【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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80_お金

「アキヒロ! なんだか凄く変な匂いがしますね!」

 

 軟禁2日目、元気な龍娘がやってきた。

 近くのダンジョンでドラゴンの餌を狩っていたらしい。

 生態が違いすぎる……っ! 

 

「きったなっっっ!」

 

 そりゃあもう汚い。

 あーあ、せっかく文明的な生活のお手本を見せてあげたのになあ〜とか思うべくもないぐらい汚い。

 探索者の一種と考えれば汚いのも当たり前と思えるけど、でも汚い。

 

「探索帰りのアキも偶にこれくらい汚いけど……女の子がそんな格好になっちゃダメだから! 乙女ポイントだだ下がりだよ!」

 

「おとめぽいんと? 初めて聞きますね……興味が湧きました!」

 

「え? ええと……うっ!?」

 

「はい!」

 

「くさい! お風呂入ってきて!」

 

「え…………」

 

 臭いと言われて傷つくだけの機微は持ち合わせているらしい。トボトボと中に入ってしまった。

 しかもドラゴンたちまで自分の体を気にする仕草を見せている。

 どういう感情で生きてんのよ君たちは。

 

 それとは別に一つ言いたいのは、俺がいつも臭いみたいな話をサラッと出さないで欲しいということだ。

 

「でも臭いよ、本当に。ダンジョン帰りのアキは…………臭いよ」 

 

 2回も言わんでええねん。

 とんでもなくまっすぐな目で。

 迷いのない口ぶりで。

 確かに傷つくわこれ。

 

「──ふんっ! どうですか!」

 

 右肘と左肘を交互に突き出して匂いを嗅がせてくる。

 甘い匂いが鼻腔をくすぐった。

 

「それじゃあ、この匂いの正体から当ててあげましょう! ズバリ、このお家の庭にできた謎の木箱が原因ですね!」

 

 何を張り切ってるのかよく分からない。

 

「人間の里に来て、いろいろなことがありました……私も人間がどんなものかある程度わかってきました。あなたがそうであるように、生み出すことに特化した生物なのですね」

 

 この世界を見て、俺はそこまで大した存在には感じられないけど……彼女からしてみればそう思うかもしれない。

 そもそも、別の動物から進化した生命体から見た時の人類に対する感想を理解するのが無理筋か。

 生み出すことに特化というのは、あの木箱を見て思ったことで本当に合っているのか? 

 

「あの木の蓋から変な匂いが漏れてます! きっと、あの木箱に何かを仕込んでいるのですね! 早速探ってみましょう!」

 

「待った!」

 

「わあっ!? な、何するんですか! 服が破れちゃうじゃないですか! これ、私の服じゃないんですから!」

 

「うん、ヒナタちゃんの服だね。それはよくて……あの蓋には触らないで」

 

「どうしてです?」

 

「蓋が壊れたらお湯がブシャーって噴き出してくるの! 私たち、さっきまでそれでずっと大変だったんだから!」

 

「なにそれ、見たい見たい!」

 

「逆効果!?」

 

 明日になったらお湯が出るようにするからそれで我慢しなさい。壊したりしたら周りの土含めて復旧する代金と温泉を作ってもらう代金全部お前持ちになるけど、それでもいいなら勝手にいじってもいいよ。

 

「お金は……ちょっとだけ持ってます!」

 

 そう言って取り出したのは金貨。

 なんで金貨持ってんの? 泥棒ダメだよ? 

 

「そんなことするわけないじゃないですか! ちゃんと私が稼いだお金です!」

 

 稼いだ。

 ドラゴニアの口から聞きたくない言葉だ。

 あんまり俗っぽい言葉を使わない方が神秘性が薄れなくていいよ。

 というかどうやって稼いだ? 

 

「食べてたモンスターたちの余りを売りました!」

 

 確かに売れるか……? 

 いや、でも、こいつら不器用だし解体なんてまともに出来るとは思えないんだけど。

 

「そこら辺を歩いてた探索者のお金の袋と交換してもらいました。快く譲ってくれましたよ」

 

 まさか強奪したのでは? 

 臭くて汚いドラゴンと臭くて汚い美少女が迫ってきたら低レベル探索者は恐怖に駆られて不明な行動を取ってしまってもおかしくない。

 分かっててやったのかは兎も角、すごーく怪しい。

 

「近付いて話しかけたら蹲って震え出したんです」

 

 それアレだろ。

 なんか前も支部でやってた精神攻撃的な何かだろ。

 今はなんもないっぽいけど……なんか無意識的なものがあるのかね。そもそも、アレなんなんだろう。

 

「おじいさまは、サルの貧弱な魂では私の美声に耐えられないのだろうって言ってました」

 

 つまり俺は強靭な魂ということ? 

 

「それと、おじいさまくらいの存在であれば、その影響を打ち消す事もできると」

 

 イルファーレはゴールデンおじいさまより下の存在ってこと? まあ分霊らしいから、本体ならなんとかするかも知らん。そもそも本国でドワーフの俺たちに対する蛮行を止めなかった本体はどういうつもりだったんだろうか。

 

「皆さんは何もないんですか? そんな……弱っちそうな体なのに」

 

「アキヒロと比べられるのは納得いかねーな。そもそも魂と身体じゃ関係ないだろ」

 

「あーあ、これだからサルは……」

 

 俺の身体とヒナタ達の体では大きな差があるのは確かだ。

 男女差もそうだし、筋トレしてるからな。

 でもサルとか言っちゃダメだろ。

 

「こいつぶん殴る!」

 

「ヒナタちゃん落ち着いて!」

 

「姉ちゃんのこともサルって言ったんだぞ!」

 

「悪気はないんだよね!? ねっ!」

 

 なぜか擁護を試みる早苗ちゃん。

 効いてないらしい。

 

「魂と肉体はすごーく関係しております。こうして目を瞑っていても、アキヒロの魂を感じ取れ…………あ、いますね。えっと、目を瞑っていても…………いますね。んんっ! こうして目を瞑っても………………あの!」

 

 なんでしょうか。

 

「私が目を瞑るたびにそこから離れるのやめてくれませんか!? 私がまるで魂を感じ取れないみたいじゃないですか?」

 

 知らんが。

 

「いいですか! ……いいえ、こうなったら掴んでその場から離れられないように…………」

 

 目を瞑ってなくても俺のことがわかる的な話の趣旨だと思っていたのに、触っちゃったら意味ないのでは。

 

「…………早苗!」

 

「え?」

 

「早苗は意地悪しませんよね!」

 

「アキヒロ君も別に意地悪はしてなかったけど……何すればいいの?」

 

「歩き回ってください」

 

「わかった」

 

 目をタオルで塞いで、耳もタオルで覆って、鼻もタオルで隠して、何やら実験を始めた。

 早苗ちゃんが遠くで歩き回り、その位置を正確に向き続けている。確かに何かを感じ取る力はあるようだ。

 

「歩きの揺れやらタオルから漏れてる匂いやら感じ取ってんだろ」

 

 ヒナタの邪推も仕方ない。

 なにせ、レベルの高い生物の視力や聴力などの感知能力は通常考えられるそれとは比べ物にならないのだから。

 ドラゴンの娘である彼女にも相応の身体能力が備わっていて不思議ではない。

 

 しかし……俺は別に疑ったりしていないのに、必死すぎやしないだろうか。

 あの時、確かに彼女は遥か彼方から俺の場所を探し当て、不可思議な法術によって声を届けさせた。ただの異能と言ってしまえばそうなのかもしれないけど、そうじゃないような予感がした。

 

「ともかく! ご覧の通り、私は魂を感じ取ることができます。それくらいすごいんです。そんな私の声を何もなく聞けるというのは…………どうしてなのでしょうか」

 

「そんなこと私たちが知りてーや」

 

 トカゲとサルではやはり分かり合えないのか。

 しかし大事なのは完全に分かりあうことではなく、うまく付き合っていくことだ。

 こうして何もなく話ができているのなら、それで十分じゃないか。

 あと、本題はそこら辺じゃなくてあの蓋を壊していい悪いの話だよね。

 

「そうでした……私はあれをすごく触ってみたいんでした! アキヒロが余計なことを言うから忘れていました!」

 

 すごい。

 一瞬にして俺のせいになった。

 

「お金ならあるので、開けてもいいですか?」

 

「ダメ」

 

「なんでですか。お金があるなら開けていいって言ったじゃないですか」

 

「職人達が頑張って作ってくれたもんをその日のうちに壊してみろ。二度と相手してもらえなくなるぞ」

 

「つまり?」

 

 高級ふわふわベッドに寝れなくなる、ということだ。

 

「──それはダメです!」

 

 大人しくなった





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