【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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1930投稿が人生を圧迫し始めているので、今後はずらしたりするかもです


81_西は荒れ

『変な匂いがする……』

 

『あの音はもしかして、ここからしたのか?』

 

『ビチャビチャだし、何かあったんじゃないか? 水の異能を使うエリュシオンの連中がやってきたとか……』

 

『そうだ。あの加賀美とかいう探索者が何か知ってるんじゃないか?』

 

『聞いてみる?』

 

『……』

 

 どうやら、湧き出した温泉の話は噂として広まっているらしい。噴出時、孔内から押し出された空気は巨大な破裂音として広がっていた。大きな人工構造物のないこの世界では音が伝わりやすい。

 少なくともセクター全体に音は聞こえていたようだ。

 

「──ってわけでさ。何があったか知りたいんだけど……教えてくれる? 不安に思ってる人もいるから、変なことじゃないか確認がしたいんだよね。もしも戦闘があったなら、それこそ早く知りたいし」

 

 俺は支部に呼び出された。

 ミツキがお供。

 

 支部内でも話題として挙げられる程度には問い合わせが多かったらしい。そうでなくても職員達は気にしているようだ。

 温泉が湧き出たことを伝えると、あまりに予想外だったのか裏に引っ込んでしまった。

 戻ってきたナナオさんはひと心地ついたような顔で再び席に着く。

 

「いやあ……温泉がこんなところでかあ……湧き出るものなんだね」

 

 そんなことがあるのだろうか。

 あるいは、温泉の始まりとはこんなものなのか。

 ふとした拍子に源泉が見つかり、そこから少しずつ開拓して見つかる量が増えるのか。

 

 俺のイメージでは、まず火山があって、そこに地下水がぶつかって温められることで上がってくるという風に考えていた。ロイスのところでもそんな感じだと思う。

 地質学に詳しいわけじゃないから、実際のところがわからない。

 まあ、こんな世界ならこんな見つかり方がしてもおかしくないか。

 

「どうするの?」

 

 どうするの、とは。

 

「お店開くの? 自分たちだけで使うの? 個人的には、そのうち入りたいなあ〜なんて思ってるんだけど……どうかな?」

 

 お店を開くつもりはなかった。

 それで得られる小金には興味がない。

 人が増え、人の目が増え、動きを制限される可能性が高いからな。

 

「でも、勝手に人が来るんじゃない?」

 

 それは対策すればいい。

 

「つめたーい」

 

 俺もナナオさんの家に着いて行って家財とか勝手に持っていこうかな。売って金になるだろうし。

 

「堂々と泥棒宣言しないでよ?! びっくりするから!」

 

 人の家に勝手にやってきて温泉を使わせろだの騒ぎ始めるってのはそういうことだよ。

 

「そ、そうかなあ……」

 

「温泉……私、入ったことないなあ」

 

 アオイちゃんは使ってもいいから、そんな心配しないでもいいよ。

 

「いいんですか!?」

 

 どっせハシュアー達も来るし、そのうち一緒に入ればいい。

 

「…………」

 

 あ、ごめん。

 そういう意味じゃない。

 風呂は二つ作るつもりだから。

 

「ほっ……」

 

 流石に男女が濫りに混浴するのは推奨されない。

 お湯も汚れるし。

 

「その考えに至るのがそもそもヨゴレてるというか……アオイちゃんにそんなこと聞かせないでよ!」

 

「あうう……」

 

 まあ、そういうわけなのでそろそろ行かせてもらってもいい? ほら、今日も職人呼ばないといけないし。

 

「本当に金持ち趣味だよね……」

 

 温泉を止めなかったら酷いことになるだけだと思うんだけど。たまたま俺だったから良かったけど、他の人間だったらどうにもならなかった可能性が高いぞ。

 

「どうにもならない……そういえば、西の方のセクターがまた激しい攻撃を受けてるみたいだね」

 

 急に話題が……それは西の部族のせいで? 

 

「ううん。西の部族とエリュシオンの混成」

 

 自然と顔に力が入るのを感じた。

 西の部族が敵なのは前からだけど、もう完全にエリュシオンと手を組んでしまったようだ。あの話が通じない西の部族とどうやって交渉・意思疎通したのか謎だけど、本気で俺たちを殺しにきている。

 

「今は一級とか二級の探索者が対応してるらしいけど……なんかね、モンスターも敵になってるんだって」

 

 どういうことだろう。

 モンスターは敵だけど。

 

「そうじゃなくて、エリュシオン達と一緒に攻め込んできてるの」

 

 !? 

 

「なんかもう、わけわかんないよね……男が操ってるとかいう情報だけは伝わってくるんだけど、それがエリュシオンと西の部族のどっちなのかも分からなくて……あ、これ秘密ね」

 

 なんとも厄介で、どうしようもない。

 一級探索者は何をしているのだろつか。

 

「一級と鉢合わせないようにうまく動いているみたいなの。だから、実力的には一級に届かないんだと思うけど……余計にどうしようもないんだよね」

 

 出没するのは守りが薄くて、食い破りやすい場所。

 主力が到着する頃にはいなくなっているが、その頃には住人や他の探索者はやられている。

 ジリ貧だ。

 一級探索者だけ生き残ったところでどうしようもない。

 そもそもどうやって感知しているのか。

 

 ──! 

 

「一級探索者を感知できるか、ですか? それって髪が一本線みたいになってるあの化け物とかの事ですよね? そりゃ分かりますよ〜。今は流石に遠すぎますけど、ある程度近付けば間違えようもないくらいにハッキリと感じます」

 

 白銀の瞳を自慢げな色で染めて、楽しそうに胸を逸らす。

 魂なのかオーラなのか気なのか不明だけど、一級はやはり目立つようだ。

 

「何故、あなただけが感じ取れないのでしょうか。二級? の人間も一級程じゃないとはいえハッキリわかるのに……イノウとやらで隠してるわけではないでしょうね」

 

 そんなピンポイントすぎる異能が発現するわけないだろ。

 もっと勉強しろ。

 

「むっ! そういう言い草はやめてください! 私はまだ人間の世界に来て短いのですから、知らなくても仕方がないではないですか!」

 

 プンプン怒ってソファを占領すると、そこから威嚇し始めた。

 

「シャー!」

 

 トカゲなのか猫なのかハッキリしろ。

 

『ここに風呂をねえ……まあ、やるけどな』

 

『親方! 空にドラゴンが!』

 

『ほっとけ! 誰も反応してねえってことは例のアレだろ!』

 

 三船君達も噂を聞きつけてやってきた。

 みんなで椅子を並べて作業風景を見ていいらしい。

 技の秘匿とか気にしないのだろうか。

 

『へっ、見ただけで盗めるなら仲間にしてやるよ』

 

 自信ありきのようだ。

 ハシュアーはそれを聞いて目を細めると、道具を借りて手伝い始める。

 職人魂? が燃え始めたらしい。

 

「加賀美さん! すごいですね! 温泉が湧いたなんて!」

 

 隣に座っている三船君は、はしゃぐのが治らない。

 お湯が噴き出したことを伝えたら、見たかったと残念そうにしていた。シエルもどこかワクワクとしている。

 足をぶらぶらとさせて、三船くん越しに顔を向けてきた。

 

「いつお風呂できるの?」

 

「職人さん達次第だけど、急かしても気分悪いだろうし待ってような」

 

「入りたい」

 

「そんな事心配しなくても、除け者にする気ないから」

 

「…………ありがと」

 

 !? 

 

「アリサ!」

 

「はい?」

 

「シエルが俺にありがとうって言ったぞ!」

 

「あ、はい」

 

 反応が薄い! 

 

「ミツキ!」

 

「え?」

 

「聞いてたな!?」

 

「ふーん」

 

「ふーんじゃないだろ」

 

「興味ないし」

 

 なんだこいつら! 

 

「ヒナタ! ……あれ、ヒナタは?」

 

 ヒナタがいない。

 今の今までいたはずなのに。

 

「わふ」

 

 うざがられてるって……そんなわけないだろうが! 

 

「いや、うざいよアキ」

 

 どうやらこの世には義理も人情もないらしい。

 人が喜んでいるところに水を差すような輩しかいないんだ。

 温泉は一人用かもしれない。

 

「シエルちゃん、偉かったね」

 

「ん」

 

 三船くんだけが今起きたことの大きさというものを理解していた。顔を突き出したシエルの頭を優しく撫でている。

 

 職人が木や石を加工してあっという間に風呂を作り上げていく様子を見るのは圧巻だけど、ただ見ているだけではなんの意味もない。

 ご飯を用意することにした。

 

『──なんかいい匂いが』

 

『飯、作ってくれるらしいぜ』

 

『…………へへ、やる気も湧いてくるってもんだな』

 

 大人数なので作らないといけない量は多いけど、ハシュアーの超絶技巧と早苗ちゃん達のウデマエが合わさり、土手鍋風の料理が出来上がった。

 味見は俺が──

 

「──ふむふむ、なかなか美味しいですね。ですがあの子達が食べるには少々足りないので、これをあと10個ほど用意してください」 

 

「…………」

 

『娘』の肩に手が置かれた。

 ヒナタだ。

 にっこりと微笑み、口を開く。

 

「てめえがやれ」

 

 笑顔は威嚇、か。

 

「なぜですか?!」

 

「何故もナニもあるか。自分の食い扶持は自分で、だろ。手伝ってもいねえくせに食べる権利なんかねえんだよ」

 

 やや過激な論理だけど、心情的には理解できる。

 まあ、彼女は手伝っていたわけだが。

 

「私だって食材運んだり、火をつけたりしてます!」

 

「ならお前はいいよ。あのドラゴン達は?」

 

「そ、それは……」

 

「ドラゴンだからって好き勝手できると思うな?」

 

「ドラゴニアです……」

 

 俺とコマちゃんが出ないといけないような事態にはしないでほしい。

 

「で、では私たちも今から作ります!」

 

 できるの? 

 お肉を焼くのすら出来ないのに。

 不安だぞ。

 

「アキヒロ! あなたにかかってますよ!」

 

 俺はどうやらドラゴニア側としてカウントされているようだ。

 しかも何故かヒナタはニヤニヤしている。

 性格悪いざますね! 

 

「まあ、頑張ってみろや」

 

 ふん、俺だっていつまでも料理ができないと思っているな! 

 

「なんだよ」

 

「アキヒロ! 郷で見せてくれた腕をここでもう一度!」

 

 腕が鳴るぜ! 

 




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