【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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25_直々のお出迎えなんじゃよ

「う、うわあ……!?」

 

超巨大な地下空間。

そこにイルヴァの牙は存在した。

上は見上げるほど高くて、真っ暗な中に小さな光がいくつも見える。星空みたいだ。

下は見えるけど、赤い……?

とにかく、すごい場所だ。

地下にこんな場所を作れるなんて、ドワーフは本当に僕たちとは違うんだ。

 

「ミツキが来ると思っていた」

 

「それは期待に添えず申し訳ない」

 

「いや、期待とは違うが……浮気をしたのか?確か彼女は幼馴染で………」

 

「その話はさっき、他の人たちとはしてたんですよ」

 

「そうなのか?すまないが後から来たものだから分からなかった」

 

「つーか、姫様には前回の時点でバレてましたけどね」

 

「アリアが?ふむ……仲間はずれか」

 

「相変わらず堅苦しい話し方ですね」

 

「私にも立場というものがある」

 

「そりゃお互いにね」

 

「貴様はそれこそ自由を極めたような身だろう……」

 

延々と話している。

堅苦しさもあるのにどこかほんわかとしていて、地味に場の空気が盛り上がっていた。

つまり二人とも楽しそうだ。

二人と、その両脇を挟むようにしている衛兵――ムキムキだ!――の後ろを歩く。

恐ろしいことに、ここにある道はほとんどが空中にできた橋のようになっている。片側は空いてるので、下手したら落っこちかねない。今の僕でも、この高さを一番下まで行ったら確実に死ぬ。

 

「高い、ね」

 

「あ、あんまり身を乗り出さないで……!」

 

「………ふ」

 

なんでそんな事をするのか。足先だけ残して下を覗き込もうとするもんだから、背中を掴んで留めなきゃいけなかつた。

 

「あの嬢ちゃん、恥ずかしがり屋の割には結構はしゃいでんな」

 

「お兄ちゃんと一緒だから楽しいんじゃない?」

 

「……めんこいなあ」

 

「は?潰す、目を」

 

「ぶああああ!」

 

シエルちゃんが変にテンションを上げるものだから目立ってしまった。慌てて担いで、先を行っているみんなのところに追い付いたけど、ハシュアーが呆れた顔をむけてくる。

 

「意外と楽しそうだね、シエル」

 

「なんか、高いから」

 

「高いところが好きってアレじゃん。バカ」

 

「……は?」

 

そんな風に挑発するから……

 

「――うわあああああ!落ちる!落ちる落ちる!」

 

「3………2………」

 

「ごめんなさい!言いすぎました!」

 

「シエルさんは素敵で可愛い、非の打ち所がない完璧美少女です」

 

「シエルさんは素敵で可愛い、非の打ち所がない完璧美少女です!」

 

通路を進むと、またとんでもないところに着いた。

 

「本部の建物みたい……!」

 

すごく大きくてキラキラしている。

見たことがないような建物だ。

作ることが得意なのは分かってるけど、こんなものまで作れるんだ。

 

「ははは。アレこそは我らの牙城(シンボル)、イルファレアだよ」

 

「名前あったんだ……なんで前回教えてもらえなかったんです?」

 

「そこの少年の目が、知りたそうに輝いていたからな」

 

「俺は?」

 

「少年の目というには少々純粋さが足りなかったかな」

 

「足りないか………これならどうです?」

 

「う、うん」

 

「なんだその反応」

 

「いいのではないかな?」

 

「……アリサ、どうだ?」

 

アリサちゃんはお腹を抱えて倒れた。

 

お城は近付くほどに圧迫感が強くなって、間近に迫った段階ではのしかかってくるようでさえあった。

それでも、入る為の門や外壁には至る所に細工があって、キラキラとした印象は失われない。

すごく不思議だ。

 

「ある意味では我々ドワーフの技術の粋が集まっているとも言えるからな。蒼連郷の最も重要な建造物である商工会の本部と同じく、これは我々の権威を表すものの一つでもあるのだよ」

 

「地上に建てればいいのに」

 

「……我々は地下で暮らすものだ」

 

「それがいいでしょうね」

 

「…………何が言いたい?」

 

「もし地上に堂々と進出すれば、人間に捕まって奴隷にされるでしょうね」

 

「――」

 

軽い口調で、とんでもないことを言い放った。

衛兵達も少し殺気立っている。

でも、加賀美さんはあくまで平然な様子を崩さずに頭を下げた。深く、長く。

 

「申し訳ない、少々言いすぎた。ですが、それはアルス様ならば理解していることかと」

 

「……まあ、な」

 

「リスキーだ。純粋な人類に近い存在との交流は非常にリスクを孕んでいる」

 

「だが必要だ」

 

「ええ」

 

「貴様は――」

 

「私には自負がある。人類とドワーフとの架け橋であるという自負が。ですから……これは忠告です」

 

「なんだ」

 

「田辺長元はあなた方にとっては危険です。お忘れなきよう」

 

「……芝居臭いのは嫌いだし、なにより下手だ」

 

「そこはほら、素人が頑張ってると思って優しい目で」

 

「ふん………架け橋ならば、貴様がなんとかしてみせろ」

 

「――」

 

加賀美さん達はずっと喋ってるけど、僕たちは限界です。

お城を見たりして一旦テンションが上がってはいたけど、やっぱり疲れてるんだよね。ハシュアーは自分の家に帰っちゃったし、アリサちゃんもすでに元気は無くなってソファーでクゥクゥ寝ている。シエルちゃんも目を閉じて、二人の会話のせいで開いてを繰り返している。

このソファーが座りやすすぎるのも悪い。

僕たちのサイズのものを急遽用意してくれたんだと思う。

なんでこんな上等なものをこんな疲れてる時に使わせてくれちゃうんだろう。

僕も眠くなってきた。

 

「おっと、彼らはもう限界らしいな」

 

「――ここって寝室とかありましたっけ」

 

「風呂もあるぞ」

 

「おお、そりゃあいい。じゃあ三船君たちは泊まらせてあげてください。俺たちは前回の家に行くんで」

 

「カゾーの家、か」

 

「どういう趣だったか、もう一度見ておきたいもんで」

 

「それならば――」

 

 

――――――

 

 

目が覚めると、ふかふかでホカホカの布に包まれていた。身体が汗ばんでる様子もない。

寝てる間にお風呂に入った……?

 

「――!」

 

シエルちゃんがいない。

来ていた服のまま部屋を飛び出すと、さらっさらのカーペットが敷かれた廊下だ。勢い余ってすっころんだけど、それよりも頭の中にあるのはシエルちゃんのことだ。

もしもシエルちゃんの姿がバレてしまっていたら、大変なことになる。

 

「っ……」

 

甘い考えじゃダメだ。

もうバレてるって考えて、助ける方向に――

 

「こんな夜中に、どこへ行く?」

 

「!」

 

後ろから聞こえたのは、眠りに落ちる前に散々聞いていた声でもあった。

硬い口調のハスキーな声。

だけど夜だからかな、さっき聞いた時よりも少しだけ柔らかい気がする。

そんな柔らかさが、今はどうしようもなく恐ろしかった。

 

「疲れているのだろう。存分に休めばいいではないか」

 

「………ちょ、っとだけ……中を見てまわりたくて……」

 

「ほう、そうなのか」

 

「い、今なら人もいないし色々とじっくり見られるかなって……」

 

「では、ちょうど暇な私が案内しよう」

 

「えっ」

 

「この城の中には、ドワーフと言えど軽々に立ち入ることが許されないような部屋もいくつかある。キミがそこに立ち入っては後々の問題にもなりかねないんだ」

 

だけど、それじゃあシエルちゃんを探すことができない。ドワーフの偉い人がそばにいて、その人に対して『シエルちゃんをどこにやったんですか』なんて聞けるわけない。

 

「なに、心配するな。問題ない部屋に関してはもちろん入ってもらって構わない。それとも……そんなにあの少女が心配か?」

 

「!」

 

「シエルと言ったな」

 

「……し、シエルちゃんをどこにやったんですか!」

 

「なるほど、見立て通りというわけか」

 

「なんの話ですか!」

 

「……気持ちはわかるが、落ち着け。この城で夜を過ごす者は君たちの他にもいる。あまりうるさくしては、彼らの疲れがとれないからな」

 

「っ……!」

 

つまり、他にも沢山の兵士が待機している。

戦っても無駄ってことか。

それでも――

 

「はぁ……」

 

「な、なんだ!」

 

「心配しなくても、彼女はそこの部屋でぐっすり眠っている」

 

そう言って指さしたのは隣の部屋。

中に入ると、指をかわえて眠るシエルちゃんが。

 

「かわいい〜……」

 

「ふっ……慕う気持ちはわかるが、我々とて無法者ではない。彼が言うところの『人間』とは違うのだ。イルファーレ様に恥じない自分達でいる事こそ我らの至上。ヴォルフガングたちの件は申し訳なかったが、安心して欲しい」

 

壁にもたれかかったまま、アルスさんは一つの槌を取り出した。

 

「『牙』アルスの名において、イルヴァの牙にいるドワーフが彼女を傷つけることは無いと誓おう」

 

――それは、燃えるような槌だった。

 

――立ちはだかる圧倒的な神々しさが、嘘を破壊していた。

 

――どこまでいっても、彼女は神の僕だった。

 

神イーヴァに奉仕し、そして鍛治を捧げる。

それこそがドワーフのあり方で、牙であるアルスさんはその柱。

 

「信じるか?」

 

瞳に特徴的なクロス模様が刻まれている。

先程まではなかった、他のドワーフにも見られない特異な象徴。

ヒナタさんや早苗さんと同じ神の眷属として与えられた力?

 

「……信じます」

 

「そうか……それは、嬉しいな」

 

「イルファーレ様は助けてくれましたから」

 

「偉大なお方だ」

 

「はい」

 

足が出ていたので少しだけくすぐってから布団を被せる。風邪をひかないようにね。

 

「おやすみ」

 

「……彼女を大切に思っているのだな」

 

「はい」

 

「良いことだ」

 

お城の中を周った。

 

応接の間。

会議の間。

練兵の間。

鍛治の間。

湯浴みの間。

玉座の間。

当直室。

保管庫。

冷却室。

ガラクタ部屋。

そして書斎。

 

「この巻いてあるのは……」

 

「それは蒼連郷や本国とのやりとりを記した記録だ」

 

「えっ」

 

すごく大事な巻き物がそこかしこに置いてある。

途端に部屋が狭くなった気がした。

 

「壊したら流石に拘束しないとな」

 

「ひぇっ……」

 

棚に入っている巻き物に触れないようにしつつ、間を通る。なんでこんな狭くて今にも崩れそうな場所を通っているのかというと、その先に宝物庫があるからだ。

どうせならってことで見て良いらしい。

 

「ははは、冗談だ。そんな怖がらなくても保護の加護がかけてある。破ろうと思っても容易には破れぬさ」

 

「そういえば……翌ハシュアーからは聞きますけど、加護ってなんなんですか?」

 

「――エルフと一緒にいるから知っているものとばかり」

 

「………」

 

「あまり余計なことを言うものじゃないな……夜だから気が抜けてしまう」

 

エリュシオンのヤツらが使う力は探索者の異能と性質が違うから気を付けろって、加賀美さんは何度も言っていた。

それと一緒?

……それが加護?

 

「――蒼連郷でも既に武力衝突にまで発展していたか」

 

「はい」

 

「アキヒロはチョーゲンに気を付けろというが……そもそも備えはしているのか?」

 

「さあ……」

 

「む………そうだな。キミに聞いてもだな」

 

「はい」

 

「……私から言っといてなんだが、潔いな」

 

「そういうことは加賀美さんとかシエルちゃんに任せます。僕はよく分からないので」

 

「だが、聞いたぞ。キミはパーティーのリーダーなのだろう?アキヒロはともかく、シエルに決断まで投げるのか?」

 

「そ、そりゃあ最後には僕が決めてますよ」

 

「そうか………さて、もう巻物を傷つける心配はしなくていいぞ」

 

「あ――」

 

僕が充分に通れる大きさの扉。

応接の間や玉座の間もそうだけど、なんで大きい扉が使われているんだろう。

人が来ることを想定して?

 

「ふふ、こういうのは大抵が見栄だよ」

 

「見栄……」

 

「中へ入ろう」

 

「……本当にいいんですか?」

 

もし見てしまったら、もう後戻りできなくなるとか……

 

「そんな物を見せるわけがないだろう……見せるにしても彼からだ」

 

「……っ!?」

 

「まあ、それでも……宝は宝だがな」

 

目も眩むような輝きが視界を焼いた。

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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