【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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22_ねえねえ、この中だと誰が好き?

「ハシュアー……」

 

 一人だけ加賀美さんについて行くことを許されていた。ドワーフの子供だからって理由で。

 ……僕も、もっと役に立ちたい。

 約束をしてもらえるアリサちゃんも少し羨ましかった。

 

「そんな目で見られても、俺悪くないからな!?」

 

「うん、分かってる」

 

「ほっ…………じゃあやめて!?」

 

「…………」

 

「ずもももって! 圧が強いから!」

 

「……ふふ、冗談だよ」

 

「な、なんだよー! めっちゃびびったー!」

 

「でも、あんまり変なこと覚えちゃダメだよ」

 

「変なこと?」

 

「その……加賀美さんとかレイジさんから……」

 

「別に変なことは覚えてないよ」

 

「本当?」

 

「そもそも何の話?」

 

「……僕たちが……か、顔が、いい、とか……」

 

「アレはだって本当のことだし」

 

「だから! そういうこと言わないの!」

 

「……へいへーい」

 

「それ! レイジさんの真似でしょ!」

 

「違うよ」

 

「むぅ……」

 

 なかなか尻尾を掴ませない。

 それか、ハシュアーには自覚がないのかもしれない。

 

「そういえばレイトさん、武器よくなったね」

 

「うん」

 

「斬撃飛ばせるんだから、ちょっと離れたところくらいならシエルの弓使う必要もないね」

 

 そういえばそうだ。

 これまでは高いところにある木の実とかモンスターにはまずシエルちゃんが一手を放っていた。僕たちの身体能力じゃ、ジャンプだけで高いところには届かない。

 加賀美さんなんかは壁や木を走って──みたいなこと言ってたけど、意味がわからない。

 

「シエルちゃんの弓も節約できるね!」

 

 これで出費を少しでも減らすことができる。

 ハシュアーの鍛冶場を作るためにも、そういうところから削らないとね。

 

 矢──特に鏃は高いんだ。

 モンスターに通用するような素材って結局モンスターから採れることが多い上、加工をお願いすると結構取られる。

 最近はハシュアーも少しずつやり方を覚えてくれてるとはいえ、本気でやる時はまだ作ってもらったものを使っていたから。

 

「ね!」

 

「別に、私がやればいい」

 

「え……?」

 

「狙うの下手だろうし、私がやった方がいい」

 

「いやいや、だからお金が……」

 

「私がやる」

 

「ええ……」

 

 自分がやるの一点張りで、頑なに認めなかった。

 ハシュアーと顔を見合わせたら逸らされたし、お金、貯めないといけないのに……

 

「──飛ぶ斬撃!? なにその……羨ましい力!」

 

 加賀美さんに相談したら、シエルちゃんの話よりもまず先にそっちに食いついた。

 

「でも、加賀美さんは銃を持ってるじゃないですか」

 

 空気銃? といって、圧縮した空気弾を放つ武器を使っている。あの、大事件の時にその銃も神器になったらしくて……加賀美さんだけすごいことになっている。

 それの威力が跳ね上がっていて、弓なんか目じゃない。

 前に見た時は空まで空気の歪みが突き抜けていった。

 

「銃が飛ぶのは当たり前でショ! 斬撃が飛ぶなんて……男の夢じゃねえか!」

 

「うーん」

 

「何で伝わらないんだ……!」

 

「振ってみます?」

 

「いいの!?」

 

 加賀美さんは僕の手からひったくるように剣を取って、それを的に向けて軽く振った。加賀美さんが本気で降ったら剣が壊れちゃうんじゃないかと怖かったから、正直安心した。

 

 ──何も出なかった。

 

「あれ……」

 

「え!? ちょ、ちょっと返して!」

 

 心臓が大きく動いたのを感じた。

 自分でやった時はちゃんと出たのに。

 

「──やあっ!」

 

「おお」

 

 慌てて取り返して振ると、ちゃんと斬撃が飛んでくれた。

 

「よ、よかった……」

 

 もしも斬撃が出なくなっていたら、木の実を取れなくなるところだった。

 

「木の実? 三船君……なんか変なこと気にしてないか?」

 

「だ、大事なことです!」

 

「そか」

 

「もう一度振ってみてください、今度はもう少しだけ強く」

 

「はい。………………そいっ…………ダメか」

 

 今度もダメだった。

 

「三船君以外は出来ないんじゃない?」

 

「あ!」

 

 それは考えつかなかった。

 さすが加賀美さんだ! 

 ハシュアーにも試してもらおう! 

 

「──おお! すげえ! 自分でやってみるとやっぱ面白いや! 俺もいつかこんな武器が作りたいなあ〜」

 

 ハシュアーは普通に出来た。

 でも、まだだ。

 ドワーフなら誰でもできる可能性はある。

 シエルちゃん! 

 

「……弓でいいじゃん」

 

 シエルちゃんも問題なく飛ばせた。

 でもシエルちゃんはエルフだから、少し特別な可能性がある! これで決まったわけじゃない! 

 他の、ヒューマンなら──アリサちゃん! 

 

「うわあ〜! 本当に飛ぶんだね! 私もこんな武器欲しい! ヒロさん! ……ヒロさん?」

 

「どうせ俺は剣もまともに使えない無能ですよ……」

 

「ヒロさーん!?」

 

 不貞腐れて地面にうつ伏せになってしまった加賀美さんをアリサちゃんが必死に慰めてる。

 だけど、変だ。

 加賀美さんだけが、ここにいるメンバーの中で斬撃を飛ばすことができなかった。

 武器が人によって使える使えないがあるなんて、聞いたことがない。そんなの、まるで武器に心があるみたいじゃないか。

 

「武器にだって心くらいあるわい。とはいえ……特定の人間を激しく拒絶するなんて、ワシも初めて見たの」

 

 ハシュアーも頷いている。

 武器に心があるってことにこそ僕は驚きだけど、鍛治師にとっては当たり前の事実らしい。

 

「ふむ……神器の所有者ということが関係している可能性はあるか」

 

「神器を持ってると武器の力を使えないんですか?」

 

「あくまで推測じゃがな。神器というのはいわば武器の到達点。あまりにも格上を操る人間に対して心を開けないのかもしれないの」

 

 その話を聞いたところで、加賀美さんが斬撃を飛ばせるようになるわけじゃない。だけど、加賀美さんらしく徐々に自力で立ち直っていた。

 

「さ、流石に100年程度じゃそこらへんのロジックは解明されてないか……ちなみに、どうすれば俺もあんな感じで斬撃が使えるようになるとか予報は立ちますかね」

 

「神器の所有者じゃなくなればあるいは、かの」

 

「無理ってことですか」

 

「はっはっは! そういうことじゃな! ……というか、神器を持っといて他の武器に目移りするのがわしらからすると信じられんがの」

 

「俺はドワーフじゃないからそこら辺はあんまり……あー、俺も斬撃飛ばしたかったなー…………ん?」

 

「な、なんじゃ?」

 

 明らかに今、加賀美さんのナイフがドクンて脈打って、真っ黒な何かを……

 

「──え?」

 

「なんじゃ!?」

 

「俺が別の武器持つのが許せないみたいなこと言ってます。魔剣ちゃんが」

 

「なんじゃと!?」

 

「…………でもほら、俺も常に君達を携帯できるわけじゃないし。場合によっては許して欲しいっちゅーか……今後、槍とか使う場面出てくるかもしれないじゃん?」

 

「1人で聞かないで、ワシにも聞かせとくれ! ………………?」

 

 お爺さんがナイフに触れたけど、特に何も起こらない。その表情からも、何かが聞こえているようには思えなかった。

 

「本当に聞こえとるのか?」

 

「ええ、まあ……神の加護を持ってるからって調子乗ってるって言われてます」

 

「!?」

 

「どうやら、あの剣を作った本人だからちょっと嫌われてるっぽいですね」

 

「なんでじゃ!」

 

 僕のために作ってくれただけなのに、そんな事を言われてしまうのはちょっとかわいそうだった。

 すごくいい剣なのに──ね? なんて、返してくれるわけはないけど。

 

「この子達、意外と俺のことを好きでいてくれてるっぽいです」

 

「ぐぬぬ……わ、ワシの方が武器に対する接し方は優しいぞ!」

 

「…………俺が浮気しそうなのを作ってる時点で優しいとは違うって。──でもアレだぞ? あのお爺さんも悪意があったわけじゃなくて、あくまであの子に良い武器を上げたいからって頑張ってくれたんだぞ?」

 

 加賀美さんが話しかけると脈打つところを見るに、本当に声があの間だけで成立している。

 お爺さんはそれを指を咥えて見てる。

 そして、今の騒ぎを聞きつけて他のドワーフ達も集まってきた。みんな、やっぱり神器には興味津々なんだ。

 それに、モンスター襲撃の時に一番活躍してたのは当然のように加賀美さんだ。

 

 誰か一人くらい加賀美さんに武器を作ってくれる人とかいるのかな、なんて思ったんだけど、そんな話は聞かない。

 

「そりゃあだって、神器の所有者に武器を贈るなんて……ちょっと恥ずかしいじゃない」

 

 見物人の一人に聞いてみたら納得の返しが来た。

 そりゃそうだよね。

 僕もハシュアーに自作のナイフとか──作るわけないけど──作ったとしてもプレゼントできないもん。

 

「ちょっ、多い! 多いって! う、うわああああ!」

 

 魔剣が喋ったっていう話はみんな気にしていたようで、加賀美さんの元に群がってお祭りみたいになった。しかも、加賀美さんはその勢いのまま流されていった。

 ドワーフって力持ちだもんね、集まれば男の人を持ち上げるくらいなんてことない。

 

「──何でこんなことに……つーか、まだ砦なんだよな……」

 

「細けえこと気にすんなよ!」

 

「俺が細かいこと気にしなかったら、他に気にする子がいないんですよね……」

 

 鍛冶場前まで連れてこられてようやく降ろされたかと思えば、酒盛りが始まった。みんな、加賀美さんの方を見て期待している。数人がさっきの黒い脈? みたいなのを見ていたからか、神器が喋るっていう話の信用度が上がったんだ。

 

「あんまり信じてなかったのね君たち……」

 

「ははは! 流石に武器が喋るなんてのは俺たちも見たことがねえ! お前さんが嘘を吐くとは思わねえが、中々な」

 

「まあ100年ですからねえ」

 

「歴史が浅いからって舐めてんな? おまえらも変わらんだろうに」

 

「そうですね^^」

 

 お酒が入って気分が良くなったのか、加賀美さんはジョッキを握りつぶすと武器に話しかけ始めた。

 

「ここにいる奴らの中だと誰が一番好み?」

 

「ヒロさん、何の話ですかそれ……」

 

「恋バナ」

 

「ええ…………」

 

 ここにいるのが僕たちじゃなかったら、相当近寄りがたい人に見えていたはずだ。

 本当のことを言うと、武器に話しかける姿はちょっと不審だし。

 

「──え、マジで? 意外だわ」

 

「誰が一番ですって?」

 

「俺が一番は当然として、ヴォルフガングさんが好きらしい。初めて会った時、傷ついてるのを気にしてくれたところが良かったってさ。まあ魔剣ちゃんの話だけど」

 

『うおおおおおおお!!』

 

 野太い声が輪の外側から響き渡った。

 

 

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