【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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20_ここまで来ておきながら

「武器……か……」

 

 新しい武器。

 剣。

 僕の身体にあっていて、魂と合致する。

 それってどういうこと? 

 身体に合うはわかるけど、魂……魂って……? 

 

「シエルちゃんはわかる?」

 

「わかる」

 

「わかるの!?」

 

「うん」

 

「なんで──な、なんでもない……」

 

 エルフだから、って事なのかもしれない。

 というかそれしか考えられない。

 エルフって耳が長い以外にそういうのもわかる人たちなの? 

 それにしてもドワーフとエルフ……他に何か違いはあるのかな。

 

「ワシらの特徴? なんぞ、ややこしいことを調べちょるのお主」

 

 水を変えていた最中のお爺さんが聞いてくれた。

 桶には隙間一つなくて、雑に扱っても水が漏れる気配が一切ない。並々と井戸水が入れられたそれを置いて、腕をムキってやった。

 

「背の高さは置いておくとして……まず、ワシらは筋力が強い。お主らヒューマンと比較してな?」

 

 確かに、背は小さいけどドワーフの人たちはみんな力が強い。鍛治で使う金槌だって相当な重さなのに子供達が軽々と使っているのは、それが関係していたんだ。

 

「男は酒が強い。女は胸がでかい。これもまたワシらじゃな。お主らヒューマンが大きいのと同じように」

 

 確かに。

 女の人は……おっぱいが大きい。

 口に出したことはないけど、みんな大きい。

 もちろん年齢関係なく。

 

「そして全員、生まれた時からイーヴァ様の加護を──おっと、これは話して良いものだったか……」

 

 イーヴァ様の籠を……なんだろう。もしかして籠を生まれた時から持っているのかな。虹の橋を渡ってくる時に神様から渡されているとか? 

 

「まあええじゃろ。あの童……ハシュアーと一緒に暮らしとるんじゃから分かってるよな? ドワーフが鉄の力を読み取れるって話」

 

 確かにそれは知っていた。

 加賀美さんから他言無用だって言われていたし、ハシュアーも最初にそれを口に出した時は教えて良かったのかパニックになっていた。

 僕たちはそんな事できない。

 武器や防具を見ただけで、どんなものかを読み取って理解するチカラ。ドワーフにだけ与えられた特権だ。

 

「そう。だからこそ鍛治師という職業はワシらドワーフしかできない──筈だった」

 

 筈。

 つまり、実際のところはそうじゃない? 

 どういうことだろう。

 誰が他に出来るんだろう。

 

「お主らじゃよ」

 

 おじいさんのまっすぐな視線は、確かに僕ヘ向いていた。つまり──ヒューマン(僕たち)? 

 

「お主らヒューマンも、鍛治をすることができる」

 

 確かに昨日、僕もちょっとだけ槌を振るった。あれの事を言っているなら出来るは出来る。だけど、出来たものがどれだけ良いかってのはドワーフじゃないと分からないと──

 

「それが間違い、という事じゃ」

 

「?」

 

「お主ら、カゾーを探しとるんじゃろ?」

 

「!」

 

 どこからその話を聞いたのか。

 もしかしたらウォルフガングさん達が? 

 

「あやつを探しとるなんて話、すぐ広まらないと思うてか?」

 

 確かに。

 もう引退しているって話だったから、探してるっていうのはよくない目で見られているかもしれない。

 

「そうじゃな……あやつはよく頑張っておったから、休ませてやりたいのは本音じゃ。だがのう、神器の話ともなればまた別じゃ。それは確かに、あやつも興味があるところじゃろう」

 

「もう、引退してるんですよね?」

 

「生まれつき感じ取る力があるワシらと違うあやつにしか、例の話は引き継げんということじゃ」

 

 話のつながりが少しだけ見えてきた。

 ドワーフとは違うカゾーさんだからこそ、ドワーフには分からないことが分かるんじゃないかってことらしい。

 そして、純粋な鍛治師としての技量についても認められている。

 どれだけすごい人なんだろう。

 

「ワシも、姿を見たことがあるのは一度だけじゃ。だが……歳を重ねてもなおアレほどに集中している者はドワーフの中でも稀じゃ。他の何も見えないほどに火に魅入られ、そして、火もまたあやつを見出しておった」

 

 お爺さんはまた桶を担ぎ直した。

 大した距離じゃないし、話してもらったお礼に手伝おうとしたら断られる。

 僕じゃあ、水の運び方もまだだって。

 そんなところまで厳しく決まっているなんて、さすが鍛治師だなあ。

 

 お爺さんはひたすら、鉄を売っている。

 青みがかった光を時折放つのは、魔石を混ぜたことによる効果だって。そんな高いものを使うのは申し訳ないと思ったけど、襲撃に現れたモンスーだから取れたものを使っているから気にしなくていいと言われた。

 

「お主が頑張って取ったものをお主のために使うんじゃから、誰が責める?」

 

 本当に、温かい人だ。

 シエルちゃんを殺そうとした人たちの仲間だとは思えないくらい。もしかしたらドワーフの中でエルフを殺したいって人とそうじゃない人が分かれてるのかもしれない。

 それもまた、休憩中にチラッと聞いてみた。

 

「エルフか……」

 

 その瞬間から、お爺さんの目つきが険しくなった。

 苦々しく眉を顰めて、辺りの様子を少し伺う。

 

「ここでは構わんが……本国ではその話はするんじゃないぞ」

 

 理由を聞くと、本国? イルヴァン王国の人たちはエルフのことが大嫌いなんだって。お爺さんもこんな時じゃなければ話題には出したくないって。

 何故かと言えば、エルフとドワーフの本国が戦争をしているから──って。

 

「ええ!? せ、戦争!?」

 

「これ! 大声を出すな!? センシティブな話なんじゃ!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 慌てて口を塞がれた。

 ちょっと予想すらできない言葉が出てきたから、思わず大声が……いや、聞いたことはあった。

 加賀美さんがエリュシオンについて話していた時、同じ事を……

 

「アキヒロは知っておるのか……ヴォルフガングめ、話おったか?」

 

 戦争。

 人と人が争って、大勢が死んで、残された資源(残飯)を手に入れるために行われること。

 相手を滅ぼすために、殺すために行われること。 

 誰も喜ばない事。

 悲しい事。

 起きてはならないこと。

 

 とにかく、驚きで口が塞がらなかった。

 戦争は、起きている。

 もう既に、知らない場所で行われている。

 その事実が突如として僕の知識の中に現れた。

 

「そうじゃな……決して起こってはならぬ事じゃ……だが、奴らはそれを引き起こした。イーヴァ様の地に土足で踏み入り、荒らしているのじゃ」

 

 言葉が出てこなかった。

 

 

 ──────

 

 

「……」

 

 お宝を配置し終えた加賀美さんと、付き添っていたアリサちゃんが戻ってきた。

 出ていく前は楽しそうにしていた2人とも、ちょっとだけ表情が硬い。特にアリサちゃんは尻尾が垂れ下がって、加賀美さんが支えていた。

 

 僕たちの泊まっている家に集まって、話をした。

 

「……!」

 

 ──2人とも、僕と同じような話を聞いていた。

 

 ドワーフとエルフの戦争の話だ。

 僕らの知らない場所で、僕らの知らない二つの種族が争っていた。だけどそれは他人事じゃなくて、僕たちにも迫っている問題なんだ。

 人と人が、お互いを滅ぼすために攻撃し合う。

 盗賊達の話であれば分かるけど、そんな規模じゃなかった。

 

 重苦しい表情をしていた加賀美さんが、やがて口を開いた。

 

「……一つ、話がある」

 

 それは、ここから先の話だった。

 

「先に教えておいて欲しかったっていうのは前提として……間違いなく、ドワーフの本国は緊張状態にある」

 

「危ないって事ですよね……だって、戦争って……人を殺して……」

 

 アリサちゃんは歴史の勉強で戦争を知ったらしい。

 第一期──つまり、僕たちの世界の前にあったもう一つの世界で行われていたそれを。

 加賀美さんは頷いた。

 

「敵は必ず前から来るとは限らない。下から、上から、どんな方法を使ってでも行われるものだ。国際法もない世界じゃ……一体どうなっているやら」

 

 険しい顔が指し示しているものを、加賀美さんは教えてくれなかった。

 そのままの表情で、こう言った。

 

「三人には……付いてきてほしくない」

 

「え……」

 

「ここかイルヴァの牙で待っててほしい」

 

「ヒロさん……なんでですか?」

 

「俺たちがドワーフじゃないからだ。もっと言えば────いや、それはいいか」

 

 ドワーフじゃないから。

 彼らの仲間じゃないから。

 外から来た人間だから。

 捕まってひどい事をされる可能性があるって、加賀美さんは言った。だから、僕たちにはそんな目にあって欲しくないって。

 

「──はあ……」

 

 残された僕たちは、ため息を吐き出すことしかできなかった。足手纏いだって言われたようなものだから。

 確かに加賀美さんに比べたらまだまただけど、僕たちなりに頑張ってきたって自信があった。それを粉々に砕かれたっていうか……でもレベル50とレベル14じゃあ、そう言われても仕方ない。

 

「行きたかったな……ドワーフたちの王国……」

 

 酷い目に遭う。

 正直、どんな目に遭わされるか全然想像ができない。

 加賀美さんは口ごもっていた。

 だから、加賀美さんはそれがどういうことか分かっているんだ。

 ……シエルちゃんは? 

 エリュシアにいたシエルちゃんなら、分かるのかな。

 

「……言いたくない」

 

 シエルちゃんは唇を横一線にして、答えたくないっていう言葉通りに黙ってしまった。

 ──まさか、シエルちゃんもされた事が……? 

 

「された事はないけど…………言いたく、ない」

 

「──ごめん」

 

 きっと、酷い事なんだ。

 それを思い出させるべきじゃなかった。

 聞くべきじゃなかった、ただの好奇心なんかで。

 

「…………」

 

 ベッドに腰掛けて、顔が暗い。

 僕のせいだ。

 

「…………隣、座るね」

 

 返事を待たず横に座って、頭を撫でた。

 昔、三人と暮らしていたとき……誰かが怖い夢を見たときはこうしていた。そうすれば段々落ち着いて、一緒に眠ってくれた。

 

「ごめんね」

 

「…………」

 

 しがみついてきたシエルちゃんを見て、思う。

 やっぱり、行かない方がいい。

 僕たちは残って帰りを待った方がいい。

 よく考えれば当たり前のことじゃないか。

 二人に殺されそうになったのもそういうことだったんだ。

 

「シエルちゃん…………僕たちは帰ってくるのを待ってよう?」

 

「うん……」

 

 それで、加賀美さんにおかえりなさいって言うんだ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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