【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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85_子供なあ

 異世界くんだりに来て不妊に悩むことある? 

 俺はある。

 一ヶ月の空白期間ができて、そこで浮かんでくる話がそれになるとは……いや、嘘はよくないな。

 正直思ってたよ、全然妊娠しなくね? とはね。

 でもほら、言い出し辛いし世界が違うからこんなもんなのかなって。

 

 エリックに聞いても、探索者の格好をやめてそれとなく街の人に聞いても、ロイス達に聞いてもそんなことはなかった。妊娠から出産までは大体10ヶ月くらいだ。

 しかし、そんな事実を知ったところで何も良いことはない。

 

「売れねーなあ……」

 

 珍しく若い行商人が店を開いていたので、良いものはないか尋ねてみることに。そこで、まずはダンジョンで拾ったと思しきキノコを購入した。商売人と話す時はそこからだよな。

 

「うおお……それを躊躇なく買えるってことは結構やれる男かにいちゃん!」

 

 結構やれることは認めつつ、真の目的を語った。

 

「はえ? …………妊娠しやすくなる薬? にいちゃんすけべだねえ!」

 

「違う! いや違わないけど……真面目な話なんだよ」

 

「ふぅん? アレかい、なかなか子供ができないとか」

 

「そう!」

 

「おー……悪いけど、そういうのは無いなあ。サキュバスの精薬とかだろ?」

 

「知らない、けどサキュバスの精薬があれば確実に妊娠させられるのか?」

 

「させられるっつーか、結果的に妊娠するみたいな?」

 

 まさか媚薬的な話をしてるのだろうか。

 そういうのは求めていなくて、あくまで妊娠させられる方法が知りたいだけだ。

 

「結果が同じならなんでも良いだろ?」

 

 その理論が通るなら3人を代わる代わるで効率的にしていくだけになるけど、そうじゃない。

 作るとしたらあくまで愛の結晶であるべきだ。

 

「めんどくせー……にいちゃん若いんだからいっぱい頑張ってやれば良いだろ。その子だって喜ぶんじゃねえの?」

 

 子じゃなくて()()だけどな。

 

「にいちゃん羽ぶり良さそうだし、サキュバスの精薬とかハーピーの粉を見つけたら持ってくるよ!」

 

 ……まあ、普通に欲しいか。

 持ってきてもらえるなら買おうかな。

 

「結構高いと思うけど、それでも買えそうか?」

 

 ふっかけられたら普通にスルーするからそのつもりで。

 

「うおー! やる気出てきた! 例のエリュシオンのせいでセクター入る時にめっちゃ怪しまれるし、前と比べて全然売れなかったんだよ! すっごいタイミングいい! ありがとな!」

 

「そ、そうか……じゃあな」

 

 行商人と別れ、買ったばかりのキノコを弄びながら街を見る。以前に比べるとやはり結束力が高まっているようだ。

 その証拠に、探索者に対する忌避感が減っている。

 

『あ、おかえりなさーい!』

 

『う……お、おう……』

 

 これまで冷たく扱われていた探索者の方がむしろ対応にまごついている感じはする。だけど道ゆく子供達が、ダンジョンから戻ってきた探索者に笑顔で話しかけるなんて以前なら考えられなかった。

 俺? 俺は普通に怖がられてるよ? だって、傷だらけの人間はシンプルに怖いから仕方ない。

 今日は普通の服装だから俺は探索者としては見られてないけど。

 

「都合のいい奴らだよな。前は目すら合わせなかったってのに今じゃ貴人様みたいな扱いだぜ」

 

「なんと言っても、エリュシオンのせい……おかげ? でみんな協力しなきゃいけなくなったしね〜」

 

「だからってあんな露骨に変えるか?」

 

 帰ってから山田姉妹(2人)にそのことを話すと、思うところはあるようだった。

 みんな同じことを思ってるんだろうな。自分は前から偏見なく接してたけど、みんなは冷た過ぎたんじゃないか──みたいな。記憶なんてどうとでもなるし。

 俺は探索者だから、探索者がモラルについて自発的大きく変えたとは思っていない。

 

 それでも、周囲の人間達の受け取り方が変われば探索者も振る舞いを変えざるを得ない。周囲の人間達(普通の人間)が形成する社会に根ざした職業である以上、そして彼らが根本的には人間である以上、そこは影響を受けるのも当然だ。

 

 でもいい事だよ。

 探索者っていう人類生存に必要不可欠な職業が、存在そのものがよろしくないみたいに扱われている状況から少しずつでも受け入れられるようになるのは。

 少なくない人間が社会から離反した後だって事実さえなければ完璧だった。

 

 ──真面目な話すると、街の人間がそっくりそのまま襲ってくるような状況になってるのイカれてるよ。普通に考えたらおかしいって分かるのに止まらないし、躊躇なく家を捨てて出て行くなんて絶対洗脳されてるよね。コマちゃんでも解けないっぽいし、明らかに神様案件というか……考えるほどに状況が詰んでいってる。

 じわじわと俺たちの生存権を減らしてジリ貧にするつもりなのが明らかだ。

 

 残念なことに、俺は為政者じゃないのでこの状況に対して直接的に、広範的に何かをできるわけじゃない。ナナオさんを通じて伝えることはできても、めんどくさいじゃん。

 みんなが手を取り合ってなんとかしてくれ。基本的に自分たちの世界は自分たちで守ってね。

 

 それでヒナタは何をもじもじしてんの。

 

「私達も……だ、旦那様の職業を聞かれた時に堂々と答えられる日が来るかもな?」

 

「…………ふぅ〜ん」

 

「なんか言えよ!」

 

「いてっ」

 

 2箇所くらい深堀したいポイントがあったけどやめておいた。あんま突っついても鬼しか出ない。

 

「──私なら子供作れるかもしれませんよ?」

 

「キシャアアア!」

「フシャアアア!」

「グルルルルル!」

 

 やめてもらえませんか。

 3人との絆を確かめることも軟禁30日チャレンジには含まれてるのに、それをいきなりぶち壊しにしようとするのは。

 温泉なら貸してあげるから。ほら、あっち行きなさい。

 

「良いんですか? もしかしたら私なら子供を作れるかもしれないんですよ?」

 

「求めてねんだよ!」

 

「しっしっ!」

 

「ヒロさんに近づくな!」

 

 本当に求めてないというか……ドラゴンと人間の遺伝子を混ぜ混ぜして子供ができるわけなくないか? できたら凄いけど、絶対無理だろ。

 

「ヒロさん! なんで子供作る前提で悩んでるんですか!」

 

 作らない前提での仮定について考えてるだけなんだよなあ。

 

「アキヒロ、よく考えてください。普通に考えたら孕ませているであろうにも関わらず孕ませられない……これは、アキヒロが普通ではないからですね?」

 

 はっきり口に出されると凹むかも。

 

「ですが、私とて同じことです。他のドラゴニアと交尾することはできません。なぜなら私は小さいから」

 

「あ、はい」

 

「そうなると私はドラゴニア以外から発情期の相手を探さなければなりません」

 

 発情期なんて言葉、どこで学んだんだよ。

 

「それは勿論おじいさまです」

 

 おじいさまさあ……

 

「いいですか?」

 

「はい」

 

「相手を探すと言っても容易な話ではありません。何せ私は人間と同じような姿をしておりますので、例えば他の小型のドラゴニアの相手を見つけたとしても、いざ交尾をしたら何か良くないことを引き起こす事も考えられます」

 

「…………」

 

「ウルフやフェアリー達との交尾は……まあ、置いておきましょう。考えるまでもないので」

 

「フェアリー? 今フェアリーって言った?」

 

「置いておきましょう」

 

 フェアリーは稀にしか見つからない、文字のごとくフェアリーなモンスターだ。見つけても霞のように消えてしまうらしい。人間と似たような姿をしているとは聞いたことがある。

 ちなみに永井先生は目撃したことが何回かあるそうだ。

 

「──つまり!」

 

「おうっ?!」

 

「私が交尾をしようと思ったら私と同じような姿をしていて、かつ、私が番とするのに相応しいものでなければならないということです」

 

「確かにそうか……」

 

 結構論理的に考えられるんだな。

 

「そうじゃねーよ!」

 

「納得しないで!」

 

「これだからアキはアキなんだよ……」

 

 良いから続き! 

 

「似ている形をしているといえば人間ですね。その中から探すと決めた時に気になるのは人間の性質です。タンサクシャと呼ばれるもの達は背中から同胞を切りつけたり、疲れて倒れている同胞を襲って無理やり交尾をしたりしますね」

 

「そんなことが……」

 

「見たの?」

 

「はい、確かに見ました」

 

 遠見の力だろう。

 それにしても仲間を襲うような探索者か……容易に想像できるな。

 

「私は姿はコレですが、それでも誇り高きドラゴニアです。穢らわしい獣の子を設けるつもりはありません」

 

 結論部分が見えてるとむず痒いな。

 

「気高い魂の持ち主でなければイヤですし、そんな相手ではきっとおじいさまに潰されるだけでしょう。つまり、既におじいさまに認められているアキヒロは問題ないですね」

 

「問題大アリだろ。私たちのだぞ」

 

「既にメスを多く囲んでいるのですから、私くらいなんでもないでしょう? それに人間同士では孕ませられないとしても、何もかも違う私であれば孕ませられるかもしれませんよ?」

 

「言いたいことは分かるんだけど、結構無茶な主張だな」

 

「やってみる価値はあると思いませんか?」

 

「…………そうだな。間違いなく価値はあると思う」

 

「おお!」

 

『!!!!!』

 

 詰め寄ってきた3人を落ち着かせる。

 これはあくまで価値の話だけで、俺がそうしたいわけじゃない。認めるものは認めないと、その先に話が進まないってだけだ。

 

「嘘でも価値ないって言えよ! お前なら言いくるめられただろーが!」

 

「そうは言っても価値あるだろ。ドラゴニアと人間の子供ができたらよ」

 

「そうじゃなくて……!」

 

「分かってるって。みんなを蔑ろになんてしないから」

 

「分かってねーよ!」

 

「いでーっ!?」

 

 無言で2人も攻撃してきたし、普通にダメージくらった。なんだ? 何したんだ? 

 

「こっちだって神様の遣いやってんだからな!」

 

「普通に痛い! すごい! 何が起きてる!?」

 

 手の甲をつねられて痛いなんて、まさかヒナタにやられると思わなかった。

 

「あの…………続きいいですか?」

 

「え、ああ。ちょっとごめんな」

 

 一旦3人を引き剥がした。

 

「価値がある、事なんですよ。だから……どうですか?」

 

「いや、浮気になっちゃうから」

 

「浮気……は知ってます。人間は本来、1人だけを番に選ぶ生き物なんですよね。ドラゴニアも同じですから理解できます。ですが先ほども言ったように、既にヒナタ、ミツキ、アリサを相手にしているではありませんか」

 

 それも色々あった結果──と言ったところで伝わるまい。

 

「それに、おじいさまが許さないと思うんですけど……」

 

 いきなりなに?! 

 




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