【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
二週間の物語。
アリサちゃんは強い。
加賀美さんがドラゴンに連れ去られたって知ってから少しの間は動けなかったけど、加賀美さんなら大丈夫だって思い込んで立ち上がった。
そこからは無意味に時間を費やすんじゃなくて、大学を休んでまできた意味を見つけてやるって息巻いていた。
僕たちはドワーフからいろいろなことを教わった。
鍛治は当然として、地底で暮らすにあたって必要なこと。
一番大事なのは火の使い方。
ドワーフは基本的に松明で暮らす。
街の明かりも、洞窟探索も同じだ。
ちょっと火打石を擦っただけで直ぐに火を付けられるから、どうやって火を扱うかの方を重要視しているんだ。僕は火を付けるのはそこまで上手くない。
できないわけじゃないけど、ドワーフはたいてい一擦り。そうじゃなくても、もう一回擦れば付けられる。
火は、短い時間で使い過ぎると毒になるらしい。
放たれる力が身体に悪影響を及ぼして、頭が痛くなったり息が出来なくなったり。
神様の加護でもどうすることもできないから、自分たちで気をつけるしかないんだ。
僕はそこまで長く火を使った事がないから知らなかった。
今度、加賀美さんに教えてあげよう。
火。
燃やすものによって色が変わるんだって。
実際見せてもらった。
僕が知ってるのは青と赤の火だけど、白や緑、金色の光なんかもあった。
ドワーフは、その性質を利用して石を見分けたりするらしい。
鉄や銅、金銀、魔石にも火の色がある。
それを利用して、ハナビっていうのを遊び道具として使ったりもしてるんだ。
僕たちも遊ばせてもらったけど、綺麗だった。
だんだん弱くなっていく火を見るとすごく心が落ち着いて、自然とシエルちゃんと笑い合って。
ここは地下深くだ。
だから、メタエレメンツも取れる。
魔素が石に染み込んでできた染み込んでできたメタエレメンツは火が強いから、安易に火を付けると爆発して危ないと知った。
そもそもメタエレメンツを見たことなんて、加賀美さんとマスダンジョンに行った時とか、山田家にいた時とか、それくらいだ。
地表に近いと採れないらしいから、もうちょっと僕が強くならないと自分で手に入れられる事はないね。
火は不思議だ。
熱いばかりだと思っていたけど、世の中には熱くない火も存在した。手を翳して、実際に火が手に移っても熱くなかった。
実用性は無いらしい。
ドワーフにとって、火っていうのは本物と偽物がある。
鉄を赤くできる火が本物の火で、出来ないのは偽物の火だ。
だから熱くない火は偽物で、嫌われている。
教えてくれたのも、ドワーフの前でそういう事を言わないようにっていう意味が強かった──らしい。
そんなことを言う機会なんか無いのに。
溶岩ってのも初めて知った。
最下層に存在する、煮えたぎる赤。
あれは岩が高温で溶けて、ドロドロになっている状態らしい。それが光って上から見えていたんだ。
誰が溶かしてるのかといえば、大地の神様血なんだって。
イルファーレ様よりももっと原初から存在して、海や空の神様も同じくらい大いなる存在である大地の神様の血。
そんな恐れ多いものには魔素が大量に含まれていて、それを活用して武器にいろいろな効果を付与する事ができるって。
──とんでもない事を教えられてしまった。
加賀美さんにも教えた事はないって話だし、少しだけ賢くなった気分だ。
更に聞くところには、ドワーフっていうのはもともと人間だったらしい。世界が切り替わった時、新しい力と因子に目覚めた人間がイルファーレ様の加護を得て変化した姿。元々は僕たちと同じヒューマンで、エルフも別の神様の力と加護で進化した──────?
賢過ぎる話はやめてください。
シエルちゃんにその話を聞いてみると、曖昧な顔をしながらも頷いていた。どうやら、よく分からないその話はだいたい合っているようだ。
でも、シエルちゃんがエルフじゃなくてヒューマンだったとしても同じくらい可愛かったはずだ。
そうだよね、フィアステラさん。
どうかなって……何を言ってるんですか? シエルちゃんが可愛くないわけないじゃないですか。
フィアステラさんは用事を思い出して走り去ってしまった。
──そうだ!
シエルちゃんも新しい武器を手に入れた。
当然、弓だ。
もともと使っていた木製の弓から、作ってもらった
空から降ってきたっていうスターライトはとても頑丈で、オリハルコンには届かないけどミスリルよりはずっと強い。
そんな強い金属で作った弓は引けないんじゃないかと思ったけど──依代に木弓を使う事で、シエルちゃんが意識すると柔らかくなり、放つ時は硬く反発するようになる。
しかもそれだけじゃなくて、矢を放つと星屑が一つ追従していく。当たると破裂して、相手にダメージを与える事ができるんだ。
ドワーフってすごい。
シエルちゃんも最初は故郷から持ってきた弓だからって事で手放したくなさそうにしていたけど、依代にすればそのまま扱えるって聞いて渋々だった。
それが、出来たものを見て何かを感じたのか。手に取ると嬉しそうに抱きしめていた。
アリサちゃんは斧から剣に変えた。
最近は斧の威力でゴリ押しするのに限界を感じていて、威力は異能とかの外力に頼って技量を鍛える方向にシフトしようと考えたらしい。
低レベルのモンスターみたいに、一撃で中身にまで刃が届くことって少ないもんね。
赤血鋼の剣。
振ると真っ赤な火が剣を覆って、敵を傷付けると血を吸う──らしい。
まだ敵に刺してないから血を吸うところを見てない。
火を使う力はレベルが上がれば異能として持っている人も多いから特別に目立つ事はないけど、それだけ使い勝手が良いって聞いた。
今は超速再生の力しか持っていないアリサちゃんでも上手く使える筈だ。
──とは言うけど、レベル17で異能を一つ持っている時点で十分すごかった。
武器のお代は要らないって言われた。
こんな良いものをもらえるのに、お金を払わなくて良いなんて正直信じられない。
すでに貰っているってどういうことなんだろう。
イルヴァの牙はとにかく全て、何もかもが僕たちの住んでいる場所とは違った。
陽の光は届かない。
季節の影響が無い。
モンスターも街の中にいる事はまずないから探索者がいらない。
みんな身体が小さくてがっちりしている。
地下なのに寒くないどころか暖かさを感じる。
全てが違って、その全てが新鮮で輝いて見えた。
これまでは知らなかった事を見て、聞いて、実際に触れる度、心の中に熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
加賀美さんが新しい場所に行きたいと思う気持ちが、少しだけわかった。
アルスさんに言われた『僕だけの価値』はまだ見つからない。
2週間は流石に厳しかった。
ドラゴンは、あれから何回か現れた。
その度に衛兵がすっ飛んできて街中大騒ぎ。
攻撃をしてくるわけじゃない。
遠くからこちらの様子を見ているだけだった。
……そんなの、ドワーフじゃなくても大騒ぎだよ。
みんな縮こまっちゃって地上には出なくなっちゃった。
アルスさんも、衛兵の人に対して外への哨戒任務は控えるようにって。
僕たち3人は一応、外に出る事はやめなかった。
加賀美さんたちが戻ってきた時に迎えてあげないといけないから。
でも、外に出るとドラゴンはいるんだけど絶対に近づいて来なかった。敵じゃない、のかな。
アルスさんが言っていた姫様──アリアちゃんはイルファーレ様の意識を自分の中に降ろして、その言葉を代弁するっていう役割を持っている。
すごく大事な、他の誰にも出来ない特別な役割だ。
だけど、役割は特別でも本人は普通の女の子だった。
話すほどにそれが分かって、仲良くなった。
普段からずっと神様を降ろしているわけじゃないからって事で、イルヴァの牙を詳しく案内してもらった。
お姫様なんて、物語の中にしか登場しないと思っていた。ちょっとだけフワフワした気持ちでアリアちゃんと行動していたせいで何回かドジを踏んじゃったけど……そのおかげでもっと仲良くなれたから良い感じ、かな?
そういう事は相手を選んでやれ、とか、十分に気をつけた方がいいってアルスさん言われた。
意味は良くわからなかったけど頷いた。
ため息をつかれた。
とにかく、アリアちゃんと一緒に行動したんだけど、ずっとシエルちゃんの機嫌が悪くて大変だった。理由を聞いても答えてくれないし……むくれシエルちゃんだった。
アリサちゃんがいなかったら口も聞いてくれなかったと思う。
2週間は長いなんて思ってたのは間違いで、武器を作ってもらうだけで三日。地下の採掘坑を案内してもらうのに一日。街を隅から隅まで、出会うドワーフたちと話しながらの案内にはまた三日。もう半分だ。
鉄のことや火のこと。
ドラゴン、そしてドラゴンに刺激されたのか活性化して出現したモンスター。
アルスさんとお話。
そんなこんなしているとあっという間に過ぎ去るのが時間だった。
アリサちゃんは最後の日なんかソワソワしていたけど……やっぱり加賀美さんは現れなかった。沈んだ表情で宿に戻るアリサちゃんを見兼ねて、シエルちゃんはお泊まりしに行った。
久しぶりに1人で寝るベッドは広くて、とても寝やすい。だけど、どこか物足りないような気もしながら布団を被った。
「ありがとうございました」
出発だ。
みんなが見送りに来てくれている。
言葉遣いの荒い人が多いけど、探索者みたいに嫌な感じはしない。
「また来いよ」
「はい!」
こうやって声を掛けてくれる人もたくさんいる。
少し離れたところから見ているだけの人も同じくらい沢山いるけど、そもそもドワーフの全員と話せたわけじゃないから仕方ない。
「皆、息災でな」
「アルスさんも一緒に行きましょうよお」
「はは、嬉しいが……そう簡単には離れられない身だからな。賢いお前なら分かるだろう? アリサ」
「ふぇーん……」
アリサちゃんは、ハシュアー達を探すために尽力してくれたアルスさんのことがすっかり大好きになっていた。
勿論、アリアちゃんも。
「アリアちゃん、今日までありがとう」
「……加賀美さん達の場所を見つけてあげられなくてごめんなさい」
「ううん、謝らなくて良いよ」
2週間の初めに探ってもらったけど、イルファーレ様の力で感知できる範囲にはいなかった。
だから、相当遠くにいるのは間違いない。
僕たちが追いつくのは無理だ。
でも、加賀美さんが大丈夫ってやってたなら信じる。
ハシュアーとヴォルフガングさんもきっと無事だ。
──と、今はアリアちゃんのことだ。
「…………行かないで欲しいです」
「うん、僕も行きたくない。だけど……行かなきゃいけないんだ」
「…………分かってます」
頭を預けてくる。
白銀の髪がサラサラと胸元を流れていって、どうすれば良いかはすぐに理解できた。
「楽しかった、です」
「僕も」
仲良くなれた子と直ぐに離れ離れなんて──本当に、距離が憎い。それでも、一度来ることが出来たなら次も来られない道理はないんだ。
「──どうだろう。この地を好きになって貰えただろうか」
「それは……勿論!」
大好きだ。
鍛治を大事にして、みんなで生活を回している姿は絶対に忘れない。
「シエル……キミはどうだ?」
「普通」
「ふふふ、そうかそうか…………アリサは?」
「帰りたくなーい……ヒロさんが戻ってくるまでずっとここで待ってたいです〜」
「ああ、嬉しいよ」
アルスさんは本当に嬉しそうに微笑んだ。
きっと、アルスさんも毎日が楽しいと思ってくれていたに違いない。議員さん達とも、花火をしたりして打ち解けられた──と思っている。
また、来たいなあ。
「さて……いつまでもいると足が岩に飲み込まれてしまうからな。そろそろ、か?」
「…………本当に、ありがとうございました」
「また来てくれ。いつでも歓迎しよう」
最後に一度だけ、加賀美さんが戻ってきていないかを確認するために地上へ出た。この後はブリンクポイントだ。
ヴォルフガングさんがいないから、先導はフィアステラさんだけ。
その前に、一度だけだ。
「──え?」
そうして地上に出た僕たちは、遠くに見た。
黒い影がこちらに向かってくる。
それは、日々目にしていたドラゴンだろう。
この距離だとまだ輪郭がぼやけているけど、間違いない。
翼をはためかせ、悠々とこの世界を飛び交う空の王者が霧の晴れ間からやってくる。
だけど、あんなに勢いよく向かってくるのは初めてだ。
そして、その背中に一つの人影が。
ドワーフの大きさじゃなくてヒューマンのもの。
「っ!」
アリサちゃんが走り出した。
ドラゴンに自分から向かっていくなんて自殺行為だけど、仕方ない。
待ちに待っていたんだ。
だけど、途中で足が止まる。
疲労じゃなくて、何か様子がおかしい。
大きくなる影に、アリサちゃんの足が止まった原因が僕たちにも分かった。
アリアちゃん、アルスさんも顔に緊張が現れている。
『やっと、ですね』
「女の……人……!?」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない