【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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59_さーて、探索者始めますか!

 

 父さん達の無事は確かめた。

 だけど、正直なところ何も安心じゃない。

 あれで襲撃が終わりなのか、怪しいところだ。

 探索者も相当な数を刈られている。

 

 コマちゃんなら防げたんじゃないかってアカネは怒っていたけど、無理筋だ。

 常時抱っこをおねだりされる程度には疲れているようだしな。

 あの程度──っていうとコマちゃんに失礼だけど、実際のとノロ数件の襲撃を防ぐのに体力を消費する程度の力しかないんだから全部を防げるわけがない。

 

 ロイスの家にいる時が一番力を発揮できるって本犬も言ってるし、今回のは無理してもらっている。

 仮に人間だったら一ヶ月ぐらい何でもしてあげる程度には頑張ってもらった。

 ちなみにコマちゃんは犬だけど、暫くは甘やかすことに決めたぞ。寝たままウンチしても怒らない。

 

「くぅーん……」

 

「よしよし、何でも好きなことおねだりしていいからな〜」

 

 いつもはアレだけど、こうやって甘えてくるとやっぱり可愛くて仕方ないし態度を茶化す気にもならなかった。

 ヒナタがドン引きしていようとも、コマちゃんはやっぱり愛犬なんだ。

 

 朝は尻尾をパタパタしながら顔の周りを跳ね回るので抱き締めてキスしまくるし、ご飯食べたがってたらすぐにあげた。

 常人だったらノイローゼになるレベルで昼夜問わないけど、俺は探索者なので問題ない。

 

「甘やかし過ぎじゃない?」

 

「ですよねえ」

 

 アリサとミツキはうちに住むことになった。

 そうなると若干手狭な気もしたので、職人にお金をペイッとして広げてもらっている。

 こんな時にという事で近所さんから僻まれてるんだろうけど、こんな時だからこそだ。

 ヒナタと早苗ちゃんはご近所(隣の敷地)だから守りやすいけど、いい加減リスクが大きすぎた。

 それに、ずっと怖かった。

 

「怖がり〜」

 

「びびり〜」

 

 なんとでも言え。

 みんなを守れるならそれでいい。

 危険が明確に迫って、それを放置するほど俺は勇敢じゃないんだから。

 

「おお……」

 

「結構キますね」

 

 ミツキとアリサの荷物は一旦山田家に放り込んでおいた。

 だって改装中なんだもん。

 許して2人とも。

 

「ミツキもアリサも弱っちいからしょーがねーな!」

 

「はぁあん!? テメェ今すぐ理解(わか)らせてやろうか!?」

 

「やってみるか? レベルも大して上がってねえお前じゃ勝てないだろうけどな!」

 

「ヒロさん! いいっすよね!」

 

 良くないわね。

 集まって早々喧嘩は良くないわ。

 コマちゃんも寝てるし……

 

「アキヒロ! コマちゃんと私たちとどっちが大事なんだよ!」

 

 どっちが大事かっつったらアレだけど、そういう問題じゃない。大事なのは──

 

「うるせえ!」

 

 言葉遣いが汚いので2人の自由は没収しました。

 

「なんで私まで!? 私、今コイツみたいに汚いこと言ってませんよ! ヒロさんにも暴言吐いてません!」

 

 喧嘩両成敗です。

 あんまりうるさいと追加のお仕置きが待っています。

 

「つ、追加の……」

 

「お仕置き……?」

 

 そんな期待されるようなことじゃありません。

 具体的には、この本を一言一句書き取っていただきます。

 

「拷問だろ!」

 

「…………反省したから解いてくださ〜い」

 

 2人とも、反省は確実にしてないけど喧嘩する感じじゃないので拘束を解いた。

 ほんでミツキはなんで顔赤いの? 

 

「あ、あんな風に縛られたら……!」

 

 何想像してんだよ。

 ただのお仕置きだって言ってるだろ。

 職人さん達からも呆れた顔で見られてるじゃん。

 なーコマちゃん。

 

「くぅん」

 

 はー、くっさ。

 最高。

 

「ね、これからどうしよっか。もう学生じゃないし」

 

 そういえば悪い話がある。

 大学が消滅した。

 襲撃に巻き込まれてセクターごとなくなったらしい。

 市街部から外れたところで戦ってはいたらしいんだけど、余波で丸ごと。

 学生は亡くなってないけど、先生が数人。

 建物は跡形もないそうだ。

 

 風香ちゃんの無事は確認できている。

 肝を冷やしたよね。

 俺も友達だし、ミツキの親友だから。

 

「今は実家にいるらしいから今度会いに行きたいな! ……その時は一緒に来てくれる?」

 

 もちろん一緒に行く。

 しかし、これで俺もアリサもミツキも大学生から無職の20歳とティーンエイジャーになったってわけだ。

 さて、探索者一本で生きていきますか! 

 

「うれしそー……まあ私も就職する気なかったけど……いひゃいいひゃいごめんなひゃいいい!」

 

 やっぱりか! 

 やっぱりか! 

 半分くらい分かってだけど、やっぱりそうだったか! 

 何やりたいとか聞いても全然言わないからおかしいなーおかしいなーって思ってたんだよ! 

 

「うにににに…………だ、だってアキと一緒にいたかったんだもん!!」

 

 ……ちっ、命拾いしたな。

 

「でも、そんなこと言ったらアリサちゃんだってそーでしょ!」

 

「…………」

 

「ヒロがお金出してるけど! 別に勉強とかどーでもいいんでしょ!」

 

「いや、私は勉強するの結構好きですけど……成果がすぐに出るし」

 

「なっ……」

 

「確かにやりたいことは決まってないけど、先生達の言ってることは聞いたことないことばかりだし……まあ、曖昧な話も多いですけどね! 実地が好きな人ばかりじゃないから」

 

「……! …………!」

 

「でもほら、ミツキさんも授業真面目に聞いてたじゃないですか」

 

「……ま、まあ?」

 

 やっぱり、アリサのあたり柔らかくなってるよな。

 前に第一セクター行った時から露骨に。

 

「おい加賀美さんよ、そろそろできるぞ」

 

「あ、はい」

 

 職人はすごくて、家を建てるのに一週間あれば全部やってくれる。改装なんかだと2日もあれば十分だ。

 地上だと普通に人間なのに、資材を持って動き出した途端に超人になるんだ。

 文字通りの超人だよ。

 いつ見ても鮮やかな手際だ。

 気難しい人間しかいないから、秘訣を聞く事すらできない。

 酷く扱うと二度と相手にしてもらえないらしいしな。

 

「うおー! 私の新しい家だー!」

 

 荷物を放り投げてベッドに飛び込むミツキ。

 寝室1だな。

 

「ここ私の部屋!?」

 

「そうだな」

 

 寝室2はアリサの部屋。

 3が俺だ。

 個室は4まである。

 今回は改装っつーかほぼ建て直しだったな。

 2階とかいらんねん。

 土地余ってんだから横に広くしろ! 

 

「はっ、はっ、はっ」

 

 興奮してベッドの上でぐるぐる回ると、けつを向けてくるコマちゃん。

 ペチペチ叩いたら喜んで違う部屋に飛んでった。

 わーきゃーと聞こえる。

 

「──私、探索者一本で頑張ります! それでヒロさんと一緒に色々したいです!」

 

 アリサは嬉しいことを言ってくれた。

 まあ大学なくなっちゃったからね。

 頑張りましょう。

 

「はい、それに若いままでいられるんですよね!」

 

 確かにそんな話は良く聞く。

 実際のところは俺じゃなくて別の人を参考にしてほしい。あの2人の若々しさを見れば分かる。

 

「わ、私も探索者興味出てきたかもな〜……」

 

「腕ちぎれるかもしれないですけど、やれます?」

 

 言うねえ。

 

「うう……でも、このままだと私だけ老けてくんでしょ?」

 

「ミツキさんも昔のままですけどね……」

 

「…………いや! おばさんになるのやだ! シワとか嫌だ!」

 

 目力的に、やる意思自体は強いらしい。

 じゃあやってもらいますか。

 

 ダンジョンの危険度──魔素濃度は、あの一ヶ月よりも多少は下がったらしい。つまり、アンダーも多少は落ち着いている。二級相当のダンジョンとまでは言えない状態になったらしい。

 他のダンジョンも同じく。

 

「──本当にやるの?」

 

 ナナオさんは冷めた目をしていた。

 誰に向けているかと言えば、受付の前でやる気に満ちた格好のミツキだ。

 

 まあ、そうなるよね……

 

 革の胸当て、小手、膝当て。

 新品で駆け出し感満載。

 しかも、探索者になりたての人間にありがちな無根拠な自信や絶望感もない。

 どう考えても、いるべき場所が間違っていた。

 

「やります!」

 

 本人はこう言っているんで、止める方法はないっすね。

 

「まあ、やるっていうなら止めないけどさあ……ハーレムパーティー作りたいならちょっと遅くない?」

 

 とても人聞きが悪い。

 そもそもミツキとパーティーなんか組むわけないでしょ。

 

「え!?」

 

 若くいたいから探索者やります! でついてこれるほど楽な道を歩んできたとは思っていない。

 レベル30くらいまで上がったら満足でしょ。

 

「簡単に言うけど、レベル30に上がるの全然簡単じゃなかったでしょ? アキヒロくんだって高校2年生くらいから初めて2年弱かかってるんだし……早っ! やっぱ早いよ! おかしいよ!」

 

 俺の感覚だとあれでも遅いくらいだったけど、伸び悩みはなかったな。

 

「一年でレベル10あげるって異常だからね!?」

 

 今更何を言っているんだろうか。

 やれる事をやった結果としてレベルが上がった。

 喜ばしいけど、殊更に異常なことじゃない。

 探索者に身を窶す(なる)層の質が悪いだけだ。

 

「ま、まあそれはあるけど……でも、1人だよ? 1人だったら普通もっと慎重になるでしょ!」

 

 なんなの? 

 この人、なんでいきなりこんな興奮し始めたの? 

 

「そうだよ!」

 

 ミツキも爆発した。

 

「受付さん? は知らないでしょうけど……私、いつもいつも止めてたんですからね! 危ないからやめてって! それなのに全然やめないんです! やりたい事があるからって無視ですよ! にこやかなスルー!」

 

「ちなみに私もたまに止めてた」

 

「──受付さん!」

 

「ナナオって呼んで!」

 

「ミツキです!」

 

 ヒシっ! 

 

 はいはい、そういう感じね。

 いいねー仲良くて。

 そうやって、安全のことばっかり考えてる人たちにはわからないでしょうねえ! 何かを追い求めることが活力をもたらしてくれるって! 

 

「ほら見なよ! 一般的な感覚ってこれだから! はいアキヒロくんの負け〜! 私の勝ち〜! 反論できない〜!」

 

「いい加減負けを認めなよ!」

 

 年貢の納め時とでも言いたいんだろうか。

 レベル50オーバー。

 20歳の人類の中で最強の、この俺に! 

 

「ヒロさん、依頼見繕ってきましたよ〜」

 

 ほら見ろ、アリサを。

 アホなやりとりなんかしないで仕事に徹してくれるぞ。

 最近はこういう優秀な若者が少ないんだ。

 でもアリサ、この子まだ登録すら終わってないから依頼は受けられないかな。

 

「え!? まだやってないんっすか!?」

 

 それな。

 早くやれ。

 




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