【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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19_ぐわははは!お姫様はもらった!早く助けてくれ!

「来たか」

 

 鍛冶場へと再びやってくると、子供達に混じってお爺さんが鍛冶をやっていた。

 

「外じゃあ鍛治やってるところなんて見ることもねえだろう?」

 

「はい!」

 

「さて、そんじゃあ……グリムスを守ってくれた英雄さんに一丁拵えてやりますか!」

 

 そんな、恥ずかしい宣言と共にお爺さんは槌を振り上げた。

 一つ打てば火花が飛び、二つ打てば汗が飛ぶ。

 三つ打てば光が飛び、四つ打てば時間が飛ぶ。

 とにかく、見ていると時間があっという間に過ぎていく。加賀美さんが何かを言った気がしたけど、それに返事をしたかも覚えていない。

 

「レイト」

 

「──はっ!?」

 

 ただ、シエルちゃんが袖を強く握るまで。

 僕はお爺さんのことを見つめていた。

 

「へっ……ようやく、元に戻ったな」

 

「ご、ごめんなさい! 夢中で見ちゃいました!」

 

「嬉しいねえ嬉しいねえ。これほど鍛治師冥利に尽きることもねえよ。嬢ちゃんが声をかけさえしなきゃ、ずっと見ててくれても良かったんだがな?」

 

 ここまで夢中になるとは僕自身、思ってもみなかった。

 火と、鉄と、小柄なお爺さんが金槌を振る姿。

 そこから視線が離せなくて、自分の意識が半分くらい浮いているような気分だったんだ。

 

「そろそろお夕飯」

 

「そ、そうだよね」

 

 言われて、僕もお腹が空いていることを自覚した。

 加賀美さんアリサちゃんも一緒にいるから、みんなで……でもどこで? 

 

「フィアステラ達が用意してくれたって」

 

「…………」

 

「……ほら、行こう」

 

 手を伝ってくる温もりと柔らかさは、殺されそうになった張本人とは思えないほどリラックスしていることがわかる。なんで、信じられるんだろう。

 

「──コックとも違うな……食事特化型の職人か。この技量……」

 

「美味しすぎません?」

 

「依存性ありそう」

 

 夜はサラダメインでお肉はちょこっとだけど、食べる手が止まらない。外だったらすごい稼げそう。

 第一セクターで食べた食事よりも全然美味しい。

 

「ドワーフはイルファーレ様から加護をもらってるって言ってたな」

 

「ほえ〜」

 

「鍛治限定だと思ってたけど、家事もいけるってことか?」

 

「おもしろ〜」

 

「アリサ?」

 

「……てへっ」

 

 付き合ってるから当たり前なのかもしれないけど、2人は本当に仲がいい。殴り合ったことがあるなんて信じられないくらいだ。

 そんな2人がご飯を食べさせあっていた。

 

「おじいちゃーん、あーん」

 

「……あーん」

 

「あっ」

 

 コケてドレッシングごと左目のあたりにベシャってなった。

 当然、口にはひとかけらも入っていない。

 

「そこは目だな」

 

「あわわわ……拭くもの拭くもの……」

 

「そんな慌てんでも死なないから」

 

「あった!」

 

「うん、雑巾だね」

 

 言葉も虚しく、加賀美さんの顔面は更にぐちゃぐちゃになった。

 アリサちゃんって、こう見ると意外とドジ? 

 

「甘えてるだけ」

 

「わかるの?」

 

「見ればわかる」

 

「分かるかなあ」

 

 それに、シエルちゃんの人物評はあまり当てにならない気がするし……甘えるにしたってもうちょいやり方があると思う。

 

「あの人は……変だから」

 

「またそんな事言って……」

 

 それで自分がスパイだったんだから世話無いよ。

 

「本当だもん」

 

「分かったから」

 

「む……」

 

 結局、加賀美さんのことが苦手な理由ってなんだろう。エリュシア帝国の人だってことはわかったけど、そっちは分かってない。

 聞けば教えてくれるのかな。

 でも、変な空気にしたくないし……帰ったら聞こうかな。

 

「…………」

 

 

 ──────

 

 

「レイトさん! こっちこっち!」

 

「ペムーニャ!」

 

 今日も朝から鍛治をやっているドワーフ達。

 子供は、師匠らしき人に見守られながらやっている。

 振り下ろす時の姿勢とか鉄の状態とかを厳しく監視されていてい少し窮屈そうだなとは思うけど、鍛治自体は楽しそうだからいいのかもしれない。僕は楽しかった。

 

「今日もやるよ!」

 

「見てるよ」

 

「約束だよ! 最後まで見ててね!」

 

「…………ふふっ」

 

 加賀美さんが子供のことを好きな理由が、これなんだと思う。

 その加賀美さんは若干疲れたような顔をしていた。反対にアリサちゃんはどこか元気そうだから……加賀美さんだけがよく眠れなかったのかもしれない。

 

 探索者の体力を考えると、普通に過ごしていたら1日眠らなかったくらいじゃあんなことにはならない。一昨日以前から眠れていないのかも? 

 

「え? ……そうそう、眠れてないんだよ」

 

「クスクス」

 

「…………」

 

「へへーっ!」

 

 加賀美さんがひと睨みすると、アリサちゃんはピューッてどこかに逃げちゃった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫、別に眠気はないから」

 

「そうなんですか」

 

「そう……虚脱感だけがな、はあ……」

 

「本当に大丈夫ですか? 風邪とか……」

 

「そういうのじゃないから」

 

「はあ」

 

 とにかく、大丈夫の一点張りで……本人がそう言うなら大丈夫なのかもしれないけど、心配だから近くにいようかな。

 今はコマちゃんがいない。

 この場にいれば、加賀美さんの身体だってあっという間に治してくれただろうに。

 倒れた時、すぐに支えられるのは僕だけだ。

 

「なんか、近いな?」

 

「少し心配なので」

 

「お、おう…………ありがとな。でも、自分の仲間のことを気にしてあげて欲しいかな」

 

「…………あ」

 

 シエルちゃんがジトリとした目つきで僕のことを見ている。

 よくない兆候だ。

 このままだと一日中話を聞いてもらえなくなる。

 

「し、シエルちゃん?」

 

「…………つん」

 

「えと……えと……加賀美さんの調子が悪そうだったから……」

 

「……だから?」

 

「倒れた時に受け止められるようにって……」

 

「じゃあ、好きにすれば?」

 

 冷たいのとは違ってホッとした。

 とにかく話しかけて壁まで追い詰めて、なんとか機嫌を戻してもらうと今度はペムーニャがちょっと機嫌が悪い。

 あっちに行ったりこっちに行ったり……どうしてこう、大変なんだろう。

 

「三船君、モテモテだな」

 

「そういうのじゃないです……」

 

「……そのうち刺されるかもな」

 

「そ、それは僕じゃなくて加賀美さんじゃないですか」

 

「え?」

 

「誰から刺されてもおかしくないですよね」

 

「……いや、そんなことはない……かな」

 

 そんなわけない。

 ミツキさんは言わずもがな、ヒナタさんも薙刀で切り掛かってきそうだし、早苗さんも包丁を振り上げそうだ。

 アリサちゃんは……カラッとしてるからアリサちゃんはそういうことしないかな。

 

「アリサはカラッとしてないぞ……!?」

 

「え? でも、いつも明るいですよ?」

 

 アリサちゃんの性格の上向いている感じは他の人と比較にならない。探索者と大学生を両立しているところも、いつも笑顔を絶やさないところも──僕だって可愛いと思う容姿も。

 もちろんヒナタさんはすごい美人だし、ミツキさんも可愛らしいけど──あれ? 加賀美さんって、可愛い人しか周りにいない? 

 

「うん」

 

「認めるんだ……」

 

「俺、面食いだから」

 

「…………そ、そうですか」

 

「せっかくなら可愛い子とかカッコいい子と一緒にいたいじゃん」

 

「ち、ちなみにかっこいい子って?」

 

「ディーン」

 

「ロイスさんは?」

 

「あいつはイケメンだけど可愛い枠」

 

「よくわからないです」

 

 チラッと、バレないように視線を向けた。

 

「──」

 

 加賀美さんの姿をこうやって間近でジロジロと見るのは、なんだかんだで初めてだった気がする。

 身体──顔、服から除く腕、首元とかに傷が多いのは、それだけ多くのモンスターや敵と戦ってきた証拠だ。

 筋肉も、『探索者は筋肉がないのが普通』っていう暗黙のルール? を嫌っているらしい。

 顔は…………正直、かっこいい方だと思う。怖いというか険しいというか、目力が強いのと行動力で目立たないけど……好きな人は好きなはずだ。

 

「ん? なんかついてる?」

 

「あ、いえ……」

 

「アリサは確かに明るいけど、根っこは寂しがりなところがあるからな……兄弟がいないのが関係してるのかね、あれで結構ミツキのこと大好きだぞ」

 

「…………」

 

 だけど、そうだ。

 加賀美さんの最も目立つところは、顔でも傷でも筋肉でもなくて、それを形作るに至った行動力と心だ。

 加賀美さんと出会ってから一年が経った。

 本当にあっという間だった。

 

 やる事なす事についていくのに精一杯で、時間が経つのを忘れるような日々だった。昨日の鍛治と同じ、ゆらゆらと強く燃え上がる火を見ているようみたいだった。

 

「ほんでアリサはいつ戻ってくるんだよ」

 

「確かに……」

 

 行ったっきり戻ってこない。

 何かしているのかな。

 

「ほへえ〜……」

 

 戻ってきたアリサちゃんは、身体中に子供がしがみついている。あんなにたくさんくっついていたら、そりゃあ歩くのだって遅くなる。

 

「し、しっぽはやめへ……」

 

「何をしてるんですかね」

 

 呆れながら、1人ずつ丁寧に剥がしていく。

 そのせいで加賀美さんは敵と見做されていた。

 

『けだものー!』

 

『アリサお姉ちゃんを返せー!』

 

『この目つきお化けー!』

 

「…………なんか悪く言われてるんだろうな」

 

 そうだ。

 加賀美さんは子供達の言葉がわからないんだ。

 何それ? って思ったけど、そういえばエリュシアの人たちの言葉も分からなかったって言ってた。

 ……なんで? 

 

「ヒロさんヒロさん──」

 

「え? …………目つきお化け!? 返せ!? ケダモノ!? ケダモノはアリサだけど……」

 

「ヒロさん? ──ひゃんっ」

 

「ぐわははは! アリサ姫はいただいた! 返してほしければ、日没までに私が埋めたお宝を見つけてこい!」

 

 そう言って、町の地図に何かを書き込むと子供達に配った。

 アリサちゃんは外套の中に隠されてしまった。

 レイスの死骸から奪い取ったっていう外套だ。

 あの時、加賀美さんが瀕死の状態で身に纏っていた強力な素材。神様と対面した時も身に付けていた防具。

 

「早くしないと、私がお姫様に食われてしまう! 助けてくれ! ぐわはははは!」

 

「ヒロさん! もうっ」

 

「助けて……」

 

 お宝は言葉のあやで、今から埋めに行くらしい。

 サービス精神がすごい。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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