【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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「もう帰るんだ?」

 

 目的は果たした。

 帰るのみ。

 長居はトラブルの元だ。

 

「なんだい。まさか恩人に冷たくするような大人になっちまったのか? あの子は」

 

 そうじゃない。恩人だと思ってもらえているうちに引くのが関係を長引かせるコツだ。

 それに、ただでさえ女の子の実家に泊まるなんて事で酷い目で見られてるってのに……これ以上何かしてみろ。もう取り返しがつかない。

 

「ふん、賢しらぶって……そういえばアンタ、やっぱり普通じゃないんだね」

 

 やっぱりが分からないし、普通じゃないも分からない。

 何をもって、誰から聞いた? 

 まあ風香ちゃんしかありえないけど。

 

「そうじゃなくて……本当に20の若造だったとは思わなかったよ。てっきり妖怪かとばかり」

 

 妖怪が何であんな所に行くんだろう。

 流石にもうちょっと人がいそうな所に行くんじゃなかろうか。雪女であるソフィアのお母さんだって、それでお父さんと出会ったんだろうし。

 ──待て、妖怪? 

 

「こんなカマに引っかかるとは思わなかったけどね」

 

 あら。

 

「あんた……何者なんだい?」

 

 そうか。

『妖怪』は失われていたんだったか。

 久しぶりに聞いたな。

 兼ねてより失われた言葉を、まさか俺以外の人間が自発的に操るとは思ってもみなかった。

 

「お母さんが言ってたよ、世界から色々なものが消えたって。命だけじゃない。本当に多くのものが……言葉や、技術や、文明・文化の積み重ねが丸ごと消えたんだって」

 

 わかりきったことを真剣な顔で呟くこの子は実際のところ理解できていないのだろう。その多さというのがどれだけの重みを持っているか。

 まあ、想像にも限界はある。

 口伝はもっと狭い。

 狭い×狭いで、かなり限られているだろう知識をよくかき集めたな。褒めて遣わす。

 

「あんたも私と同じなのかい?」

 

 俺の生まれ育った村は第一期の歴史をみんなで復元しようという人々が集まっていた。生き残った屈強な軍人たちの末裔だから体も強いし、近くには図書館や博物館が地中に埋もれた状態で当時は残っていた。最後に生まれた俺はその知識を伝えてもらったけど、村は滅んだ。

 モンスターに襲われたわけじゃない。膨大な知識や、熱い思いを持った人間たちの集積がイデアをかき乱し、ダンジョン化すら超えた災害によって消滅した。

 父さんや母さんは、そんな俺を拾ってくれた命の恩人だ。血の繋がりはない。

 

 ──というのはどうだろう。

 

「……軽々しく聞いて悪かったね」

 

 悪いことをしたとは思わない。

 嘘も方便だ。

 誰彼構わず俺のこと話してたらそのうち実験台の上だからな。

 ……そう考えると壮大に作り話しすぎたかも。

 

 でも俺の人生のほうが壮大だから、相対的にしょぼい話ではあるという。

 

「まあ、ソレなら納得だよ。色々詳しいのもね」

 

 信じてもらえて嬉しい。

 俺の身近な人たちは俺の話をちゃんと聞いてくれないからな。

 割と真摯に話してるのに。

 

「大変だっただろうね……」

 

 そんな抱きしめられても微妙な気持ちになるだけだ。

 肉体はともかく、ババアがジジイをって……気持ちは嬉しいんですけれどもね? 

 

「──風香! 何見てるんだい!」

 

「あっ……」

 

 気づいてたけどさ。

 そりゃ、アンタが気付いて俺が気付かないわけないけども。

 普通にスルーしてもらって、何でもない風にこれからも接してもらうんじゃダメだったんですかね。

 可哀想な生まれなんだ……って思われてるんだろうなあって考えながら話したくないよ。

 

「若いの2人で話しな」

 

 余計な気をまわされた。

 小娘に、小娘と話すために気を回された。

 

「あ、あの……聞くつもりなかったんだけど……呼びにきたら聞いちゃって……ごめんなさい…………」

 

 あんな話を聞かれたところで、俺の創作能力の無さが露呈するだけなので若干気まずいとしかならない。

 でも風香ちゃん的にはそうじゃなかった。

 

「私……明宏くんのことちゃんと知らなかったんだね」

 

 友達だからって何でも知ってなきゃいけないわけじゃないし、人のことなんか気にする前に自分の身の安全を確保してください。いきなりおばあちゃんの家に行くとか言い出さないこと。

 あと、俺のこともあんまり気にしないで良い……とは言わないけど、あんまり深く捉えないで欲しい。

 友達からのお願いです。

 

「そ、そんなわけにいかないよ……ひいおばあちゃんの事、助けてもらったし……それに、私が知りたいんだもん……」

 

 ここから自己開示(真)をするのはちょっとハードルが高いので、是非ともさっきの自己開示(偽)で我慢して欲しい。

 

「ミツキちゃんからの話だけじゃなくて、もっと知りたいの。ダメ……かなぁ……?」

 

 そう言われると弱い。

 でも、また今度にしよう。

 まるで親友の彼氏にアタックしているみたいなシチュエーションだ。

 

「ええっ!? そ、そんなつもりないよぉ〜!」

 

 だからこそ、今度にするべきじゃなかろうか。

 お互いのためにも。

 

「ううん……わかった〜……でも、アキヒロ君ともっと仲良くなりたいのは本当だよ?」

 

 おお〜。

 

「な、なに?」

 

 魔性の女だね^^b

 

「え〜!?」

 

 

 ──────

 

 

「捕まえろ!」

 

「縄でぐるぐるだ!」

 

「コマちゃん巻き付いて!」

 

 帰ればこうなるのは目に見えていた。

 3人の声はスルーして鈴子さん連れて行ったからな。

 

「お前何回目だよ!」

 

 浮気してないにも関わらず簀巻きにされるのも何回目だよ。

 

「ていっ!」

 

 ミツキ! 人の顔面は引っ叩くものじゃない! 

 

「…………」

 

 アリサ! 縄に紛れて尻尾でくすぐるな! 

 ええい! 離せ! 

 

「風香とナニしたの!」

 

 風香ちゃんのひいおばあちゃんを風香ちゃんの実家に連れて行ったんだよ。

 

「あの女の子は誰!」

 

 風香ちゃんのひいおばあちゃん。

 

「の!?」

 

 の、じゃなくてひいおばあちゃん。

 

「そんなわけないでしょ!」

 

 しかし、ここに若作りのジジイがいるわけだが。

 

「……ごにょごにょ」

 

「ごにょ?」

 

「ごにょごにょごにょごにょ!」

 

 そういえば! みたいな顔をして3人で秘密話を始めた。

 その背中に声をかける。

 

「説明しないで、みんなを無視して行ってごめんなさい。次からは気をつけます」

 

 頭を下げると、頭上で動きが。

 ガタガタ動いてる。

 椅子? 

 

「…………ごにょごにょごにょごにょ!!」

 

「ごにょにょにょ!?」

 

「ごにょにょごにょごにょ!!」

 

 待つこと10分。

 3人が立ち並ぶ気配があった。

 

「許しません」

 

「許したら調子乗るだろお前」

 

「というわけで──」

 

 デン! (ソファーに座らされて挟まれるの図)

 幸せだが、これが何だろうか。

 

「今日から暫く、1人部屋でいるの禁止〜」

 

 どういう罰かわからない。

 

「今日はミツキ。明日は私、明後日はアリサの部屋で寝てもらうからな」

 

 ますますよくわからない。

 いるの禁止から寝るの禁止になった? 

 コマちゃん、分かるか? 

 あれコマちゃんは? 

 コマちゃんいなくない? 

 

「コマちゃんには暫く別のところに行ってもらいます」

 

 暫くとは。

 

「一ヶ月くらいかな」

 

 ながぁい。

 

「自分がどれだけ家を空けてるか自覚した上でそのセリフなんですよね?」

 

 みじかぁい。

 

「とにかく、家から出るのも誰か1人はついてないとダメっすからね」

 

 とんでもない制約が課された。

 流石にサポセンへ抗議の電話を申し入れようかと思ったけど、そもそもサポートセンターが目の前に全揃いしてる上にめんどくさいのは俺じゃなかった。

 ミツキとアリサはなんだかんだで探索者続けてるし、ヒナタもそろそろ道場設立に向けて動き出したいみたいなこと言ってた記憶がある。

 それで俺にばっかり時間取らせるのは申し訳ないというか……

 

「そういうのいーから」

 

 2人がダンジョンに行く時は目を離せない。周りの探索者には嫌な顔されてるけど、よく考えたら俺が良い顔されたことがなかったからそれはいい。

 アリサのレベルが16、ミツキが12でまだショボショボとはいえ意外と2人はパーティーとして合っていた。

 

 ミツキはモンスターにビビって近付けないけど遠くからアイテムを投げたりするのはできる。

 アリサは近くをうろちょろするのはできるけど遠距離攻撃がない。

 じゃあそういうことだな! 

 

「アキ、まだ自由に外出できるとか思ってたの?」

 

 軟禁ってこと? 

 

「好きにやらせたらどっか勝手に行って手に負えないからだよ」

 

 えー……

 

「ちなみに約束破ったら泣きますからね。ワンワン泣きますから。商工会の前で」

 

 うーん、何がなんでも言うことを聞かせるという意志を感じる……しかし俺にはやることが色々と……まあ、一ヶ月ならいいか。

 

 ちなみに2人がダンジョンに行く時は俺もついて行っていいんだよな? 流石にまだ2人だけで行って良いって言えるレベルじゃない。

 

「そこは……お願いします」

 

「私たちも、まだ2人だけだと無理っす」

 

 っす。

 

「ホント過保護だよな」

 

 そんなこと言われても……そもそもガバガバ過ぎるだけど。スキューバダイビングとか程度だってガチガチに基準決めてやるものなのに。

 ところで、道場作るってことは一回お母さんたち呼ぶのか? 

 

「いや、生徒さんたち呼ぶ」

 

 どういうこと? 

 

「母さん、流石にまだ体力戻ってないからな」

 

 久しぶりに挨拶したかったのに。

 

「……いや、来てはもらうぞ? 宣伝のための演舞の話だよ」

 

 あーね。

 

「はい」

 

「というわけで」

 

「お風呂入りましょうね〜」

 

 お、俺はおじいちゃんじゃない! 

 要介護認定はまだだ! 

 そんな言い方するんじゃねえ! 

 

「お服脱ぎましょうね〜」

 




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