【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「うぉええ! みんな行かないの!? ………………そっか、王様のところの話、聞いたんだな」
ハシュアーは、僕たちが残るって話を聞いても意外と冷静だった。
元から知っていたんだと思う。
だってドワーフだもんね。
「ち、ちなみに俺ん家までは付いてくるんだよな? 二人のこと、母さんたちにも紹介したいし……」
「うん、そこまでは行くよ」
「良かったぁ……うちの飯、美味しいから!」
「──そっか!」
「うおお……」
「な、なに?」
「顔が良すぎて心臓が痛い」
「バカな事言うなよ! もう!」
「……はぁ〜……生きてる彫像みたいだよなあ、二人とも」
「全然嬉しくないんだけど……」
「めっちゃ褒めてるのに」
「も、もう! ばか!」
ハシュアー……加賀美さんとレイジさんの良くないところを順調に吸収してるような気がする……
今度、二人に苦情を入れておこう。
ハシュアーに変なことを教えないで下さいって。
「……今度、二人の石像とか作ってみようかな」
肘をついてこちらを見ているから何かと思えば、更にとんでもない事を言い出した。
「何言ってるの!?」
「やめてね」
流石にシエルちゃんも口に出して抗議するレベルだ。
僕だって……あんなエッチな石像にされたくはない。
「なんだと!? イルファーレ様のことそんなふうに思ってたのか!」
「や、やめてえ!」
ハシュアーの沸点は怖すぎる。
ちょっとイルファーレ様のことを言ったらすぐこれだ。
確かにイルファーレ様がすごく優しくて良い神様なのは分かってるけど、その石像をエッチな感じにしたのはドワーフの責任なのに!
「アレはエッチなんじゃない! イルファーレ様があの御姿で降臨されたから、それを正確に再現してるだけだ!」
「ええー!?」
イルファーレ様、あの声の感じでそんなエッチなの!?
イメージ的には厚着してて……ミツキさんみたいな感じだと思ってたのに!
「だからエッチじゃねえって!」
「じゃあ、ハシュアーはあの格好で外歩き回れる?」
「俺があの格好で外歩いて誰が喜ぶんだよ!」
「……さあ?」
でも、喜ぶ人がいるって分かってるって事は……そう言うことじゃん
「このっ……レイトさんのムッツリスケベ!」
「む、ムッツリじゃないよ!」
「シエルもムッツリだ! このムッツリ二人組!」
「!? ち、違う。レイトはともかく私は違う」
「ムッツリどもおおおおおぉぉぉぉ──」
ハシュアーは霧の中に走り去った。
ムッツリって叫びながら。
「とりあえず──今日くらいにはできるって話だから僕たちも鍛冶場に行こうか」
「ん……着替えるから、あっち見てて」
「う、うん」
なんで同じ部屋の中にいるのかは分からない。
外に出れば裸を見るも見ないもないのに、出ようとすると止めるから……こういう事になっていた。
本当に何で?
何でこうなったの?
「──っ」
意識を逸らそうと思っても、聞こえるのは布が擦れる音だけ。シエルちゃんの肌と布が擦れている音を、かえって意識してしまう。
壁を向いているこの時間が、気まずくて、恥ずかしくて、どうしてこんな事をさせるのかが分からない。
「……いいよ」
「ほっ…………」
振り向くと、ちゃんと着替えた姿が見える。
このままだと流石に心臓がもたないので、理由を聞いてみた。
──目を離した隙に僕が連れていかれそうだからって、なんだそりゃ。
そんな心配されるほど僕は頼りないだろうか。
流石に気落ちしそうになったけど、エリュシア達のことを思い出した。
そうだ。誰かって……そんなのエルフしかいないじゃないか。
「…………」
むっつりと──あ、ムッツリってすけべの方じゃなくて表情がって意味で──黙り込んだシエルちゃんの手を握る。少し表情が和らいで、こっちを見てくれた。
「僕もシエルちゃんのことが心配だから……壁の方、見ててくれる?」
「……うん」
服を脱ぐと、霧が張り付いて少しだけ肌寒い。
もらった寝巻きはすごく高そうな素材で、とてもサラサラしているのにちょうど良い暖かさで寝やすい──というか自然と眠くなる。
ベッドが一つしかない事に苦情を言ったら貰えた。
「…………」
「へ──し、シエルちゃん!?」
「っ! ……な、なんでもない……!」
何でもないじゃなくて、何でこっちを見ていたのかを聞きたかった。
…………ムッツリスケベ、じゃん!
僕が微妙なタイミングに出くわすと変態とか言うけど、シエルちゃんの方がよっぽどムッツリだ!
「ち、ちがうし……」
ムッツリシエルちゃんがあっちを向いているうちに着替えを終えて、背中を突く。
「ムッツリ」
「!」
「いてっ、いててっ」
本当のことを言われただけで殴るムッツリシエルちゃんと一緒に鍛冶場へ行くと、仕上げ段階? に進んでいた。
早いのか遅いのかわからない。
鉄を厚くして、叩いて、何かをかけて、形を作って、それを削る。
「…………」
火花を大きく散らしながら、回転する石みたいなのに剣が擦り付けられている。確か、砥石とか言ったかな。
あれが剣よりも硬くて、それで削れるって。
よく分からないけど、作れるならなんでもいいと思う。
お爺さんは剣を丁寧に持って、火花を顔面に浴びている。
僕だったら避けようと顔を逸らしちゃうと思うけど、相当慣れてるんだろう。
──────
「こ、これが……」
僕の顔を写すほどピカピカに磨かれた剣は、根元が太くて先に行くほど細い。加賀美さんの魔剣は全体が均一に細いから、それとはだいぶ違う。
少しだけ青みがかった白。
新しい剣。
軽く振ってみると、シャランって音が鳴った。
しかも、何か飛んだ。
「!?」
「どうじゃ?」
「な、なんですか今の……?!」
もう一度振ってみると、また何かが飛ぶ。
「これに向かって振ってみ。…………ああ、違う。少し離れてな」
用意してもらった的に思いっきり空振りすると、青細い何かが的を破壊した。
「飛ぶ斬撃じゃよ。どうじゃ、かっこいいじゃろ? …………お、おお?」
「………………」
振るたびに斬撃が飛ぶ。
袈裟、斬り返し、打ち上げ、突き。
いろんな角度で試すと、それに沿った形で斬撃が飛ばされる。
「そ、そんなに壊したら他の試しが……」
「あ──ご、ごめんなさい!」
「……まあ良いじゃろ。良い武器は試したくなるものだからの……それで、振り心地はどうじゃ?」
「すごいです! 手に吸い付いて離れません!」
本当に離れない。
力をまるで入れていない筈なのに、ある程度の重量がある剣が軽々と振るえる。
これまで使っていた剣はハシュアー的には及第点みたいな話があったけど、比較にならない。
「ワシもまだまだ行けるな……」
「はい! まだまだいけます!」
「そうかそうか」
「でも、本当にいいんですか? こんな良いものを……」
「良いに決まっとる。まあ、何か過大に感じたのなら……神器に触れられるように交渉してほしい、くらいかのお〜」
もしかして、最初からそれがしたかっただけなんじゃ……でも、作ってもらったのは本当で、本当にすごく良い武器だ。
加賀美さんにちゃんと話をしておこう。
「むほほ! 話がわかるのお主は!」
──────
「ハシュアーは行くんですか?!」
「どっちでも良いかな」
「なんで! ですか! 僕たちは! 置いてくんじゃ! ないんですか!」
「まっ……ちょっ……まっ…………理由をっ……言わせて……」
僕たちのことはイルヴァの牙に置いていくって言ったくせに、ハシュアーだけは連れて行こうとしていた。
不公平だ。
年少贔屓だ。
差別だ。
意地悪だ。
あんまりだ。
「ヒロさんサイテー」
「さいてー」
アリサちゃんとシエルちゃんも同じように抗議している。
流石にシエルちゃんも、ここまで露骨な態度ともなれば加賀美さん相手に思うところがあるようだ。
「レイト、落ち込んでたのに」
それは言わなくていい。
でも、そういうことだよ!
「僕たちはダメでハシュアーは良いって……ハシュアーが一番強いからですか! 別に、僕たちでも良いじゃないですか! 確かにハシュアーは僕たちよりちょっと強いですけど、それなら僕たちだって!」
「──お、落ち着け! 落ち着いてえええ!」
注目されていたので、一旦加賀美さんの首根っこを離してその場に下す。
身長や体重は確かに僕よりも重いけど、僕だって探索者だ。短い時間なら加賀美さんの体だって持ち上げられる。
「ふぅ、ワイルドだぜ……」
「加賀美さん!」
「わ、わかった! わかったから! そんな複雑な理由じゃないから!」
その話を聞いて呆れた。
イルヴァの牙にいる子供たちの言葉も、グリムス砦と同じで意味が分からないらしい。
だから、本国に行った時に更に言葉がわからないってなると困るからそのツーヤクとして欲しいとか。
ツーヤクってなんだろう。
「通訳は……言葉を訳して教えてくれるんだよ」
「?」
「そうだよなあ……」
頭を抱えてしまった。
頭を抱えたいのは僕らの方なのに。
ハシュアーだけずるい!
「そこばっか注目されても困る……」
「むっ……あんまり反省してませんね!」
「ヒロさん! ダメですよワガママは!」
「反省ってなんだよ! ワガママでもねえよ! ドワーフの大元のところに行くならドワーフいないとダメだろ!」
それならヴォルフガングさん達みたいに、それこそ大人が付き添いで行くだけでいい筈だ。
わざわざハシュアーが行く意味なんてない!
どうなんですか!
「微妙に鋭いのはなんなんだ……ヴォルフガングさん達だと、子供に言葉が通じないって説得力が浅いだろ? だから子供と大人、最低一人ずつには来て欲しいんだよ」
「…………じゃ、じゃあ僕が行きます!」
「三船くんは言葉通じるじゃん最初から」
わからず屋。
味音痴。
服のセンスナシ。
軟派。
ハゲ。
バカ。
アホ。
ポンコツ。
「そんな言う!? そこまでして行きたいのか……でも二人から先はちょっと守り切れる自信がなあ」
そこまでして行きたいのかと言われると別にって感じだけど……一番新入りのハシュアーだけ特別扱いされててモヤっとした。
「良くないぞそういうのは。新入りとか、古参だとか、そういうのが全てをダメにしていくんだから」
「自分だって大人より子供の方が好きな癖に……」
「んなっ!? お、俺はあくまで個人的な趣味としてであって──」
「…………」
「うぐ……ご、ごめんなさい」
「………………許します」
頭を下げている加賀美さんを見て、ちょっとだけ胸がスッとしたから……それでよしとした。
でも、頭に来ているのは僕だけじゃない。
「私は許してないぞー!」
「アリサ!?」
「私も冒険したい!」
「ええ!?」
「私も……ヒロさんと空の果てまで行ってみたい!」
「果てには行ったことないよ!?」
「雲の上から飛び降りてみたい!」
「パラシュートないよ!?」
「一緒に危ないことがしたいんです!」
加賀美さんは困り果てていた。
アリサちゃんの希望に沿うと、イルヴァン王国に連れて行くということになる。
だけどそれは、加賀美さんの望むところじゃない。
「俺じゃなくてアリサさんでも良いんじゃねえの?」
さっきから、話には参加せずにのんびりと僕たちのことを見ているだけだったハシュアーは、呑気にそんなことを言った。
ハシュアーとしてはどっちでも良いってことなんだと思う。自分で決められるの、良いなあ。
「……いや、ダメだ。リスクが大きすぎる」
「ヒロさん!」
「アリサ……これは遊びじゃない。いつもよりもずっと危険なんだ」
「でも、ロイス君達だって!」
「極端な例を出してもダメだ。なあ、アリサ……ここに来るのだって危険なんだ、実はな」
「──私……大学に入ってから探索者らしいこと……あんまり出来てないです……」
「……」
もしかしたらずっと悩んでいたのかもしれない。
加賀美さんもショックを受けたように固まっている。
場の空気感が急に落ち込んだような気がした。
「──そ、それじゃあ! 帰ったら一緒に探索しよう!」
「…………」
「な! モンスターと戦って、いっぱい仕事しよう!」
「大学とか……」
「そんなの俺がなんとかする!」
「…………じゃあ、約束ですよ?」
「約束、だな」
二人は小指を絡めて何かをしていた。
子供がするような……何かの真似?
でも、それだけでアリサちゃんは納得して引いた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない