【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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75_第二階層

 

 

「起きたな。じゃあ飯だけ食べてから移動開始するぞ」

 

「ああ」

 

 ヒナミ→シオリ→ケイ→ディーンの順番で火の番をやらせた。

 ディーンが、男なんだから最初でいいよとか言ってたけどとんでもない。リーダーが一番頭使うんだから一番休まなきゃいけないに決まってるじゃん? むしろ他のメンバーは率先してディーンを休ませるように仕向けろ。

 男とか女とかは持ち込まないでください。

 

「あんまり眠れなかったかも……」

 

 恐怖とか床の硬さとか振動とか色々な要因はあるだろうけど全て、ダンジョンなんだから仕方ない。眠ったという事実をもって満足しろ。

 そもそも初心者じゃないんだから。

 

「第二階に来ると最初の頃みたいな新鮮な気持ちになるんだよね……嫌な意味で」

 

 シンプルに表すと怖いということだろう。

 そんな第二階層がどんな場所かを、博物館の先導員のような気持ちで説明する。

 

「この壁が第二階層の証だな。寝る前から見てたし、もう何回か見てるとは思うけど」

 

「ああ」

 

「魔素を多く溜め込んでいるから色が変わっているわけだな。もっと奥に行けばさらに濃い紫になっていく」

 

 持ち帰って魔素濃度を分析したことがあるから、これは間違いない。まあ、発色との関連性は微妙なところだけど……結果的に色が変わっているのはそうだしな。

 

「のわっ!?」

 

 まず現れたのは痕跡だった。

 俺は避けたけど、上を見ていたディーンが踏ん付けてコケかけた。

 

「こんな感じで何かに集中しすぎると別方向からの何かにやられることもあるので気をつけてくれ」

 

「教えてくれりゃいいじゃん」

 

 この粘液に関しては危ないモノじゃないことが見た時点でわかっていたので特に何も言わなかった。触れた瞬間に金属をボロボロにするようなモノだったら俺も注意していた。

 というか、注意は自分でしてくださいね^^

 

「これなんのネチョネチョ?」

 

「ナメクジ系じゃない?」

 

「…………あれじゃない? ムカデが変異したとか」

 

「あー……」

 

 残念ながら全部ハズレだ。

 正解はトカゲ系モンスターのハラバシリ。

 前足がなくて、分泌した粘液で地面を滑っていく。

 

「なにそれ弱そう」

 

 ちなみにハラバシリはドラゴンになることが確認されている。翼を生やし、立ち上がって動く。

 別のセクターでの話なので、洞窟内でどんな形になるかは分からない。

 

「えー……じゃあ強いってこと?」

 

「ドラゴンモドキも死にかけたのに……」

 

「前回はいなかったよね?」

 

 いなかった。

 ちなみに二足の状態でも弱くはない。

 火を噴くし、文字通り滑って突っ込んでくるから普通の感覚で見てるといつの間にか目の前に来てる。

 

「粘液は先に続いてる……このまま進んだらかち合うか?」

 

「推奨レベルって?」

 

 30。

 

「つ、強い……」

 

「脚2本なのにそんなに強いの?」

 

 自分たちの脚の本数を数え直して欲しい。

 そんなモノで強さを測ろうだなんて、適当もいいところだ。

 ディーンの言う通り、このまま進めばぶつかることにはなるだろうけど正面からじゃない。

 背中を見つける可能性が高いな。

 下手すれば、それをブッ刺せるかも? 

 

「そもそも、私たちの武器が通るかすら分からないのに進んでいいわけ?」

 

「俺が第二階層に進んだときは行くかどうかは割と慎重に決めてたけど、行く時は全部殺してたぞ」

 

「狂ってるじゃん」

 

 速力──つまり単純な移動速度と地形踏破能力、そしてスタミナはモンスターに勝てないことが多い。

 だけど敏捷性──小回りな動きや小手先の技術であれば絶対に負けない。というか負けない気持ちでやらないといけない。

 それでもレイスには全く敵わなくて首根っこ掴まれたけど、生きてるから万事よしだ。

 

「いいなー……私もレイスの鎧欲しいけど、どうやって手に入れたんだっけ?」

 

 その話好きだよねキミ。

 もういいでしょ。

 

「だってなんか飲まされたんでしょー? 私ねー、そのせいで異能が手に入らなくなっちゃったんじゃないかなーって睨んでるわけ」

 

 そんなわけない! 

 リヴァイアサンみたいな神様クラスでもない一モンスター如きがそんなことできるわけない! 

 

「でも、じゃあなんでレベル50になっても異能ないの?」

 

 それはだから、俺が本当の意味で追い詰められてないからだしょ。ヒナミだって盾の異能を手に入れたのはそういう時だろ? 

 

「だしょって……まあ確かにそうだけど、何のきっかけも無しにそういうことにはならないんじゃない?」

 

「2人とも無駄話いつまでもしてんなよ。足音も聞こえねーし、抑えてくれ」

 

 粘液を辿るだけなので実はそこまで難しい道のりじゃない。

 第二階層に入ると複雑な洞窟や地形が広がっているから、いつもならこっち進んで今度はこっち曲がってというのを覚えておかないと迷子になって永久に出られなくなる。

 今も、広い空間がどこまでも続く──それこそドワーフの王国のような場所に出ている。

 キノコやら草やら結晶やら、視界を邪魔するものがなければざっと先まで見えるだろう。

 

 今は大丈夫だから話していただけだ。

 

「いいけど邪魔すんなっつーの」

 

 力の抜きところも覚えて欲しいけど、確かに邪魔か。

 反省反省。

 つい話すのが楽しくなってしまった。

 

「結構おしゃべりだよな」

 

「そりゃあ話すのは楽しいからな。いろんな人の意見が聞けるし…………情報交換の基本だろ?」

 

「1人でやってるくせになんか言ってら」

 

「方向の合わない人と一緒にやっても真の意味でチームとして機能することはないよ。殊更に、特殊な目的を纏っている場合はね」

 

「でもほら……人に付いてくることってあるだろ?」

 

「うん」

 

「いないのか? そういうやつ」

 

「さあ」

 

「さあって……」

 

「まあ、なんにせよ──準備しなきゃな」

 

 ここはダンジョンだ。

 井戸端じゃない。

 何をしてても、備えは必要だ。

 

「──音だ!」

 

「下!?」

 

「……出てくるぞ!」

 

「みんな! 隠れ……られる場所はないよね……」

 

 アンダーは厄介だ。

 隠れる場所が極端に少ないゆえに、三船君のように腕をなくしたまま彷徨わないといけなかったりする。

 だからこそ鍛えるにはちょうどいい。

 1人で、あるいはコマちゃんと敵と堂々と対峙する。

 剛腕をいなし、降り注ぐ攻撃の雨を潜り抜け、敵の前に到達する事の繰り返し。

 皮膚を削がれ、肉を抉られ、骨を擦られることのなんと痛みに満ちたことか。そして、それすらも超える昂りに身を任せてナイフを振るう。

 そうやって俺は生きてきた。

 

「こ、こいつは……!?」

 

「これが……ハラバシリ……?」

 

「違う! 二足じゃない! というか……コイツの、この……特徴は……!」

 

「お前ら! 見てる場合じゃない!」

 

 コマちゃんは頼れる相棒で、なんでもできるペットだ。それこそ、俺よりもずっと多くのことを。

 だからこそ、戦いでこそ──俺が前を張る必要があった。

 分業は楽だけど、世の中そんな甘くないからな。

 

「──4人とも、後ろに下がってろ」

 

 まだ4人で相手取るには早いようなモンスターだ。

 俺が出るしかない。

 その為にやって来たまであるのだから、寧ろ良いことだ。

 俺がいる時に出て来てくれたってことは……セイバートゥースが次に来る時はお前、いないだろ? 

 

「離れたほうがいいか!?」

 

「いや? そこに隠れてていいよ」

 

「え?」

 

「ただ、見て学んでくれ」

 

「学ぶって……」

 

「コイツがどんなモンスターで、どうやって戦うのかをな」

 

 

 ──────

 

 

「学ぶって……何を学びゃあいいんだよ……」

 

 呆然と呟くディーンの目に映るのは、先導者たる男の動き。

 先ほどから、レベル50にしてはゆっくりとした動きだった。

 わざとなのだろう。

 ハラバシリを咥えた状態で出て来たモンスターは頭部に巨大な骸骨を身に付けていた。

 何かの亡骸から拝借したのか。

 背中には多くの骨がへばりついている。

 黒いタールのようなものが接着剤となっているようだ。

 通常のモンスターと同じく四脚ながら、尾は無い。

 

 モンスターの周囲を漂う赤い球は一見してフワフワと意思なくそこにあるだけのように見えるが、実際は凶悪なものだった。

 男を狙って放たれたそれは、当然のように躱されると地面に衝突して爆発を引き起こす。

 

「うわああ!?」

 

 その球が爆発するだけで、空間全体が鳴動する。

 広いと言っても閉鎖的なここでは、音が何度も跳ね返って重なり増大する。

 腹の底まで響く威力を4人よりも余程近い位置で受けている筈の男はしかし、ピンピンとしていた。

 ごつごつとして突き出た岩も多いので、そこに身を隠したようだ。

 

「む、無茶な……」

 

 爆煙があるうち、石ころが未だ赤熱しているうちに男は駆け出した。その音を見逃すモンスターではなく、足踏みを開始する。

 単純な質量と、鋭い鉤爪。

 探索者にとっても十分な脅威だ。

 一時見えなくなった男だが、巻き起こる風によって煙は吹き飛ばされた。

 

「あ、あんな近くに……!」

 

 頭部のすぐ近くに迫っていた。

 一つ、腕を振るって傷を付けると今度はやや離れる。

 何もせず、脱力してモンスターの足踏みの様子を見ていた。

 

『…………!』

 

 もう踏み潰せたかと動きを止めるモンスターの背後に回り込んでいた男は、再び剣を振るう。

 脚を傷付けられ、苛立ったかのように身を揺するがもういない。

 

 男は、全ての攻撃を避けていた。

 冷静に動きを観察し、掻い潜って先ほどの傷跡にもう一度刃をなぞらせる。

 モンスターはじわりじわりと出血量を増し、動きの精細が欠けていく。

 

「あれが……1人の戦い方?」

 

 だが、いつまでもそんな状況は続かない。

 1本目の足が切り落とされた直後、勝ち目がないと悟ったのかモンスターは逃走を図ろうとした。失くした足が即座に生え、背中を向けたのだ。

 その瞬間に首は切り落とされ、断面に突っ込まれた剣から黒い炎が注がれる。

 

 何度か身悶えをした後に崩れ落ち、魔石を取り出されたモンスターは二度と動くことはなかった。

 




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