【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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77_アイテム使い

 

「あいつきらい」

 

「よしよし」

 

 ちょっと冗談を言っただけなのに心が弱すぎやしないだろうか。俺は心配だ。

 しかも、マントを羽織っているんだから寒さや風には影響されない。余裕があったんだから地形から何かを読み取ることはできたりしなかったか? 

 

「付いてくのに必死だったの!」

 

「そんなこと考えられるわけないじゃん!」

 

 言いたいことはわかるけど、それでもなんとかできることを見つけるのが今の4人の仕事だ。出来ないことをできないと言い続けるだけじゃダメ。アンダースタン?

 

「あのな……俺たち、まだレベル20ちょいなんだよ。そりゃレイト達と比べたらだいぶ上だけど……」

 

 言ってる場合じゃないぞ! モンスターだ! 

 

「んななっ……」

 

「こんないきなり!?」

 

 お前らでも倒せるぞ! 

 

「なにがっ……てっ……」

 

「ハラバシリじゃない!」

 

 そう、ハラバシリだ。

 最初に追っていたのとは全く別だろう。

 体が小さい。

 ほら、がんばれがんばれディーン! 

 がんばれがんばれディーン! 

 

「──ぜはあ……ぜはあ……ぜはあ……や、やったの?」

 

「多分……動かないし……」

 

 思ったより全力戦闘だった。

 でも勝ち切るあたりちゃんと実力はついてるんだな。

 前は這々の体だったわけだし。

 

 特にケイが目覚ましかった。

 弓が上手い! 

 

「何その感想……」

 

 細を穿つ眼だ。

 途中までは撒き散らされる粘液でよろしくない絵面になっていたのに、粘液を分泌している腺に矢を打ち込んで目詰まりを起こさせるとは思わなかった。あれで完全に流れが変わったな。

 2足だけで移動するには粘液が不可欠ということが改めてよく分かる戦闘だった。

 

「ケイ!すごい褒められてるじゃん!」

 

「素直に喜べない……」

 

 シオリは比較的体力に余裕がある。

 武器を振ったりするわけじゃないからな。

 とはいえ大事な役割だ。

 

「──ちょっといい?」

 

 ディーン達がグデンとしているところにシオリが話しかけてきた。3人から距離をとると、やや俯いて口を開く。

 

「私も……もっと何かした方がいいかな?」

 

 なぜそう思うのだろう。

 

「ほら、みんなはモンスターの近くで戦ってるのに私だけ……」

 

 つまり、比較的安全な位置にいるから戦闘の時に疎外感を感じているということか? それとも武器を持って戦うことに憧れが湧いてきたとか。

 

「……デリカシーないって言われない?」

 

 言われたことはない。

 聞いてきたから答えているだけだ。自分でもデリカシーない発言だとは分かってるけど、理由をはっきりさせておかないとアドバイスもできない。

 ちなみに慰めて欲しいならディーンに頼んでくれると助かる。今はモンスターと動き回った後だから誰も動けないと思うけどな。

 

「それこそデリカシーないじゃん」

 

 おっと。

 

「なにかない?」

 

 アイテムを使うことに特化した探索者がパーティー内にいる。それは単純に考えれば、個々人の力量が足りてないことを意味しているわけだ。

 

「そう……なのかな……」

 

 本来はディーン・ケイ・ヒナミが自分でアイテムを使えるべきだ。そうすれば自分たちの使いたい完璧なタイミングで爆弾やら目眩しやら幻惑やらを行える。

 

「…………」

 

 それに、シオリの代わりに戦える人間──例えばアリサが入っていたら戦力が単純に増強されるだろ? 

 

「そうだよね……やっぱり私も……」

 

 というのが一般的な話だ。

 

「え?」

 

 アイテム取り扱いオンリーの探索者は初めて見た。

 誰も思いつかなかったとかじゃなくて、一瞬だけ思い付いても最初から選択肢に入らなかったからというのが正しいだろう。

 正しいか間違っているかは別として、興味深い。

 

「…………」

 

 大事なのは今どうかじゃなくて、将来どうなりたいかだ。

 

「将来って……私はずっと探索者やってると思うよ?」

 

 いきなり天然を発揮しないで欲しい。

 探索者としてどうなりたいかだ。

 

「探索者としてどうなりたいか? …………考えたことなかった」

 

 例えばディーンならドラゴンを討伐したいから。

 ミツキならいつまでも若くありたいから。

 俺は魔素に関する知識を深めたいから。

 

「そっか……目標かあ……」

 

 探索者になったキッカケは知らないけど、なりたくてなったわけじゃないんだろ? 

 

「まあね」

 

 でも、ディーンと一緒なら続けられるんだろ? 

 

「……うん」

 

 ディーンに置いていかれたくないんだろ? 

 

「…………」

 

 やり続けることには意味がある。

 なんだってそうだ。

 意味がないように思えても、続けると見えてくるものがある。

 それを見つけるまで続けられるかどうかだけだよ。

 

「説教くさい……」

 

 そうかもしれない。

 だけど、このセクターの中で一番有望なのが誰かと言われたらキミだ。

 

「い、いや、それは……」 

 

 まさか信じられない? 

 

「だって私戦えないし…………ミツキさんとか、いるじゃん……すごいお父さんの娘だし……」

 

 戦えることそのものには価値がない。

 大事なのは、なりたいモノに向けて自分の方向性を定めることだけど……どうだ? 

 

「──戦えないなら……せめてアイテムだけでも使って役に立ちたかったの」

 

 それでいいじゃん。

 

「いいのかな……」

 

 その思いさえ間違えなければ、きっと芽が出る。

 

「思いを間違えない? ……忘れない、じゃなくて?」

 

 気持ちなんて変わるもんだ。

 抱き続けた思いが捻じ曲がる事の方がよっぽど怖い。

 

「ふーん……そういうの、どこでベンキョーするの?」

 

 俺のことはいい。

 とにかく続けてみろ。

 ディーンだけじゃなくてヒナミやケイとも話して、アイテムしか使えないからこそ出来ることを探してみるんだ。

 そうすればきっと、君だけのチカラが手に入るはずだ。

 

「私だけのチカラ……異能ってこと?」

 

 ──お話はここまでだな。

 

「あ……」

 

「終わったか?」

 

「ディーン、もう大丈夫なの?」

 

「まあ、動ける程度にはな。そっちこそ話はいいのか?」

 

「…………うん、大丈夫」

 

「なんか大事そうな話してたけど──」

 

 おっと、あくまで相談に乗っていただけだ。

 パーティーを抜けたいとかそういうネガティブな話じゃないので悪しからず。

 だからそんな目で見るな。

 

「ふん……手が早いからなアンタは」

 

 誠に遺憾です。

 手が遅いことで怒られたくらいなのに。

 

「でも最近は女の子がどんどん増えて〜ってアリサが愚痴ってたぞ」

 

 ディーン。

 女の子の認知は歪みがちなんだ。

 あまり間に受けない方がいい。

 

「結構最低だな……」

 

 3人から心が離れたことはない。

 不安にさせているのは申し訳ないけど、この気持ちに偽りはないよ。

 

「なんてまっすぐな瞳なんだ……」

 

「でもヒナタさん言ってたよ? あの小さいお姉さんとずーっとイチャイチャしてるって」

 

 さ、早苗ちゃんはノーカンだから……

 癒しだから……

 変な気持ちとかないから……

 

「あんなちっちゃな子にエッチな事してたらドン引きだよ!?」

 

 だからしてねーっつってんだろ! 

 そもそも、仮にしてたとしても早苗ちゃんは成人だ! 

 ちゃんとお前らより歳上! 

 身体の年齢はちょっとアレだけど……

 

 そうじゃない! 

 体力が戻ったなら帰るぞ! 

 

「え? ここまで?」

 

 もっと先が見たいと申すか。

 よかろう。

 その心意気に応えて──

 

「いい! いい!」

 

 

 ──────

 

 

「ほへえ〜、今度はディーンくん達の面倒も見るようになったんだ」

 

 依頼の対価としてやってるだけだから、そんなんじゃないんだよなあ。

 

「またまた〜……あ! そういえばこの前、支部長から押し付けられてた子達がいたじゃん? あの子達、今のところはちゃんとやれてるよ」

 

 ふーん。

 

「アキヒロくんが興味を抱く基準ってよく分かんないんだよね……子供たちだったのに」

 

 可愛い可愛くないはおいといて、ある程度絞らなきゃダメでしょ。

 

「レイト君たちのことは食べちゃいそうなくせに、そうじゃないとフツーにそういうこと言うんだもん。びっくりしちゃうよね。やっぱり顔しか見てない?」

 

 顔の話はしてないんですが……

 

「アキヒロ君こそ可愛くない性格してるよね。聞いたんだから、訓練所勝手に使って喧嘩したって。家族もいるのにそーゆー事しちゃダメなんだから!」

 

 俺だけだったらダッシュで逃げるのもやぶさかではないけど、他のみんながいたらソイツが舐めた真似出来ないようにしなきゃいけない。そうしないとほら、俺以外の子達が襲われるかもしれないじゃん? 出る杭は打つんだよ。

 

「やり過ぎて報復なんてことも……」

 

 探索者なんだからレベル差くらい分かるだろ。

 

「まあいっか。次はどうするの?」

 

 次とは。

 

「次の依頼。そろそろ全力出さないと鈍っちゃうんじゃない?」

 

 言われるほど全力を出してないわけじゃない。

 それに今回はディーンの話だったから認められたけど、俺、軟禁中なんですよね。本当はこうして1人で良い立場じゃなくて〜。

 

「軟禁……中……?」

 

 外出し過ぎって事で基本的に家の中に居ろとのお達しです。連絡したからそろそろお迎えが来るかと。

 

「誰?」

 

 さあ。

 

「さあって……」

 

 だって分からないんだもん。

 あの3人の気持ち次第的な。

 

「縛られるの嫌いなタチじゃなかったっけ」

 

 観念しました。

 

「あ、そう……あ」

 

 扉の開く音。

 軽めの足音。

 背後で止まった気配。

 軽く肩を叩かれて振り向く。

 

「──よっす」

 

 片手を上げたヒナタがいた。

 ニカっと笑っている。

 何がそんなに気分を上向きにさせているんだ。

 

「ちゃんと戻ってきたな」

 

 ヒナタは手を伸ばし、俺の頭に載せると左右に動かした。

 

「えらいえらい」

 

 なんだこれは。

 子供扱いしてるのか。

 この俺を。

 

「いいからいいから」

 

 こんな事をされて嬉しいと思っているのだろうか。

 もちろん嬉しいが文句あるか? 

 

「帰ってこられて偉いぞ〜」

 

 なるほど、褒めて伸ばす方針か。

 

「一瞬で見破るんじゃねーよ!」

 

 すまん。人間の行動ってテンプレから飛び出ないから……

 

「はあ……まあ、無事で帰ってきたならそれでいいよ。おら、帰るぞ」

 

 そういうわけだから。

 

「気を付けてね〜」

 

 家に着くと、帰るというよりも取り込まれる感じで中に入った。扉を開けた瞬間に腕が4本突き出て、何かを言う前に引っ張り込まれるのはホラーでしかない。

 

「おかえり」

 

「おかえりっす!」

 

 うっす。

 

「うっすじゃねーだろ!」

 

 ただいま。

 お風呂入りたい。

 

「入れてあるよ」

 

 こ、これが…………これが、家に家族がいるってことだよ! 

 

「なに感動してたんだ」

 

 懐かしい感覚だった。

 やっぱり家に人がいるっていいな。

 

 みんな……ただいま! 

 

「なんで2回目? ……つーか早く中入れよ。邪魔なんだよ。入り口塞いでんだよ」

 

 なんだか、20年ぶりくらいに物凄くのんびりしたくなってきたぞ! 

 




https://x.com/goldmg3?s=21
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