【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
轟音をあげて地中から噴き出した熱水を、直下からエグい角度で腹にもらって吹っ飛ばされた。
まさか異世界とはいえこんな体験をするとは思わなかった。
というか、食らったのが俺じゃなくて良かった。
下手しなくてもあの場で俺以外が受けてたら死ぬか全身大火傷で苦しんだだろう。
「あちゃちゃちゃちゃ!」
それはそれとしてすごく熱かった。
のたうち回って、暫くして落ち着くとヒナタたちの冷たい態度が目につく。
「これ、アレじゃないの? 温泉」
「あの岩で蓋されてたのか!? あんな露骨に!?」
「それ以外に考えようなくない?」
テマリさんは冷静に、間欠泉のような熱水噴出を評価している。
温泉。
確かにこの匂いは温泉の硫化水素の匂いっぽいけど……ここってそういう場所だっけ? 他に温泉が沸いてるなんて聞いたことないんだけど。
「うわわ、どんどんあたりに溜まってく!」
「やばい! 野菜が!」
こんな時にまで野菜のことを気にしなくても良いのに…………とか思ってたながいけなかったのか、険しい表情が俺の顔面を貫いていった。
「早くなんとかしろ!」
「……え、俺が!?」
「お前が出したお湯だろ!」
「そんな無茶な……」
とは言いつつヒナタに逆らえるわけもなし。
なんとかしろと言われたらなんとかしなきゃいかん。
岩を上に再度乗せた。
蓋になるっしょ。
「バカかあ!」
しばらくは保ったけど水の勢いに負けて割れた。
しかもその際に周辺に石が弾け飛んで大惨事。
お家の窓割れちゃった……;;
そんな削岩機みたいな感じで砕かれるとは思わないじゃん……
「次!」
「次……職人に頼む!」
「金がかかるからダメ! 次!」
「ええ!?」
一番良さそうな案をまず潰された。
お金かかるからダメって……そんなこと言ったらなんもできないじゃないか!
とか言ってる間にも地面がびちゃびちゃに……!
「あーもう! 早く! なんとかしろ!」
な゛ん゛と゛か゛す゛る゛よ゛〜!
右手を地面へ突き刺し、後ろへ動かしながら左手を地面へ。
交互に繰り返すことで地面に溝ができる。
それをレベル50の力で突き進めるとこうなる。
「すごいすごい! 川みたいになってる!」
「だけどアレじゃあ跳ねてるやつはどうにもできないよ? まだ噴き出してるし」
職人を呼ぶぞ!
これマジだから!
お金が足りないとか言ってる場合じゃないから!
「どーするの?」
待っててほしい!
あと、俺が呼んでくるまでお湯に触れないこと!
人の骨を溶かす様な温泉もあるんだからな!
温泉が全部良い効能持ちなんて信じるなよ!
「うん! 絶対触らない!」
「効能持ちって、誰もそんなこと言ってねえだろ……つーか私を置いてくな!」
職人はすごいんです。
設計図もなしに頭の中にあるものをこの世に作り出すことができる。
説明さえすれば大抵のものは作れる。
金属に関してはドワーフの方が上手だけど、木工なら職人──みたいな勝手なイメージを俺は抱いている。
『ほほお! こりゃあ景気がいい!』
『そんで、なにしろって?』
噴出の圧力に負けない抑えを作ってもらって、そこから露天風呂に繋げるように樋を組んでもらって、建屋を被せてもらいたい。
『ほお? よくわからんな、もうちと詳しく説明しろ』
出来るのか知らんけど、とりあえずちゃんと温泉を作ってもらうことにした。だけど、その前にコマちゃんも呼んでおく。
「わふ」
人が入っても大丈夫らしい。
流石コマちゃんだ。
もう行っていいよ!
「がるるるる! がるるる!」
嘘じゃん嘘じゃん!
ちゅきちゅき! コマちゃんちゅきだよー!
一緒にお風呂入ろうねえ〜!
ちゅっちゅっ!
『なんだあのキショい生き物』
『ペットが大好きなんだなあ』
ワンちゃんにチュッチュできないやつ、負けてるよ人生。
ねーコマちゃん。
「グルルルル……」
そんな怒らないでいーじゃん! ね? ごめんてコマちゃーん! さっきの嘘だから!
『初めっか』
『気分悪くなってきたしな』
熱水もなんのその、どういう理屈か彼らは普通に作業をしている。1人が木材を持ってきて、もう1人がトンテンカンと凄まじい勢いで加工して、最後の1人がそれを地面に突き刺していく。
岩盤に板を届かせようとしているらしい。
それも木板で。
地面に板を打ち込み、その上からさらに同じ大きさの板を打ち込んで奥へ奥へ。
どんだけ奥深くまでやるんだろ。
『あん? あー……この感じは俺50人分くらいだろ』
縦にということだろうか。
それはすごーく深くないだろうか。
木の板で届くのだろうか。
それに腐らないだろうか。
『素人は黙っとれ』
『もういいから! 椅子作ってやるから! 見とけ!』
よく分かんないけど、ロッキングチェアーと即席の土台を作ってくれた。ヒナタを膝の上に乗せて抱きしめながら椅子をギーコギーコ言わせて見ることにした。
「なんだよ……離せって……見られんだろ……」
とか言いつつ全然暴れない。
それどころか、ぺたりと頭を胸元に寄せてくる。
あらかわいい。
「ずーるーいー」
アリサが椅子をギコギコ揺らしてくる。
どうだろう。
もう一個作ってもらえないだろうか。
『あいよ』
すごい。
職人って本当にすごい。
粋だし仕事が早い。
プロだ。
プロフェッショナルオブ大工だ。
「なんか私だけ1人で寂しい〜……ヒロさんこっち来ましょうよ〜」
「……今は私んだからダメだ」
「じゃあ早苗ちゃん連れてきちゃうもんね!」
よくわかってない状態の早苗ちゃんが手を引かれてきた。
出来ることがなくなったから家の中で休む〜って言ってたんだけど、無理矢理連れてきたのだろうか。
「どしたのアリサちゃん……って、あー! ヒナタちゃん何してるの! そこどいて!」
「…………ふん」
「お姉ちゃんの場所だよ!」
お姉ちゃんの場所。
妹の場所。
お兄ちゃんの場所。
俺の場所。
おまえのばしょ。
「アキヒロくん、ヒナタちゃんどかしてよ」
「早苗ちゃん……ルールは守らなきゃダメだよ?」
「…………ぶぅ」
手招きしていたアリサの上に座ると、拗ねたのか胸に顔を突っ込んでしまった。赤ちゃんみたいだ。
アリサもアリサで、したり顔でこちらを見返していたけど、手持ち無沙汰解消にヒナタを撫でているのを見たせいか萎れていく。
ヒナタをバブちゃんにする、たまにはそんな日があってもいいんじゃなかろうか。
「…………バァカ」
『へいこんちくしょうめ!』
『んにゃろめ!』
職人の声が大きくなってきた。
板を地面に打ち込む音も太鼓のそれのようだ。
会話もままならない。
黙って見ていた方が良さそうだ。
『──ふぅ』
しばらくして出来上がったのは井戸のようで少し違う、桶をひっくり返したような見た目の構造物だった。流石に疲れたらしく、小休止をしている。
『今日はここまでだ!』
『帰る!』
とりあえずお湯は止まった。
しかし、それまでに放出された分のお湯はどうしようもない。この地は終わりじゃよ。
土地を捨てて別の場所を探そう。
「匂いはともかく水だろ」
この匂いを嗅いでタダの水だと申すか。
「…………本当に?」
冗談抜きで、温泉の水が染み込んだ土で野菜が育つのか俺は分からない。
いいミネラルが染み込んだ判定になるのか、無理だよーってシナシナになるのか。
あんまり甘い希望は抱いてない。
「この子たちは!?」
早苗ちゃんは野菜に目一杯の愛情を注いでいたようで、もうここじゃ育てられないと知った途端に野菜に抱きついていた。ちょっと動かせばいいねん。
「この子達にとってはここがお家なんだよ!?」
地球という大いなるお家の中で部屋を変えるだけのことなので、そんな大袈裟にしなくてもいいと思います。
「また1からかあ……」
そこは俺が手伝うから。
「ホント!?」
一ヶ月もあるし、マンパワーでなんとかしますよ。
「わーい!」
人間が入っても大丈夫ということなので、早く温泉にしたいのお。
「湯煙で窓が大変なことになってるんだが」
今後は湯気の成分と湿気でどんどん家がダメになってくはずだから、何とかした方がいいな。
「どーするの?」
旅館建てようぜ。
「はあ!? お前何言ってんの!?」
「旅館かあ……」
「姉ちゃんも何迷ってんだよ! テマリさんもなんか言ってくれ!」
「え? あー……道場開くんでしょ? 旅館とは分けた方がいいんじゃない?」
「バカしかいない……!」
しかし、温泉が沸いているというのに旅館を建てないのは寧ろ土地に失礼じゃなかろうか。
家で使うばかりじゃ勿体無いし。
ああ、でも埋蔵量によっちゃすぐ枯れる可能性もあるのか。旅館建てたのにお湯なくなっちゃいました〜じゃ笑い話にしかならない。
「ねえアキヒロくん、お湯って無くなるの?」
そりゃあ資源は使ったら無くなるもんだよ。
「でも凄い勢いだったけど」
「私も、温泉が枯れるなんて聞いたことないけど」
人間と比べた時にジオメトリックなスケールが膨大なものだから枯れてないだけでしょ。世界が切り替わってから100年経ってないんだし、人口だってそんな多くない。
例えば、会長の試みが大成功するかなんかして人口が爆増したら昔から温泉をやってる場所は観光地として賑わうのは間違いない。
すると掘削量が増える。
どうなるかな〜? ^^
「へー、加賀美くんって世界をそういうスケールで見てるんだね。商工会向きじゃない? 出来るのか知らないけど、推薦とかしてあげよっか?」
稼げる職業から稼げない職業、しかもこの世で一番面白くなさそうな職業、更に俺の目標から遠ざかる方向になぜ転職すると思ったのか。
「そんなふうに思ってたんだ……いや、合ってるかもだけど……」
そもそもこの大所帯を養ったり好き勝手に物を買ったりするためには金をできるだけ稼げないといけないでしょ。
「遊びがないよね、人生に」
それには反論が明確にある。
俺の人生そのものが遊びみたいなものなので、どんな行動をしても相対的に重さ0だ。だから好きなことをしても良心があまり傷まないし、割と振り回してる自覚はある。
「ちょっと……普通の感覚じゃない……かも……その、自分の人生が遊びっていうのは……その…………遊び人的な……?」
「テマリさんはこっち! アイツの話を間に受けちゃダメだから!」
ヒナタと早苗ちゃんが揃ってテマリさんの背中を押していく。まさか有害人間指定されてるわけでもあるまいに……
「──いや、お前は有害だよ」
そんなまっすぐな眼差しで言われるとは。
「お前のこと知ってる私たちにとってみればそんなもんかで済む事も、そういうの知らない人はビックリするんだから気をつけろよ」
「あだっ」
「お前を信じてないわけじゃねーけど、いいな?」
「ああ、もちろん」
「…………どうだか」
とりあえず、望みをかけて表面部分の土は取り除いた。
全身泥だらけになってしまったのでヒナタと一緒に川へ向かう。
屯していたウサギを三羽ほど締めて、安全にしてから2人で入る。側は離れさせない。
モンスターがいつ出てきてもおかしくないからな。
「ううう! 冷てえ!」
多分明日明後日くらいには季節が切り替わるけど、霧が晴れるまでは常に低気温だ。
「お前あったかいな!」
そりゃあ探索者ですから。
でも三船君たちにやらせてたみたいに滝行とかやってたんだろ?
「あんなの少しやらなくなったらすぐ忘れるんだよ!」
三船君に言いつけたろ。
「やめろよそういうの! というかお前なんか寒さすら感じないんだから偉そうなこと言うな!」
家に帰ってからゆっくりお風呂で温まった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない