【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「受ける……んだ……」
支部が俄かにざわついていた。
例の依頼を受けに来たことが余程想定外だったらしい。
「子供は好きだけど、依頼は依頼って切り捨てるタイプじゃん?キミ」
「うん」
仕事というのは対価を得て初めて発生するものだから。
商工会を通した以上は、その対価が適正である必要がある。
そうでなければ世のバランスそのものが崩れかねない。
「大袈裟だね……でも助かるよ。どうしようか悩んでたところだから」
大赤字だ。
例の司祭だか尋問官だかとの戦闘では身体をぐっちゃぐちゃにされた。
あれと同程度の戦力が相手にあるならば、今度こそ生きて帰れるか分からない。
「ううん、いるのは基本的には普通の人間だけだよ」
「情報があるのか」
「一応……リストも作ってあるし」
なんとも細やかな事に、商工会は敵勢力になった人間についてプロファイリングをしていた。
商工会が戸籍制度について施策し始めたのはエリュシオン襲撃後の話だから、作ってあるものは不完全ではあるだろう。
「うん。だけど無いよりはマシでしょ?」
「じゃあ教えてもらおうかな」
救出するとなれば急務ではあるものの、無鉄砲に突っ込むスタイルでは売ってない。
少しだけ時間をかけてでも、情報を集める意義はある。
「知ってるとは思うけど、普通の人間って言ってもみんなレベル25くらいの探索者の身体能力はあるんだ。まあアキヒロ君には問題ないけどね」
エリュシアの加護。
どうやら一般人も強制的に身体能力を引き上げる効果があるようで、襲撃時に探索者がやられたのはこれのせいだ。
想定よりもレベルが上の存在だったーーただ、それだけのこと。
「アキヒロ君が戦ったっていう2人の審問官も、きっと加護で強化されてたんだろうね」
俺たちとは全く違う形態の力だ。
神の加護を得て戦う。
ロイスのそれに近いけど、もっと神に頼った戦い方。
健全じゃない──とはいえ狡いとまでは思わない。
「私も、それくらい強かったら探索者やってたのかなあ」
「ナナオさんは受付嬢が合ってるよ」
「そうかなあ…………え〜なんで〜?」
次の情報。
「えっとね……元探索者の盗賊達も取り込んでるみたいで、そいつらが厄介そうかな。元々のレベルは32が最高で、異能は──」
エルフはいないけど探索者崩れは入っていたらしい。
探索者憎し! みたいな感じで離反したくせに探索者として鍛えていたやつは入れるあたりが非常に香ばしい。
「そうだね! 本当にムカつく! 私、めっちゃ怖かったんだから!」
ナナオさんも脅迫とかされてたらしいし、その節は大変お世話をしました。
「……よく考えたら借りしか作ってない気がする」
「今回のも貸しだから」
「ハシュアーとかにしてよ〜」
「子供に貸しとかないから」
「私も子供になりたい……」
「お返しが楽しみだ」
その後も情報を惜しみなく提供してもらった。
誘拐や頻発する襲撃は問題になっていたから、この際に解決してもらいたいらしい。
取り敢えず助け出すことまではやりますよ、と。
「わふ」
コマちゃんは準備万端。
毛並みも揃っている。
「もふもふ」
もう、コマちゃんが変身できることは隠していない。
そういうフェーズは過ぎた。
「2人とも、お願いね」
お願いはいいけど、敵のアジトは不明だった。
そうは言っても予想はつく。
かなり近いところ。
その上で見つかりにくく、多数の人間が生活できる資源がある場所。
ダンジョンだ。
アンダーじゃない。
それだったら流石に探索者も気付く。
この近くにあるダンジョンといえば深草砦。
ソフィアを連れてきたこともある。
昔に比べると広くなっているので、もしかしたら。
「──まあ、そこまで甘くはないか」
コマちゃんも匂いはしないと言っている。
外れだろう。
となれば、なるべく行きたくはなかったけど行くしかない。
以前、シエルと三船くんが迷い込んだ場所。
あそこら辺は、深草砦と比べると難易度が高いダンジョンだ。
特徴は無い。
ごく一般的な自然発生型ダンジョンで、ネレイドやアグニといった精霊型に分類されるモンスターが良く出る。
アンダーと違って魔素溜まりとか落とし穴みたいな地形トラップが無い素直なダンジョンだから、俺はあんまり行かない。学べる事がないんだよね。
問題はその広さ。
三船君達が迷い込んだのは浅い場所だったけど、それでもこの街からたどり着くのに2人の足で30分くらいはかかった。
地形把握は苦手じゃない。
だけど、ゆっくり時間をかけていられない状況だと役に立つ特技もない。
異能もない。
おれが無能すぎる。
「コマちゃん任せた」
「わふ……」
結局アタクシなのね……みたいにかったるそうな感じを出しながら鼻を鳴らすと、ポスポスと地面に足跡をつけながら歩き出す。
警察犬もびっくり。
最早第六感の域に達しているコマちゃんの嗅覚ならば隠れ潜む盗賊どもの住処を見つけ出すことも──
「…………?」
途中で立ち止まると、何度も鼻を鳴らして首を傾げた。
「どした?」
だいぶ森の中なので、すでにモンスターとも数度戦闘を行っている。こちらから先に見つけないとモンスターとの戦闘中に乱入されかねない。
そろそろ、というそんなタイミングだった。
「わふ」
ここから先はコマちゃんの嗅覚が届かない領域になっているようだ。
進むなら見つかることは確定だとか。
つまり奴ら、霊領とまでは行かなくとも結界は張れるらしい。
警戒もせず、ただ張っているだけで外部の侵入者を感知できる境界。そんな高尚なものを感じ取れるコマちゃんはやっぱり凄えな。
俺には全く分からなかったけど、触れてみれば確かに手が消える。少なくとも視覚的光学的に断絶された空間が向こう側に広がっているな。
「よし、入ろう」
ここまで来たんだから帰る選択肢はない。
武器を抜く。
入った瞬間から敵が目の前にいる可能性だって十分にあるからな。
「──ふう」
割れないシャボン玉の膜にでも顔を突っ込んでいるような気持ちになった。
身体に変化はない。
だけど確かにバリアを潜り抜けた事はわかる。
「もう捕捉されてるってわけか」
痕跡を辿って、道なき道を疾走した。
どうせ捕捉されてるんだから、正面からぶつかる前になるべく進んでおきたかったんだ。
とはいえ、いつかはぶつかる。
「お出ましか」
小枝を踏み割る音。
5名の荒くれ者が現れた。
「コイツか……」
あまりにも荒くれすぎる風貌は、この環境で長く生活していることを否応なしに理解させた。
というか顔見知りではない気がするのに反応が……?
「ウチの子分どもをよくもやってくれたな、ええ?」
「…………多分人違いです」
「ふざけてんのかテメェ」
「ふざけるも何も……」
本当に心当たりがない。
この因縁の付け方もいたって普通のチンピラだし、探索者としては一般的だ。
まあいいか。
「すいません、子供を助けに来てるんです。もし居場所を教えてくれたらサクッと終わりますけど……」
「!」
「大槌か」
鍛治師はこんな奴らに手は貸さないだろうし、道具の持ちは良いみたいだ。
俺とは大違いだな。
子分達はなんか武器がゴツゴツしてる。
モンスターの素材そのままで固めてるのか、珍しいな。
職人みたいだ。
──────
「なるほど、アンダーで俺を襲った中に子分がいたわけね」
戦いになるわけがない。
レベル50とレベル30だぞ?
昔の俺しか知らないんだろうな。
と言っても、これ以降はその知識を活かす機会も無いわけだけど。
「決着はついた。案内してくれ」
「っ……」
反抗的な目付きだ。
リーダーが再起不能になったくらいではまだ心は折れないってことだろうか。
リーダー以外の4人を残したのが良くなかったのかもしれない。
もう1人くらい減らせば分かってくれるだろう。
「わ、分かった! やめてくれ!」
リーダーの死体は残さず燃やし尽くした。
加護がどうたらで死体まで使われても敵わないからな。
「くそっ!」
「リーダー……」
悔しそうに黒炎を何度も振り返っている。
「子供を連れ去っといて、よくもまあ被害者ヅラできんな」
「それは俺たちじゃねえ! アイツらがやったことだ!」
「ああ、そうだな。早く案内してくれ」
会話は求めてないのでチャキチャキと案内させた──んだけど。
「も、もう良いだろ? あとはまっすぐ行ったら奴らの住処だからよ……」
「リーダーのこともちゃんと弔いたいし……」
「おい聞いてんのか!?」
立場がわかってなさすぎボーイズ&ガールズだった。
何も笑えないな。
コイツらはきっと、これからもこんな感じなんだろう。
誰かに責任を押し付けて、やりたい事だけをやり続ける。
それ以外の生き方を知らないから。
「アレがアイツらの居場所だ!」
縄文時代くらいの生活はできているようだ。
和気藹々とした雰囲気ではないものの、仕事をこなしている。
そんで、すでに武器を持って集まっていた。
そそくさといなくなった4人は放置して、視線を堂々と返す。
「子供を返してもらいに来た」
「…………」
「すぐに解放すれば手荒な真似はしない──とは言わない。存分に抵抗してくれ」
「な、なんだよそれ!」
火を。
黒き火を。
魂すら燃やし尽くす呪われた炎を。
「聞くところによれば……お前らは神様とやらの加護を得て悪事を働いているらしいな。その上、子供まで連れ去った!」
神剣を地面に突き立てる。
酸化による現象ならば炎は消えただろうが、そうはいかない。
程なくして、地面が大きく波打ち始めた。
「この揺れは!?」
ヒビが入り、夜闇のような黒が漏れ始める。
気付いた咎人どもは一斉に手をかざした。
「やめろ!」
「アイツを止めろ!」
現れたのは最初に抜けてきたのを更に濃くしたようなバリアー。
だけど、これが攻撃性の行動だろうが防御性の行動だろうが関係ない。
触れた途端に焼滅していくだけだ。
「──なっ!?」
武器は溶け、飛んでくる矢は消し炭になる。
拡大していく炎から逃れようとしているようだけど、この集落から逃げても先はない。
後に引くことすら出来な意図理解したのか素手で立ち向かってきた。
「──っ……!」
全力で振るわれた拳は俺の右頬を捉え、当然の如く
他の奴らも組み付いて来たりしているが、俺は今、動きに何ら制約を感じていない。
「武器が重い……なんだこれ……」
「か、体もいつもみたいに動かないよ……!」
組み付いている奴らの方が寧ろやり辛そうだ。
身体を少し揺り動かすだけで死にかけのトカゲみたいに剥がれて地面に這いつくばる。
「何をした!」
「何を……いや、答える前に連れ去った子供の場所を教えてもらおうか」
「ならこれをやめ──うああああ!?」
この期に及んで言葉を重ねて交渉をしようとしてくる。
俺の見た目がいかんね。
いくら物々しい鎧を着ても、顔が若いと舐められる。
「ゴチャゴチャ言ってないでさっさと教えろっつってんだよ」
「あ、足! 足が! いいいいいい!」
理屈は不明だけど、加護が剥がれているらしい。
不気味──というか炎の効果なんだろうけど都合が良いな。
「何をした!」
「あのな……」
だんだんイライラして来た。
子供をこんな大人数で誘拐してるだけでも反吐が出るのに、この期に及んで自分たちの加護のことしか気にしてない。
安否が確かめたいのに、会話が成立する奴がいないとかどうなってんだ。
顔見知りもいるから我慢してたのに。
「コマちゃん、見つけたか?」
「わんっ!」
それなら、もう用事はない。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない