【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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50_イケメンで金持ちでタバコ臭くなくて若くて優しくて

「それでその……相談があったんですよね? 私に」

 

「うん、実は今面倒を見ている子がいぃぃぃぃ!」

 

「──誰ですか? その女は誰なんですか!?」

 

 話してくれないなら、ヒロさんをこのまま絞め殺して私も死ぬ……! 

 

「ぐ、ぐるじ……お、男だ! 男だよ!」

 

「男もいけるんですか!?」

 

「なにが!? 面倒を見てるってのはだな──」

 

 私の早とちりだった。

 

 仲間を失くした男の子。

 孤児と今関わっているらしい。

 気持ちよさそうに酔っ払ってる七緒さんのせいで。 

 

「? ……うへへぇ! ピースピース!」

 

 とてもヒロさんらしいと思う。

 

 出会い方は最悪だったけど……あの出会いがあったから私の今がある。人生が丸ごと変わったのは、私たちが馬鹿なことをしたからだ。

 あの時期はとても辛かったけど、あれでよかった。

 

 孤児。

 片腕を失くした。

 友達をたくさん失くした。

 

 ──私なんて、及びもつかない失意の底。

 

「私が、役に立てるんっすか?」

 

「俺にはわからないことだからな」

 

「……どんなことっすか?」

 

 ヒロさんはポリポリと頬をかきながら、少し恥ずかしそうに事情を話し出した。

 

「恥ずかしい話だけど……俺は幼い頃の記憶とか情緒とかの中で鮮烈なもの以外は、もう思い出せなくてな」

 

 信じられないような、でも、なんとなく分かるような。

 たった十数年前のことの筈なのに。

 ヒロさんの人間性を形成した幼少期。

 とても気になった。

 

「だから……俺がアリサと出会ったばかりの頃、もう少しだけ小さかったアリサは俺に対して何を感じていたのか、それを知りたいんだ」

 

「わかりました」

 

 私がヒロさんのことをどう思っていたのかと思えば。

 ──よくわからない人、だ。

 当たり前だよね。

 強盗に巻き込んだ相手から勉強を教えてもらうなんて。

 普通は、ヒロさんが断る立場の筈なのに。

 

 だけど、とても嬉しかった。

 こんな私でも戻れるかもしれない。

 普通に。

 だから必死で勉強した。

 みんなも同じだった。

 私たちが社会不適合者なことは明らかで、誰かの導きがなければ、社会に戻ることは絶対にできなかった。

 もっと低いところへ。

 光の届かない闇へ。

 ……人には言えないような仕事に就いていただろう。

 

 感情が篭っちゃって、言ってることはグチャグチャ。

 所々矛盾してたり、メチャクチャなことを言ったと思うけど、ヒロさんはウンウンと嬉しそうに頷いて聞いてくれた。

 2人きりで思い出を振り返っているような気分だった。

 

「──だから、ヒロさん」

 

「うん」

 

「自信持ってください!」

 

「……そうか」

 

「はい! ヒロさんがやりたいようにやるのが、一番ですから!」

 

「ありがとうアリサ、なんとかなる気がしてきたよ!」

 

「っす! ……ってなんか、いつのまにか周りが静かなような……うわっ!?」

 

 み、みんなこっち見てる……!? 

 

「うう……」

 

「苦労してたんだな……コレあげるよ、ぐすっ」

 

「俺もコレあげちゃう」

 

「がんばれな!」

 

 カウンターが食べ物で埋め尽くされていく。

 なにこれ。

 

「またベタな……こういうこともあるんだな、この世界には」

 

「なんすか?」

 

「おひねりだよ」

 

「おひねり?」

 

「女の子の苦労話なんて聞いたら、おっさんの涙ちょちょぎれちゃうからな」

 

「それで食べ物がもらえるんですか?」

 

「吟遊詩人ってやつだ」

 

「ギンユー詩人ではないっす……」

 

「みんなバカだけど義理人情には厚いんだよ」

 

「くぁ〜っ!」

 

「うわっ」

 

 酒瓶が机に叩きつけられた。

 そんな粗野な振る舞いをする人はこの場に1人しかない。

 

「良い空気に、失礼しまーっす!」

 

「良い空気って……方目さんも遠慮なく話して良いですから」

 

「そ、そうですよ七緒さん! せっかく一緒に来てるんですから!」

 

 何故かじとっとした目を向けられて、少しだけ怯む。

 そんな目で見られるようなことをした覚えは、無いはずだけど……? 

 

「わたしも彼氏欲しいのぉぉおお!」

 

『──うぉっ!? ……ああ、七緒ちゃんか』

 

『まーた焼肉の坊主に絡んでるよ』

 

『どれ、今日は俺たちが彼氏になってやるか』

 

『しゃあねえな』

 

 七緒さんはおっさん達の席に連れていかれて、暴れ始めた。

 

『若くてお金持ちでかっこいい彼氏が欲しいよおおおお!』

 

『ガハハ! 俺たちもまだまだ若えぜ! アッチもな、なんつって!』

 

『やだあああ! アラフォーのジジイやだ!』

 

『ブハハハッ! じゃあマサチカなんかどうよ! 若えぞ!』

 

『七緒さん、酔ってるなら送ってきますよ?』

 

『髪染めてるやつもやだ! ヤニ臭いやつもやだああああ! 加齢臭が移るぅぅ!』

 

『ぶっ殺してえ……』

 

 カラン、と氷が鳴る。

 グラスをクルクルと回すヒロさんは、目を細めてその光景を見ていた。

 

「どうしたんすか?」

 

「いや……懐かしいなって」

 

「懐かしい……?」

 

 なんでも無い、と小さく言って手元に視線を戻した。

 どこかアンニュイな雰囲気。

 なんだか寂しそうだった。

 尻尾を伸ばしてお腹に回す。

 少しだけ、寂しさを紛らわせられないかなって。

 

「──ありがとう」

 

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