【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「はぁ……」
結局、眠るのにはだいぶ時間がかかった。
だからベッドは別にして欲しいって言ったのに……朝だからってシエルちゃんに起こされたけど、まだ寝足りない気分だ。
「ハシュアーは1人で泊まったのかな」
「どうだろうね……」
ただでさえ寝起きは頭が回らないのに、今日は一層回らない。歩くことすらうまく出来ないや。
なんて思っていたらいつのまにか昼だ。
お昼まで何もせずに過ごしてしまった。
「いいのいいの、昨日は頑張ってくれたんだからのんびりしな」
資材運びを手伝おうとしたらこんなことを言われてしまったし、本格的にすることがない。
昨日はバタバタしていて見られなかった街の中の様子ってやつを見てみようかな。
「──というわけなんだけど、シエルちゃんはどうする?」
「行く」
迷いがない。
シエルちゃんも相当に暇していたんだ。
街を見て回ると、さまざまな装飾品をドワーフの人たちが身につけているだけじゃなくて街全体がなんとなく煌めいているような感じすらしてくる。
「綺麗」
「うん、綺麗だね」
僕たちの語彙力の無さのせいで綺麗しか言葉が出てこないけど、とにかく綺麗だ。
「──うひいいい!」
突然、ハシュアーが目の前を駆け抜けていった。
何故かメイスと盾を持ったまま。
さらに、その後ろを大勢の子供達が追いかけていく。
『待てええ〜!』
楽しそう。
最初の感想はそれだった。
ハシュアー1人だけが大変そうに走って、追いかけっこみたいに見えたから。
だけど、僕たちに気付いた子供達は二手に別れた。
ハシュアーをそのまま追う子達と僕たちのところに詰め寄る子達。
「な、なに!? どうしたのみんな!?」
『ふわああ……!』
とてもまっすぐな目で、まるで僕たちが凄い人たちみたいな目で見てくるので居心地が悪い。
シエルちゃんは僕の後ろに隠れようとしたので止めた。
「ちょっと……! 僕だけじゃ無理だよこれ……!」
流石に今回は一緒に対応してもらうよ。
「私、子供無理」
「僕だってそんな得意じゃないよ……!」
そもそもシエルちゃんだって子供みたいなものだ。
我儘だし、嫌いな食べ物残すし、朝は全然起きないし。
『──ねえねえ!』
「ん!? な、なにかな!?」
「ぶふっ」
「笑わないでよ……!」
『昨日のあれやって!』
「え……ど、どれ?」
『ざしゅー、ぶわーって!』
「どれだろう……」
「剣を振ってるところが見たいんじゃない」
「いや、でも、それって──」
こんないっぱいの子供に囲まれてたら出来ない。
そうじゃなくても人前で武器を振るのって結構緊張するし。
「ご、ごめんねみんな……武器を振るのは危ないから……」
『じゃあ広いところならいいんだ!』
「え」
僕たちは空き地に連れてこられた。
まさかこんな事になるなんて……武器を置いてくれば良かった。
『……!』
キラキラと目を輝かせる子供達を前に、今更無理だなんて言える訳もなく……僕は、へたっぴな剣技を披露した。加賀美さん達がいなくて本当に良かったと思う。
それでも子供達はすごいすごいと手を叩いて喜んでくれた。
『俺もやりたーい!』
「ダメだよ。武器は危ないから……君たちが持つにはまだ早いかな」
『えー!』
「もう少し大きくなったら、ね?」
『はーい……』
これでやっと解放かと思ったら数人残っていた。
大体は女の子だ。
「みんなどうしたの?」
『──レイトさんって彼女いるんですか!?』
「!?」
『ね! 教えて!』
「いや……え……?」
『私がこの街のこと案内してあげる!』
「それは嬉しいけど……こんなに大勢はいなくても……」
『じゃあ私が!』
みんなで街を案内してくれるって言うんだけど、1人か……多くても2人いれば案内には十分だ。
結局、案内を誰がするかで鍛治利きが始まった。
…………?
「なにこれ」
「わかんない……」
僕たちは鍛冶場に連れてこられた。
それで何をするかと言えば、子供達は置いてあった鉄を炉に入れて熱し始めた。
もう、僕たちのことなんか見ないで火に視線を注いでいる。
「案内は?」
僕たちは鍛冶場の隅っこに座ってそれを見ているだけだった。僕もそうだけど、シエルちゃんも状況が全く飲み込めていないようで首を傾げている。
「鍛治利きって、なに?」
「さあ……」
街を見てまわりたいのはその通りなんだけど、連れてこられたってことは僕たちもこの場にいないとダメという事なので離れられない。それはそれとして、ちゃんとした場所で鍛治をしているところを見るのは初めてだった。
「ハシュアーはいつも無理してたんだね……」
ハシュアーはいつも、火がないところで鉄を叩いていた。それでも十分な家具やアイテムを作ってくれたけど、これが──この光景が鍛治師本来の姿なんだ。
汗を垂らして、手袋をつけて、真っ赤になった鉄を取り出して叩く。
これでどうやって武器の形に持っていくのかわからないけど、ハシュアーがやっていた事を考えると、同じように叩いて形を作っていくんだと思う。
「私も……鍛治、初めて見た」
「ね」
だけど、1人の女の子がシエルちゃんのことを睨んでいた。動かしていた手を止めてツカツカと歩み寄ってくる。
「ちょっと! レイトさんにあんまり近づかないでよ!」
「は?」
「っ!」
「誰、お前」
「わ、私はペムーニャ!」
「興味ない」
「自分が聞いたんじゃん!」
「近付くとか言ってたけど、そもそもレイトは私のものだから」
「──えっ!?」
「はあああ!?」
大声を出しちゃったけど、パーティー仲間なのである意味で間違いじゃなかった。シエルちゃんがそんな変な意味を持たせるわけないしね……うん。
ペムーニャも鉄が冷えちゃうって慌てて炉のところに戻った。
「うわ、なんじゃこりゃ。何しとるんじゃお前ら」
ひょこっと顔を出したデスターさん。
鍛冶場の光景を見て顔を顰めている。
やっぱりこれは普通じゃないっぽい?
「2人はあれかの? 鍛治に興味があるのかの?」
無いって言ったら嘘になるけど、僕たちがここに来たのはそれが理由じゃない。
「鍛治利き……揉め事の原因は何じゃ」
「誰が街を案内してくれるかで揉めちゃって」
「……罪なやつじゃのお」
「?」
鍛治利きがなんなのかを結局誰も教えてくれなかったので、よく分からないままここにいるという話をした。
「鍛治利きは各々が作った金物を見せ合って、一番優れてるやつが勝ちじゃな」
「……そういうことかあ」
「で、どうするんじゃ? このまま見続けるのも良かろうて」
「そうします」
正直言って、見てたら段々と興味が湧いてきた。
このまま鍛治利きで何を作るのか、見てみたい。
「──もう少し近くで見ても良ーい?」
「い、いいよ!」
「…………」
「っ……あ、あの……」
「あ、ごめんね。邪魔だったかな」
「いや! そうじゃなくて! ……やってみる?」
「え? いいの?」
「はい!」
借りた金槌を持ってみると剣よりもズッシリしている。ハシュアーが力持ちな理由って、もしかしてコレ?
「重いかな?」
という反応なので、やっぱりそうなんだ。
だけど、金槌を渡されたからって何をすればいいのかよく分からなかった。これで鉄を叩けば良いの?
「えっとね。私が鉄を出すからレイトさんは叩いて?」
「…………はっ!」
「うわ! 強すぎ!」
「ご、ごめん……」
「力が強すぎると鉄が一気につぶれちゃうんだよ。ずっとその力でやれるなら良いんだけど……力の入れ方がバラバラだと脆いのしか出来ないの」
「???」
「よ、要は毎回同じくらいの力でたたいてってこと!」
「なるほど!」
ペムーニャがもう一度炉に鉄を入れると、火でどんどん熱されてまた赤くなる。そう言えば、なんで熱くなると赤くなるんだろう。
「そろそろ出すよ」
「はいっ!」
言われた通りに叩き続けると、最初は箱に近い形だったのが少しずつ伸びていく。それをさらに叩いて折り曲げて、また熱くする。
それを3〜4回繰り返したところで気付いた。
いつのまにか、たくさんの視線が集まっている。ひょっこりと顔を出しているのは多くが子供じゃないドワーフで、その中に紛れて加賀美さんとアリサちゃんもいた。
ついでにシエルちゃんも何故かそっちにいる。
「あー……っと……」
「気にしないで良いよ。いつものことだから」
そりゃあドワーフのみんなは慣れてるかもしれないけど、僕はそうじゃない。
そもそも僕は今、何を作ろうとしてるんだろう。
「そりゃあ剣!」
「そうなの」
「武器といえば剣! 鍛治といえば剣! でしょ?」
「武器といえば剣ってのはわかるけど、鍛治のことは……」
野次馬は解散する気配がなくて、このまま僕が鍛治をある程度ちゃんとやるまでは見逃してくれないような気がした。
もう一度金槌を握って、合図を待つ。
「いくよ!」
「──!」
結局、最後までは出来なかったけど……子供達が夢中で金槌を振るってる理由がわかる気がした。
「俺が来た時はあんなのなかったけどなあ」
「ヒロさんはほら……人を選びますから! それに、私は大好きですよ?」
「それは嬉しいけど、差を感じて寂しいわ」
腕が重い。
今日はもう剣を振るのは控えておこうと思う程度には。
だけど、ペムーニャ達は今もまだ火を見ている。鉄を取り出して、打って、また熱くして、時折何かを振りかける。
「鍛治は朝から初めたからといって必ずしも夜に終わるもんじゃない。子らも寝ずに、というわけにはいかない。お前達、今日はここまでにしなさい」
『はーい』
夜遅くというわけではないけど、一旦鍛治はストップということらしい。
ところで鍛治利きは?
勝った子が案内をしてくれるって話は……
「アレはまあ……勝者が決まったら、といったところじゃ」
そういうわけで、僕たちは普通に鍛治場から放り出された。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない