
激しく表情がうるさいけど、揺れは無くなったのかハシュアーは満足そうに
「40点」
とこぼした。
50点じゃないんだ。
『50点じゃないんだ……揺れてないでしょ?』
「喋るってのが何かモヤッとする」
『僕の存在価値が消えていく』
「実際コマちゃんって何なの?」
『神様だけど』
「…………5点」
『ええっ』
お家に帰ると、コマちゃんは元の大きさに戻った。
どこかに行こうとするので、思わず呼び止める。
「今日は泊まっていかないんですか?」
『…………確かに泊まってもいいのかな。あっちの呪い子とか嫁とかはアイツが何とかするもんね』
「はい」
コマちゃんは人の呼び方に癖がある。
『じゃあ、お言葉に甘えて。美味しいご飯も食べられたから僕は満足なのです』
コマちゃんは怖い神様の一面も持ってるけど、僕たちがそれを見たのは、そうなるのが仕方のない状況だけだ。加賀美さんに正体を明かすなって──要は、普通のコマちゃんとして一緒にいたいってことだもんね。
大事なことだと思う。
加賀美さんは神様を殺したいと考えてるけど、コマちゃんを殺したいなんて絶対に思わないと思う。だけど、正体を知ったらどうなるか分からない。
今のままが一番いいんだ。
『お風呂入ーれーて♪ ガスも電気もないけれど、お風呂に入りたいからっ♪』
「はーい」
『うんうん、素直な子はいいね』
シエルちゃんを見て言うので、そこには反論した。
「シエルちゃんは素直ですよ。ただ、口下手なだけです」
「すぅ……すぅ……」
神様だって、僕の仲間に適当なことは言わないでほしい。
『でもそいつ裏切り者じゃん』
「!?」
『いや……僕は神様よ? そんなの普通に分かってたって』
「……いつから?」
『ヘッドホン使って外部通信してたら普通わかるよね? ……ふほっ、思い出したら笑えるわ。私はスパイですって言ってるようなもんじゃん』
「へっどほん? それって……あの神器のことですか?」
『うん。君たちの情報をアレで外に流してたんだよ』
「…………」
『警戒しなくてもいい。僕は別に、あのエルフがスパイだろうが、君がその仲間になろうが──僕の飼い主に噛み付くなんてことがなければ何もしないからさ』
「っ!!!」
その影が突然に霧を引き裂いて、街から飛び出すほどの大きさになったような気すらした。
これは何だろう。
僕の目の前にいるこの姿は……本当なのか?
『アキヒロは怖いよ? 場合によっては、僕やあの邪神なんかよりもずっと』
「知ってます」
『だろうね〜』
「お風呂入りません?」
『……肝が座っててつまんにゃーい』
僕でもわかる。
加賀美さんの敵にならなければいいんだ。
むしろ、僕がどうやったら加賀美さんの敵になるんだろう。
「誰かに脅されてとか?」
『うーん、それじゃあアキヒロは敵認定しないなあ』
コマちゃんは、頭にタオルを乗せながら呑気に答えた。
『それは敵じゃなくて被害者だよ』
「そうなんですか」
『まあ子供には難しいかもしれないけど……』
「……子供じゃないです」
『そうだね』
小さな体で寄ってくる。
『君が真に自分の意思でアキヒロと戦う道を見つけたとき──それこそ、キミたちと僕たちの戦いが始まるときなのさ』
「…………」
結局、コマちゃんは難しい話で誤魔化そうとしているだけな気がした。
最近僕も覚えたんだ。
長話は大抵聞く意味がないって。
だから、とりあえずシエルちゃんをお風呂に入れて──
「からだ、あらって」
「だ、だめ!」
「なんで」
「…………なんでも!」
「ぶぅ」
大変な目に遭って──
「は、早く服着て!」
「暑いからヤダ」
「何言ってんのさ!」
──ガタン。
「レイトさん……何してんの……?」
シエルちゃんに服を着せようとしたところを見られて誤解されて──
「何で僕、こんなに疲れてるの……」
「ん……」
寝る時には凄く疲れていた。
だけど、丁度いいのかもしれない。
いい感じに眠れそうだ。
美味しいご飯を食べて、バカな事をして……おやすみ、シエルちゃん。
『──僕わい』
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない