【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「参考には…………」
「ちょっとね……」
「ならないかな……」
「もっと俺達と同じレベル感で戦って欲しい」
どうして。
あんなにわかりやすく戦ったのに。
一撃で足を切り落とさなかったのはディーン達が最初に挑むときは何回かかかるかなって思ってやったことなのに。
岩に隠れたのだってヒナミの盾で代用できるし、足踏み中は離れていたほうがいいのだってちゃんと見せたのに。
「いや、あんな風にできないよ」
「もっと泥臭さを見せて欲しかった」
「異能、やっぱり使えないんだね。手札少なかったし」
喧嘩を売りたいならそう言えばいいんだぞ。
「真面目な話、俺たちがあれに挑むのってだいぶ先の話だから。その頃には忘れてると思う」
「せっかく頑張ったのに……」
「頑張ってたのはわかるけど、あんまり参考にはならなかった。あ、でも……モンスターの攻撃が見れたのは良かったかな。あの爆発するやつ」
「そ、そうか……いや、切り替えよう」
「素材とか取ってかないの?」
「あいつが目的ならそうしたけど、別にそういうわけでもないし……欲しいならあげるよ。俺が持っててもミツキ達の──あ、そうじゃん。ミツキ達の防具作る素材にしよう」
皮をゴリゴリと剥がす。
カワハギみたいで、肉から一箇所剥がすと一気に剥がせ──デカすぎて無理だった。
とりあえずリュックに入れると、ディーン達が羨ましそうに見ている。羨ましいだろう、このバックパック。
割となんでも入るんだ。
「どこで買ったんだよ」
「第一セクターでしょ」
「高いお店いっぱいあるんだろうなあ」
「私も第一セクター行きたかったけど、なんか酷いことになってるんでしょ?」
俺は細かく情報更新してるし現地にも行ったからわかるけど、そうじゃない普通の人の他セクターに対する認識なんてこんなもんだ。
なんかあったらしい。
リヴァイアサンが出るらしい。
すごいらしい。
「私たちも今度第一セクター行かない?」
「でもここ出るの怖くない? エリュシオンに襲われるかもしれないよ?」
「それはここにいても一緒じゃん」
あーだのこーだのと話す女子を横目に、ディーンはやや緊張気味だ。
「なあ、それの素材なんだけど……」
「欲しいところは持っていけって。でも使えるところなんて頭の骨とか爪とか……あとはなんだろうな」
「い、いいのか? 本当に?」
「…………あー、早くしないと気分変わっちゃうかもな〜」
「は、早くやるから!」
爪の付け根を掴んで切り出しやすいようにしてから作業を進めるのを見ると、探索者ってこうあるべきだよなって気持ちになる。1人だとどうしても作業がしづらいからな。
まあ慣れてるからいいんだけど。
「なにこれ、爪の根本どこ?」
「切り出せる?」
「骨から繋がってるタイプだと無理だな。ここらへんに……あ、ここ付け根じゃないか?」
「ホントだ。ここから切ろっか」
モンスターは巨大なので、その素材も必然的に巨大なものになる。普通のリュックであれば、一個入れたらパンパンだ。
というわけで、俺のリュックに入れるしかない。
「すげー……飲み込まれてく……」
ディーン達のリュックも若干、元の容積よりは増えているらしい。多少程度じゃ行きの荷物でいっぱいだろうな。
「腕がどこまでも入る……これ、取り出せるの?」
「ひっくり返せば全部出てくるし、出したいものをちゃんと考えながら手を入れれば普通に出せるぞ」
「…………あ、ホントだ」
取りたいものを取ったところで、移動再開だ。
3人とも見ていただけだしスタミナも有り余っている筈だ。
ガンガン進もう。
横穴から強烈な風が吹き付ける風洞地帯や常に落石が起きている落石地帯、モンスター入りのシャボン玉がいくつも浮かんだ地帯など第一階層の地下迷路的在り方とまるで違う。
「毎度のことながら全然違うっつーか……地形が殺しに来てるっつーか……」
「この程度の地形は素の身体能力で対応できるようにならないと、その先がきついからな」
「おう──いや異能手に入れれば良くね?」
「だから、この階層程度は異能なしで突破できるようにならないとダメなんだって。地形なんてダンジョンのレベルが上がるほどイヤらしくなってくんだから」
「アンタはどうしてたんだよ」
「どうしても先に進まなきゃいけないときはコマちゃんになんとかしてもらう。それでもどうしようもないときは帰る」
「アッサリだな」
「仕事で死んだら元も子もないからな」
「はあ」
よくわかってないみたいだ。
まあ仕事って感覚になりにくいのがこの仕事だからな。
そこら辺は自分で掴んでもらったほうがいい。
たどり着いたのは氷に閉ざされた場所。
地下は基本的に温度が低いものだけど、ここは殊更に低い。
「ふ、吹雪いてるぞ!?」
声を張り上げても雪に吸い込まれる空間。
高い天井は果たしてどのようにして形成されたのか。
何が雪雲を作り出しているのか。
彫像のように凍りついたモンスターの死体もある。
「も、モンスターの仕業……か……?」
「さ、さむいいいいい」
「──か、風が! 風が!」
100mほど進んだところで、歯を鳴らして震え出した。
レベル20程度では流石に厳しいか。
「戻ろう」
4人全員が大きく頷いた。
混乱しているのか全然違う方向へ進もうとしたので、ディーンの手を引きながら全員で手を繋いで戻る。
「──はぁぅぅぅうう……寒かった……」
「死ぬかと思った……」
「絶対死んでたよあれ……半分くらいは……」
「火……火……」
再度、地形の恐ろしさを十分に体感してもらったようなので火をつける。
「うああ……」
手を翳して、自然と4人でくっついていた。
なんか可哀想なのでマントを被せてあげると驚きに満ち溢れた表情に包まれる。
「あったかっ!?」
「こ、こんなの着てたの!? そりゃ寒くないでしょ! 風だって感じないもん! 暑くもないし! なにこれ!」
「ズル! ズルだ! インチキ! 私たちには辛い思いさせといて、偉そうなこと言っといて、自分はヌクヌクしてたわけ!?」
これは弱者の僻みというやつだな。
「なんで全然真顔なの!」
「何か思うところねえのかよ!」
ないなあ。
「ないの!?」
俺が厳しい旅を経て手に入れたものをどう使おうが俺の自由だし、俺の成果なんだから何か言われる筋合いもない。
羨ましいんだったら自分たちも強くなればいいし、ダンジョンで寒さ程度で音を上げるのはそもそも良くないと思う。
「何その正論……」
「冷たいよ! さっきの雪より冷たい!」
うまいじゃん。
「というか、何あの雪。なんで雪降ってんの」
ダンジョンだからとしか言いようがない。
俺の方が混乱の度合いは強い。
真面目に考えれば考えるほどおかしいとか思えなくなってくる。
なんだこの世界は。
「あたし達に言われても……」
もう大丈夫そうだし行こっか。
今度はそれ着てていいから。
「いいの!?」
何度目かの、レベルの暴力を見せてあげることにした。
雪の中を、頭に叩き込んだ地図を頼りに突き進む。
肌にあたる雪の勢いは、本当の意味で素肌であれば傷ついていたやもしれない。
「強がるんじゃねーぞ! 死なれたら俺たちだって困るんだから!」
「ディーン! 俺のことはいいから後ろをちゃんと確認しながら来いって言ってるだろ!」
「見てるって!」
マントのせいで歩き辛そうではあるけど、でっかいからな。
伸縮自在だ。
すごい。
流石ドワーフ。
「あれ出口!?」
光が漏れている方向を指差してディーンが叫ぶ。
確かに、初見だと誘き寄せられるだろう。
しかし──
「違う!」
「え!? でも明るいぞ!」
「あれは餌だ!」
「エサ!?」
「…………ゆっくり近付くぞ!」
しゃがむように言って、ゆっくりと光の方へ近付く。
息を呑む音が聞こえた。
無数の歯が並ぶ、邪悪にして悍ましい口を見てしまったからだろう。
周囲にはグチャグチャのナニカがたくさん転がっている。
こうして、遠目でもわかる程度には酷い光景だが、寒さで鈍った判断能力をもとに被害者がたくさん近づいてしまう。
「俺はホタルモドキって呼んでる」
「ホタルモドキ……」
ホタルに失礼なのは分かってるけど、光の役割を考えるとあながち間違ってもないだろう。
「あの光に釣られてやって来たやつはあの口でズタズタに引き裂かれた後、生きているうちに卵を産み付けられるんだ」
「ひっ……」
「離れるぞ」
急かされながら元の場所へ戻った。
試しに、ここからは4人の力で進んでみるか? と聞いてみるとあまりの嬉しさに泣きながら首を振っていた。
「俺は感動した! お前達に、そんなにやる気があるとは思わなかった!」
「ちがうちがうちがう!」
これだけ元気なら、全部任せても大丈夫だな。
お望み通り、一番反目的なケイに先頭を任せる。
自らの力を振るう機会に恵まれた事で胸があまりにもいっぱいになってしまったのか、咽び泣きながらうずくまった。
他3人も武者震いが止まらないようだ。
素晴らしい。
君たちは最高の探索者だ。
「──という冗談は置いといて、こっちに進むか」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない