【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「どう思う?」
「え?」
「この街のこと」
鍛冶場から放り出された後に合流して、加賀美さんはそんなことを聞いてきた。
アリサちゃんとシエルちゃんは2人でどこかに行ってしまった──だからかもしれない。
「ドワーフ達の生活を見て、住んでる人たちを見て、どんなことを感じた?」
「不思議な人たちだとは……思います」
「うん」
「でも、それが変だとか嫌だとかってわけじゃなくて……」
言い表し辛かった。
この感覚を僕は、生まれて初めて抱いたから。
全然違う場所に、セクターでもない街に、僕たちとは違う姿の人たちが住んでいる。
鉄と火を愛して、みんなで協力して暮らしている。
「良い街だと思います」
「そか」
「……加賀美さんは?」
「まあ、普通だな」
「あれっ」
加賀美さんも良い街だと思ったんだと、そう思っていた。だけど、普通だって言う割には──
「──」
優しい目だ。
『あはは!』
子供は駆け回って、大人は道具を担いで鍛冶場に向かっていく。
男も女も関係ない。
みんなが、そうやって暮らしているんだ。
「
32セクターのみんなは──というよりもヒューマンは、こうやって街に関わって暮らしてはいなかった。
何が違うんだろう。
鍛治だけをやっているのに、それが暮らしそのものに繋がっていく……すごく不思議なのに、すごく自然だ。
「そういう視点か」
笑って、そんなことを言う。
また僕が何も分からないと思って面白がってるんだ。
「加賀美さんはどうなんですか」
「怒んなって……人力でやらなきゃいけないけどマンパワー的に解決するのが難しい問題を、種族としての特性で乗り越えるってのはドワーフらしいって感じかな」
「難しい問題?」
「街の維持だよ」
それのどこが難しいんだろう。
「確かにイルヴァの牙からの補給は多少あるだろうけど、それ以外は陸の孤島だろ? 俺たちはなんだかんだで端末もあるし、セクターごとに商工会がまとめて運営してるから物資の調整も出来るはずだ。
「はい」
「……あんまピンとこないか」
「普通かなって思ったんですけど」
楽ではないと思うけど、僕たちだって探索者がいなかったらモンスターがダンジョンから溢れたり外からやってくるような場所に住んでる。そうやって考えれば、普通っていうのはわかる気がした。
それでも何かが違うから加賀美さんはあんな言い方をしたのであって、それをわかりたくて考える。
「うーん……わかんない」
「まあ感覚の問題でもあるから、無理に分かる必要もないよ」
そう言われるとますます分かりたくなるけど、おハゲのお爺さんがやってきた。
確か、荷物を運ぶのを手伝ってあげたおじいさんだ。
「こんにちは」
「うむ」
「………………?」
「……んんっ…………お前さん、武器、壊れたんじゃってな」
「はい。あ、でも貰いました」
ヴォルフガングさんに壊されたものの代わりに、鍛冶場にあった剣のうちの一つをもらった。元々使ってたものとは重さとか長さが違うけど、鍛治師がちゃんと作ったものなだけあって使いやすいと思う。
多分、慣れれば何の問題もない。
「いかんぞ」
「はい?」
「いかんぞ」
「あ、あの……?」
「その剣は、お主の身体にも魂にもあっとらん」
「たましい?」
「ワシが作っちゃる」
「え!? あ……」
すごく嬉しかった。
だけど、加賀美さんが微妙にショックを受けた顔をしている。
もしかして、もう出発?
「あ、あの……」
「……いや、探索者ならそういうのも大事だ。作ってもらおうか」
「──やったあ!」
「そしたらアレですか。この後は採寸とか」
お爺さんは首を横に振った。
「そんなことせんでも見たらわかるわい。まあ、暇なら見てても構わんよ」
「見ます!」
大人の鍛治師がどんなふうに仕事をするのか、すごく興味があった。
「そしたら、ワシも準備が必要だから……少ししたら始めようかな。まあ、適当な時に鍛冶場にくれば作業しとるよ」
「はい!」
すごい!
ディーンさんにはまだ先だな、なんて言われてたけど……まさか鍛治師に直接武器を作ってもらえるなんて!
「ディーンは地団駄踏んで悔しがりそうだな」
「あはは、そうですね〜……あ」
子供がまた、走り回っている。
ペムーニャ達とはまた違う子達だ。
木の棒を振り回して、稽古中かな。
『こらー! また危ないことして!』
違った。
ただ振り回しているだけだ。
……加賀美さんも、昔はああいうことしてたのかな。
「?」
聞いてみた。
「──え? 俺があんなことしてたのかって? そりゃあもちろん、俺も昔はチャンバラしてたぞ。それに、誰が一番かっこいい枝を持ってるか競ったり、川でザリガニ釣りしたり、裏山にアケビがなってたからそれ食べたりな」
「意外です」
「そうか?」
「子供の頃からそんな感じなんだと思ってました」
「ちょっとディスってる?」
「ディ……? と、とにかく、悪口じゃないですよ? 想像できないだけっていうか……」
「この姿のまま生まれてきたとか思われてるってこと?」
「ぶふうっ!」
「おぼっ」
この姿でバブバブ言ってる加賀美さん。
この姿でオムツを変えられる加賀美さん。
この姿で泣き喚く加賀美さん。
この姿でお漏らしする加賀美さん。
想像しただけで咽せてしまった。
──────
グリムス砦でもお金は必要だ。
鍛治師がセクターで使っている屋台はこちらでも良く見かける。とは言っても、売っているのは鍛治師がみんな好きだっていう焼き芋虫やお酒だ。ちゃんとしたお昼ご飯を買えるようなお店は限られている。
そして、限られてるからこそ大盛況。
『うおー!』
みんなが集まって奪い合うようにご飯を買っていた。
葉っぱに包まれたお肉の何かだ。
みんなが急いで買って、それでもなくならないほどたくさん用意されていて、遅れてやってきた人もスィーって取っていく。あの身体の大きさであれだけ食べるんだ。
「前回は気付かなかったな」
「そうなんですか? ……むふふ」
「おっと、俺の観察眼をバカにするのはやめてもらおうか」
「ふふ〜」
「こら」
「あはは!」
「……ったくw」
前回は別のことを気にしていたーーなんて、言い訳がましいな〜。
「ミツキが足怪我してたし、光学迷彩だし、ワープを任意にできるし。三連続で撃ち込まれると驚くよ流石に」
「……?」
「まあそれは良くて、俺たちも買ってくか」
「はい」
買ったご飯は絶品だった。
ほろほろに崩れるまで煮込まれたモンスターの肉と、シャキシャキとした食感のサラダ。しょっぱい味付けは第一セクターに行った時のことを思い出す。
「良く汗かくからかね? それにしても……よくぞこんなに塩を準備できるもんだ」
「──そりゃあ地下から持ってきてるからな」
「あれま、いつの間に」
僕たちは舗装された道に置いてある岩に座り込んで、そこで食べていたけど、いつのまにかヴォルフガングさんがいた。フィアステラさんは連れていないようだ。
「……」
今でも思い出す。
イーヴァ様に助けてもらったって言っても、この人は僕たちを──シエルちゃんを殺そうとしたんだ。
シエルちゃんには、耳を出したりアリサちゃんから離れないように言っている。だけど、完全には安心できなかった。それを加賀美さんに言えないのも、更にもどかしい。
「うん? ……何だ2人とも、知らんところで喧嘩したのか」
「い、いや……」
「ダメだぞヴォルフガングさん。ちゃんと謝らないと」
「…………」
「マジでやらかしたの? 勘弁してくれよ〜」
加賀美さんの軽い口調でかろうじて場が保たれているけど、そうじゃなかったら逃げていたかもしれない。
「それで、何を持ってきてるって?」
「ん、ああ……塩だ」
「じゃあ岩塩なんだな」
「見たことあるのか」
「俺、ウユニ塩湖行ったことあるし」
「なんだって?」
「ここら辺、昔は海だったんだ?」
「会話しろよ…………海とかは知らん。取れるものを使ってるだけだ」
「……こえ〜」
「なにがだ」
「塩以外のもの入ってそうじゃん」
「食べられるから大丈夫だ」
「そうだけどそうじゃない」
いつもはこの時間くらいだとダンジョンにいるかお買い物をしているかだから、ちょっと落ち着かない。こうしていて良いのかなって誰かに言われてるような気分になるんだ。
「……あ」
トンテンカンって金属を叩く音が聞こえてきた。意識すると、鍛冶場だけじゃなくて家の中からも聞こえたりする。時折、汗だくで半裸のドワーフが家から外に出てきて地面に寝っ転がる。気持ちよさそうな顔で目を瞑っていて、体からは蒸気が上がってくる。
話を聞いてみると、霧で体を冷やしてるんだって。
「女の子もやるのかね」
「加賀美さん……?」
「ち、ちがう! 純粋な興味だ! ロリコンと一緒にするな!」
だとしても、今の発言を外でするのは不用意がすぎると思う。というか……破廉恥だ。
「男しかいないと油断しちゃうの! 男の子はそういうものなの!」
「まあ気持ちは分かるがな……口に出すもんじゃないぞ」
「分かってるって! 本当にポロッと出ちゃっただけだから! はい、この話終わり!」
「──すべての男の夢だ。女もやってくれないかなあって」
「終わりだっつーの! ……つーか、やっぱり思ってんじゃねーか!」
「まあ、そういうわけだ」
すれ違った女の人がすごく冷たい目を2人にむけていた。僕は巻き込まれないように少し離れていたから大丈夫だった。
「三船君、なかなか強かだな」
「い、いや……」
正直よく分かってないから。
それに、そういう話は人とするものじゃない……と思う。
「…………」
「……なんですか?」
「いや……子供がどうやって出来るかは知ってる?」
「し、知ってますよ!」
「言ってみ?」
「…………す、すすすす、好きな人とチュ、チューしたら……運が良ければ、虹の橋を伝ってやってきて、朝起きた時に……枕元にいるん、ですよね?」
「…………」
「合ってます、よね? ──わっ!?」
肩を、がっしりと掴まれた。
加賀美さんは満面の笑みだ。
「三船君」
「は、はい?」
「突然で悪いんだけど。思い出した事があって……今度、2人きりで話したい事がある」
「はあ」
「うん、それだけ……あ! あと、今の話は他の人にするなよ?」
「当たり前じゃないですか!」
僕のことをなんだと思っているんだ!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない