【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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14_武器が喋った

「武器が喋った……」

 

 加賀美さんが目の下を若干黒くしながらそう言ったのは、ドラゴンステーキを食べた一週間後のことだ。夢じゃないのかって聞いてみたけど、そんなわけないって否定するんだ。

 何だろう、その自信。

 

「やばいよやばいよ……いよいよ武器まで喋るようになっちゃったよ……」

 

「でも、モンスターも喋るんですよね?」

 

「コマちゃんとかな」

 

「とか?」

 

「あ、いや……確かにモンスターは喋るけど武器が喋るのは何? 脳みそがないんだから……言霊? 精霊? 何が宿った?」

 

 武器が喋ったって言ったのは自分なのに……やっぱり加賀美さんはちょっと疲れてるのかもしれない。ミツキさんに相談してみたら、お膝の上に寝かしつけてしまった。

 

「色々頑張ってるからね〜」

 

「……」

 

「アキ、たまにはのんびり寝よ?」

 

「……すぅ」

 

 すごい。

 あっという間だ。

 これが幼馴染の力……? 

 

「ふふん」

 

「武器って喋るんですか?」

 

「……わかんない」

 

「コウキさんは何か言ってました?」

 

「聞いてない」

 

 コウキさんなら喋る武器とか知ってそうなのに。

 しかも、娘であるミツキさんがそれに気付かないはずないと思うんだけど。

 

「お父さんに言うと絶対ついてくるから」

 

「ダメなんですか?」

 

「邪魔でしょ」

 

 ミツキさんはお父さんに結構冷たい。

 家族なんだからもう少し優しくしてもいいのに。

 

「レイト君だってハシュアーとかシエルちゃんのダメなとこ言うでしょ? それと一緒だよ」

 

「そうかなあ」

 

「私のことはいいのそれよりも、武器が喋ったってなんなんだろうね」

 

 加賀美さんが持って来たナイフを勝手に触っても、特に喋ったりはしない。持ち主じゃないと聞こえないとか? 

 

「そんなんだったら、それこそ私たちじゃ何にも分からないよ」

 

「ナイフさーん、聞こえてますかー?」

 

「ぶほっ!」

 

「……」

 

「…………こ、こぼしちゃった」

 

 ポタポタと垂れていく液体が、膝に寝ている加賀美さんの顔にもかかっていく。

 

「変なこと言うから笑っちゃった」

 

「そんな変でしたか?」

 

 ナイフが喋ったって言うんだから、こっちから話しかけたら何か反応が得られるって思うのは変なことかな。

 

「私だって同じことは考えたけど、実際にやってるの見ると面白くて」

 

「……」

 

「アキが起きたら、もう一回ちゃんと話を聞けばいいって。それまではレイト君も普通に──ご飯とか食べる?」

 

「作っときます」

 

「ありがと〜」

 

 ミツキさんは加賀美さんを寝かせているのに、動いたら起こしちゃうかもしれない。いつもお世話になってるんだからこれくらいは屁でもなかった。

 

「そういえば、ドラゴンのステーキ食べたんだよね」

 

「はい! すっごく美味しかっです!」

 

 ミツキさんならもっと高いお肉とか食べたことあるのかな。

 

「え? うーん……ウチもひたすら無駄遣い、みたいなことはしてないかなあ。ドラゴンのステーキなら割とよく食べたけど」

 

「牛のお肉って美味しいんですか?」

 

「普通にドラゴンのステーキの方が美味しいよ?」

 

 そこの意見は加賀美さんと一緒だった。

 それなら、必死になっている理由が本当に分からない。

 加賀美さんは美味しいものを食べたいわけじゃないってこと? ただ、単純に牛を増やしたいってこと? 

 ……不思議で、おかしいな。

 

「そうだよねえ」

 

「ちなみに、加賀美さんって牛を食べたことないんですよね?」

 

「うん。一緒に食べようって言っても1人だけ食べないんだ」

 

「…………」

 

「この人にも色々あるから」

 

 髪をかき撫でて、あらわになったおでこに手を添えている表情はとても優しかった。

 

 

 ──────

 

 

「武器が喋る?! そんなのあるの?!」

 

 ハシュアーもダメだ。

 鍛治師らしく興味は人一倍強いみたいだけど、それ以上には何も知らなかった。

 

「だって俺、まだ見習いの域出てないし!」

 

「ふーん」

 

「くっそ……いつか絶対ギャフンと言わせてやる!」

 

 ハシュアーは酒場に行くと、暇な時は人の武器を見てブツブツ言っているので、武器のことに詳しいのは間違いない。

 僕の知っている人でハシュアー以上に詳しい人は──

 

「んあ? ハシュアーじゃねえか」

 

「ども」

 

「何の用だ? まさかもう諦めたか?」

 

「ちげえ!」

 

 ぶっきらぼうで、胡乱げな視線を向けてくるのはずんぐりとした体型が特徴の──ド、ドワーフ? っていうモンスターみたいな……何て言うんだろう……ヒト? なのかな、一応。

 僕は正直、ほとんど話したことない。

 鍛治師に頼めるだけのお金を集めるほど僕は積極的に稼げていない。レベル20くらいになれば視野に入るって加賀美さんからは言われている。

 ディーンさんも加賀美さんに最近紹介してもらったって。

 

 名前は──

 

「俺の名前を呼んでいいのは、俺が認めたやつだけだ。アイツから聞いてるんだろうが、名前で呼ぶんじゃねえぞ」

 

「は、はい」

 

 じゃあ、なんて呼べばいいんだろう。

 

「呼ばなくていい、用事だけ話せ。武器を作ってほしいのか、持ってる武器を強くしてほしいのか、防具を頑丈にしてほしいのか。金と鉄と素材があれば十分なんだよ」

 

 どうやら、ハシュアーに対しても同じスタンスらしい。

 

「2人揃って貧乏人が何の用だ? アキヒロのツレだからって俺は負けたりしないぞ」

 

「アキヒロさんの武器が喋ったらしいんだよね」

 

「ばか! 早く言えそういうのは!」

 

 急いで露天をしまい込んでいく。

 背嚢の大きさに対して、おさまっていくものの大きさがどう見ても釣り合っていない。

 

「どこだ! アイツは今どこにいる!」

 

「家で寝てます」

 

 そういうわけで、加賀美さんを叩き起こしにやって来た。だけど一筋縄じゃいかない。

 

「アキは寝てるからダメ」

 

「ぐぬぬ……」

 

「普通、こういうのってちゃんと連絡するなり許可取るなりしてから来るものだと思うんですけど?」

 

「し、しかし神器が……」

 

「それでアキが体調崩したらお金くれるんですか? 二級探索者が一日活動できたらどれだけお金を稼げると思ってます? ましてやアキですよ?」

 

「…………」

 

 ミツキさんが強い。

 ヴォルフガングさんの髭面を前にして、全く引くことなく上から言っている。

 

「2人も!」

 

「ひゃいっ!?」

 

「そういうことするなら、まずは相談でしょ! アキの持ち物の事を勝手に人に話しちゃダメ! それが知り合いでも!」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

 加賀美さんが起きてくるまで、三人でお説教を受けた。

 

「──それでわざわざ専門家を呼んでくれたのか」

 

「アキ! 子供だからって何でもかんでも話しちゃダメ!」

 

「何でもじゃないけど……」

 

「むっ!」

 

「わかりました! わかりました!」

 

 やっばりミツキさん相手だと弱いんだ。

 尻に敷かれてるって、こういう事を言うんだろうな。

 

「ミツキの話はもっともではあるが……それにしたって武器と言えば鍛治師(俺たち)だ。なぜ最初から呼ばなかったんだ?」

 

「だって五月蝿くなるから」

 

「神器のことで煩くならないのはモグリだけだ!」

 

「モグリの人に頼みたいなあ」

 

「何ちゅうことを言うんだお前は!」

 

「ほら、うるさい」

 

 加賀美さんは神器を取り出してテーブルに置く。

 相変わらず普通のナイフにしか見えないけど、ドワーフでもこの武器を観察することは簡単じゃないらしい。

 ハシュアーも、何度見ても、どれだけ時間をかけても情報が読み取れないって悔しそうにしていた。

 

「これが、どう喋ったんだ」

 

 確かにそこは気になる。

 口が出来たのか、コマちゃんみたいに頭の中に直接なのかな。

 

「前と変わらず何も読み取ることはできんが……」

 

「喋ったって言ってもそんなヤバいことじゃなくて、困惑してるみたいだった。え? え? なにこれ? みたいな感じで頭に語りかけてきた」

 

「ふむ……」

 

「なんか心当たりない?」

 

「…………ワシらは武器がどういう性質で、どういう性格を読み取ることはできるが、それが実際に喋っているのを見たことはない。そんなことができれば、それこそ牙の地位に至ることすら出来るだろう」

 

「アルスならできるってことか?」

 

「アルス『様』と呼ばんかい」

 

「それで?」

 

「……そんな話は聞いたことがない。確かにアルス様は特別だが、神器すら読み取れるわけではないんだ」

 

「牙ならできるんじゃないのか?」

 

「できるなら牙にだってなれるという話だ! 牙になるならできないといけないわけではない! そもそも前例がないんだ!」

 

「じゃあ、何も分からずってことか」

 

 僕も何か力になれないかなって思ったんだけど、ヴォルフガングさんが駄目なら無理ってことかな。

 

「彼ならわかるやもしれんが……いや、余計な事だな」

 

「彼?」

 

「…………」

 

 おっ? 

 

「そこまで言っといて逃げるのはねえだろ〜。そもそも、神器がどうとかで押しかけといて情報提供無しかよ。義理も何もねえのか?」

 

「ぐっ……」

 

「その人ならなんか分かるかもしれねえんだろ? じゃあ教えてくれや〜」

 

 何だか、すごくチンピラみたいな喋り方になった。

 

「いかんいかん! お前みたいなチャランポランを合わせるわけにはいかん!」

 

「教えてくれよ〜」

 

「何だその話し方は!」

 

「先っちょだけだからさあ」

 

「何だ先っちょって!?」

 

「よく考えてほしい。この先の世界で──」

 

 結局、ヴォルフガングさんは押し切られた。

 譲るんだからどうとか、この機会を逃したら一生なんとか。凄い勢いで浴びせられる言葉の嵐に抗えなかった。

 でも、あの勢いで来られたら僕もなんでも頷いちゃうと思う。すごい熱を感じた。

 

「もう……やめてくれ……わかったから……」

 

 ヴォルフガングさんは息も絶え絶えで床に沈んでいる。

 

「気分悪いかも……」

 

 ミツキさんはその姿を見て、口元を押さえていた。

 確かに……髭を生やしたおじさんが床でハアハア言ってるのはちょっと気持ち悪いかもしれない。

 

「じゃあ、いい加減に教えてくれますかね」

 

「……彼は、ヒューマンだ」

 

「?」

 

「鍛治師の中で唯一のヒューマンにして、最も玉座に近付いた男でもあった」

 

「……アルス様の対抗馬だったって事でいいんだよな?」

 

「全く違う」

 

「うん? ……ああ、じゃあ『姫』の役割の方か? 確か名前は──」

 

「アリア様でもない。というか姫を男が継ぐわけないだろう」

 

「女形とかあるし」

 

「何の話をしているんだ……玉座、分からないか? 確かにこの国には無い考え方だからな」

 

「いやいやわかりますて。王位を継ぐって事──んん!? 待てよ!?」

 

 加賀美さんは大きな声を出したかと思うと、首を捻って、何かを呟きながらミツキさんの肩を揉み始めた。

 

「王位継承……姫、牙、ドワーフ……地下帝国……」

 

「な、なに? 何で肩揉むの?」

 

 困惑しかない状況で、加賀美さんは何かに納得したように頷いた。

 

「イルヴァの牙とは違うドワーフの共同体があるんですね?」

 

「違うってのも変な話になる。元は一つだったからな。そこから分かれてできたのがイルヴァの牙だ」

 

 ??? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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