【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「どしたの? ……え? 朝ごはん一緒に作る? …………えへへ……じゃあ、一緒にしよっか?」
吾輩は飯を作るのが下手である。
かつてはドブ飯大魔神と呼ばれたことも──流石にそんなことはない。
ただ、飯を作るのが下手なだけだ。
「ほら、これの皮剥いて」
なんか付いてたら危ないし厚めに切るか……
「あーもう! 言ってるでしょ! そんなに切ったら食べるところなくなっちゃうから!」
ミツキが騒ぐからみんなが寄ってきた。
口々に切り方についてなんか言ってくる。
そんなにいけないか?
怖いだろ、紫外線で消毒もしてないんだから。
「いいから口閉じて、言われた通りに切って!」
お野菜さんを言われた通りに切る。
「そう! それでいいから! もう……余計なこと考えなきゃ普通に作れるのに……」
作ったら食べる。
ミツキが作ってくれただけあって美味しい。
テマリさんやアリサも舌鼓を打っているようだ。
「ミツキさん、悔しいけどご飯作るの美味しいですよね〜」
「昔から作ってたの?」
耳ピクさせながら称賛を聞いていたが、声が止んだところで胸を逸らした。ドヤ顔が極まっている。
「昔から作ってたましたとも! お母さんから習って!」
「アキヒロ君に作るため?」
「そう! …………そ、そうでしゅ……」
何も恥ずかしいことじゃないのに小さくなってしまった。
俺は嬉しいぞミツキ。
「ひゃい……」
昔からこういう肝っ玉の小さいところは変わらないんだよなあ。
どっちに似たんだろ、2人とも肝っ玉しかないみたいな感じなのに。いや……違うな。小学校のときの経験のせいか。
「……え? なに? なんでいきなり?」
ミツキは頑張ってるよ。
いつも見てるからな。
「いきなりどうしたの!? ま、まあ悪い気はしないケド……」
「私のことは見てないんすか!?」
「突っ込むところそこじゃないと思う」
ご飯を食べ終えたら掃除。
いつもはみんなにやらせていたからな。
たまには自分でやろう。
うちには狛犬もいるんだし、そういう心がけ一つで何か変わったりするかもしれない。
雑巾を持ってきて拭き拭きと。
まずは床からだな。
「うわっ、ヒロさんが掃除してる」
「珍しいわね」
そんな事を言われるくらい俺は家にいなかったんだな。
ますます反省しないと。
「手伝おうと思ったのに、早過ぎて何すればいいか……」
「いきなりどうしたの? この人」
「たぶん暇なんだと思います」
「仕事してないと落ち着かないってこと? ちょっと分かるかも……」
「テマリさん、商工会の本部でお仕事してたんですもんね。やっぱり本部って忙しかったんですか?」
「…………毎日いろんな報告書が来るからね」
「エリートだな〜」
「…………」
アリサ、そっちのソファ動かしといてくれると助かる。
テマリさんは暇ならお茶でも淹れてくれると助かります。
「はーい」
「……分かった」
今日はリビングの床を隅から隅までピカピカに仕上げることにした。それ用の磨き剤なんて無いから、とりあえず水拭きで執拗に床を擦り上げるぞ。
あまり速く動き過ぎても床と服が弾け飛ぶので、程々に抑えつつ布がなくなる勢いで腕を動かしていると時間が溶けていたらしい。
「そろそろお昼ですよ〜」
「まさか昼まで床掃除してるとは思わなかった……」
一ヶ月もあるんだから、1日で全部の場所やったら大変なことになる。午後はまた別のことをしたいから、とりあえずな。
でも、午前中いっぱいやったおかげで……見ろ!
シミ一つないぞ!
「そんな肌みたいに言わなくても」
「でも本当に綺麗になったじゃない。綺麗過ぎてちょっと滑……うなっ!」
どうやら才能を発揮しすぎたようだ。
「こんなの逆に才能ないって……」
氷の上で二週間生活すれば、これくらいなんてことなくなるのに……
「いや、そんなダンジョン中々ないからね」
そういえばテマリさんは元探索者だったんだっけ。
なるほど、そこから転職して商工会に入ったのか。
「…………私が商工会にいたときの話だけど……迷惑かけちゃったよね」
それはアレだろうか。
先生とヒナタの。
「そう」
そこらへん聞けるなら聞きたいんだけど、先生がどこ行ったか知らないだろうか。いくつか線は考えてるけど、その中の一つは商工会が先生を監禁してるってことなんだ。
「そんなことしてないよ……仮にも商工会だよ?」
そう言われても、俺はそこまで商工会を信じてない。
「そ、そうなの……?」
話すべきか悩んだけど、この際なので『腐り果てた村』でかつて起きたことを話しておくことにした。彼女がここまで身体を張って潜入している──商工会の回し者だとは考えられない。
なぜ、俺が商工会という組織を信用していないかはこれで分かるだろう。
「そんなこと、知らなかったよ…………」
だろうな、というのが正直な感想だ。
若い人間にその手の秘密は託さないというのがセオリー。
よく分からぬ正義感に突き動かされて下手な手を打ちかねない。優秀な若手は基本的に、既存の秩序を保つ上では邪魔だからな。
「それは会長がやってたってこと?」
そこまでは知らない。
というか、その時は田辺もまだ会長じゃないはずだ。
「当時の会長は……」
そこら辺はどうでもいい。
誰がやったとか、誰が指示したとか、そういうのは一要素に過ぎない。商工会ひっくるめて、そういう性質を持った組織だってことが明らかなんだから。
「…………西の部族から住人を守るために色々と手を打ってはいるわ。商工会はみんなの敵じゃない。ちゃんと統治しているのよ」
そんなこと、生活してたら分かる。
ナナオさんやアオイちゃん、それにテマリさんみたいに個人レベルであれば信じられる人は多い。
でも、それはどの分野でも同じことだ。
粗暴者の集団である探索者の中にもディーンや三船君みたいに綺麗な奴らはいる。
「敵視してる……わけじゃないよね?」
そこまではいかない。
ただ、大事な情報を渡せるほど信じられるもんでもないってこと。
「私は……商工会じゃなくなったから?」
そういうこと。
ここからわざわざウチの話を商工会に持ち込むルートは……まあ、無いことはないと思うけど──
「そんな恥知らずじゃないよ。それで……先生だっけ? 本当に居場所は知らない」
期待はしてなかった。
あんなに分かりやすく失踪させるのはリスクが高い。
「あの人は……どういう人なの? そこまで執着する意味がよく分からなくて──ああ、もちろん霊領の専門家だって話は分かってるよ。それがどうしてキミの関心を集めているのかなって」
神様の領域。
神様の力。
魔素の恐ろしさ。
魔素の制御。
そこら辺に関して商工会がどの程度理解しているか。
調査室の室長が家にいるというのは中々得難い機会だ。
聞かせてもらえる者なら聞かせてもらおう。
「なるほどね、だから永井文俊の弟子になったってわけだ……うん、確かに私が知る限り商工会はそこまで奥深くまで踏み込んで霊領のことを理解してはいなかったよ。でも、新しい会長は……そういう、これまで商工会があんまり手を出してこなかったところまで管理するべきだって人間だった。だからほら、永井文俊の資料もさ」
俺が見た探索者育成もその一環だろうか。
「そうだね。チカラというチカラを商工会に集中させたいんだよ」
成功すれば、この地域における商工会の影響力・支配力はさらに大きなものになっていただろう。そのタイミングでエリュシオンの連中がやってきたのは、相当都合が悪かったに違いない。
でも、俺は今の緩やかな支配が結構好きなので、そういう意味ではちょうど良かった。
「商工会の力が大きくなったら、もっと広い範囲にセクターを広げて、全体の影響範囲も広げるつもりらしいね」
西の部族を侵略するって意味で良いのかな。
「侵略かは分からないけど……」
「──ねえ2人とも。ご飯だから面白くない話やめて?」
「あ、ごめんね早苗ちゃん」
午後はアリサの尻尾をブラッシングするか、早苗ちゃんと一緒に土いじりでもしようかな。
それかコマちゃんが三船君たちのところへ散歩に行ってるし、迎えに行っても良いかもしれない。
「行く時は声かけてね」
結局、土いじりを手伝うことにした。
ヒナタも一緒だ。
「お前がこういうのやれるとは思わなかった」
人のことをなんだと思っているんだ。
繊細な作業だってちゃんとやれる。
手先は不器用じゃないんだから。
「じゃあ料理もちゃんと作れよ」
口にするものについて吟味するのは当たり前だと思うんですけど。
俺は間違ってないんですけど。
「もう良いよお前……あの岩、畑広げるのに邪魔だからどうにかしてくれ」
まだやれる! 俺はまだやれる!
土いじり、久しぶりにちゃんとやると楽しい!
フブキの店の裏庭に木を植えたのはほぼ種置いただけだから!
「いいから! 力ばっか強くても土が潰れるだけなの! お前の仕事はアレ!」
へい。
「明宏くんのこと操るの上手いねえ」
「姉ちゃんだって似たようなもんだろ」
「私はちょっと違うし……私だって、かかあ天下みたいなことしてみたい!」
「意味わかんね」
「女の人がお家を引っ張って盛り上げることをそう言うんだって」
「ふーん……それも何、アイツの昔の話?」
「そっ!」
「……ふん」
「あ、嫉妬してる!」
「…………」
「わあああ! 土投げないでよ!」
岩をどうにかする。
砕くか、どかすか。
とりあえずどかしてみよう。
ナイフを神剣に変えて、炎でどかしていい感じの窪みを作った。
「──え? あんなこと出来るの?」
「意外と使い勝手良いのか」
ここを握って持ち…………上がらない!?
重いけど、なんか違う!
「何してんのアイツ、顔真っ赤だけど」
「持ち上げようとしてるんじゃない?」
「レベル50で持ち上がらないのか……」
神剣で切った。
「今、スパって切れたよ!?」
「すごいな……」
「あれ、料理する時に貸してもらおう!」
「汚いだろ。モンスターの血とか浴びてるんだぞ」
お、切ったところから上ならちゃんと持ち上がった。
どうなってんだこれ……
「断面がすごく綺麗だね」
「神様のチカラを浴びた剣だからな」
「…………そうだね」
上面にまた握りを作って──ぬ!?
「アキヒロくん!?」
「アキヒロ!」
重過ぎて、持ち上げようとした体が地面に埋まった。さっきも膝まで埋もれたのに、これは……?
「今出してやるからな!」
「待っててね!」
いや、大丈夫だから。
そんな騒いだらテマリさんも出てきちゃうから。
あー……ほら。
「──なんで縦に埋まってんの!?」
「今を持ち上げようとしたっぽいんですけど……」
「何そのバカな話」
俺が自分の趣味でそうしようとしたみたいな言い方はやめてほしい。
ヒナタたちが岩を退けてほしいと言うから別の場所に動かそうとしただけだ。そうしたら意外に大きかった。
「あー……土、柔らかいもんね」
そうなのだ。
ミミズが多いから派手に力を使おうとするとすぐに地表が弾け飛ぶ。
そうじゃなくても、こうなることがある。
ワームが多い理由も分かるな。
「持ち上げて切って、持ち上げて切って……の切る役をやってほしい?」
「私やりたい!」
早苗ちゃんに神剣を預けて岩を切ってもらいつつ、次々と岩を──ってどんだけ長いんだこれ。
「根っこみたいだね──ん? なんか振動が……」
グラグラと揺れ出した。
早苗ちゃんに離れるように言って最後に全力を込めて岩を引き抜くと──
「熱っ!」
「あっつ!」
「離れよう2人とも!」
お湯が噴き出た。
なんで?
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない