【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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46_爺は、かく語りき

 

 神様ってのは、この世界に後天的に現れた種族だ。

 つまりモンスターと一緒だな。

 そんで、物理的なエネルギーじゃないものを原動力として動いている。

 だってそうだろう? 

 人に祝福を渡したり、雪女達がいたコキュートスみたいな異界を作ったり、どう考えてもキネティックエネルギーじゃない。 

 

 ファンタジックエネルギーによって権能を行使しているのは明らかだ。

 ……明らかだよなあ!? 

 

 そんなわけだから、神は世界を捻じ曲げている法則を構成する要素の一つか、捻じ曲げている奴そのものなのは何となく予想してる。

 基本的に法則ってのは戦えるもんじゃないけど、意思を持って動いているなら別だ。存在するものがプラスとして、対になるマイナスが必ずどこかにあるはずなんだ。

 複雑化するほど、維持するのは難しくなる。

 何か、少しでも変わって仕舞えば奴らは姿を維持できない。

 

 だから俺は神を殺したいと思っていた。

 そうすれば、魔素も消し去れるはずだって。

 というか魔素と神様が一緒に消えるもんだと考えていた、かつては。

 

 ……いや、別に私怨とかないから。

 概念の剥奪なんかされてるけど俺は怒ってない。

 化石はほぼ消えたし、歴史だって残ってないけど俺は怒ってない。地中で資源変換されてるだろうから、また掘り起こせば良いだけだ。

 加工がしづらいものしかないせいで、鍛治師なんて時代遅れな職業が罷り通ってるけど俺は怒ってない。

 

 だけど、色々な問題がある事に最近気付いたんだ。

 

 神全てを殺した時に確実に起こる問題。

 

 イルヴァの牙の崩壊。

 ロイス達が路頭に迷う。

 それにエトセトラだ。

 

 イルヴァの牙はイルファーレの権能によって外敵から守られている。たまに起きていた地震だって、イルファーレが何かしていなければ今頃イルヴァの牙を押し潰していただろう。

 それに、途中の砦だって最近はモンスターの力によって破られていたりする。

 人間に居場所を特定されて奴隷にもされるだろう。

 うーん……となる。

 

 そして次は、秋川家があの穢れたちの対処をできなくなるんじゃないかということ。俺も一部委託を受けているとはいえ、俺がいない時にはアイツら自身がやらなきゃいけないんだから頼り切りにされても困る。

 それにアソコの神様が死んだらコマちゃんの不思議な力も消えるかもしれない。

 

 他にも問題はある(エトセトラ)

 神様が魔素の行使力の原動を担っているとしたら、奴らを絶滅させた後に俺たち探索者はどうなるのか。

 もしかしたらぐずぐずに溶けて消えるかもしれない。

 あるいは全員がモンスターになるのか。

 モンスターがそもそも存在できるのかということも問題だ。モンスターなんか絶滅してくれても良いけど、生態系ってそういう都合のいいものじゃないんだよな。

 

「それが問題? うーん……あはは……」

 

「確かそれがマジだってんなら俺もお手上げだが……今のところはガキの妄想としか思えねえな」

 

 コウキさんは神様と会ったことあるんだろ? 

 

「ダンジョンの深奥でな。闇の中で語りかけてきたよ……殺せるだなんて思わなかったな」

 

 コウキさんがそう言うってことは、レベル80超えでも神様とのレベルギャップは相当なものがあるんだろうな。まあ、そこについては前々から聞いてたから知ってるけど。

 

「お前、神様をレベルで測ろうとしてんのか?」

 

 999くらい? 

 少なくとも、数値化できないわけはない。

 無限がこの世に存在しない以上、どこかに上限はあるはずだ。

 だけど、人の寿命で追いつけるとは思えないから、レベルを上げることにあまり意味はないな。

 

「あのさあ……前から殺す殺す言ってるけど、方法は考えてんのか?いや、考えてないでくれ。怖いから」

 

 俺の武器は神器だ。

 ドワーフが言うってことは、本当に神の器である可能性はある。もちろん便宜上の呼び方でしかない可能性もまだあるけど、こと武具に関してドワーフは真面目だから、信じていいと考えている。

 

 ──それが、この魔剣ちゃんだ。

 

 あ、また喋った。

 

「それで殺すって……都合のいい話の組み立てばっかじゃねえか」

 

 そりゃあ、ドワーフが鑑定できないってだけで信ぴょう性上がるだろ。

 可能性の一つとして、いちばん大きいからな。

 

「また俺の知らないところで変なことしやがってたなお前……確かヒナタだっけ? 3番目の子の家に行ったくらいからナイフがそんな感じになってたよな」

 

 3番目の子っていうのやめてください。

 

「でも付き合ったの3番目じゃん。1番と2番はどっちかも分からんけど……3番目だけは確実だろ」

 

 だからやめろと。

 ヒナタは意外と繊細なんだから。

 

「お前に比べたら全員繊細だろうが。この未練たらたらジジイが」

 

 じゃあやっぱり俺の方が繊細じゃねえか! 

 

「そこ以外ソフトポイントないくせに何言ってんだコイツ」

 

 と、とにかく! 

 俺はこの神器が神様特攻だと思ってる! 

 これなら神様だって殺せるはずだ! 

 

「あーん?」

 

 これの炎は、黒くて質量を持っている。

 エネルギーの散乱で波長が現れているのが炎のはずなのに、おかしい! 

 そもそも質量のある炎って何だ!

 だからいける! 多分! 

 

「何だコイツ……」

 

 いけてくれ! 頼む! 

 他に手とか思いつかん! 

 いや、思いつくけど……やっちゃダメなことだから! 

 

「何だよ、他の手って」

 

 信徒を皆殺しにする。

 

「──は?」

 

 信じるものがいなければ、神様なんて存在できないからな。

 それに秋川さんからも聞いてるんだ、神への祈りを捧げることで神の力は増していくって。

 それで加護の力も増すんだとよ。

 

「何言ってんだお前……そんなの……」

 

 だからダメだって言ってんじゃん。

 全ての神を完全に消滅させようと思ったら人類全てを抹殺しなきゃいけなくなるからな。

 流石に牛のためにそこまではしない。

 

「だ、だよな……」

 

 それに、まだ勝てないしな。

 

「何で一応勝とうとしてんだよ」

 

 リヴァイアサンくらい個人で強くなれば、世界だって壊せるはずだ。

 それなら人類も絶滅させられるだろ?

 

「子供かな?」

 

 だけど、全員を殺したとしても俺が生き残っちゃうから結局は意味ない。そもそも牛を繁殖できるようになったら色んな人にやって欲しいのに、人を減らしてどうすんのって。

 だから無駄な策だったんだ。

 

「それ、もっと早く気づけたんじゃね?」

 

 最近になって神様って存在のことが少しずつ分かってきたから、考え直したんだよ。

 神を殺せば色々縛りが消えるかもって昔は思ってたんだ。

 ダンジョン化の原因も実は神様なんじゃね? とかもな。

 イルファーレを見るに違うっぽかった。

 

 というわけで最初の話に戻るけど、俺がやるべきは神様全てを殺すことじゃなくて、神様から加護をもらえるようにすることだ! 

 

「どうやって?」

 

 敵対している神を殺して力を示せば、別の神様が言うこと聞いてくれないかなって。

 

「お前は神様を何だと思ってるんだ」

 

 神様と交渉できるようにならないといけないってこと! 

 わかって!? 

 

「分からん、お前が何言ってるのか」

 

「私は分かるわよ」

 

「えっ」

 

「奪われるのが嫌なのよね?」

 

 …………

 

「加護? を貰えたとしても、神様の機嫌を損ねたらまた牛さんを増やせなくなっちゃう。だから、対等な立場になって交渉がしたいってこと──そ、そうよね?」

 

 全部言われると複雑な気分だなあ……だけどその通りだ。

 俺たちは与えられるだけじゃダメなんだよ。

 受け取るばかりだと腐り果ててしまうから──だから、示さないといけないんだ。

 俺たちは神の下につくものじゃない。

 神と共に歩める霊長なんだってな。

 

「壮大な話だな」

 

 いいや、小さな話だよ。

 結局は牛を増やしたいってところにしか帰着しないんだから。

 

 全ては俺の、小さな願いのためでしかない。

 

「プライドってやつか…………でも、それだけじゃないだろ?」

 

「そうね」

 

 ──許せないんだ。この星を支配し、空にすら手を伸ばして掴んだ人類がぽっと出のカミとやらに負けるのが。

 じゃあ、誰がこの星の支配者か教えてやらないといけないだろう? 

 

「殺す必要あるか?」

 

 人の力の極み──最も誇れる部分は再現性だ。

 

「つまり?」

 

 俺は、ドワーフにこの魔剣を複製してもらいたい。

 

「!?」

 

「!?」

 

「!?」

 

 かなりの時間がかかるのはわかってる。

 それに、神様を殺せるって確定してからじゃないといけない。

 結構先の話になるけどな。

 

「今は変な奴らがきてるしな……い、いや、お前まさか!?」

 

「あなた?」

 

 コウキさんだけは気付いたらしい。

 まあ、そういうことだ。

 

「許さねえぞ!」

 

 そう言われても、どうしようもない。

 俺が生きている意味を否定されたら死ぬしかなくなる。

 

「ミツキ達はどうするんだよ!」

 

「あなた、さっきから何言ってるの? アキヒロも……何をするつもりなの?」

 

「こいつは……エリュシオンの神様を殺すつもりだ!」

 

 方法も不明瞭だし、どうやってその首元に辿り着けばいいかも不定だけど……それが1番の近道だな。

 

「ぬわぁーにがいちばんだ!」

 

「ばか! 何考えてるのよ!」

 

「アキ! こら! めっ! お座り!」

 

 やめろ! やめろお! 

 だってそうだろ! 敵の神様なんか殺したっていいだろ! 

 モンスターと一緒だぞ! 

 そもそも、殺さなきゃこの戦争が収まらないだろ! 

 

「せっ……」

 

 紛争とか諍いとか、お為ごかしをしても意味がない。

 もう始まってるんだよ。負けたら奴隷になって、男は死ぬまでこき使われるし女は使えなくなるまで嬲られることが確定する戦争は。

 

「…………」

 

 君たちが想像もできない酷い世界だ。

 

「お前は…………知ってんのかよ」

 

 俺はこの目で何度も見た。

 だから田辺に伝えてくれ、コウキさん。

 エリュシオンは根絶やしにしないといけないって。

 

「根絶やしって……ほ、ほんとうにそこまでする必要あるの……?」

 

 ミツキ。

 俺が知っている戦争ですら国際条約があって、その枠組みの中で行われていた。

 何も縛りがないこの世界で、どんな事になるやら分からないんだよ。

 

「じゃ、じゃあ……せめて、その条約? ってのを……」

 

 あの空──あれはレーヴァテインと呼ばれる殺戮兵器だ。

 壊滅と降伏を目的とした戦略級の兵器。

 効果は知らないけど、ろくなものじゃないのは見た目からして分かる。

 ただ燃やすだけならまだ良いだろうな。

 しかも、あの魔法だけとも限らない。

 

 そんなものをすでに展開している奴等に対して、どうやって条約を結ぼうなんて言える? 

 とんでもなく不利な条件を背負わされておしまいだ。

 

「お前は……何をやってたんだ? どういう立場だったんだ?」

 

 普通のサラリーマンだ。

 田辺長元みたいに国の長だったわけじゃなくて、今みたいに戦士として戦っていたわけでもない。

 エリックや関根さんみたいに、必死こいて働いていただけだよ。

 

「でもよ。それなら、そんな知識があるわけが──」

 

 俺()()とお前達じゃ、それくらいの差があるって事だ。

 これくらい、俺の世界に生まれたおれの国の人間なら大抵はすぐに思いついた。

 

「…………頭が良いからってこと?」

 

 違う。

 ただの知識だ。

 おれの世界では何度も戦争をして、何度も世界が滅びかけた。

 人類の力だけで、だ。

 だから、過去の過ちを繰り返さないように記録に残していたんだ。だけど何百年も何千年も、同じことを繰り返して──ようやく、仮初の平和を得た。

 その積み重ねを、おれと同世代の人間は簡単に学べただけだ。

 

「…………仮初?」

 

 色々とあったからな。

 

 まあ、ともかく……エリュシオンのことだって考えがないわけじゃない。神様は無敵じゃないし、無からポンって生まれたわけでもないんだ。

 イルファーレが鍛治の神様であるように、それぞれ役割があるんだから。

 

「…………?」

 

 さて、そろそろお暇するよ。

 父さんが帰ってきてくれって言ってたからな! 

 

「アキ……」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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