【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「なんつーか甘ェな……ちげえか、舐めてるんだな」
シンプルな両刃の直剣。
こびり付いた血脂。
周囲に崩れる人間。
更地と化した街。
何が起きたかは一目瞭然だった。
「俺が探索者辞めたから倒せるってか?」
また1人、頭から股までを縦に両断する。
「家族を手に入れたから弱点ができたってか?」
苛立ちを隠さず、足を地面に叩きつける。
即座に陥没した地面を亀裂が走り、人間を奈落に飲み込んでいく。反作用で空に浮かんだ男は、頂点に到達すると今度は重力の影響で落ちる──ことはなく、浮かんだままだ。
見上げるうちの数人が空を飛び、恐怖の表情を貼り付けたまま攻撃を仕掛ける。
火、水、雷、圧縮空気。
攻撃性の高い異能──ではない。
彼らは探索者ではないのだから。
その不可解さに顔を顰めつつ、男は剣を振るった。
「ちっ……喰らっていいのかすら分かんねえな」
一度たりとも喰らっていない。
異能ではないそれらを身に浴びせられた時、何か恐ろしいことが起きる可能性を考慮していた。
故に、全ての攻撃を回避・相殺して無傷。服装だって元のままだ。
そして、迎撃されたことに動揺すらせず次の攻撃が放たれた。
「妙ちきりんな奴らだ……」
戦闘経験はまるでない。
動きに深みもない。
見切るのは容易で、迎撃もたったの一撃で済む。
顔を見れば、どんな感情で己に敵対しているのかも明白だ。
だというのに逃げない。
「洗脳でもされてんのかあ?」
『──探索者がそれを言うのか! あの子を見殺しにしたお前らが!』
「話にならん」
反論してきた1人目掛けて斬撃を飛ばした。限界まで威力を抑えたそれは、空中にまで身を及ばせた者達全てを巻き込んで爆発を巻き起こす。
パラパラと消し炭が地表に降り注ぎ、恐怖を更に深めた信者達はそれでもギュッと目を瞑って両手を合わせた。
それはまさに祈り。
何かを願っての行動。
「これは──」
男は動揺しなかった。
見上げることすらせず空を認識し、異質なものが現れたコトを確認。
その正体についても、ある程度の当たりをつけた。
「神様か? いや、少し違うな……まあいいか」
細かいものが分からなくとも、範囲を絞れば対処法も見えてくる。
男は即座に盾を現した。
今の今までは持っていなかったそれを空に構えると、白い光が彼の直上から降り注いだ。
稲光ではない。しかし明確に彼を狙って放たれたそれを、顔色ひとつ変えず盾で受ける。
それどころか、盾に当たった光は跳ね返って拡散した。
『嘘だろ……』
今度こそ、信者達は動揺で動きを止めた。
どうやら乾坤一擲の一撃だったようだ。
「なんだ、あれで終わりか? じゃあ……あとは川に撒いとくかな」
始まるのは命乞いだった。
口々に叫ばれる必死の言葉を、耳をほじって面倒くさそうに聞く。
「だりいな」
残されているのは100人に満たない。
しかも一般人でしかないが、先ほどの攻撃の様子からしてレベルの低い探索者が仮に1人で遭遇したら圧殺される程度ではあった。
だが、多くの探索者はパーティーを組んでいる。
特別な理由がなければこの烏合の衆と1人で戦うなんてことは──そこまで考えて男は首を横に振った。
そんなに考えられるやつはそもそも探索者になることが稀だし、そこまで考えられるのであれば探索者としてかなりいけるだろう。
要は、あまり一般的な考え方ではないのだ。
それに信者達が手にしていた武器類は、この街の探索者が持っていたものと合致する。
幾人かが狩られているのは確定だった。
「いつも守られてる分際で、よくもまあこんなことが出来たな……しかも助けてとか」
だが、彼らの奮戦はそこまでが限界だろう。
自らに危機が及んだからこそ男は動いた。
そうでなければ放置──家族に怒られない限り──だったが、仮に男が動かなくとも商工会が何かしらの手を打っていた。
若干タイミングが遅くなって被害は拡大しただろう。
しかし、遅かれ早かれ彼らは全滅した筈だ。
拘束で済むはずはない。
既に探索者と同水準の力を持っているコトを自ら示し、探索者と違って明確に民衆を攻撃する意思があるのだから。
「んー……ん?」
仕事を終えた男はひと段落着いた心地でノビをした。
そこで気付く。
気配なく空にいるもの達に。
「見てやがったな?」
『…………野蛮な』
先ほどの戦闘を観察していたのだろう。
10人はいる。
男はその中に自らの家族がいない事にホッとした。
「よしよし……しくらなかったか」
仮にしくじっていたら、娘を預けるに値する男だという評価は覆さなければならなかった。
しかし、
実際のところ、それが成っていなかったらセクターを破壊する程度の被害はもたらしていただろう。
手足をプラプラとさせて準備運動代わりとする。
『余裕だな』
敵は、男の上空で輪の陣を組んでいる。
いずれも口元以外を認識できないフードを被っていた。
そのうちの1人が若い女の声で話しかけてきた。
嘲りを多分に含んでいる声色だ。
「余裕だろ」
男は、単純な戦力差を既に測っていた。
『その余裕がいつまで保つか、見ものだな』
「お前らの必殺技次第だな」
先ほどとは質の違う戦いが始まった。
先程までと同じくやる気なさげに剣を一振りすれば終わるものではない。しっかりと受け止めるか避けるかという行動をできるもの達だった。
そして、攻撃に合わせるように火球を飛ばしてくる。
それを避けようとして、1人が叫ぶ。
『喰らえ!』
「うおっ」
男は目を見開き、爆炎に飲み込まれた。
『やったか!? ……ああ』
芯で捉えた感触に、1人が嬉しそうに言う。
だが、爆炎の中に現れたシルエットを見てげんなりした声に変わる。
「──はははは! テメェら、ちょっとは準備してきたみてえだな!?」
『化け物か……』
無傷。
しかも、かすり傷ひとつない本当の無傷だ。
服も同じく新品のように綺麗なまま。
「ん? お前らもしかして気付いてなかったのか?」
『なにがだ!』
「お前らが戦ってる相手が正真正銘の化け物だって事に」
『…………ほざくな!』
「いやあ、よく言われるんだよな。あなた、本当に一級探索者ですか? ってな。八百屋のおばちゃんとかも、俺のことただのモヒカン野郎だって思ってるし」
発言の内容は自慢なのか自虐なのか微妙なラインだ。
しかし男の顔はそれがプラス方面の発言である事を肯定している。
「俺は最強だ。精神抵抗も、肉体も、異能だって誰にも負ける気はない。それに、マトモさ加減だって一級の中じゃあトップだ。トップクラスじゃなくて、俺がぶっちぎりの一番」
取り囲まれている中で、焦りなどまるで見せずに話している。
その最中も攻撃がやってくる。
先ほどの天空からの光もまた。
しかし今度は祈りではなく、1人が何かを唱えている最中に発生する。
他にも2人が後方に控えて、前線を張っているのは七名だ。
「俺をラスボスかなんかだと思って組んだのか?」
『自惚れるな。これはただの狩りだ』
「手の内はバレてる感じ? そんなわけないよな。だって俺のことを完全に知ってるなら、絶対に勝てないってわかる筈だし──お?」
四方から襲いかかる武器。
1人のエルフが操っている。
「かっけー」
とにかく、多彩の一言に尽きた。
一人一人が身につけた武芸を活かし、四門光輝というレイドボスを倒そうとしている。
しかし、男は首を捻った。
「やっぱ舐められてる?」
この程度でやられると思われているのが不思議でならなかった。
『10人などという少数でかかるべきではなかった──とでも言いたげだな』
「ああ、よくわかったな」
『我々は確かに戦えるが……貴様と刃を直接交えるのは貴様を倒すためではない』
「うん?」
『気付かなかったか? 我々がこの円陣を一度も崩していない事に』
「ああ……いや、頑張ってるなって」
『っ……下等な猿め! 舐めた口を聞きおって!』
「キレすぎキレすぎ。下品ですよ〜」
『…………ともかく、この円陣に意味があるとは考えなかったか?』
「なんかあるんだ」
『ふん、神霊への理解が少ないというのは哀れだな。こんな簡単なことにすら気づけない』
「え? 神様くるの? それはまずいかも……なんちゃって」
ふざけた態度に、全員がイライラしているのが伝わってくる。男は、彼らが根本的に自らを見下しているという事を理解した。
『これを喰らっても、そんな態度でいられるかな?』
「…………?」
10人を、光の線が繋いでいく。
幾何学的な模様が男と空を隔てるように現れた。
「それが?」
『…………やれ』
天空より、再び光が降り注いだ。
「──!」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない