【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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16_グリムス砦、再び

「フィアステラさん、お久しぶりです」

 

「久しぶりってほど久しぶりじゃないです」

 

「いやいや、数ヶ月経ったら久しぶりですよ」

 

 初めて見る鍛治師(ドワーフ)のフィアステラさんだ。

 ──お、おっきい……! 

 

「ん!」

 

「痛っ! 何するのさ!」

 

「空見てて」

 

「え、な、なんで……いたたた! わ、わかったから!」

 

 首を捻られて痛めるところだった。

 

「神器が言語を操ったと」

 

「ええ」

 

「お見せ頂いても?」

 

「はい」

 

「………………」

 

「わかります?」

 

「ふぅ……わかりません」

 

「見たかっただけじゃん……」

 

「それの何処に問題が?」

 

「アンタらはそうでしょうねえ!」

 

 とにかく、フィアステラさん? とヴォルフガングさん、そしてアリサちゃんと妖精の止まり木(僕たち)が行くことになった。

 そのうち2人は大学生っていう、中々珍しいパーティーの結成だ。

 出席問題? とかいうのはどうなったんだろう。

 

「いざとなったら養ってくれますもんね〜」

 

「まあ、はい」

 

「ふふーん」

 

 アリサちゃんは腕にしがみついて、完全にピクニック気分だ。でも、どんな場所に行くのかと思えば僕たちが向かったのは普段住んでいるセクター内のとある草原。

 

「雪がないとこんな感じなんですね」

 

「ええ」

 

 最初はただの草むらに見えていたのに、フィアステラさんが何かをすると途端に地下へ続く階段が現れた。

 

「!?」

 

 アリサちゃんも、シエルちゃんも、僕も、ビックリして言葉が出ない。まさかこんなところにこんな場所があるなんて。

 ……シエルちゃんがもっと早くこの場所を知ってたら大変なことになってたのでは? 

 

「……んんっ…………そういうこと言わないで」

 

 若干気まずそうにしているあたり、本当にそうなんだと思う。

 通路を進むと壁際に石像? が置かれている。

 アリサちゃんはそれをまじまじと見つめていた。

 

「うわ、めっちゃおっぱいでかいじゃん。フィアステラさんもそうだけど、ドワーフの女の人っておっぱいでかいんだね」

 

「…………」

 

「でも大きさじゃないから。大事なのは好きな人がどうかだから──ね?」

 

「ん」

 

 シエルちゃんとアリサちゃんは、どこか通じ合うところがあったようだ。

 

「まさかこんな早く戻ることになるなんてなー」

 

「私もびっくりよ」

 

 イルヴァン王国に行くには、まずイルヴァの牙を通る必要があるらしい。どっちもよくわからないけど、取り敢えずドワーフのセクターみたいなものって考えれば良いんだってさ。

 

 やがて辿り着いたのは一つの広間。

 ミツキさんが持ち帰ってきたのと同じ。さっきも見た、ちょっとえっちな石像がたくさん置いてある部屋だ。

 ここでブリンクをするらしい。

 

「1人ずつ行うので、まずは加賀美さんから」

 

「はい」

 

 グニョンて空間が歪み、その中に加賀美さんは吸い込まれた。ブリンクするのは僕も久しぶりでちょっと緊張する。

 

「2人は最後ね」

 

 僕とシエルちゃんが最後に残された。

 じゃあ、まずは僕から──

 

「動かないでね」

 

「──え?」

 

 僕たちは武器を向けられていた。

 ヴォルフガングさんとフィアステラさんの両方からだ。

 

「まさか、本当に付いてくるとはな……」

 

「ここで殺しておけば何の問題もありませんね」

 

 咄嗟にシエルちゃんを背中に隠した。

 

「何ですか!」

 

「騙されているのか、それともすっとボケているのか……一応教えておいてやろう。そいつはエルフだ。最近騒ぎを起こした奴ら──エリュシオンの仲間連中どころか、大元にいる元凶。悪人だぞ」

 

「……知ってます!」

 

「知ってる? つまり……アキヒロ達も敵というわけか?」

 

「加賀美さんは関係ない!」

 

「なんだこのガキは……じゃあ何だ、お前さんだけがエリュシオンに同調したクズという事だな」

 

「違う! シエルちゃんは、僕達のためにエリュシオンを裏切ったんだ」

 

「…………はぁ」

 

 ため息。

 その顔は、僕の話を信じているとはとても思えない。

 しかも、ヴォルフガングさんだけじゃなくてフィアステラさんも武器を構えて、目を細めてこちらを睨んでいた。

 

「小僧、そんな話を信じたのか?」

 

「!」

 

 まるで、シエルちゃんが嘘つきだと言っているみたいな口調に頭がカッとなった。

 

「侵攻してきている奴らの言う話を間に受けて絆されるとは……」

 

「違う! シエルちゃんは本当に味方なんだ!」

 

「なんとでも言えばいい」

 

「──ぼ、僕らを殺したら加賀美さんが……」

 

「奴には、ブリンクの謎の失敗に巻き込まれたとでも言っておこう」

 

 2人がレベル幾つなのかは分からないけど、戦闘を生業にしてる人たちじゃない。だからチャンスはある。

 そう思って、ヴォルフガングさんの剣を受けた。

 

 ──軽い音を残して、僕の剣は砕け散った。

 

「武器破壊は俺らの得意技だ」

 

「っ……」

 

 シエルちゃんを背に、少しずつ壁際へ。

 このまま外へ逃げられれば──

 

「入口は塞いだ。もう……逃げ場はない」

 

「!」

 

 せめて武器を奪えれば、あるいは……覚悟を決めた時、声が聞こえてきた。

 

『やめてください』

 

「──こ、この声は!」

 

「まさか……そんな……!」

 

 その声を聞いた途端に2人は武器を下げ、驚いて天井を見上げた。

 だけど誰の姿もない。

 ただ、同じように声だけが響く。

 

『彼女は敵ではありませんよ』

 

「イルファーレ様!?」

 

「なぜ、このような場所に!?」

 

 2人は大きく取り乱していた。

 さっきまで僕たちを殺そうとしていた空気なんてどこへやら、地面に膝をついている。

 

『本来ならば、このように口を出す事は良くないのですが……少々思うところがありました』

 

「まさか俺たちの──私たちの前にお姿を現してくださるなどと! 私はヴォルフガング! うだつの上がらぬ鍛治師ではありますが、日々──」

 

『承知しておりますよ、イルックス(残光)のヴォルフガング』

 

「お──おおおおおお!」

 

『あなたもです、フィアステラ。道案内役としてよくやってくれていますね』

 

「──!」

 

 ヴォルフガングさんは涙をボロボロとこぼし始めた。

 フィアステラさんも感激してか口元を押さえている。

 僕は、とにかくシエルちゃんを抱きしめた。

 

『シエル、レイト……ハシュアーを、これからもよろしくお願いします』

 

「は──」

 

 状況の移り変わりについていけなかった。さっきヴォルフガングさんが口にしたイルファーレって名前は確か……神様の名前だ。

 鍛治の神様。

 火の神様。

 それが僕たちの前に現れた。

 しかも、僕たちを自分の眷属から助けるために。

 信じられなくてシエルちゃんを見ると、シエルちゃんも同じように目をまん丸にしている。

 

『2人を通してあげなさい』

 

「へへえ〜!」

 

 感情が感じられないのに、その口調からは少しだけ厳しさが感じ取れた。

 それを聞いた2人は慌てて僕たちを魔法陣? の上に誘導して──

 

「2人でもいけるんですか!?」

 

「あ、あれは……」

 

『私ならいくらでも送れますが──そうですね、一応1人ずつ送りましょう』

 

 そんな、恐るべき話を聞かされた。

 

『まずはシエルから』

 

「はい」

 

 シエルちゃんは先にぐにゃぐにゃと歪み消えた。

 次に僕。

 久しぶりの感覚。

 視界が曲がりに曲がってふらつくと、先に飛んでいたシエルちゃんが支えてくれた。

 

「おっっっっそ! 何やってたんだ2人とも!」

 

 加賀美さんがドン引きしている。

 僕も何やってたのか聞きたいくらいだ。

 

「ちょっと手間取っちゃって……」

 

「あー……まあ、ブリンクって変だもんな」

 

 それだけで納得してくれた。

 遅れてやってきた2人は気まずそうだったけど、その様子を見ても加賀美さんは特に疑わない。

 

「猿も木から落ちるんだよな」

 

 よく分からないことを言って頷いている。

 とにかく、起きた事は4人だけの秘密ということにした。

 

 道、道、崖、崖、道、崖、道、グリムス砦。

 砦には驚いた。

 たくさんのドワーフがいて、みんなが鍛治師として何かを作っていたんだ。

 砦の中にあるものは全部──砦そのものも含めて。

 そして、モンスターの襲撃もあった。

 正直、生まれて初めて砦っていうものの存在を知ったけど……砦っていうのは何かを守る為に作られる街なんだって。

 

 本来は神様の加護があって、そのおかげで色々な敵から守られてる。だけど最近は加護が弱まっていて、そのせいでモンスターが乗り込んでくることがあるって偉い人のデスターさんは言っていた。僕たちがやってきた時も襲撃があって、小型のモンスターがたくさん砦の周りに集まったんだ。

 僕たちも討伐を手伝って、それでいっぱいありがとうって言われた。

 

『やるじゃねえか! そんな細身で!』

 

『めんこいわね〜』

 

『アキヒロもそうだけど……ヒューマン、中々やるもんだな!』

 

『おにーちゃんありがとう!』

 

 探索者をやっていてもあんな事を言われたりはしない。

 だから、本当に嬉しかった。探索者をやっていて良かったって……初めて心の底から思った気がした。

 

「ふはあ……疲れた……」

 

「うん」

 

 僕とシエルちゃんは同じ家だ。

 ドワーフの家だと流石に小さいんだけど、討伐を手伝ったお礼にって新しい家をすぐに建ててくれた。

 加賀美さんとアリサちゃんも同じように別の家を作ってもらって、ハシュアーだけ家を分けられた。

 

『えー!?』

 

 ショックを受けた顔で引きずられていくのは正直面白かった。

 

「いいじゃん別に……うるさいのがいなくて」

 

「シエルちゃん、そういうこと言っちゃダメだよ」

 

 フィアステラさんから教えられた通りにシエルちゃんは耳を隠していた。尖った耳がエルフのわかりやすい特徴なんだって。

 これまでは気にしたこともなかった。

 だってちゃんさんなんか猫耳だし、街を歩いてたらもっとすごい耳の人だっていっぱいいる。

 

「疲れたけど……楽しいや」

 

「楽しい?」

 

「うん。褒められるの、すっごい嬉しかった」

 

「……そうだね」

 

 でも、一つだけ言いたいのは……ベッドが一つってのはどうなのかということだ。

 すごいふかふかで寝心地はいいんだけど、一つだとシエルちゃんと身体が触れてしまう。

 抱き合わないと寝れないってほどじゃないけれど──

 

「やっぱり、僕も外で寝るね」

 

「ダメ」

 

 いつも同じ部屋で寝てるって言っても、ベッドは別だ。偶の偶に何かがあって一緒に寝る時はいつもドキドキして、とても寝られたものじゃない。

 

「…………」

 

「そんな見られてると眠れないよ……」

 

 ジッと、僕の横顔を見つめてくる視線は暗闇の中でもなんとなく分かって落ち着かない。これもレベルが上がったせいだ。

 息をするのだって気まずいようなベッドで眠りに落ちられるわけはないので、シエルちゃんが目を閉じるまで待つことにした。

 …………したんだけど。

 

「寝ないの?」

 

「…………寝れない」

 

 そんな事を言いつつ身体を寄せてきて、いつのまにか僕の肩におでこをつけて寝るのがシエルちゃんだ。

 いつもと同じ。

 今日も同じ。

 僕は反対側を向いて、ドキドキを超えて眠りに落ちていくのを待った。

 

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