【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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49_無い無い尽くし

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 な、なんとか倒せた……

 本当に強かった。

 結局最後まで、私の攻撃はほとんど歯が立たなかった。

 ダメージのようなのもやっと鱗を剥がしただけだし、それもサラマンドラを強化する結果に繋がった。

 

「コマちゃん! 食ったれ食ったれ!」

 

「わん」

 

 ビームを喰らった直後、大火傷を冷静に回復薬で治して突っ込んできた時は驚いた。

 だけどあれくらいは織り込み済みだそうだ。

 威力は見誤ったけど、そこを修正すれば道筋は見えていたってさ。

 ……私はなんか、好き勝手やってただけだ。

 あんまり役に立っていなかった気もする。

 

 でも、それもその筈。

 本来は私なんかじゃあ挑むこともできないような相手なんだから。

 レベル差が10以上のモンスター、特に今回は20近い開きがある。

 それでも付いてきたのは、強くなりたかったから。

 ──ヒロさんにおいていかれるのは嫌だ。

 

 受付の七緒さん──方目七緒──に聞いた。

 ヒロさんは、あらゆる意味で探索者に向いているらしい。

 

 まず、油断が無い。

 確かに、戦闘直後に樹上から襲ってきた半透明の猿たちをめった斬りにしていた。

 カッテカブトノオヲシメヨ──初めて聞いたけど、気を抜くなってことらしい。

 

 そして、躊躇が無い。

 行くところを決めたら、さっさと支度を済ませる。

 探索者の中には、期日までに業務を完了させないやつなんてのもたくさんいる。

 世の中なんて学ぶ前に探索者になった奴らばかりだから、そういうのが分かってないんだ。

 ……私もそうだった。

 

 加えてお金や名声に、興味が無い。

 ヒロさんはどこまでも一つのことしか見ていない。

 全人類の中で、人生の最終目標を焼肉に据えているのはヒロさんだけだと思うけど……それはマジで意味が分からないけど、とにかくお金も時間もその為のものだと思っている節がある。

 そして興味が無いから、受注する業務も無茶にはならない。

 

 あと一つ、ヒロさんに無いもの。

 

『それは?』

 

『──それはないしょっ!』

 

『はぁぁ!? ここまで聞かせといてハブとかねーから!』

 

『ちょっ──ゆらさなっ──』

 

『吐け! ヒロさんの秘密を吐け!』

 

『じ、じぶんでみつけなきゃ、いみがないんだよぉっ……!』

 

『え?』

 

『うう……乱暴にされちゃった……もうお嫁さんにいけない……』

 

『どういうことですか?』

 

『……お嫁さんに、もらってくれる?』

 

『七緒さんっ』

 

『もぉ〜、せっかちだなあ…………加賀美くん──いや、あの人の事をちゃんと知りたいなら、自分でちゃーんと見出さないとダメだよ』

 

『?』

 

『がんばってねっ!』

 

 見出す。

 何かを、私は見出さないといけない。

 ……ミツキさんは知っているのかな。

 

 ヒロさんのレベルは28。

 三級探索者としては中堅どころ。

 レベル20後半から30前半は第一の壁と呼ばれ、探索者が伸び悩む時期だ。

 

 理由は単純で、魔素を吸収しても肉体に留まらずに出て行ってしまうから。

 

 拒絶反応だとか、魔素に身体が飽きているとか、生物的では無く形而上学的な進化に伴う排泄行為に巻き込まれているとか、いまだに理由は解明されていないってヒロさんが言ってた。

 ……大学生だからキョージュと一緒に研究もしているんだってさ。

 

 だけど、ヒロさんには今のところ壁が無くて、コンスタントに魔素が吸収されていってる。

 今回も、計測するとキッチリ魔素が増えてた。

 私は少し無理しないと、ヒロさんに置いていかれる一方だ。

 頑張らなきゃ! 

 

 ……それはそれとして、ヒロさんと一緒に夕ご飯だ

 

「──かんぱーい!」

 

 帰ってくるのが遅かったからか、2人まとめて飲みに誘われた。

 受付は昼間はキッチリとした場所だけど、夕方くらいから酒場に代わる。

 本当は2人っきりが良かったけど、仕方ないか……

 

「方目さん仕事は──まぁ、どうでもいいや!」

 

 そんな事を言ったヒロさんと七緒さんがお酒をグイッと飲み干した。

 すでに七緒さんはヘベレケだ。

 

「今日も伸びてるねえ〜!」

 

「俺はタケノコですから」

 

「タケノコ? なにそれ」

 

「なんでもないっす……」

 

「そう? ──それにしても、もう少しでレベル30かぁ〜」

 

「もう少しで30歳か、みたいなノリで言わないでください」

 

「私だってまだ若いし!」

 

「なんも言ってないから……アリサ、お前も遠慮なく頼んでいいからな?」

 

「は、はい」

 

 でも、見た事ない物が多いし、なんか高いし……

 

「奢りだぞ」

 

「でも、私だって探索者ですよ?」

 

 ヒロさんに比べたら微々たるものだけど、ちょっとずつはお金も増えてる。

 

「こーら!」

 

 何故か七緒さんが口を挟んできた。

 訳知り顔でちょっと腹立つ。

 

「アリサちゃーん、男にカッコつけさせないつもり〜?」

 

「カッコつけ……はっ!?」

 

 そ、そうか! ヒロさんは私にカッコ良いところを見せようとしてくれたんだ! 

 私のバカ! 黙って奢られてれば良いんだから! 

 

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