【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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72_変化

「いやあ……なんか、変わったよね」

 

 俺のどこかが変わっただろうか。

 自覚は、ない。

 ここ1、2年の中で大きく変わったことがあるとすれば、レベルだ。

 

 ──だよな? 

 

「ううん、キミは何も変わってない」

 

 大外れのようだ。

 では、なんだというのか。

 

「簡単だよ。あきひろ君、キミの周りが変わったんだ」

 

 大袈裟だ。

 

「正直、私がここに入ったのとキミが探索者になったのはあんまり時間的な差はなかったよね。だから……探索者としてのキミを一番長く見てきたのは私だって自信がある」

 

 そうかもしれない。

 

「正直、キミがもうちょっと優しければもっと早く仲良くなれたからね?」

 

 そんなことはない。

 ダル絡みしてくる職場の相手に対しては随分と優しい対応だった。

 

「源田さんのほうが態度酷かったのに……」

 

 源さんは酒さえ飲ませときゃ無害だし、男だから。女の人とは話が違うよね。

 

「差別だよね、それ」

 

 相手で対応を変えてるだけだ。

 ディーンと源さん以外はもっと碌でもないのばっかりだし、ナナオさんもすぐやめるんだろうなあとか思ってたしな。そこまで酷かったかと言われると、首を傾げざるを得ない。

 

「キミは平熱だよね、いつも。特に私たち商工会に対してはそうだった」

 

 確かに、商工会と深く関わり出したのは最近の話だ。商工会というか……ナナオさん? きっかけは三船君だった。

 つまり、俺の周りの環境が()()()()んじゃなくてナナオさん自身が()()()ってことだ。

 

「そうかもね……でも、それはキッカケでしかなくてさ。やっぱり変わったのはアキヒロ君自身の力なんだよ」

 

 そんなに褒めても何も出ないけど、どうしたんだろう。

 

「こうやって3人を見てるとさ……思うの」

 

 とてもアンニュイだ。

 アンニュイな表情だ。

 ミツキとアリサと依頼を受けるために受付に来ただけなのに、彼女はそんな表情で仕事を放棄していた。

 

「ねえナナオさーん、早く仕事させてくださいよー」

 

 長蛇の列ができている。

 その先頭にいるのが俺たちとなれば、さらに悪様に言われる可能性だったあるというのに。

 

「……良いよねアリサちゃんはさ」

 

「え?」

 

「私なんか毎日毎日家とここを行ったり来たりで友達なんかできやしない。仲良くなったと思った子はすぐ死んじゃうし、まともな男なんかこんなところにいるわけないし──」

 

「…………?」

 

「アリサちゃんは何だっけ? お腹が空いてたら顔を殴られて病院だっけ?」

 

 徐に取り出した袋を開けて、口を当てる。

 

『こんな事なら意地なんか張らなきゃよかったあああああ…………!』

 

「わあ」

 

 そりゃなるよ。

 わあ、に。

 

『お母さんが言ってたんだもん! 待ってれば白馬の王子様が現れるよって! でも、待っても待っても現れないの! 私の王子様はどこ!? やってきたのは侵略者だけ! バカ! もうヤダ! お家帰る!』

 

 どうしたいのだろう。

 

「もう仕事するっ!」

 

 俺たちは割と最近見つかった自然ダンジョンに来た。

 新しい、すなわち雑魚ダンジョンだ。

 人間は意外と抜け目ないので、高レベルダンジョンが新しく見つかると言うのは少ない。魔素の蓄積でレベルが上がるんだから当然とも言える。

 

 では、どんな場所で新しいダンジョンが見つかるか。

 大まかに二つある。

 

 一つは自然発生型。

 自然的な要因で魔素が溜まってダンジョンになるものだ。

 山頂や谷、湖、隕石のクレーターなんかが多いぞ。

 二つ目は人工発生型。

 人間的な要因で魔素が溜まってダンジョンになるものだ。

 人が生まれすぎた村や農業を盛んにしている街、工場、倉庫、巨大な建物、人気のスポットなんかがなりやすい。

 

 前者は防ぎようがないけど、後者は対策ができる。

 前者は基本的には大したダンジョンにならないけど、後者はその場所の特徴に影響されてエグいのができやすい。

 前者は見つけ辛くて、後者は街中に現れるので見つけるもクソもない。

 

 お魚沢山のマスダンジョンや第一セクターの輝ける谷は自然発生型の典型で、腐り果てた村やスカイレイピアは人工発生型に該当する。

 

 今回は自然発生型だ。

 というか、最近は人工発生型といえばアンダー系というくらいに人工発生型の出現は少ない。

 以前、アリサと調査した倉庫のダンジョンだって久しぶりだったから内心大急ぎで取った。

 

「えっと……これを取れば良いの?」

 

 採取依頼だ。

 近くにある火山麓に来て、火薬の素を採りに来ている。

 何かといえば足元にある黄色いキノコだ。

 硫黄を吸収して育っているので採っても採っても消えることがない。どれくらい消えないかというと……朝採って、次の日見たらもうちっちゃいのが生えてる。

 放っておくと、遠くに見えるクソでか聳え立ちキノコみたいになってしまう。

 

「ヒロさんって……こんなのもやってたんですか?」

 

 こんなのとは何だ。

 依頼には貴賎がない。

 言っておくけど、これは楽な依頼じゃないぞ。

 

「え?」

 

 さっきも言ったけど、火薬になるから強い刺激を加えると──

 

「ひゃあああ!」

 

 こういうことになる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「うう……」

 

 手のひらに、割と洒落にならない火傷をしていた。

 手首から腕にかけてや顔にも火傷がある。

 キノコを強く握りしめでもしたのだろう。

 回復薬があってよかった。

 

「うぅぅ〜〜!」

 

 治る時は激しい痛みがつきものなのが回復薬だ。

 普通、痛い時は手で何とか逃がそうとするものだけど、その手が痛いから辛そうだったので肩に噛みついてもらった。

 

「バカァ……いたいぃ……もうやだぁ……」

 

 水膨れが治ると、息も絶え絶えで悪態をつき始めた。

 自分の不注意が悪いのに。

 

「昔は回復薬なんて使わないって言ってたくせにぃ……」

 

「ミツキさん、あっちにキノコいっぱいありますよ」

 

 アリサはもうスルーモードになった。

 大抵はこんな感じか。

 三船君の感じとは違うヘニャチョコ加減だから、飽きはないな。去年まではアリサも戦えません! ってスタンスだったのに強くなったもんだ。

 やっぱ慣れが全てを解決してくれるよな。

 

「アリサちゃんおんぶして……」

 

「バカなこと言ってないで、早く」

 

「うう……」

 

 俺がいない時はもうちょっとシャキシャキ動いてるってアリサから言われたので、ここは優しくするところじゃない。というか、突き放す。

 

「早よいけ」

 

 若くなりたいからとかいう理由でも、今まで頑張っているのだからこれからも頑張れ。

 そうすれば死ににくくなって長い間いられるからな。

 

「胞子を飛ばさないように……力を込めすぎないように……」

 

 軸を切ると白い液体が滲み出る。

 胞子を多く飛ばしてしまうと、それと反応して激しい燃焼反応が起きる。当然キノコはダメになってしまう。

 大きな衝撃を与えるのが一番ダメだな。

 

 そして、変なキノコが生える場所には変な生き物がつきものだ。キノコを食べる動物といえば豚。

 爆発性の涎を垂らす豚がいる。

 実際のところ、野生なので猪ではあるか。

 体液が基本的に爆発性を有しているので食べられない。

 血抜きすれば爆発しないかと思いきや、ここら辺には川がない。地面に垂らすしかなく、そうすると地面の好物と反応して爆発を起こす。

 仮に崖上で吊るして血抜きを終えたとしても、調理するために焼いたら爆発する。

 

『ふごっ! ふごっ!』

 

 食べられないし強くもないけど、縄張り意識が強い。

 頑張れ2人とも。

 

「ミツキさん! ボケっとしてないで!」

 

「あ、えっと……」

 

 アリサはすでに剣を構えている。

 やっぱりね、スタンダードなのが一番使いやすいんですよ。

 槍なんか刺さったら終わりだし、人間じゃないから刺さっても死なない。鍔迫り合いなんてしないから、取り回しのいい武器──刃が短くてもやれる。

 

 ナイフ、実際オススメなんだけど汚いものを見る目をされるだけだ。近付くのが怖いし危ないのは分かるけど、10cmも5mも変わらんのにね。

 目さえ潰せば。

 

「アリサちゃん! くるよ!」

 

「だからそういうのいいって!」

 

 ミツキは、いかにも! なやり取りが好きだ。

 多分今のは任せて! とか言って欲しかったんだろうな。

 遅めの厨二病なのは仕方ないけど、ちゃんとアイテムは選んでいる。水爆弾だ。

 水棲なんだけど、大気にさらされると大気中の水分を吸い取って腹が水でパンパンになる虫がいる。

 それを容器に詰めてあるものだ。

 

「えい!」

 

『フゴオッ!?』

 

 水をぶっかけられた猪は驚いてタタラを踏んだ。

 

『ブヒッ! ブヒッ!』

 

 跳ね回って水を振り払おうとしている、その隙を狙ってアリサは駆け込んだ。足目掛けて一度、切り付けると赤い線が一本走る。

 切り落とすには至らないまでも、出血は得られた。

 攻撃が通るならば遠からず倒せる。

 ガムシャラな頭突きに一回引っ掛けられたものの、体勢を立て直す為の援護投石をミツキが行った事で大きな問題はなく倒すことができた。

 

『ピギッ』

 

 最後に心臓をひと突きされて失われる眼の光。

 アリサは座り、引き抜いた剣に纏わり付いた血脂を拭き取りはじめた。ミツキは手持ち無沙汰にアリサの周りを彷徨いている。

 

「ウロウロされるとウザいんでやめてください」

 

「あ……はい……」

 

 今度はアリサの様子をジッと観察し始めた。

 しかしアリサは鬱陶しそうにしている。

 

「私を見るんじゃなくて周り見て!」

 

「は、はいっ」

 

「血の匂いに釣られてワームとかコウモリがやってくるかもしれないんだから!」

 

「はい!」

 

 ……変わったなあ、俺の周り。

 

「よし、取れた! …………ミツキさん?!」

 

 作業を終えたアリサは、辺りを見回して度肝を抜かしていた。分かるよ、俺も不安すぎて付いて行こうか迷ったし。

 なるべく口出ししないようにしてるし、モンスターの気配もないから一旦放っておいたけど、回復薬は取り出してあるしやらかしそうになったら飛び出そうと思っていた。

 

「なんでキノコの中にいるんですか!?」

 

「え? ──ほら、あれ! 黒いキノコって高いんでしょ!」

 

「〜〜〜そ、そこ! 危ないから出てきてください!」

 

 一部始終を見ていたから分かる。

 アリサの言う通りに周りを見ていたミツキは、猪が暴れて崩れた壁──板状の硫黄の塊の向こう側にキノコが群生しているのを見つけた。

 お目々キラッキラで一直線に近づいてたからな。

 危ないからいかないほうがいいよね……でも、ここで高いの獲ったら挽回できる! 行くしかない! ──と思っているのが表情に全部出ていた。

 

「ミツキさん……怒った私も悪かったですけど、離れる時は一言ください」

 

「い、痛いよアリサちゃん……」

 

「いいですか? 離れる時は、一言ください」

 

「はい……」

 

 ダンジョンは常に緊張感を持って挑まないといけないけど、度がすぎると訳のわからない行動を取ってしまうことがある。

 ミツキは流石にまだ初心者気分が抜けてないので暴走しがちで、アリサはその度にほっぺたを抑えて絶叫を堪えている。

 

 そういう暴走を自分でしたことはないけど、以前は低レベル探索者からパーティー合併を持ちかけられていたから良く見たから分かっていた。

 

「──まあ、実際よくやってるよ。アリサは」

 

「疲れちゃうんすよアレで……」

 

 しかし、なんだかんだで面倒を見ている辺り優しい。

 

「私だって前はあんな感じだった自覚あるんで……」

 

 他の探索者とも意外と出会う。

 黄色いキノコを採っているのは低レベルがほとんどで、ちょっとやれそうなのは奥に進んでいく。

 黒いキノコが目当てだな。

 

「…………」

 

「行きませんよ? 絶対」

 

「でも、あそこら辺のキノコなら……」

 

「だーめ! 絶対!」

 

 ミツキが指さしたのは、手付かずにされている黒キノコだ。黄色キノコが黒くなりかけているやつとかも混じっている毛玉──境目のキノコが一番危ない。安定性に欠けていてすぐ爆発するから。

 

「大人しく帰りますよ!」

 

「あー」

 

 なんとか、無事に帰れるみたいだ。

 魔石も一つゲットした訳だし十分だな。

 

 




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