【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
1_誘拐
「長かった……!」
「わふ」
謹慎1ヶ月。
ようやく解けたけど、すごく鈍っている気がする。
同レベルのモンスターと戦ったとして、今の俺は生き残れるのかしら。
「一昨日だって師匠と模擬戦やってたくせに」
ハシュアーはそんなことを言うけど是非とも反論したい。
人間と戦うのはモンスターに対するそれと勝手が大きく違う。人間と戦ってもモンスター戦は上手くならないし、逆もまた然りだ。
「えー? でも師匠はごちゃごちゃ言わずにやれって言ってたよ?」
「まあそうだけど」
「というか、閉じ込められてるって言う割には好き勝手行動してたよね。ほら、なんか夜出掛けて怒られてたし」
コマちゃんを盗んで走り出した夜。
帰ったら無言のアリサが玄関にいた。
俺も無言で土下座した。
久しぶりにあんなシームレスに土下座した気がする。
暗闇に浮かぶ瞳が爛々と輝いて、あまりにも恐ろしかった。
「キンシン無視したからでしょ?」
言い訳を全く許されなかった。
というか、言い訳のしようもなかった。
コマちゃんに誘われたんですなんて言ってもしょうがないし、反省文書かされたよね。
ちなみにそれは額縁に入れて飾られてる。
「だっさ……」
「うぐ……」
「アキヒロさんさ、女の子いじめて楽しい?」
顔すら見れねえや。
「まあいいけどさ。ちゃんと反省しなよー?」
「…………そういうハシュアーはどうなんだよ。アオイちゃんとは」
「へ? アオイちゃん?」
「家に通ってんだろ〜? どうなのよ。進んでんの?」
「……」
汚物を見るような目で見られてしまった。
バレたのか? 八つ当たりのダル絡みだということが。
「アオイちゃんは疲れてんの。お兄ちゃんとして面倒見てあげてるだけ」
「???」
ハシュアーの方が年下だったはず。
これは一体……?
「アオイちゃんといると思い出すんだよ。カイル──ええと、弟達のこと」
「そんな名前だったっけ」
「初めて教えた」
「ああ、そうだよな」
受付嬢の仕事はとにかく忙しいらしく、アオイちゃんの小柄な体躯では疲労もかなりのようだ。
それで、偶の気晴らしに出掛けたりすると無邪気な一面が見えてくるのが子供っぽいとか。
年齢から考えても遊びたい盛りだもんなあ。
ハシュアーは何で遊びもせずに毎日朝早くから修行なんかしてるんですか?
「俺はほら、使命があるから」
かっけえ……
「それにしても、何つーのかな…………ぷふっ」
「え?」
なんかいきなり噴き出した。
どういうこと?
「みんな揃って、その耳当てつけてんだもんな!」
「…………ああ」
ツッコミ待ちなのだろうか。
お前もだろと。
「うん、だからおかしくってさ」
ヴォルフガングに作ってもらった耳当てはみんなでちゃんと使っている。
というか、最早ないと安眠できない。
さすが鍛治師と言いたいところだけど、どうやらイルファーレの加護ありきの力らしくて、その力が及ばない場所だと無理だよーって言われた。
ミツキ達はイルファーレと話したらしいんだけど、何でいつも俺は除け者なの? (怒)
「神様ぶっ殺すとか偶に言ってるじゃん」
「それは俺の個性みたいなところあるじゃん」
「そんな個性捨てた方がいいよ多分……というか、イルファーレ様と話したいの?」
「まあ、そりゃあ」
本物の神様と話す経験は貴重だ。
イルヴァの牙では
気付くわけないじゃん。
もっといろいろ聞いとけば良かったわ。
「神様と話せるのって凄いことなんだからね?」
「当たり前だろ」
そもそも、神様なんて形而上の存在が俺たちの次元に身を降ろしている状況は凄いを超えておかしい。
全知全能じゃないのに神様名乗ってることも含めて、色々と言いたいことはある。
でも、話は聞きたいよね。
ビジネス的に。
黄金竜も同等の力はありそうだったけど、要件が違いすぎて流石に聞けなかった。
「あっそ。それにしても……ドワーフって賢いなあ」
ハシュアー は ナショナリズム に 目覚めた!
「だってさ、こんな頭おかしくなりそうな地上で暮らさずに地下で暮らしてるじゃん? 地上は3ヶ月ごとにドンドン辛さの種類が変わるし、モンスターも危険だし……なんかヒューマンって生きづらそうだよね」
「おお」
「なんで地下で暮らさないんだろうね」
理由は色々ある。
酸素。
食物。
ビタミン。
でも、まあ──
「確かにな!」
「ね〜」
「ハシュアーは賢いな!」
「ふんっ! そりゃあアルス様直々に使命を託されてるからな! ……あ」
えっへんと胸を張るハシュアーが片目でドヤっていたかと思えば、視線が俺の頭蓋を貫通していった。
振り返る前に香りが。
「なーにが直々の使命だ、アホ」
「ヒナタ」
「ヒナタ、じゃねえよ…………なんでずっとハシュアーと話してんだよ。早く買い物行ってこい」
「ごめんなさい」
そうだ。
俺にも直々の使命があった。
今日の夕飯を買ってくるという崇高な使命が!
「行ってくるわ!」
「それさっきも聞いたけどな」
ミツキ達が付いてないと外出しちゃいけない縛りは昨日を以て終わりとなりました。
お買い物も1人で行けます!
「勝手に夜、抜け出したくせに」
ええい! 行くんだ!
──────
道ゆく人の姿はどことなく暗がち。
以前は開いていた店がいくつか閉じたまま、もぬけの殻だ。
近所住みのおばさん達がヒソヒソと、その店を傍目に噂している。
「…………」
イヤだね、こういうの。
1ヶ月前のエルフどもの侵攻が残した爪痕は地味なところで残ってる。
ちょくちょく街に近づいて来ては強盗したり乱暴したり。
エリュシオン──というか、それに扇動された奴らの集まりは完全にヤバい組織になっちゃってるんだ。
前までも探索者崩れはいたけど……ガチの野盗まで発生し出したら、いよいよ異世界って感じだな。
まあもっと前の話するなら、旅行中とか日本以外は割とこんな感じだったけど。
「ほら、何食べる?」
「……え? 俺?」
ここまで連れてきたんだから、少しの買い食いくらいいいだろ。まあ男なんだし、コロッケ二つにするか。
「コロコロ二つね」
「はい」
認めん。
コロコロじゃなくてこれはコロッケだ!
互換的にもコロコロだと肉団子とかの方が近いだろ!
せめてアゲアゲとかサクサクにしろ!
と、思うだけはタダなのである。
「熱っ」
「火傷すんなよ」
揚げたてなのでまあ美味しい。
やっぱ芋は勝手に増えるから強いな。
ふかし芋にするにはちょい硬いけど。
「そういえば、依頼出てた」
「ん?」
「連れてかれた子を取り返して欲しいって」
「…………連れてかれた?」
「うん、昨日連れてかれた子がいるんだ」
聞かされていなかった。
あるいは、意図的に情報をシャットアウトされていたのかもしれない。
ナナオさんも何も言わなかったということは──
「エルフ達も多分いるし、大変だと思う」
まず住処を見つけて、隠密で潜入して取り戻す。
あるいは向こうを上回る戦力で攻め入って、一気に叩き潰す。
言葉にすれば単純極まりなくても、実行するのは相当な難易度だ。
監視カメラ的な──それこそ、無効の神様の力で霊領にでも変えられてしまえば見つからないのは不可能。
正面突破しかない。
隠密に行動を開始して、戦闘になったら突破できるだけの実力を持った探索者。
「助けに行ってあげて欲しい…………です」
「…………」
「師匠も言ってたんだ。アキヒロさんが適してるとか超えてアキヒロさんしか無理だろって」
「報酬は?」
「…………き、金貨一枚……」
「個人依頼か」
そりゃあそうか。
1人の子供のためだけに公的な依頼なんか出したりしない。
ミツキぐらい重要じゃないと出ないだろう。
「──確かに少ないけどさ!」
俺クラスの探索者が依頼を受けるとなれば、100万円ぐらいからだ。
貧乏人は俺に依頼をする権利すらない。
ハシュアーも探索者として色々学んでいるから、そこら辺は理解しているだろう。
「…………」
「なんでそこまでして助けたいんだ?」
「は、話したことがあるんだ……」
「ちなみに、俺に依頼できる金額じゃないことは分かってるよな? 鍛治師はそこら辺シビアだから知ってるんだろ?」
「…………はい」
黙り込んでいるうちに家まで戻ってきてしまった。
「おかえり──どした?」
そりゃあヒナタは気付くだろう。
そうして、話を。
先ほどと同じく展開した。
「────」
難しい顔だった。
一も二もなく切り捨てるものだと思っていたのに悩んでいる。
「……私は、言えること、無いな」
「なんでカタコト?」
「お前に助けられておいて、他の人が助けられるのをダメって言うのは…………気分悪い」
「そうか……」
「あ、でも怪我はすんなよ?」
「ありがとう。…………やるとは決まってないけどな?」
「…………」
何言ってんだコイツみたいな顔してどっか行った。
何故かコマちゃんを連れて戻ってきた。
グイグイと押し付けてくる。
「早く行ってこい」
ミツキとかアリサは良いのだろうか。
2人は今日、訓練場に居るはずだ。
相談とか……
「私が許す。最後の禊に人助けしてこい」
「はい」
ハシュアーの額を小突いてから商工会に向かった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない