【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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 どう足掻いても勝ち目はない。

 今の俺じゃあ、あの光を出された時点で正攻法では詰みだ。

 それを真正面から押し返す──なかなかできることじゃない。

 強さを追い求めているわけじゃないけど、男として負けたなーって感じはある。

 ミナさんは誇らしげだし、ミツキも嬉しそうだ。

 腹立たしいな。

 

 爆心地に向かうと、ひどい有様だった。

 最後の攻撃だけは防げていたようだけど、それ以外──焦げた痕や凍りついた地面、氷柱なんかを見るに、相当激しい攻撃にさらされていたのは間違いない。

 その影響で近くの建物は大抵ぶっ壊れている。

 職人が大忙しだな。

 

 そんで、例の家族は3人仲良く抱き合って円満だ。

 それ自体はいいことだな。

 

「何だ、恥ずかしがってんのか? お前も混ざりゃいいじゃねえか」

 

 何が悲しくてそこにジジイが混ざらにゃいかんのじゃ。

 それよりも、敵の残り滓やら何やらがないかを確認したい。

 

「あー……あるかな」

 

 そこら辺の調整が全くされていないのは、あの距離で攻撃が見えたことからしても明らかだ。それでも、神様の加護とやらがあるなら残ってるものがあってもおかしくない。

 

 結局、見つかったのは革製の靴・花弁形のブローチ・小さな盾の三つだけだ。意外とあったな。

 これがどっかの家の中にあったやつなのか、あいつらが持っていたものなのかは分からない。

 ──小さな盾については持っているところを見たらしい。じゃあ残りはブローチと靴だ。

 

 俺たちが持ってても色々面倒くさいことになりそうだから、支部に持って行くことにした。

 向こうは向こうで、倒したんならあんた達が持っててくれよ……みたいな顔をしつつも受け取ってくれた。

 本部に預けたり、やりとりとかして役立てて欲しいところだ。成り行きに任せるんじゃなくてな。

 

「支部なんてあんなもんだろ」

 

 ナナオさんだったら『本部まで持ってってよ!』って普通に言いそう。というか言うだろうな。

 まあ、あそこにはコマちゃんがいるけど……そうなるかは知らない。

 

 とにかく、この街の襲撃は完全に退けたと判断していいはずだ。退けた(全滅)だけど。

 タイミングとか知らないから張り付いてて良かったー。

 

「この後はどうするの?」

 

 とりあえずアリサとヒナタの様子をすぐに見に行きたいな。

 何でか知らないけど端末が使えないし。

 

「えー……」

 

 その反応は普通にやめて欲しいかな……

 仮に3人と付き合ってないとしても、友達が危険な目に遭ってるんだったら確認しなきゃいけないだろ? 

 

「でも、セクターの間の移動だって危ないし……コマちゃんがいるんでしょ?」

 

 本当に平常運転で安心するけど、コマちゃんにいつまでも任せてるわけにはいかない。

 結局イヌだし。

 ドッグフードに文句を言うようなイヌだ。

 不満が溜まったら仕事だって放棄するだろう。

 本当は、俺自身を三つか四つに分けたかったんだ。

 それなら確実だった。

 

 あの光に再現性があるとしても、フルの火力で放つためには時間がいるはず。

 ちょこちょこと邪魔してやればきっと防げたんだろう。

 だよな? コウキさん。

 

「えー? 俺知らなーい」

 

 そういうことです。

 

「でも、コマちゃんが負けちゃってたら……どうするの?」

 

 そしたら俺は責任とるしかない。

 

「せ、責任って……」

 

 例えどうなったって、男としてケジメをつけなきゃいけない。

 ミツキには本当に悪いけど、俺のミスは自分で尻を拭くしかない。

 

「そうだな。その時は潔く死ね──と言いたいところだけど、ダメだ。ミツキがいるからな」

 

 ミツキを何とか説得して、一晩使って不安を鎮めさせてから向かったけど何のことはない。コマちゃんは俺の最高の相棒だってことが分かっただけだった。

 

「アキヒロ!」

 

 飛びついてきたヒナタを抱きしめる、離さないように。

 ヒナタも思いきり腕に力を込めていた。

 きっと、同じ気持ちだった。

 

「怖かった」

 

 罪悪感で酷い気分だ。

 やっぱり、みんなを一つの場所に集めておくほうが正解だったのかもしれない。

 そうすれば、そんな思いをさせずに済んだのに。

 

「変な奴が来て、俺の女になれ……とか言われてさ……姉ちゃんも……」

 

 久しぶりに、激しい怒りに襲われた。

 力の制御ができなくなってしまうから探索者は怒りに身を任せてはいけない。それでも、怒りそのものを感じないわけじゃない。

 放っていた事を謝って、怖い思いをさせたことを謝って、ミツキの下に見ているわけじゃないってことをちゃんと伝えた。

 

「じゃ、じゃあ……不安に思ってる彼女がいたらどうすん──」

 

 おねだりに応えたらトロンとした眼になったヒナタに、この世で最も生きる価値のないクズはどうなったのかを聞いた。

 襲撃してきたエルフは総勢で20名いたらしく、その全てが股間を噛みちぎられてから苦しみもがいて死んだらしい。

 男女問わず。

 スカッとしたけど、思い出したヒナタは顔を顰めていた。

 酷い光景だったようだ。

 そりゃそうか。

 

 肝心のコマちゃんは支部から街全体を見守っているらしい。何だあいつ、狛犬だからって本物の守り神にでもなった気なのか。

 

「気っていうか……」

 

 コマちゃんの強さを目の当たりにしたヒナタは、コマちゃんが実は神様なんじゃないかなんて妄想にちょっぴりだけ取り憑かれてしまったらしい。

 ロイスに怒られるぞ。

 女中のマキさんとか執事の上山さんにも怒られるぞ。

 

「家入る?」

 

 早苗ちゃんは三船君達と一緒に買い出しだそうだ。

 なんと、テマリさんも一緒に! 

 エルフどもは全部コマちゃんが食べちゃったらしいけど、まだヒューマンの信者どもは潜んでるかもしれないからそうしろって言われたらしい。

 コマちゃん! 賢いじゃないかコマちゃん! 

 良いご飯買ってあげるからな! 

 

 とりあえず、心配だから早苗ちゃん達を探しに行きたいな……

 

「……」

 

 離さないように手を繋いで2人で出かけた。

 恥ずかしがっていつもはしてくれないのに、襲撃のせいだ。

 ()()()とは思わない。

 いつも通りを過ごしていられるほうがよっぽど大事なんだから。

 だけど嫌なわけじゃない。

 嬉しい。

 好きな子と手を繋いで堂々と外を歩けるのは幸せだ。

 プレミアム感も関係しているだろう。

 

「姉ちゃん達見つけたら……離すから」

 

「──あー! ヒナタちゃんが手繋いでる!」

 

「っ!」

 

 突き飛ばされた。

 これが親友だった男に対する態度なのか……? 

 親友だった男だからこその態度か……? 

 

 腹が立っちゃったので、三船君と手を繋ぐことにした。

 

「えっ!? ど、どうしたんですか!?」

 

 驚いてたけど、ヒナタと手を繋いでたのに突き飛ばされて辛いって話をしたら受け止めてくれた。

 三船君の手、あったかいナリィ──うっ! 

 シエル……さん……? 

 

「レイトに触らないで」

 

 二度目の突き飛ばし、というか三船君の剣(鞘に入ってる)で腹を突かれた。

 つまり三船君の隣は奪われた。

 かくなる上は……と思ってハシュアーを探したけどどこにもいない。

 アオイちゃんと一緒にいるらしい。

 あの2人、仲良いよな。

 

「おーい」

 

 最初はお姉ちゃんぶってるような印象だったけど、最近はアオイちゃんの方が甘えてるっぽいというか。

 素の心の強さだけで言えばピカイチだもんな、そりゃあ女の子付いてくるよ。

 アオイちゃんだけじゃ済まないんじゃないか? 

 

「おーい」

 

 そういえばハシュアーのタイプってどんな子なんだろう。

 第一に思い付くのはイルファーレ様だけど、イルファーレ像はおっぱいデカくてお尻デカくて腰細い。グラマラスボディってやつだ。

 アオイちゃんは将来性こそあるけど、あの像の体型に合致するかというと──

 

「アキヒロくん……あっ……」

 

 早苗ちゃんが持っていた袋を預かって、空いた手をつかんだ。これでようやく、俺の寂しい手が埋まったな。

 

「──おらっ! 離れろ!」

 

 埋まらなかった。

 やさぐれヤンキーに早苗ちゃんの手を奪われた俺は結局、荷物だけを持って帰ることになった。

 

「楽しそうだね」

 

 テマリさんが自分の意思で外を歩いているのを見るのは初めてだ。

 その手には袋がある。

 持とうかと尋ねると首を横に振った。

 最初に会った時よりもほっそりとした印象だ。

 それでも、外に出られるようになったならココから良くなっていくといいな。

 

 家に戻るとコマちゃんが待っていた。

 アリサや実家も無事らしい。

 ご褒美を寄越せとの事なので、2時間撫でてへそ天にした後、一緒にお風呂に入った。

 伝言を届けてくれるというので、アリサに明日行く旨を伝えてもらった。

 端末とか使えないよね、なんて言ってはいけない。

 コマちゃんはすごいんだ。

 

「へへ……」

 

 ソファーで休んでいたら、早苗ちゃんが抜き足差し足で現れた。

 

「どーん……!」

 

「うわー」

 

 抑え気味の声で乗っかってきた。

 そのまま倒れ込んで背中を撫でる。

 

「んー!」

 

「ヒナタに怒られちゃうから、ちょっとだけな」

 

「んー⤵︎」

 

 背中を何度も摩っていると、ある事に気が付いた。

 以前より、ちょっとだけ身長が大きくなっている。

 間違いない。

 

「そーでしょ」

 

 正直、びっくりした。

 邪神からの呪いが解けたっていう話が本当だとは思わなかった。

 結局、何で呪いが解けたのか未だに聞けていなかったけど……そろそろ本当に知りたくなってきた。

 

「だから言ったじゃん。私もおっきくなってるんだよーって」

 

 だけど、大きくなったとしても早苗ちゃんは学校には通えないし、学校に通えないからちゃんとした会社に入るのは無理だ。

 

「それはもう良いんだって! でもさ……私も色々、体験したいなあ」

 

 それは絶対に冗談にはさせちゃダメだと、そう誓った。

 

「負けないよー、私」

 

 何にかは、教えてくれなかった。




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