【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
西の部族。
俺たちの住まう地より西を治める人類種。
言語が通じず、肉体に獣の特徴を強く有している。
人間を捉えるとそのまま食べたり奴隷にしたりするという、部族として分けるには価値観があまりにもかけ離れた連中。
永井先生は言った。
魔素の影響によって異形化してしまった者達の子孫だろうと。
俺は伝えた。
きっとそれは、迫害された者達の最後の楽園だろうと。
実際のところは分からない。
彼らは獣やモンスターとすら調和する、この世界に完全に適合した生物だ。
ダンジョンに限らず、モンスターの縄張りを通っても騒ぎになることは少ない。
特に意識せずとも隠密行動が可能だ。
あの少女が閉じ込められていた檻。
アレは西の部族のやり方だ。
誰から聞いたんだったかエルフ共と行動を共にしているなんて話もあったけど、まさかこんなところにまで手が及んでいたなんて。
「──またやってる」
いつも通り、縁側で晩酌をしつつ考えをまとめていたらテマリさんがやってきた。
「……夜更けに女が男の元を訪れるなんて褒められたことじゃないですね」
「あはは。本当、男の人って思ってもないことはスッて言えるよね」
「それこそ口に出さないのが粋ってもんですよ」
「ほら、私女の子だし」
「まあそうか」
「ツッコミ待ちだぞー?」
彼女も以前に比べるとだいぶ地金が出るようになった。
良いことだよ、多分。
「どうしてこんな夜更けに?」
「ちょっとね。そっちこそ、依頼をこなしてきたってのに全然疲れてないじゃん」
曖昧に雑談をしていると、ふと思い出した。
彼女は元々商工会本部で局長なんて役職についていた優秀な人材だ。
少し時間が経っているから情報は古いだろうが、何か知らないだろうか。
「西の部族、ね……」
「まだ姿まで見かけたわけじゃない──どころか、一度も実物を見た事がないもんで。何か知らないですかね」
「…………」
「手鞠さん?」
「アイツらとは……会ったことある」
「ほお。戦った感じですか」
「うん、負けたけど」
「え」
西の部族に負けるということは、捕まるということで──
「それはなんというか……不躾でした」
「あ、違うよ。確かに危ない場面だったけど何もされてないから」
「おお、それはすごい。あっさり逃げ出した的な?」
「助けてもらった」
「へえ」
通りすがりの探索者だろう。
豪運の持ち主──西の部族に出会してる時点で運がいいとは言えないから、悪運が良いのか。
「レオにね」
悪運すら、良いのか悪いのか分からなくなった。
「捕まってた私をギリギリで助けてくれたの。颯爽と……本当に、物語の勇者様みたいだったんだ」
懐かしさに浸る顔。
その時のことを思い出しているのだろう。
ただ、どこか寂しさも感じた。
「まさか、敵の間者だったなんて思いもしなかったけどね」
「……裏切られる気持ちは、俺にもわかります」
「そうかな」
「はい、何度も。こいつならって仲間に裏切られましたから」
「何度も……」
「ええ、もしかしたら俺が悪かったのかもしれないですけどね」
「……ふふ。何度もなら、確かにそうかも」
「おっと、もう少し優しくしてくれても良いんじゃないんですかね」
西の部族は、概ね話に聞く通りの種族らしい。
ただ、一点。
彼らは統一して一つの神を信奉しているとか。
「神っていうか……大精霊? って言うらしいね。レオは明確に分けてた」
精霊種自体は、珍しいもののこちらにもいる。
まあ全て敵対種なので括りはモンスターだ。
出会ったら殺すか殺されるかの二択しかない。
しかし、大精霊というのは聞いた事がない。
火の精霊や水の精霊は、名前がついているが、ソイツには名前があるのかね。
「そこまでは聞いてないなあ」
それにしても、エルフは西の部族の言葉を理解できるのか。
厄介だな。
組んで攻めてくるにしたって、言葉まで分かるってんじゃあ戦略的に動いているのかもしれない。
「実は……昼間、ちょっと聞こえたんだけどさ。近くにやってきたんでしょ?」
「確定じゃないですよ。ただ、アイツらの痕跡が──」
俺の言葉に手鞠さんは頷いた。
「そうだね。それは確かに西の部族のやり方だ」
「負けるつもりはないですけど……あえて聞きます。俺たちは勝てると思いますか?」
「……ごめん、私も大した探索者じゃなかったから分からないや」
「探索者としては…………それなら本部で働いていた人間として、ここから商工会──本部がどう動くかわかりますか?」
「…………ちょっと考えさせて」
隣に腰を下ろした手鞠さんは、コマちゃんを撫でながら考え込んだ。
手鞠が彫刻された銀製コップが空になること四度。
ブランクもあるから今の今では纏まらないかと考え、温泉に集まる小動物を眺めていたタイミングで肩を突かれた。
手鞠さんは二本指を立てている。
「2パターンだと思う」
「ふむ」
「基本的に田辺会長は改革派だし強硬派。だから、やるなら極端に進めるよ」
「極端……」
「刃向かう奴を全員排除するか、完全に支配下に置くかのどっちかを選ぶはず」
何となくの納得はいく。
実際に排除命令は出ているわけだし、現在は前者寄りってわけ?
でも現場はそんな事にはなっていない。
子供を誘拐するコミュニティがある程度には見逃されている。
「だって支部と本部には距離があるし、それぞれの独立性も強いからね。…………そのせいで私も結構大変してました〜」
元官僚としては頭に従わない手足に思うところもあったらしい。まあ、今はニートだ。
「だからこそ会長は本部の力を強めようとしてるんだよね。子飼いの探索者を作れば、全然思い通りに動いてくれない探索者依存の問題解決能力を底上げできるし、支部にもどんどん送って影響力を強めようって事」
どういう支持基盤を持っているのかが謎だ。
誰が変革を望んでいるんだろう。
いや、層が限られすぎてて何となく分かるけど。
「そりゃ企業連中だよ。商工会一強の状況を変えたいんでしょ」
「体制が変わった後は会長を排除して傀儡をね……」
「そっ!」
ぶっちゃけ、金儲けのことしか考えてない奴らがあの男に敵対するのは無理筋な気がするけど……まあ、暗殺者の技量次第か。
田辺自体に戦闘力は無いらしいし。
つっても気になることはある。
「育成前に攻め込まれちゃいましたけど」
「そうだね。商工会の内部にも結構入り込まれてたし、情報も抜かれてると思う」
そこまで劣ってるのに、商工会がここから巻き返す事はできるのか。
あと、支配下に置くってのはそもそも戦力で優ってるやつが練る策だがツッコミ待ちか?
「うーん……こっちも向こうに人を送り込むとか?」
「いや、バレるでしょ」
「そうかなあ」
前々からだけど、あの耳を見てエルフだって思わないの文化残ってない弊害すぎる。
シエルとかレオとか見た時、俺は思ったけどな。
あ、エルフだ──って。
向こうはスパイを送り込んできてるんだから、ヒューマンの特徴とかちゃんと理解してるだろ。
尖ってない耳を見たら蒼連郷の奴らだなって普通に分かっちゃうに決まってる。
「探索者がもっと商工会に協力的なら話も早いんだけどね」
どんな命令にも即座に従い、どんな任務でもこなす。
それはもう探索者と名乗るには相応しくないだろう。
軍隊だ。
「軍隊……確か、第一期世界の自衛組織だよね」
「ええ」
「国、ね」
蒼連郷も国と名乗ってないだけで国みたいなものだ。
そんな異文化に想いを馳せるみたいな顔をしなくても……
「加賀美君も大学生だったんだよね? 歴史とかやってたの?」
「いや、俺は霊領研究ですよ」
「…………そうだった」
レオを派遣したくせに、そこら辺忘れていたらしい。
「レオ……」
「…………」
「あ……ごめんね、湿っぽくしちゃって」
「幾らでも大丈夫ですよ。気にしないので」
「少しは気にしろ〜? そんなんだと愛想尽かされちゃうぞ?」
「確かに……」
「確かにって……」
愛想尽かされないのが奇跡なくらいバカなことをしている自覚はあった。
もう止まれないから仕方ないんですけども。
「……あんまり気負わない方がいいんじゃない?」
「気負う?」
「みんなのことを助けようとか、そういうこと」
「別に思ってないですよ」
子供とイケメンと美女はできるだけ助かってほしいけど。
「それもどうなんだろうね……ちなみに普通の大人は?」
「自己責任」
「バッサリだ……あれ、私は…………はっ!?」
良くない勘違いをされている気がする。
「ま、まさか実は……」
「あのですね、顔が良いイコールそういう対象とは限らないんで」
「本当に?」
「シエルと三船君の事、俺がそんな風に見てると思います?」
「…………」
「悩まないでくれます?」
顔と性格が好みだからっつって、付き合いたいとは直結したい。
ただ、綺麗なものを綺麗だと言っているだけだ。
「なんか凄く歪な気がする」
そろそろ寝た方がいいのかもしれない。
話が逸れに逸れている。
きっと手鞠さんは疲れているに違いない。
「あ、ちょっと、何で背中を押して、まだお酒が……」
「はいはい、明日にしましょうね〜」
部屋に押し込んだ後、改めて話をまとめた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない