【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「それでその……相談があったんですよね? 私に」
「うん、実は今面倒を見ている子がいぃぃぃぃ!」
「──誰ですか? その女は誰なんですか!?」
話してくれないなら、ヒロさんをこのまま絞め殺して私も死ぬ……!
「ぐ、ぐるじ……お、男だ! 男だよ!」
「男もいけるんですか!?」
「なにが!? 面倒を見てるってのはだな──」
私の早とちりだった。
仲間を失くした男の子。
孤児と今関わっているらしい。
気持ちよさそうに酔っ払ってる七緒さんのせいで。
「? ……うへへぇ! ピースピース!」
とてもヒロさんらしいと思う。
出会い方は最悪だったけど……あの出会いがあったから私の今がある。人生が丸ごと変わったのは、私たちが馬鹿なことをしたからだ。
あの時期はとても辛かったけど、あれでよかった。
孤児。
片腕を失くした。
友達をたくさん失くした。
──私なんて、及びもつかない失意の底。
「私が、役に立てるんっすか?」
「俺にはわからないことだからな」
「……どんなことっすか?」
ヒロさんはポリポリと頬をかきながら、少し恥ずかしそうに事情を話し出した。
「恥ずかしい話だけど……俺は幼い頃の記憶とか情緒とかの中で鮮烈なもの以外は、もう思い出せなくてな」
信じられないような、でも、なんとなく分かるような。
たった十数年前のことの筈なのに。
ヒロさんの人間性を形成した幼少期。
とても気になった。
「だから……俺がアリサと出会ったばかりの頃、もう少しだけ小さかったアリサは俺に対して何を感じていたのか、それを知りたいんだ」
「わかりました」
私がヒロさんのことをどう思っていたのかと思えば。
──よくわからない人、だ。
当たり前だよね。
強盗に巻き込んだ相手から勉強を教えてもらうなんて。
普通は、ヒロさんが断る立場の筈なのに。
だけど、とても嬉しかった。
こんな私でも戻れるかもしれない。
普通に。
だから必死で勉強した。
みんなも同じだった。
私たちが社会不適合者なことは明らかで、誰かの導きがなければ、社会に戻ることは絶対にできなかった。
もっと低いところへ。
光の届かない闇へ。
……人には言えないような仕事に就いていただろう。
感情が篭っちゃって、言ってることはグチャグチャ。
所々矛盾してたり、メチャクチャなことを言ったと思うけど、ヒロさんはウンウンと嬉しそうに頷いて聞いてくれた。
2人きりで思い出を振り返っているような気分だった。
「──だから、ヒロさん」
「うん」
「自信持ってください!」
「……そうか」
「はい! ヒロさんがやりたいようにやるのが、一番ですから!」
「ありがとうアリサ、なんとかなる気がしてきたよ!」
「っす! ……ってなんか、いつのまにか周りが静かなような……うわっ!?」
み、みんなこっち見てる……!?
「うう……」
「苦労してたんだな……コレあげるよ、ぐすっ」
「俺もコレあげちゃう」
「がんばれな!」
カウンターが食べ物で埋め尽くされていく。
なにこれ。
「またベタな……こういうこともあるんだな、この世界には」
「なんすか?」
「おひねりだよ」
「おひねり?」
「女の子の苦労話なんて聞いたら、おっさんの涙ちょちょぎれちゃうからな」
「それで食べ物がもらえるんですか?」
「吟遊詩人ってやつだ」
「ギンユー詩人ではないっす……」
「みんなバカだけど義理人情には厚いんだよ」
「くぁ〜っ!」
「うわっ」
酒瓶が机に叩きつけられた。
そんな粗野な振る舞いをする人はこの場に1人しかない。
「良い空気に、失礼しまーっす!」
「良い空気って……方目さんも遠慮なく話して良いですから」
「そ、そうですよ七緒さん! せっかく一緒に来てるんですから!」
何故かじとっとした目を向けられて、少しだけ怯む。
そんな目で見られるようなことをした覚えは、無いはずだけど……?
「わたしも彼氏欲しいのぉぉおお!」
『──うぉっ!? ……ああ、七緒ちゃんか』
『まーた焼肉の坊主に絡んでるよ』
『どれ、今日は俺たちが彼氏になってやるか』
『しゃあねえな』
七緒さんはおっさん達の席に連れていかれて、暴れ始めた。
『若くてお金持ちでかっこいい彼氏が欲しいよおおおお!』
『ガハハ! 俺たちもまだまだ若えぜ! アッチもな、なんつって!』
『やだあああ! アラフォーのジジイやだ!』
『ブハハハッ! じゃあマサチカなんかどうよ! 若えぞ!』
『七緒さん、酔ってるなら送ってきますよ?』
『髪染めてるやつもやだ! ヤニ臭いやつもやだああああ! 加齢臭が移るぅぅ!』
『ぶっ殺してえ……』
カラン、と氷が鳴る。
グラスをクルクルと回すヒロさんは、目を細めてその光景を見ていた。
「どうしたんすか?」
「いや……懐かしいなって」
「懐かしい……?」
なんでも無い、と小さく言って手元に視線を戻した。
どこかアンニュイな雰囲気。
なんだか寂しそうだった。
尻尾を伸ばしてお腹に回す。
少しだけ、寂しさを紛らわせられないかなって。
「──ありがとう」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない