【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「使者が来た?」
「ああ、降伏しろだとよ」
コウキは探索者育成に手を貸している。
その関係で本部からも話が流れてくるが、アキヒロには遠慮なく公開していた。
「なんて返したんだ?」
「失せろってな」
「…………」
「俺じゃねえぞ、田辺だ」
「ああ、まあ」
「……まずったか?」
「いや、どうだろう……」
曰く、一ヶ月の猶予を与えるからそれまでに降伏しろとのことだ。降伏しなければレーヴァテインによってこの地方は丸ごと焼き尽くされ、半数以上が死ぬ。
「長いな」
「そうか?」
「大抵は焦らせようとするもんだけど」
「それは俺たちとお前の感覚の違いじゃねえの?」
コウキが軽い口調でいられるのは、彼がどんな状況でも生き延びられる強者だからだ。ミツキやミナはやはり不安そうにしている。
もちろんコウキはそんな2人を絶対に守ると豪語して憚らないが、あまり信用はなかった。
何せ肝心な時にいないのがこの男だ。
逆に、肝心な時にしかいないのがアキヒロだった。
「アキ……」
「ミツキ、おいで」
父親の前で娘を抱きしめるという暴挙。
コウキは瞬間湯沸かし器になりかけるも、アキヒロの頭越しに睨んでくる娘の瞳には勝てなかった。
「おかえり」
「ただいま、ごめんな最近」
「ううん」
アキヒロが波に乗っていることはもちろん理解していた。やる事が多すぎて大学にすらあまりいけていないのだから、会えないのも当然の話だ。
それはそれとして、会えなかった分はきっちり補充する。
親の前であることなどまるで意に介さず、ミツキは口元を彼の肩に埋め、目一杯酸素を取り入れた。鼻から肺に入り込み、ガス交換によって、大気に溶け込んだアキヒロ成分が彼女の体に染み渡っていく。
スター状態だ。
コウキは複雑な表情をしつつ、このタイミングで帰ってきた理由について尋ねる。
「どこ行ってたんだっけ?」
「ドワーフの国」
「なんて?」
「ドワーフの国」
「…………お前は……はあ?」
半ギレしていた。
「俺たちがどれだけ探し求めたかわかってんのか?」
どうやら、一級探索者にまでなると必ずドワーフたちの住処を暴こうと考えるらしい。しかし見つからない。
一級探索者の伝手や異能の全てを駆使しても擦りもしない。ドワーフの後をつけても、角を曲がった瞬間に姿を見失う。
それが、この加賀美明宏という男は牛を繁殖する方法を探しているだけでそこに行き着くというのだからキレられても仕方ない。
「知らんよ、そんなん……」
しかし、アキヒロにも大きな収穫がある。
ドラゴンの友人ができたことと、牛の生息地域の一つが判明したことだ。
ミナは珍しく大きく驚いた顔で明宏を覗き込む。
「モンスターって飼えないんじゃないの?!」
それが世の常識だ。
意思疎通など決してできず、手を出せば噛まれるだけ。
100年間、モンスターをペットとして手懐けた例など残っていない。
当然、アキヒロは頷いた。
「飼ってるわけじゃない。知り合いの家族なんだ」
ドラゴンを家族などと宣うイカレと知り合ってしまった義息子をどう諌めようと顎に手をやる夫婦。敏感に気配を察知したアキヒロはミツキをあすなろ抱きでバリアーにしつつ、外に向かう。
霧の中に隠しておいた──放置ともいう──ドラゴンを紹介した。
「シャインドラゴンちゃんだ」
『グルルル……』
警戒状態を解かない。
それもその筈。
目の前にいる猿から放たれる圧倒時な気配は、長をおもいださせるものなのだから。
「ふん、びびって襲ってこないだけじゃねえか。こんなのいくらでもいるぜ」
「ところがどっこい、ハシュアーとか三船君達も背中に乗ったけど食べられずに移動してたんだよ」
その言葉はさらなる困惑の元だった。
ドラゴンの背に乗る、というのがあまりにも信じられない。乗って攻撃したということかとコウキは念のための確認を取る。
「そんなわけないだろ……乗せてもらって移動したんだよ」
しかし信じられない。
探索者としての経験が、アキヒロの言葉を否定する。
アキヒロは未知の知識を有し、夢の世界からやってきた住人ではあるが、だからと言って全ての言葉を鵜呑みに出来るわけではない。
ミツキも本当か? という疑念を隠さず見つめる。
そんな彼女からの視線に真剣に答えた。
「本当だよ」
「信じる〜」
チョロ甘だった。
何も考えていないのかもしれない。
しかし、分かりやすい証拠を見せなければなかなか信じる事は難しい。一級ダンジョンで不思議なことを多く体験してきたコウキだとしても、だ。
「乗っていいか?」
『クルルル』
甘えるように翼の裏を見せる。
そこを何度も掻いてやると、その度に身体を細かく反応させた。
さながらペットのような振る舞いを、コウキは油断なく見ている。
「頭下げて」
『…………』
指示に従ったかのように、ヘニョ、と体を潰して背中に乗りやすいようにした。アキヒロ1人だけなら一足飛びに乗れるが、ミツキもいるので太い後ろ足を伝ってゆっくり登る。
ミナのハラハラした表情に答えて、ミツキは手を振った。
「ああ……ああ……本当に大丈夫かしら……」
「大丈夫なわけない」
頑として備える。
ドラゴンがいつミツキを食おうとしてもいいように、右腕に力が入っていた。
もう片方では妻を抱きしめ、尻を揉もうとして払われる。
「よし、飛んでくれるか?」
『!』
飛翔、その羽ばたきは霧を吹き飛ばした。
しかし空中にいる間はそこまで羽ばたかない。
「あんまり目立っちゃダメだぞ」
『ンゴロロロ』
上昇気流もないのに、ぴたりとホバリングを見せる。ミツキはアキヒロの腕の中ではしゃいで止まらない。
「すごーい!」
確かに、ドラゴンを飼い慣らしているというのは本当なのかもしれない。
眼前の光景を否定するのは、ダンジョンであれば何度もした事があるがここは平場。そう簡単に惑わされるものでもない。
しかし、興味深い光景にもコウキの顔色は晴れなかった。
こうしている間にも、別のセクターではエリュシオンの信徒による攻撃が進んでいる。エリュシオン本体は一ヶ月の猶予を渡すと言ったが、蒼連郷出身の信者達はその事をそもそも知らない。
使えるようになった異能を駆使して、探索者達と戦闘を繰り広げていた。しかも、それにとどまらず無辜の民にまで手をかけているとも。
「…………」
「あなた、ミツキが見てるわよ」
「おう」
暫く飛翔を楽しんだミツキ達は、ドラゴンを隠して戻ってくる。探索者に見られると狩られるから気をつけるようにと注意してはあるものの、どこまで通じるやらアキヒロにもわからなかった。
ドラゴンもそうだが、ドワーフの国について根掘り葉掘り聞こうとして手を翳される。
「話せません」
「なんでだよ」
「コウキさんから情報が漏れたら大変でしょ」
「漏らさねえよ」
「無理」
「このっ……」
そんなことよりも、もっと話すべき事があるのだ。
背中を押して家に戻る。
「商工会はどうなんです」
「はっきり言え」
「戦力を集結させようとしてたりするんですか?」
「……西と北に向かわせているみたいだ」
「おお……」
「なんだ? 別に変じゃないぞ。西の部族も攻めて来てるし、エリュシオンだかの奴らは北から来てるんだから」
戦力を集結させているのは向こうだけではない。
というか、向こうが集結させたらこちらもやらねば進路上にある全てが略奪対象だ。
しかも、逆に融和策を取られるとさらにまずい事になる。見捨てられた恨みも合わさって、戦力増強された侵略者の到来だ。
しかし、アキヒロが言いたいのはそこではない。
「やつら、神様の祝福で力を使うもんで……どうやらブリンクも使えるらしいんですよね」
「なんだと!? ……祝福ってなんだ?」
まず祝福という概念が存在しなかったが、似たようなものを教えるとコウキは納得した。つまり、霊領の管理者として神に仕えるロイス達のような人間が神から与えられる恩寵の力だ。
秋川家で言えば浄化の炎が該当する。
コウキも元トップランナーとして、そういった伝手はいくつか存在した。
「そうか……そういう奴らが相手なのか……アキヒロ、まさか相手は神なのか?」
「分かりません」
「……今の、どこで知った?」
「言えません」
「知り合いだな」
「…………」
身内にゲロ甘であるという事を良く知る四門家の3人は、また厄介ごとに飛び込もうとしている全身マグロ人間を取り囲んで睨みつける。
「前から言ってるよなあ。危ない事するにしろ、もっと周りのこと考えろって」
「アキヒロ? あなた、まだ懲りてなかったの?」
「アキ!」
しかし、責められるのは不服であると偉そうに足を組んで見返す。
「俺がやりたい事をやって、何が悪いんだ」
「言うに事欠いて! この!」
「いてっ! ……ミナさん! 暴力はダメだぞ!」
「言って分からないバカにはお仕置きが必要でしょ!」
「こ、こら!」
ミナは、長い髪を手で持って鞭のように叩きつける地味に嫌な攻撃を繰り出して来た。殴るなどという野蛮な手段には出ないのだ。
「うんうん」
妻が髪ムチで攻撃する姿を、満足げに見つめる夫。
娘は頬を引っ張っている。
「次は何やろうとしてるの!」
「神の祝福を得られないかなって」
「え……」
全員が固まる。
彼らは、アキヒロが神様アンチであるという事を知っている。そんな彼が神様から何かを受け取る事に抵抗感はないのか、そもそもこいつ本物か、中身は餡カスタードの偽物なんじゃないか、そんな疑念を抱いても仕方なかった。
「仕方ねえな……」
そんな反応になることはわかっていたのか。
気だるそうながら、したり顔で説明をし始めた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない