【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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63_彼にしか分からないもの

 

 早苗ちゃんが困り笑いを浮かべるのも仕方ない。

 

「ええと……それじゃあ夕飯にしよっか!」

 

 大所帯です。

 俺。

 コマちゃん。

 ミツキ。

 アリサ。

 ヒナタ。

 早苗ちゃん。

 テマリさん。

 計7名。

 多いな? 

 二つに分けた方がいいな? 

 

 とはいえ、全員が揃うのは初めてなので仕方ない。

 落成式みたいなもんだと考えよう。

 

「やや遅ればせながらではありますが、この度は我が家の完成に立ち会っていただきありがとうございます。つきましては──」

 

「長い。早くしろ」

 

「乾杯!!!」

 

 形式としてはビュッフェです。

 家に今メンバーが作ってくれた料理を3つの大皿に乗せて、好きに食べるスタイル。

 ミツキは慣れてるだろう。

 俺も慣れてる。

 テマリさんも多分慣れてる。

 アリサは一番慣れてないな。

 

「こういう食べ方、あんまりしないなあ……」

 

「私もしたことないな」

 

「ふーん……でも実家太いんでしょ?」

 

「あのな、私の金じゃねえんだよ」

 

「偉い人に呼ばれて付いてくみたいな……ミツキさんみたいなの無かったの?」

 

 アリサとヒナタが普通に喋っているのを見ると少々驚きが。

 顔を合わせた途端に髪切りすぎだろだの太っただの媚びたメスの臭いが濃くて敵わんわだの、俺の手に負えない喧嘩ばかりしやがって……大人しくしてりゃなんでもいいか。

 

「テマリさん、私のこと知ってるって本当?」

 

「ええ。パーティーで何度か顔を合わせたことあるのよ」

 

「え、ごめんなさい! いつだろ〜」

 

「一昨年の──」

 

「あ、あれかー! そっか! あれテマリさんだったんだ!」

 

「つまらなさそうにしてたよね」

 

「そりゃつまんないですよ〜、お父さん目当てに来る人ばっかだし……話しかけてくる人もお父さんとの繋がり持とうとしてって人だけだもん」

 

「まあそうだよね。あの頃から彼とは付き合ってたの?」

 

「あー……」

 

 ミツキはテマリさんと旧知の仲だったようだ。

 だから狭いって、世間。

 光輝さんが手広すぎるのか。

 自重してね。

 

「そこのお皿から取ってほしいな」

 

「はい」

 

「もぐもぐ……まさかこんな大きな家にするなんてびっくりしたよー」

 

「土地だけはある世界だからな」

 

「アキヒロ君の世界は土地なかったんだ?」

 

「高くてな」

 

「?」

 

「土地が高いんだよ」

 

「ごくん……ごめん、意味わかってないかも」

 

 この世界では土地は基本的に売買の対象じゃない。空いてるところを勝手に自分のものにする感じだからな。

 そもそも土地なんて勝手にダンジョン化するし、誰も興味ない。

 投機の対象にするような奴が現れたらナナオさんにそれとなく注意しなきゃな。

 

「へー……そっか、土地を売るって考え方もあるんだね」

 

「中心地にお店構えた方がいっぱい人くるだろ? だから真ん中の方が土地も高くなるんだよ」

 

「ふーん」

 

「だから、俺の世界だと……この建物を建てようと思ったら今回の10倍くらいかかるかなあ」

 

「えー!? ……でも払えるんじゃないの?」

 

「うん」

 

「よっ! お金持ち!」

 

「こら〜」

 

「えへへ」

 

 例のイノシシは現在、庭で燻しております。

 ちなみに大きさが大きさなので、火のプロであるハシュアーに任せてる。

 コマちゃんも夕飯の最初の時は家の中にいたけど、乾杯だけしたらさっさと外に出て肉を見続けているみたいだ。

 

「……あの子、1人でいいのかな」

 

 あの子というのは『娘』のことだ。

 今日は山田邸でお留守番。

 あんまり人が多いとまだ慣れなくて具合が悪くなるらしい。

 疲労も溜まっているだろうし、ゆっくりさせてやるのが正解だ。

 

「いいんだよ」

 

「うーん……」

 

 フォークを口に入れながら悩んでいる。

 

「寂しいのが嫌だから来たのにお留守番なんて、ちょっとな〜……」

 

「言ってたじゃん、具合が悪くなるって」

 

「そうなんだけどね」

 

 気になるならあとで見に行こうかな。

 早苗ちゃんと俺と2人で。

 

「一緒に? でもいいの? みんないるけど……」

 

「それくらいは許されるだろ。アイツがいなかったらどうにもならなかったんだし」

 

 そうとも、今は何をしたって許される。

 何せ……彼女がいなかったらあの雲は消せなかったんだから。

 

 

 ──────

 

 

 俺が禍々しさに満ちた雲を見て思い出したのは、『娘』が口にした『王達の一角』という言葉だった。

 その一体があの黄金の竜──『娘』が言うところのおじいさまということは疑いようがない。だけど、他には? 

 あの竜が王の一角なら──

 

「全ての王に会いたい!?」

 

 それが、俺が彼女にまず伝えたことだ。

 

「なんでですか!?」

 

 偶々とはいえ、俺は黄金の竜がどんなもんかをこの目で確認した。控えめに言って光輝さんすら凌ぐ威圧感の持ち主だった。

 アレが王だと言うならば、あの寛容なあり方も含めて確かにそうなのだろう。それはそれとして、争う時は極めて激しく争うようだけど。

 

 だから、あの雲に対しても何かしらのアクションを起こすのではないかと思った。結論ありきというか……あのドラゴンなら何とかできるのだろうという直感がまず来て、じゃあ同格の奴らなら──という。

 2体くらい心当たりあったし。

 あの里を守るためにも、何かするだろう? 

 

「どうなんでしょう」

 

「まあとにかく、もう一度キミのおじいさんに会いたい」

 

「……それって連れて行けって事ですか?」

 

「そういうことだな」

 

「遠いですよ?」

 

 遠いとしても、辛いとしても、全てが失われるよりはよほどマシだ。それに、何もしなければ全て燃え尽きるのだから……賭ける価値はあった。

 その間はコマちゃんに色々任せればいい。

 

「あの方に……まあ、そうなりますよね」

 

「だからお願いだ、俺を連れて行ってくれ」

 

「えーと、それは良いですけど……どうやって行くんですか?」

 

「もちろん、君のドラゴンに乗せてもらう」

 

「え? あの子達に?」

 

「飛んでいく方がずっと早いだろ? それに……2回もあの道をいくのは勘弁だ」

 

 最初行った時は、レベル50を超えて環境に殺されかけるなんて思わなかった。想像が甘かったなんて言わせないぞ。

 アレは異常だ。

 

「……分かりました。その代わり、向こうに着いたら色々覚悟してくださいね」

 

「ああ!」

 

 白のシャインドラゴン。

 黒のナイトドラゴン。

 それぞれがメスオスらしい。

 俺はシャインドラゴンで彼女はナイトドラゴンに跨った。

『娘』曰く、何となくそっちの方がやる気が出ると本人達が言っているらしい。

 そういうもんかね。

 

 ひとっ飛び(3日)。

 連続飛行は、ドラゴンと俺は問題なかったけど『娘』だけは体力が保たなかった。

 だけど下に降りて休んでる暇なんかない。

 俺がナイトドラゴンの背中に移って膝枕で寝てもらうことにした。

 最初は硬いとか言っていたけど、そのうち赤ちゃんみたいに寝てしまった。

 

 現地に着くと──というか、領地内に入った時点で目的の相手が飛んできた。

 挨拶もそこそこに要件を伝えようとしたらガン無視。

 一旦は里に来いって事で連れて行かれた。

 まずは肉を焼け、話はそこからだ──という事っぽかった。

 

 肉と木が積まれている状況を見るに、そう考えるしかない。

 ドラゴン達は空の雲に対して特に何かを感じている様子はなく、俺が見る限りは普通に暮らしていた。不安とかないんか。

 

 焼いて渡して、焼いて渡して、焼いて渡して。

 丸一日24時間やった。

 

 ──仕事をしたということで、俺はその権利を勝ち取ったようだ。仕事と言うには大仰だけど、ドラゴン達は喜んでいたのでいいのだろう。

 

「……よし」

 

 正直なところ緊張していた。

 何か、大きなものに挑もうとしている予感があった。

 

「やるしかない、な」

 

「お供します」

 

「案内は頼む」

 

 兄弟喧嘩によって出来たというクレーター向かうように言われ、『娘』と2人で訪れた俺を待っていたのは──中心で翼を広げ、目を瞑って微動だにせぬ王だった。

 翼を広げている。

 たったそれだけなのに魔素が励起していた。

 そういう力なのか、それとも存在の大きさがそうさせているのかは分からないが、魔素の輝きは一般的な紫ではなく黄金だ。ギンギラで目が疲れる。

 しかも粒子が体にあたるたび、痛みが走った。

 

「飛ばされそう、です……!」

 

 風も強い。

『娘』を巻き添えにして吹き飛ばす気か。

 家族である彼女すらも。

 張り上げなければ、声すら持っていかれる。

 

「──王よ! 黄金の王よ!」

 

『…………』

 

 恥も何もなく。

 

「お尋ねしたい! この世界……いいや! それほど広くはない! この地方を救ってはくれないだろうか!」

 

『…………』

 

「ぐっ……!」

 

 さらに強まった風。

 

 輝きが齎すのは単純な痛みにとどまらない。

 俺の体から、炭酸が弾けるような音が出ている。

 魔素に侵された俺の皮膚が黄金に変質して、黄金が魔素を吸収して赤熱していた。

 放出した魔素に触れた物質を黄金に変える異能──というより、これはもう権能に近いのだろう。

 

 何か、忘れていることを思い出しそうだった。

 ──余計な意識を振り払った。

 今するべきことに集中しろ。

 

 わずかに振り返れば、彼女の体も同じようになっていた。

 顔を顰めているのも見える。

 

「下がってろ!」

 

「……いいえ!」

 

 流石に家族を殺さないだろう──なんていう甘い考えは破棄した。王という存在に深く考えを巡らしたことはない。

 たけど王の役割を考えると、家族だからと甘い采配が許される立場ではない。

 それに野生の獣という側面も持っている。探索者に殺されるのも弱いなら仕方ないという考えを抱いた種族なら……今、弱くて死ぬのも仕方ないとなるはず。

 故に下がるべきだ。

 

「いいから下がれ!」

 

「嫌です!」

 

 理解できなかった。

 今、ここで彼女が命を張ることには何の意味もない。

 ドラゴニアとヒューマン──確かに彼女に関しては近い形だけど、その行先が同じ道とは思えないというのは既に話していた。

 知能の高い彼女には理解できているはずだ。

 

「君には何の関係もない! これは俺たちの……俺の問題だ!」

 

 柄にもなく大声を出した。

 前に向き直り、一歩、また一歩と進む。

 皮膚の変質は進んでいく。

 あくまで表皮にとどまっているのは耐性故か、それとも。

 

「…………!」

 

 口を開くことすら不自由になる黄金の嵐だ。

 遠くからはさぞかし美しく見えることだろう。

 里の民も見ているかもしれない。

 このミダスの如き王は、その全てを守り抜くことができるのだ。

 

 ──視界の一部が黄金に変わり、痛みが襲う。

 

「ぐぅぅ……厚かましい願いだとは、承知している!」

 

 俺のように好き勝手生きているだけでは得られない場所。

 戦いの果てにか、生まれ持ったものを磨き続けてか、そこに至ったのだ。

 そんな彼に頼むことは失礼でしかない。

 自分にできないからと都合よく利用しようとしているだけだ。

 

 それでも、俺がしなきゃいけないことだ。

 他の誰でもない俺だからこそ。

 

「っ……猿の分際で、とも理解している!」

 

 今ある世界は繋いでもらったものだ。

 見たかったものが全部無くなっても既視感を覚えていられる理由は、それに他ならない。

 全ては未来のため、子供達のため。

 未来よ良くあってくれと願いを紡いだんだ。

 

 だから、あの……先史文明の上に胡座をかいているだけのハナタレどもを──

 

「救ってやってくれ!」

 

 一生懸命に生きようとしている彼らを──

 

「見捨てないでやってくれ!」

 

 全身が焼けるように熱い。

 実際焼けているのだろう。

 それでも、彼らよりはマシだ。

 

「お願いだ!」

 

 こんな過酷な世界に生まれ落ちて、何も分からぬままなのにエルフに侵略されて、ただ恐怖に飲み込まれて死んでいく。

 そんなの、あまりにも哀れじゃないか。

 

 ──肌が剥がれ落ち、地面に跳ねてカランカランと音を立てる。

 

『…………』

 

 竜は答えない。

 故に、全てをかなぐり捨てて吠えた。

 

「何を願う! 何をすればいい! どうすれば満足だ!」

 

『──』

 

 俺の問いに答えるように、竜は目を細く開けた。

 

「教えてくれ!」

 

 重く、岩を砕くような音を立てながら顎門が開く。

 意思を持って動き始めたからか、さらに勢いを増す嵐の中。

 必死にならずとも声は聞こえた。

 

『──力を』

 

「なんだ!」

 

『力を……示せ……』

 

「……力」

 

『猿の鳴き声などに……意味は無いのだから』

 

 黄金に置き換わった手のひらでナイフを握りしめる。

 皮が砕け、手のひらは剥き身になった。

 すぐに薄皮が膜を張り、また黄金に変わっていく。

 その繰り返しだ。

 

 関係ない。

 いつものように薄刃を。

 いつものように魔剣を。

 黒い炎を──

 

「──私も戦います」

 

「…………はあ!?」

 

 バカ娘が付いてきていた。

 さっきの話が聞こえていなかったのか。

 魔素の暴風が吹き荒れる中で、今から始まる事がどんなことか分かっていないとは言わせない。

 

「何考えてるんだ! 死ぬぞ!」

 

「話を聞いてください! これは別に貴方のためじゃありません!」

 

「……じゃあ……何のためだ?」

 

「私は覚悟を決めたんです。外の世界に飛び出て色々なものを見るって! ──でも……それはこのままじゃ無くなっちゃうんですよね?」

 

「…………ああ」

 

「それなら戦います。私が見るべき世界を守る為にも」

 

 空いた口が塞がらなかった。

 勝算は余りにも薄い。

 しかし自分の意思で、自分自身のためにやると言うならば──

 

「囮くらいにはなってくれよ!」

 

「はい!」

 




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